☆一輪の白い花   作:モン太

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鬼人

「くっくっく。哀れなガキだ。」

 

声をかけられた。

 

「お前らみてぇなガキは誰にも必要とされず、この先自由も夢も無く、野垂れ死ぬ。」

 

声をかけてきたのは、霧隠れの里の額当てをつけた忍び。年齢は18ぐらいだろうか?

 

馬鹿にしたような言葉。でもなぜかそれは自嘲の気配を感じさせた。

 

「お兄さん。僕と同じ目をしている。」

 

だからだろうか。こんな事を言ってしまったのは。

 

忍びのお兄さんは、目を大きく見開く。そして、

 

「お前ら、親はいないのか?」

 

「.............うん。昨日死んだ。」

 

「そうか。」

 

すると、お兄さんは懐から丸薬を取り出して、意識を失っている藍に飲ませた。

 

「お前も飲め。」

 

僕は無言で受け取り、丸薬を飲む。

 

お兄さんは藍を背負う。

 

「お前ら、俺に付いて来い。命が惜しければな。」

 

「..................」

 

正直選択肢なんて無いと思う。藍が助かるなら、迷うわけがない。

 

「今日からお前の能力は俺のものだ。」

 

「!?」

 

この人は僕達が血継限界だと知って、受け入れてくれるのか?

 

「..................」

 

僕はお兄さんに付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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目が覚めると、霧隠れの雪の空では無く、木材の天井が目に飛び込んで来た。

 

「ここは?」

 

私は確か橋で死んだはず。そして、おそらくはお兄ちゃんも................。

 

「目が覚めた?」

 

声の方を見ればお兄ちゃんがいた。

 

「お兄ちゃん、ここはどこ?」

 

私は布団に寝かされていた。部屋の広さはそこまで広くはない。1人暮らし用の部屋なんだろう。私の家よりも狭い。そして、物が殆ど無い殺風景な部屋だ。

 

「そうだね。場所の説明をするなら、先に藍が寝てからの経緯の説明をするよ。その方がわかりやすいと思うし。」

 

そう言うと、お兄ちゃんは私にこれまでの事を話してくれた。

 

霧隠れの忍びに助けられた事。その忍びの名前は霧隠れの鬼人、桃地再不斬。ここはその再不斬の家。私は丸1日眠っていた。

 

「じゃあ、再不斬さんを呼んでくるね。」

 

そう言って、お兄ちゃんは部屋を出て行った。

 

「..................」

 

私達は助かったのかな。その再不斬さんはきっと命の恩人。どんな人なんだろう?怖い人だったら嫌だな。

 

ガチャ。

 

部屋から背の高い男の人が入って来た。その後に続くようにお兄ちゃんも入って来た。

 

鬼人って呼ばれるのも納得の相貌だけど、何故だろう?全然怖く無い。

 

再不斬さんは私をじっと見つめている。

 

「..........お前らは双子じゃ無かったのか?顔立ちはそっくりだが、目の色や髪の色がこうも違うとは。」

 

確かに私達は双子だけど、お兄ちゃんは黒髪黒目。だけど私は水色の髪に橙色の瞳。

 

「二卵性双生児だそうですよ。」

 

「ふん。なるほどな。」

 

よかった。お兄ちゃんが笑ってる。笑顔が帰って来た。

 

「そう言えば、お前には名乗って無かったな。俺は桃地再不斬だ。お前は?」

 

「私は藍。白お兄ちゃんの双子の妹です。」

 

「..........藍か。わかった。..........お前らはこれから俺が育ててやる。だが、タダって訳じゃねぇ。お前達は俺の道具として、戦い方を叩き込む。いいな?」

 

ここで断れば、結局はまた橋で命を落とすだけだ。どのみち私達に選択肢は無い。

 

お兄ちゃんは少し思案するが、すぐに

 

「わかりました。よろしくお願いします、再不斬さん。」

 

と答えた。なら、私も答えは決まっている。お兄ちゃんを救い、笑顔を取り戻してくれた人なんだ。なら大丈夫。

 

「私もお願いします、再不斬さん。」

 

再不斬さんは、私達の返答にニヤリと笑みを浮かべる。

 

「よし。ならまずはこれを読め。」

 

再不斬さんは数冊の本と巻物を用意する。

 

「忍びたる者。文字が読めなければ、話にならん。文字の勉強ついでに忍びとはなんたるかを説明している書物を用意した。これを読んでまず忍びについて勉強しろ。」

 

「わかりました。」

 

「じゃあ、俺は出かけてくる。夜には戻る。」

 

ガチャ。

 

再不斬さんが出て行くのを見送って、早速本を開いてみる。中はびっしりと文字が敷き詰められている。

 

「ねえ、お兄ちゃん。私達って文字の勉強が目的なのに、いきなりこんなの読めないよ。」

 

「あははは。」

 

お兄ちゃんも同じような事を思っていたらしい。苦笑いを浮かべる。

 

それからは、再不斬さんが帰って来るまで本と巻物を広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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しけた任務だったな。最近はつまらない任務が多過ぎる。

 

ツーマンセルでペアを組み。岩隠れに浸入。スパイ活動する任務だ。表はな。

 

裏の任務は、もしペアが捕まり情報を吐きそうなら、そいつを始末するのが裏の任務。

 

結局、ただの足手纏いをぶっ殺す任務になってしまった。

 

いい加減、あのいけ好かねぇ野郎に、従い続けるは癪だな。

 

先代の首切り包丁使いが死んだらしい。確か、抜け忍の枇杷十蔵だったか。その後継者に俺が選ばれた。来週は、首切り包丁を受け取る。

 

俺は任務が終わり、里に帰って来た。里の入り口の橋を渡っていると、ガキが2人座っているのを見つけた。おそらく、血継限界持ちで迫害を受けたガキだろう。

 

単なる気まぐれだった。任務の鬱憤を晴らすかのように、ガキ相手に暴言を吐いた。しかし、

 

「お兄さん。僕と同じ目をしている。」

 

さっき仲間を殺した男にこんな事を吐かすとはな。くっくっく。こいつは面白い。

 

こいつはいい道具になる。そう俺の直感が告げる。

 

俺は直感に従って、このガキを拾う事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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1週間の生活に必要な道具や食料を買った俺は、部屋に戻る。

 

ガチャ。

 

「あ、お帰りなさい。再不斬さん。」

 

「お帰りなさい、再不斬さん。」

 

「......ああ。」

 

荷物を机に置く。

 

「お前ら、読めたか?」

 

まあ、何の教養も無いガキじゃ無理だろうな。

 

「ええ、読めましたよ。少し、解読に時間がかかりましたが。」

 

俺は白の言葉に目を見開く。

 

こいつは驚いたな。やはり俺の直感が正しかった。

 

「さすがはお兄ちゃん!やっぱり凄いね!」

 

なるほど。白が読めたか。

 

どうやら、兄の方が優秀なようだな。実際、橋で見かけた時も白の言葉がきっかけだしな。妹の方は至って普通のガキか。

 

白は育て甲斐がありそうだな。

 

「ふふ。藍も僕が教えたらすぐに読めたじゃないか。飲み込みが早くてびっくりしたよ。」

 

藍もそれなりに頭はいいのか。まあ、こいつが居れば、白はより力を発揮できそうだしな。

 

「そうか、ならいい。それを読んだって事は、これからする事もわかってるな?」

 

「はい。修行ですね。」

 

「ああ、そうだ。」

 

白が嬉しそうに呟く。

 

「早く、再不斬さんの為に強くならないと。」

 

本当にこいつらは純粋だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「まずは、チャクラからだな。本で読んだだろ?」

 

「はい。身体エネルギーと精神エネルギーを練り合わせた力。」

 

「あらゆる忍術に必要な力の源。」

 

「なるほど。しっかりと読めているようだな。」

 

再不斬さんは目を細める。

 

「まずは目を閉じ、集中しろ。姿勢は自然体で力は抜け。」

 

再不斬さんの指示通りに、目を閉じ意識を手と足の接触している箇所へと集中する。この時に、手から足へと何かが僅かずつだが循環しているのが分かった。

 

今度はその循環している流れを、自分の思い通りに出来るか試してみると、止めることも増やすことも出来たのである。

 

これがチャクラなのかな?

 

目を開けて、この流れを忘れない内に繰り返していく。

 

「できたみたいだな。」

 

「はい。身体の中の流れみたいなのがチャクラですか?」

 

横を見ると、お兄ちゃんもできたみたい。

 

「そうだ。今日はこれでいいが。明日からは、チャクラを練る修行をするぞ。」

 

「「はい。」」


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