☆一輪の白い花   作:モン太

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覚醒と新たな力

目が覚める。

 

薄暗い部屋に薬品の匂い。

 

ここは何処だろう?

 

確か私はクロを殺されて、ダンゾウに追われていたはず。

 

「あら、目が覚めちゃったわね。」

 

「申し訳ありません、大蛇丸様。睡眠薬の効きが悪いようで。」

 

声が聞こえた方を見る。

 

そこには白い肌に長い黒髪の着物を纏った男性。それとメガネをかけた男性。

 

確か私に攻撃してきた人のはず。

 

更にもう1人、白髪の長い髪の男性がいた。

 

「せっかくダンゾウにはプレゼントしてあげたのに、うまく手懐けられなかったようね。」

 

「でも、お陰でこうして手に入れることができた。」

 

「君麻呂、彼女が新たな6人衆のメンバーになる子よ。」

 

「はい、大蛇丸様。」

 

今大蛇丸って言ったよね。

 

大蛇丸…。ビンゴブックで知っている。木ノ葉隠れの伝説の三忍。三人の中で最も忍術に長けた忍。

 

……また木ノ葉。

 

ここまで来ると笑えてくる。

 

一体私が木ノ葉に何をしたというのか。そんなに恨まれるような事をしたのか?

 

確かに私は霧隠れの潜入中や賞金首を狩っていたりして、人を殺した事も何度もある。

 

霧隠れの忍にやられたら、理解はできる。だけど……いや、この考えは無意味だ。恐らく、あの時のタズナさんが連れてきた忍が雲隠れなら雲隠れに、岩隠れなら岩隠れに、偶々木ノ葉が来ただけの違いでしかない。他所の所が来たら、またそこで相応の扱いを受けていたんだろう。

 

だからと言って、大人しくしてはいられない。もう再不斬さんも兄さんも居ないんだ。自分の身は自分で守る。

 

そうだ。2人を失って尚、カカシさんや他人に甘えようとしたツケがこれなら、いい加減目覚めるべきだ。

 

両腕は壁に鉄の腕輪で拘束されている。

 

私の膂力では到底脱出できない。

 

だけど、私は確かにあの時、覚醒した事を知っている。あの感覚だ。

 

今思えば、再不斬さんと初めてサイレントキリングの練習をした時。あのゾンビと戦った時。そして、ダンゾウから逃げていた時も同じような感覚だった。

 

自分自身を深い水底に沈める感覚。

 

集中して解き放つ。

 

瞬間私の腕の拘束が弾け飛んだ。それと同時に氷の剣山が3人を襲う。

 

「大蛇丸様!!」

 

白髪の男性が身体から骨を出して、剣のように振るう。

 

氷の棘達は砕かれるが、即座に次の攻撃を放つ。

 

「氷遁・万華氷」

 

今度は氷でできた千本だ。空中に無数の氷柱ができるそれを射出。

 

今度はメガネをかけた忍が両手にチャクラを纏って弾いてきた。

 

これじゃジリ貧か。3対1な上、相手の方が格が上。しかも今初めてまともに氷遁を使い始めたんだ。ここで戦うには無謀過ぎる。逃げるしかない。

 

今度は氷剣山と万華氷を同時に放つ。弾かれるのは計算に入れて即座に次の術を発動。

 

「水遁・霧隠れの術」

 

そしてそのまま瞬身の術で逃げ出した。

 

廊下を走る。正直構造がわからない。

 

背後の気配を鑑みるに追われている。

 

適当な部屋に転がり込む。

 

「フフフ、何処に逃げても無駄よ。ここは私の研究室なのだから。」

 

蛇の感覚気管は並大抵ではないらしい。一種の感知タイプか。

 

大蛇丸が私の逃げ込んだ部屋に入ってくる。

 

無数の気配がある。恐らく大蛇丸の僕達。ここで戦うのは以ての外。かと言って逃げる事も無理だ。せめて手傷と混乱が必要だ。

 

「氷遁・白氷龍の術!!!」

 

イメージは水龍弾の術だ。あれを氷で再現する。

 

無論こんな狭い部屋で使う技じゃない。

 

故に地下のアジトは大爆発。

 

即座に上へ逃げる。地上に出るが、よくわからない森の中だ。

 

次の瞬間、無数の蛇が頭上から降ってきた。即座に回避。

 

「カブトと君麻呂は別のアジトへの移動の準備をしなさい。私はちょっとこの娘と遊ぶわ。」

 

「わかりました。大蛇丸様。」

 

「潜影多蛇手!!!」

 

大量の蛇が襲いかかる。

 

速い!!

 

蛇が身体に絡みつき、首を噛みつかれた。

 

その瞬間、体が水になって弾けた。

 

「水分身ね。」

 

「はあ、はあ。」

 

「いい目をする様になったわね。甘さが無くなったわ。」

 

「……まるで、前から知ってるような口振りね。」

 

「勿論知ってるわ。貴女が以前戦った忍刀七人衆。あれを使役していた時の貴女なんて、見てて微笑ましかったもの。……随分と成長したものね。」

 

あの栗霰串丸のゾンビは此奴が操ってた訳か。

 

「あれはお前の仕業だったのか。」

 

「……私はずっと見ていた。ちょうど木ノ葉崩しで忙しかったからダンゾウにあげたけど、取りこぼしたのならいただくまでよ。」

 

「…………成程。つまりお前が元凶の一人という訳ね。」

 

頭が急速に冷えていく。

 

何かしら原因があるって事なら多少は救われるし、冷静になれる。

 

今の状況がただの偶然の重なりによる理不尽って言うわけではないのだから。

 

さっきまでダンゾウの所を逃げてきたばかりで、武器の類は一切ない。

 

なら作るしかないか。

 

「氷剣」

 

氷の直剣を作る。

 

大蛇丸はそれを見ると口から蛇を出す。

 

何とも気色の悪い術だ。

 

その蛇から刀が出てくる。

 

「これは草薙の剣よ。何方が上か遊んであげるわ。」

 

瞬身の術

 

一瞬で懐に潜り、斜めに一閃。それを草薙の剣で受け止めてくる。

 

かえす刀で横凪に剣が振るわれるが、屈んで躱し、足狩りを狙う。それを少し跳ぶ事で回避した大蛇丸を下から切り上げる。

 

ギリギリでガードされるが、大蛇丸は後ろへ後退した。

 

「そういえば、貴女は速度と体術が得意だったわね。部が悪いかしら。」

 

そうは言いながらも全てをギリギリでガードできるのは、流石影クラスと言ったところ。

 

氷剣を消して、今度は槍を作る。

 

「氷槍」

 

「とても多彩ね。魅力的だわ。」

 

長い舌を舐めわしながら、近づいてくる。

 

もう一度最速で踏み込んだ。

 

「潜影蛇手!!」

 

瞬身で突っ込んだ事が仇となる。蛇が身体に巻き付き噛みつかれる。

 

だが、今度は噛みつかれた身体が氷となる。

 

氷分身

 

そして、氷になった分身を起点に大蛇丸が凍結する。

 

すると口を大きく開けた大蛇丸が口から大蛇丸を吐き出した。

 

何あれ?

 

まるで蛇の脱皮……。

 

だけど、その動作は隙が大きい。槍で突く。

 

草薙の剣で受け止められるが、慌てない。片手で印を結ぶ。

 

「秘術・千殺水翔。」

 

水の千本が大蛇丸を襲うが逃げられる。

 

だけど速度は此方が上、すぐに追いかけて槍で刺した。

 

この氷槍はただの氷の槍じゃない。刺した対象の水分を利用して更に槍を無数に作る。つまり………

 

「ぎゃああああ!!!」

 

大蛇丸の身体から無数の赤い棘が生えてきた。

 

「罪の枝。」

 

私は少し距離を取り、印を結ぶ。

 

案の定、脱皮する大蛇丸。想定内だ。だから、出てきた瞬間にこの術を放った。

 

「忍法・颶風水禍の術。」

 

この日、大蛇丸のアジトは水の竜巻によって消滅した。

 

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「はあ…はあ…」

 

何とか逃げる事に成功した。気配感知を最大限にして警戒した上で誰も気配を感じなかった。

 

大丈夫。さっきみたいなヘマはもうやらない。

 

逃げれた訳だけど、これじゃ私は抜忍って事になるのか?そもそも、まだ正式な「根」では無かったのだが。それをいうなら、水の国から出て行った時点で抜忍なのか?結局、自分が何者なのかよくわからない。立ち位置がよくわからない。だけど、一つ言えることは私に居場所なんて何処にもないって事だ。

 

まあ、そんなネガティブな事を考えてもしょうがない。

 

私は自分の掌を見る。

 

この力……多分忍術ではない。

 

私はチャクラ量が少なく、忍術の才能がないんだ。10年修行してようやくこのレベルで水遁と風遁を使えるようにはなった。でもすぐにチャクラが切れるはずなのだ。

 

しかし、さっきの氷遁は初めて使うのにあれだけ多彩に色々使えてしまった。今息が切れているのは、氷遁ではなく、颶風水禍の術を使った為だ。

 

更に言うなら、印を一切結んでいない。全て念じれば使えてしまった。それに私の腕を拘束していた鉄の腕輪を弾いた力やゾンビ達と戦っていた時にできたワイヤーを切断する力も不明だ。

 

今もまさに落ちてくる木の葉っぱが私の肩に当たった先からスパスパと裂けていく。

 

私が氷遁と呼んでいるこの力の正体はなんなのかわからないけど、使い方はわかった。

 

私のチャクラ量と忍術の才能では中忍レベルが限界だ。だけどこの氷遁なら上忍とも渡り合える。

 

状況は過酷だけど、生き残るには更に力をつけないといけない。


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