☆一輪の白い花   作:モン太

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宿命

これで何度目だろうかな。

 

「あれが大蛇丸のアジトか。」

 

大蛇丸のアジトを突き止めた。今回は何としても捕らえる為に3人がかりで望む。

 

これで3回目になる。

 

どうやら私はトコトン大蛇丸と縁があるようだ。今回も大蛇丸のアジト潰しだ。ゼツが見つけたアジトは風の国の砂漠地帯あった。

 

大蛇丸も本当に凄いと思う。木ノ葉の追い忍から逃げながら、私達暁にも追われて生き延びてるんだから。

 

まあ、大蛇丸を完全に殺す事は不可能だろうと私は思ってる。

 

あの呪印を受けてわかったけど、あれは恐らく対象者のチャクラを吸収して、大蛇丸本人を復活させる術式。

 

そして、この仮説が正しければ、仮に殺せたとしても、世界の何処かでまた復活してしまうだろう。

 

非常に残念だが、大蛇丸が諦めてくれるまで、一生ストーカーされる事がわかっている。

 

そんな事を言っても組織に意向に逆らう気は無いから、地道にアジトの破壊はするけどね。

 

3人で砂漠を歩く。

 

今回の任務では、サソリが意欲を見せている。大蛇丸と因縁があるようだ。大蛇丸の悪口ならサソリと盛り上がりそうだ。そして、相方のデイダラ。デイダラは私を連れて行こうと喚いていた。リーダーも大蛇丸との戦闘経験が豊富な私が同行する事に異議はないようで、今回のメンバーが決まった。

 

「やっと、スリーマンセルだな!うん!」

 

「はしゃぐな。今回限りだ。……大蛇丸をぶっ殺す事は確定だからな。」

 

「じゃあ、サソリメインでいいね。私とデイダラはサポートって事で。」

 

「ああ。それから、コン。仮面は外しておけ。」

 

サソリからの提案だ。

 

意外だね。デイダラはよくそう言うけど、サソリが言うのは珍しい。

 

「今回は俺も本気で戦う。……オレの十八番の三代目風影は磁遁の砂鉄を扱う。砂鉄は黒いから視界が悪くなる上、デイダラの上空からのサポートも視界が狭いと巻き込まれる可能性がある。」

 

そう言う事ね。まあ、ここはサソリのアドバイスに従っておこう。

 

お面を外す。

 

「……さーて。オレも本気を出すか。」

 

ボフンとヒルコが煙に包まれる。中からサソリ本人が現れた。

 

赤毛の髪の毛に眠たげな半眼。とても整った顔立ちに幼さが残る顔つき。

 

「サソリも普段からそうしてればいいじゃない。……ヒルコの中なんて狭い所に居ないでさ。ルックスもいいんだし。」

 

「あれは基本的に防御用だ。お前みたいな陰気臭い仮面と一緒にするな。」

 

この野郎……せっかく褒めてあげてるのに、いちいち悪態を付かないといけないのか?

 

「なっなっ!!」

 

肩を叩かれる。振り返ると、デイダラが自分の顔を指さしていた。

 

「デイダラは今のままが一番アートだよ。」

 

「うん、うん!そーだよな!!お前はやっぱり、よくわかってる、うん!」

 

「単純なヤローだ。」

 

「……あはは」

 

なんだかんだ、いつものように賑やかに3人で歩く。遠くに大蛇丸のアジトを見据えながら。

 

「二人とも止まって。」

 

私が制止をかける。

 

「前方から、沢山の蛇が来てるわ。」

 

「大蛇丸の攻撃だな。」

 

「早速お出ましか。」

 

私は地面に片手をついて、冷気を流し込む。暫く冷気を流し込めば、蛇の気配は消えた。

 

「うん、大丈夫。」

 

「何をしたんだ?」

 

「地中の蛇を凍らせた。…もう死んでるから、大丈夫。」

 

「流石だな、アートだぜ。」

 

「デイダラは空を飛ぶ準備をしてて。」

 

「オーケー。」

 

デイダラが鳥型の起爆粘土を用意する。左目にもスコープをつけている。

 

アジトから大蛇丸が出てきた。

 

「組織から派遣されたのが、貴方達とはね。てっきり、イタチ君かと思ったのだけど。」

 

「よう、クソ野郎。ぶっ殺しにきてやったぜ。」

 

「できるかしらね。貴方達ごときに。」

 

サソリは三代目風影を取り出す。

 

デイダラも空に飛び、臨戦態勢だ。

 

「御託はいい。さっさとやるぞ。」

 

「私も最近新しい人形を手に入れたのよ。」

 

そういうと、大蛇丸の前に大きな棺桶が二つ出てきた。

 

見覚えがあった。あれは8、9年も前だ。忍刀七人衆のゾンビと戦った記憶が蘇る。兄さんを拷問してきたトラウマはよく覚えてる。

 

棺が開かれ、中から二人の男女が現れた。

 

一人は女性。緑色とオレンジの髪を束ねたくノ一。

 

クソッ、またダイナマイトボディか!!

 

一眼見て此奴は敵だと判断した。

 

大蛇丸が口寄せしてる時点で敵だけど。

 

でもそれ以上に目を引いたのが、もう一人の男性。

 

「ねぇ、あれって…」

 

「オイオイ、どう言う事だ?」

 

どう見ても三代目風影だ。

 

「三代目風影ってのは、旦那が始末したんじゃなかったのかよ。」

 

「ああ、だからこうして傀儡になってるんだ。」

 

「それはどうかしらね。…こうして私が蘇らせたからこそ、こうして今立っているとも言えるわ。」

 

すると、三代目風影が口を開く。

 

「……貴様、サソリか。よくもやってくれたな。……今回は以前のようにはいかないぞ。」

 

「恨み節は後でいいでしょう。さあ、始めましょう。」

 

大蛇丸は何か札がついたクナイを三代目風影とくノ一の頭に入れた。

 

「サソリ、デイダラ。…あれは穢土転生の術よ。」

 

「…なんだその術は?」

 

「死者を蘇らせて操り人形にする術よ。……生前のスペックが全て反映される訳じゃないけど、厄介な術よ。……何せ既に死んでるから、これ以上は死なない。ようは不死身ってことよ。」

 

「流石に一度見てるだけあって、看破されてるわね。」

 

「その術で3対1のをカバーしようって訳ね。」

 

「へッ、そんな死体じゃオイラ達は止められねぇ。芸術トリオを舐めんなよ!!うん!」

 

「砂鉄時雨!」

 

サソリが戦端をきった。

 

それと同時にくノ一が私に襲いかかってきた。

 

「…そいつは砂の血継限界のパクラだ。灼遁って言う火遁と風遁の合わせ技を使ってくる。お前の氷遁に対抗するためだろうな。」

 

サソリが教えてくれる。

 

「ありがとう、サソリ。」

 

クナイで斬りかかってくるパクラ。私も千本で受け止める。

 

視界の端で赤い球が見えた。

 

後方に跳んで回避する。

 

あれが灼遁……

 

彼女を守るように赤い熱の球が3つ、クルクル回ってる。

 

接近しずらいな。足を止めて鍔迫り合いなんかは絶対に無理だ。

 

まずは試しに…

 

「水遁・破奔流」

 

鉄砲水を浴びせる。

 

以前の栗霰串丸なら、これでダメージを負わせる事ができた。

 

「灼熱・過蒸殺!!」

 

水が蒸発して干上がってしまう。

 

炎の球が衰えない……?

 

風遁で火力を高めているのは勿論だけど、一切の減衰がない。

 

通常の火遁であれば、水遁で鎮めるか火力は落ちるのだけど…

 

分析していると今度は火球を飛ばしてきた。

 

遠距離も対応と……

 

通常の火遁が遠距離技が多いから、当然か。

 

避けて火球が地面にぶつかる。

 

砂漠の砂がドロドロに溶けている。

 

熱量が半端じゃないわね。

 

常に彼女の周りには3つの火球が配置されて守りを固め、遠距離は新たに生み出した火球を飛ばして攻撃する。

 

攻撃力が売りではあるけど、防御もできる優れ物。便利な血継限界だね。

 

千本を仕舞い。氷剣を作る。

 

遠近両方に対応してるんなら、得意な接近戦を仕掛けよう。

 

「ふん…ただのガキじゃない。その貧相な身体で逃げ足だけはまともみたいね。」

 

私が剣を持った事で接近戦をすると見たパクラが口を開く。

 

何で今煽った?その挑発は関係無いでしょ!!

 

「そういうおばさんは口が煩くて嫌になるわね。歳を取ると恥って概念がなくなるのかしら。ああはなりたくないわね。」

 

「口には気をつけた方がいいわよ、クソ餓鬼。」

 

「そっくりそのまま返してあげるわ。」

 

瞬身の術で懐に潜り込む。

 

横凪に剣を振るう。それをクナイでガードされる。

 

パクラを守っている火球が襲ってくる。屈んで回避。そのまま下から剣で切り上げる。それでもガードされる。

 

瞬時に次の火球がくる。

 

今度は軽く身体を捻って躱す。回転した身体の遠心力で剣を叩きつける。

 

それもギリギリでガードされる。また火球がくる。再び屈んで回避。今度は胴体を横凪に一閃。

 

パクラの腹を裂く。血液は出ない。代わりに塵が舞う。体勢が崩れた彼女に容赦せずに斜めに斬り下ろす。

 

そのまま胸元を横に割いて、蹴り飛ばす。

 

しかし、穢土転生のお陰か火球が消えずに襲いかかってくる。

 

それを左手で受け止めた瞬間に、凍らせた。

 

接触凍結

 

上半身だけのパクラが目を見開く。

 

「どうやら、貴女の灼遁より私の氷遁の方が上だったようね。……水遁・破奔流」

 

前回と同じだ。ここは砂漠。底無し沼を作って封じ込める。

 

これで私の方はカタがついた。

 

大蛇丸の方に向かおうとしたときに背後に気配を感じた。

 

振り返ればまたもや棺桶。しかし、中から出てきた者を見た瞬間、私の思考が停止してしまった。

 

「…ク……クロ………」

 

2年前、木ノ葉の『根』に所属するための訓練。その時に私の所為で命を落とした少女が此方を見ていた。


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