☆一輪の白い花   作:モン太

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偵察

「コン先輩〜お疲れ様っす〜!」

 

声をかけられて見れば、私と同じようにお面を被った暁のマントを羽織った男性に声をかけられた。

 

「先輩は付けなくていいよ。トビの方が先に居たんだから。」

 

彼はトビという暁の見習いだそうだ。…振る舞いだけを見れば、下忍程度なのだけど、なぜSクラスのメンバーが揃っているこの組織に在籍できるのか……。どうにも不気味だなと感じてはいる。だけど、普段の振る舞いは至って、友好的なので無下にもできない。

 

「いや〜、コン先輩は優しいな〜。でもボクはまだ補欠ですからね!」

 

「今日は私に何か用事でもあるの?」

 

「いや〜、特にはないっす!ちょっとナンパしに来ました!」

 

「………凄く素直だね。でも私なんかより小南とかの方が美人だと思うよ。それにスタイルも良いし。」

 

「ボクは先輩みたいなスレンダーな女性が好きです!……それにペイン先輩が怖いし。」

 

「…あはは。ありがとう。」

 

「あれ、それだけっすか?」

 

「うん?それだけって?」

 

「……脈は無いみたいっすね。」

 

トビがガクッと肩を落とす。

 

少し可哀想なので、目の前にある団子屋に誘う。

 

「彼処で団子を食べない?少しお茶も飲みたいし。」

 

「おお!良いですね!!奢らせてください、コン先輩!」

 

「気にしなくていいよ、そんな事。」

 

とりあえず、席に座って適当に団子を注文。

 

出された団子を食べる為に仮面の下半分だけ出して食べる。

 

「顔出さないんですか?」

 

「出さないよ。トビも同じでしょ?」

 

トビも仮面の下に団子を運んで食べていた。

 

懐かしいな……。10年以上も前に兄さんと再不斬さんと団子を食べた事があったな。あの時は私が我が儘を言って沢山食べさせてくれたっけ………

 

「せっかく、仮面をつけてるんだったら、ボク達お揃いにしませんか?」

 

「私はこれ、気に入ってるから。」

 

「うぅ〜、先輩が連れない……」

 

嘆くトビを眺めながら、団子を頬張る。

 

「口だけ出てる先輩は何か色っぽいですね!」

 

「そのナンパごっこいつまで続くの?」

 

「ごっこじゃないです、先輩!」

 

「……それにしても、暁のみんなは逆に何で仮面しないんだろう?みんな誰かしらに狙われる身だと思うんだけど。」

 

「皆さんお強いですからね。返討ちにする自信があるんじゃないんすかね。」

 

「よくそんなに自信満々になれるよね、みんな。」

 

私には無理だな。何せ大蛇丸にダンゾウを筆頭に霧隠れや岩隠れにも指名手配されてる。しかも先の紛争代行任務の所為で雲隠れにも目をつけられてしまった。

 

その後もトビが元気よく話すのを相槌を打って聞いていた。

 

「……何だこの緩い空気は。」

 

そこに呆れた声をかけられる。

 

「あ、サソリ先輩!お疲れ様っす!!」

 

そう言えばサソリは一応傀儡に身を潜めているのか。

 

「サソリも食べる?」

 

「要らん。よくもまあ、抜忍でそんな呑気に食事ができるってもんだ。」

 

あ、そう言えばサソリは食事できないんだった。

 

「……ごめんなさい。」

 

「………はあ。お前と話していると調子が狂う。別に気にするな。好きでこの身体になった訳だ。」

 

許してくれるらしい。というか気にしていないようだ。

 

「トビ、こんな所で何してる?」

 

「はい!コン先輩を口説いてました!」

 

「……はあ、お前殺されるぞ。」

 

「何言ってるんですか、サソリセンパーイ。このボクを殺せる奴なんて………あ、」

 

サソリがいるんなら、相方もそりゃいるよね。

 

「おい、トビ〜。元気そうじゃねーか、オイラの芸術を味わいたいからやってきたんだよな、うん!」

 

トビの後ろからデイダラが現れる。デイダラはトビの頭をガシッと掴んだ。

 

「…デ、デイダラ先輩〜。やだな〜、そんな爆発しか取り柄のない芸術を食らったら死んじゃいますよ〜、あ、」

 

「……テメー、……死刑確定!!!喝!!」

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

トビがデイダラに爆破されて吹っ飛ぶ。

 

「……お前とトビが揃うと空気が緩すぎて、抜忍である事を忘れそうになる。」

 

「……あはは。」

 

「おい、コン。一人で団子食っても寂しいだろ?オレも食ってやるよ。」

 

戻ってきたデイダラが、トビの座っていた席にどかっと座る。そのまま、私とトビの団子を引ったくって食べてしまう。

 

トビに目をやると黒焦げになって倒れていた。

 

「トビは大丈夫なの?」

 

「あんな奴はほっとけばいいんだよ。」

 

「デイダラはいつもトビをいじめてるよね。」

 

「オイラを爆発させるあいつが悪い。」

 

倒れてるトビに塗り薬を渡す。

 

詰んだ薬草で作ったものだ。これは火傷に効く物筈。

 

自分の体質上、効果を確認できないのだけど。

 

「トビ、これを渡すから後で自分で塗ってね。」

 

「コン先輩〜〜。ありがとうございます。本当に優しい〜〜。」

 

「ピーピー泣くんじゃねーよ。うるさい。」

 

「……早くしろ、デイダラ。この馬鹿どもはほっとくぞ。」

 

「ちょっと待ってくれ、旦那。おい、コン。オイラにも薬をくれよ!」

 

デイダラはよく私に薬をせがんでくる。そろそろお金を取ってもいいよね。

 

「はい、どうぞ。」

 

「おう、サンキュー!」

 

とってもいい笑顔で受け取るデイダラ。

 

彼の爆弾を使った戦いの関係か、よく怪我や火傷をする事が多い。

 

ついでに傷薬も渡しておく。

 

「あんまり無茶な戦い方しないでね。」

 

「考えておくぜ!」

 

「この馬鹿に心配されるなんて、相当だぞ。」

 

「サソリも不死身だからって、油断しないでね。何だか、暁のみんなは自信過剰なんだから。」

 

「……ふん。」

 

「へっ、旦那も言われてるぞ、うん。」

 

「一度殺してやろうか…」

 

「まあまあ。落ち着いて。」

 

そうして、デイダラに引っ張られるトビとそれについて行くサソリの3人は去って行った。

 

結局、3人は何しに来たんだろう?……まさか、本当に遊びに来ただけとかじゃないよね。


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