☆一輪の白い花   作:モン太

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師匠の面影

翌朝、イタチに起こされた。

 

「………あれ、私……」

 

イタチは身体を起こして、此方を見ていた。

 

ああ、そっか。昨日イタチの看病していたら、そのまま寝ちゃったのか。

 

どうやら座ったまま寝てしまっていたようだ。

 

イタチって寝起きは写輪眼じゃないのね。

 

どんなに身体がしんどい時でも常に写輪眼状態のイタチにしては珍しい。偶に万華鏡写輪眼を使いすぎて、写輪眼を維持できない事はあるけど。

 

「おはよう、イタチ。身体の調子はどう?」

 

「問題ない。……すまない、世話になったな。」

 

顔色も大分良くなった。

 

よかった。少しはマシになったね。

 

「いいよ、気にしなくて。私達は抜忍で仲間なんだから。………助け合わないと。」

 

「…………」

 

「もう一日は安静しててね。」

 

とりあえず着替える。着替えると言っても脱いでいた上着を羽織って仮面をつけるだけだ。

 

イタチも着替えて、目が写輪眼になっていた。

 

そして、少しして鬼鮫さんがやってきた。

 

「………どうですか、イタチさん。」

 

「……問題ない。明日には動ける。」

 

「そうですか。……今回は軽めの症状でよかったですね。」

 

「…ああ。」

 

これで軽い方なんだ……

 

「…今日はコンとツーマンセルを組みます。イタチさんはここで待機と命令が下りました。」

 

「…わかった。」

 

「貴女もそれでいいですね。」

 

「うん、わかったよ、鬼鮫さん。」

 

「……おや?」

 

鬼鮫さんが何かに気付いたようだ。

 

「…その首はどうされたんです?」

 

「ん?……ああ、これね。大蛇丸に一杯食わされたのよ。」

 

「ククク……貴女でも手傷を負う事が有るんですね。」

 

「何言ってるのよ。人間なんだから当たり前よ。」

 

「いや〜、貴女ならどんな攻撃でも躱しそうだなと思っただけです。……油断しましたね?」

 

何で鬼鮫さんもわかるのかなぁ。

 

「…………」

 

「沈黙は肯定と取りますよ。」

 

「と…とりあえず、イタチはここで待っててね!…行くよ、鬼鮫さん!!」

 

「はいはい……では行ってまいります、イタチさん。」

 

鬼鮫さんが笑いながら、着いてくる。

 

全く、何がおかしんだ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「で、コンは何か任務を言い渡されてますか?」

 

「喫緊の任務は無いね。長期的な尾獣の調査だけかな。」

 

「では、私と同じですね。」

 

「じゃあ、私達2人共フリーみたいなものね。」

 

「そうですねぇ。では、二手に別れていつもの調査(サボり)でもしましょうか。」

 

「……まあ、やる事ないもんね。」

 

「また、夕方ここで落ち合いましょう。」

 

鬼鮫さんと別れる事になった。昨日もイタチと別れてたりしてたけど、あまりツーマンセル組んでる意味が無いような気がする。

 

変化の術で、黒髪の女性に変装する。

 

「ああ〜、もうダメだってばよ!!」

 

!?……今の声。

 

物凄く聴いた事が有る声が聞こえた。

 

森の方だね。

 

鬱蒼と生い茂った木々を少し掻き分けて見れば、青い瞳に金色の髪色のした少年が木にぶら下がっていた。

 

まさか、ここでナルト君に会うなんて………

 

でも、少し大きくなったね。

 

記憶のナルト君よりも幾分か、大人びた顔をしていた。

 

「んぅ?どうしたんだ、姉ちゃん?」

 

「貴方こそ、どうしたんですか?……それ、どうやってるんですか?」

 

「これか?……これはだなぁ…チャクラを足裏に集めて……木に張り付く……まあ、そん事はいいんだ!!俺ってば、修行中!!!」

 

「……す………凄いですね。忍者の方ですか?」

 

すると、ナルト君が木から飛び降りてくる。

 

「そう!俺ってば木ノ葉隠れのうずまきナルトってんだ!!」

 

「……ナルトさん」

 

「姉ちゃんはなんて名前なんだ?」

 

「私ですか?………クロと言います。よろしくお願いします。」

 

「おう!よろしくな!!」

 

「ナルトさんはどうして修行してるんですか?」

 

そう聞くと、うーんと少しだけ考えて口を開いた。

 

「みんなを護るため!」

 

眩しい笑顔でそう言い切るナルト君。

 

ーーああ、やっぱり今も尚、兄さんの意思はこの子の中で生き続けているーー

 

「それと、今は友達を救うためだな!……んでもって、火影になるため!!」

 

友達の事はサスケ君の事かな。今は大蛇丸と共に行動しているらしい。

 

“兄さんの言葉を信じる”

 

嘗て自分で誓った言葉。辛い現実に絶望して、忘れていた志。少しだけ思い出せたような気がする。

 

やっぱり、私はもう少しナルト君を応援したいな。

 

そう思った。

 

「……凄いです。じゃあ、きっとこれからもっと強くなれるんですね。」

 

「もちろんだってばよ!」

 

「応援していますよ。……じゃあこれで。」

 

「姉ちゃんも元気でな!!」

 

私はナルト君から背を向けて歩く。

 

思わず涙が出そうになる。

 

ナルト君は立派に成長していた。……対して私はどうだ?

 

今やビンゴブックに載ってしまう犯罪者だ。

 

ナルト君や兄さんが夢見た世界に私のような薄汚れた人間は必要ない。

 

でもだからこそ、まだまだ戦える。最期の時まで、血の一滴まで兄さんの意志を絶やさないように。

 

「あれ?…あの姉ちゃんは何しに来たんだ?」

 

遠くからそんな声が聞こえた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とりあえずあの森の方角へは近付かないでおこう。万が一でも素顔で会ってしまったら、色々厄介だ。

 

何故、私がここにいるのかだったり、そもそも抜忍の犯罪者だから捕まえようとするだろうし。

 

そんな事を考えて歩いていたら、肩を叩かれた。

 

「どうされた、御嬢さん?そんな顔していたら、美人が台無しだ。」

 

え?

 

ビックリした。これまた有名人だ。

 

とりあえず、警戒されないように声の主にニコリと微笑んでおく。

 

「いえ、何でもありません。」

 

「何でもない事は無かろう。こんな老ぼれで良ければ力をなるぞ。」

 

白銀の長い髪を揺らめかせ、その人物はニカッと笑い名乗りを上げた。

 

「こう見えて伝説と名のつく者。三忍の一人、この自来也様に解決できぬことはなし!だ」

 

胸を張ってそこにたたずむのは、大蛇丸と同じ伝説の三忍の自来也様。

 

今日は色んな人と鉢合わせるわね。

 

眼前の者を見つめ、私は心うちに生まれたすこしの動揺を抑え込み、もう一度笑みを浮かべ直して小さく会釈する。

 

「いえ、本当に何でもありませんので」

 

一般人の多いこの場所。いざ戦いとなれば、それを巻き込んでしまう。

 

この人クラスの忍をこんな場所で戦いたくない。

 

なんとかこの場をうまく去ることを選ぶ。

 

「失礼します」

 

スッと踵を返し人ごみに身を投じる。

 

しかしその私の手を器用に選び取り、自来也様が引き寄せた。

 

「まぁ、そうつれなくするな」

 

「…っ!いえ、本当に」

 

思わず本気で振り払いそうになり、慌てて取り繕う。

 

そんな私の前に竹の皮の包みが差し出された。

 

「ほれ」 

 

「え?」

 

「どうだ?この街の団子は絶品だ。一つ持っていくといい。」

 

随分と押しが強い。とりあえず受け取って去ろうかな。

 

「すみません。助かります」

 

しかし、その手が包みに触れそうになった瞬間。スッとそれが引かれた。

 

「……………」

 

気取られたかな…

 

一瞬緊張が走った。

 

しかし自来也様は変わらず無警戒な笑顔を浮かべ、機嫌のよい声で言った。

 

「その代わり、ちと付き合ってくれんかのぉ」

 

グイッと上げられたその手の中には酒の瓶があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

小さな神社に案内される。一気に人気が無くなった。

 

やっぱり気づかれてる?

 

警戒するが、自来也様は特に何もなく酒を煽り出した。

 

「それでのぉ、わしのその活躍で事はすべて丸く収まったというわけだ。どうだ、なかなかに面白い話であろう」

 

ガハハと豪快に笑って酒をあおる自来也様。

 

その隣で私が、頬の引きつりを必死に抑えて「そうですね」と愛想笑いを返した。

 

「んーんー。そうだろう。すごいだろう」

 

すごいとは言ってませんよ…

 

思わず胸中で一言突込み、私は顔をそらして先ほどから絶え間なく注がれ続ける酒にちびりと口をつけた。

 

いつになったら解放されるのか…

 

先ほど自来也様に半ば無理やり連れてこられ、酒の相手をすることおよそ15分。

 

まださほど時間を取られてはいないものの、すでに一升瓶の中身は半分を切っており、そのペースの速さと自来也様の旅の自慢話に私はうんざりしていた。

 

一体なぜこんなことになってしまったのか…

 

偶々、今日この街を出歩いてしまった自分の迂闊さに、一気に酒を流し込みため息を漏らした。

 

「ん?どうした。何か悩みでもあるのか?」

 

空になった器に再び酒が注がれ、私は反射的にそれを受けて一口含む。

 

「世の中ままならないなと…」

 

手酌で継ぐ酒がトクトクと良い音を立てる。

 

「そうか。わしもどうにかしたいと思う事は多々有るのう。」

 

クイッと酒を喉に流し、自来也様は長い息を吐き出した。

 

「例えば、どうすれば女湯に潜り込めるのか。どうすれば、女を口説けるのか。どうすれば、お主といい思い出が作れるのか。」

 

気持ちよさそうに酒を飲む自来也様。

 

随分と欲求に忠実な方で……

 

これまた頬が引き攣りそうになる。

 

「例えば、どうすればこの世界で争いを無くせるのか。」

 

ドクン

 

心臓が跳ね上がった。

 

それは兄さんやイタチ。小南にナルト君達が持つ願い。私も兄さんの意志を継ぎ、考えるようになった問題だ。

 

さっきまでのおちゃらけた雰囲気から急な空気の変化について来れない。

 

「だがのう。わしはそれを弟子に託そうと思っとる。」

 

「どんなお弟子さんですか?」

 

問いかけてみる。

 

自来也様は、ハハと笑って器の中で揺れる酒を見つめた。

 

「猪突猛進。怖い物知らず。そしてうるさい」

 

それってナルト君じゃ。…あ、だからさっきナルト君がいたんだ。

 

その答えに、自来也様の言う弟子はやはりナルトであろうと私は確信する。

 

「大変そうですね…」

 

そう返して酒を飲み、新たに注がれる酒を自然と受ける。

 

「まったくだ。わがままで、自分勝手で、未熟なくせに一人前の口をたたきよる」

 

そういう自来也様の表情は柔らかい。

 

「その上頑固で、こうと決めたら譲らない。危ないことも平気でやりよる」

 

うなづきながら話を聞く私にに自来也は「まぁ呑め」と酒をすすめ、空になった器にすぐにまた注ぎ入れ、自身も新たに注ぎ直し、口をつけてフッと笑う。

 

て言うか今更だけど、朝っぱらからお酒を飲みすぎじゃないかしら。

 

「だがのぉ…」

 

空に見上げた自来也様は目を細めた。

 

「よいところもある。まっすぐで、純粋で、負けず嫌い。自分の大切なものを守るためならどんなに辛いことでもやり遂げる」

 

同じように空を見上げる。天気は快晴。

 

「そして、何よりも大切な物をちゃんと持っておる」

 

「何よりも大切な物、ですか」

 

「うむ。それは」

 

グイッと勢いよく酒でのどを潤し、自来也様はにっと笑って答えた。

 

「何事も決してあきらめないど根性だ」

 

「ど根性…」

 

「それを持っとるやつは、強い。そう簡単に折れはせん」

 

根性…

 

でもそうね。人は誰かを護りたいと思った時に本当に強くなれる。

 

「そうですね。」

 

思わずこぼれた言葉に自来也様がフフンと鼻を鳴らした。

 

「お主もそう思うか。」

 

私はほんの少し間を置き「そうですね」と短く答えた。

 

自来也様は最後の酒を互いの器に少しずつ注ぎ空になった瓶をトン…と小さく音ならして置いた。

 

「私は誰かを護ろうという意志が人を強くするものだと思います。」

 

「そうだのう。それもまた真理よのう。うむ」

 

と、まるで自来也様のその一言を合図にしたかのように、一匹の蛙がひょこっと姿を現した。

 

「おい。見つけたぞ」

 

カエルが言葉を発するのを見て、それが自来也様の口寄せと察する。

 

「おお、そうか。やれやれだな」

 

自来也様が大きくため息を吐きながら立ち上がり「ちと飲みすぎたかのぉ」とつぶやきながら竹水筒を取出し水を飲む。

 

「ちょっとばかし連れとはぐれていてな。探していたのだ」

 

「オレがな」

 

自来也様のてのひらほどの大きさのガマガエルが跳ねあがり、自来也様の肩に乗る。

 

「ではいくかのぉ」

 

体を一伸びさせる自来也様。

 

どうやらこれで解放されそうだと、胸中でほっと息をつき借りていた器を自来也様に返す。

 

それが自来也様の手におさまったと同時にガマガエルが今度は自来也様の頭に飛び乗る。

 

「では、私はこれで失礼します。」

 

 

 

「待て」

 

 

 

足を一歩踏み出したと同時に自来也様が呼び止めた。

 

寒い季節なのに生暖かい空気が流れた。

 

木々が揺れ、枯葉が舞う。

 

風の流れが消え、シンと痛いほどの静けさが落ちた。

 

その中に、自来也様の声が響く。

 

「まあそう急ぐ事も無かろう。」

 

明るく陽気な口調。

 

「こうしてあったのも何かの縁だ。」

 

笑いも含んだその声が、何故か空気を緊張させる。

 

「少し、話をしようではないか。」

 

カサリと枯葉が転がる音が響く。

 

「S級犯罪者のシロよ。」

 

私は振り返る。

 

「どうして気付かれたのですか?」

 

「……そうさあのう。お主から血の匂いがする。只者じゃないよなぁ。……それにのう、痺れ薬を幾ら飲ませても全く効きよる気配がない。」

 

そんな物を飲ませていたのか?

 

「随分と毒に耐性があるようだの。」

 

「それで?……その情報だけでは特定できないはずです。」

 

「…なに、オナゴのことなら、この自来也何でもお見通しよ。」

 

つまり、答えてはくれないと。

 

さて、どうするか……

 

大蛇丸ならともかく、この人は抜忍じゃない。手をあげれば更に罪状が重なっていく。S級犯罪者で今更そこを心配する必要はないのかもしれないけど。

 

でもナルト君の師匠に手をあげたくはない。

 

ナルト君には師匠を奪われた私みたいになって欲しくないから。

 

「見逃していただけませんか?三忍相手にとても敵いそうにありませんから。」

 

「ダメだのう。お主はS級犯罪者。里にあだなす者として、わしが処理する。」

 

参ったな。……どうするか。

 

そういえば自来也様は大蛇丸を追ってるって話は有名だ。昨日会ったばかりだし、そこを突いてみるか。

 

「では取引をしましょう。」

 

「耳を貸すメリットがないのう。」

 

自来也様が此方に足を進めてくる。

 

「大蛇丸。」

 

ピタッと自来也様の動きが止まる。

 

「大蛇丸の情報をあげます。……それなら如何ですか?」

 

自来也様の顔に一瞬動揺が見える。

 

いけるかな。

 

「だめだ。尚更お主を見逃す訳にはいかんのう。」

 

自来也様の表情を見て内心で溜息を吐く。

 

逆効果か。……仕方ない。全力で逃げるか。

 

自来也様が高速で印を結び始める。

 

「お主の得意技は瞬身の術。故に足を奪わせてもらう。忍法……」

 

「申し訳ありません、自来也様。これにて失礼します。」

 

私は全能力を使って自来也様の術が完成する前に離脱した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

直ぐに街の中心まで逃げた。

 

人混みの中でもう一度変化で人相を変えておく。

 

鬼鮫さんと落ち合う予定の定食屋の奥の個室に入っておく。

 

ユキウサギで鬼鮫さんを呼んでおく。

 

少しして、鬼鮫さんがやってきてくれた。

 

「どうされました。まだ待ち合わせ前でしょう?」

 

「この街から出た方がいいよ。」

 

「……どういうことです?」

 

「伝説の三忍 自来也が来てる。」

 

そういえば、鬼鮫さんの表情も険しくなる。

 

「どこで知ったんです?」

 

「……ごめんなさい、捕まりかけた。」

 

「…はあ、わかりました。イタチさんには申し訳ありませんが、すぐに移動しましょう。」

 

事態の重さに鬼鮫さんも重い溜息を吐く。

 

そうして、すぐに宿へと帰り、事情をイタチに説明。本拠地へ逆口寄せで移動した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

本拠地へイタチを送る。先にデイダラがいたが、特に喧嘩することなく落ち着いていた。流石に騒がれたら、これ以上面倒見る気も失せるところだ。

 

「ありがとう、鬼鮫さん。」

 

「……それです。」

 

「それ?」

 

なんだろう?

 

「何故私にだけは、敬称なんですか?」

 

「ああ、それね。……単に昔の癖なんだ。」

 

「癖?……以前に面識があったとは思いませんが。」

 

「うん。暁で初めて会ったのは間違いないよ。……ただ、私は昔ね。師匠の事をさん付けで呼んでたから、その癖が抜けなくて。」

 

「師匠というのは、再不斬の小僧ですか?」

 

「……あ、やっぱりわかってたんだ。」

 

「……氷遁を使った事でわかりましたよ。雪一族は今や絶滅と言って良い程の状態。……そして、再不斬もそれなりに有名ですからね。そんな再不斬の元に絶滅した筈の雪一族の子供がいた事も知っています。………そして、目の前で氷遁を使う者が現れたとなればわかりますよ。」

 

「うん、その通りだね。…忍刀七人衆は命の恩人みたいなものだから。一部の例外を除いてだけど。だから、どうしてもさん付けになってしまうんだ。」

 

兄さんを痛めつけた栗霰串丸とか、再不斬さんを襲った二人の事だ。

 

「……でも凄いね。あの再不斬さんを小僧呼ばわりするなんて、流石は鬼鮫さんだ。」

 

私は怖くてとてもじゃないけど、そんな事は言えない。

 

「そんな私と貴女は、今や肩を並べる様になった事実を自覚した方がいいですよ。……だから、不必要に警戒したり、油断してはいけない所で油断する。」

 

説教を貰ってしまった。

 

「……そ、その通りだね。」

 

何だか、再不斬さんに怒られている様な感じがする。

 

「……まあ、いいでしょう。で、これからは何と呼べばいいですか?……藍と呼びましょうか?」

 

「いや、変わらずコンでいいよ。」

 

「そうですか。わかりました。」

 

「……ねぇ、今度機会があったら、イタチと3人でスリーマンセル組まない?」

 

「…貴女のオママゴトに付き合ってあげれる程、暁は余裕がある組織だとは思えませんがね。」

 

「…ふふ、やっぱりバレるか。」

 

鬼鮫さんが再不斬さん役。イタチが兄さん役で私が加われば、あの時のスリーマンセルの復活だと思ったんだけど。………まあ、流石に悪ふざけが過ぎるよね。

 

「……デイダラとサソリが騒ぎかねませんしね。」

 

「ああ、確かにデイダラはいつも私と組みたいって言ってたもんね。」

 

でもサソリはそうでも無いと思うけどなぁ。

 

「…ですが、それも悪くは無い。」

 

「え?」

 

鬼鮫さんの口から出たとは思えない台詞に思わず、聞き返す。

 

「何でもありませんよ。」

 

鬼鮫さんはそういうと静かに笑った。

 

それを見て、私も笑う。

 

「ありがとう、鬼鮫さん。」


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