今日はクロと一緒に手裏剣術の修行をしていた。
森の木々を跳びながら、的目掛けて千本を投げる。クロの私に続いて手裏剣とクナイを投げて当てていく。
クロとの生活も2ヶ月が経ち、今も尚成長している。
「もう完璧ね。」
「ありがとうございます。」
クロの投げた手裏剣とクナイは的の全ての的の中心を射抜いていた。
「じゃあ、私のとっておきを教えようか。」
「とっておきですか?」
「見ててね。」
無数にある的を確認。木々の裏にも的がある事を確認して私は千本を構える。
真上にジャンプして四方に千本を投げる。また、時間差で更に千本をより早く投げる。
飛んで行った千本は悉く的を貫き、千本同士を当てて軌道を変えて、木々の裏の的にも当てる。そのまま着地。その場から移動することなく、ただの一回のジャンプで全ての的を射抜いた。
「す、凄い!!凄いです!!!姉さん!!!」
クロが大はしゃぎで褒めてくれる。何だか照れ臭くて恥ずかしい。だけど素直に嬉しくもある。
きっと兄さんも私に術を教えてくれていた時はこんな気持ちだったんだろう。
「原理は簡単。千本に千本を当てて軌道を変えるだけ。でもかなり難しいのよ。」
それからクロは何度も練習したが、習得は困難だった。とはいえ才能豊かなクロはどんどん吸収していく。
そんな時だ。
「ねえ、クロ。」
「何ですか、姉さん。」
「何だか里の方が騒がしくないかしら?」
「……そうですね。」
何となく、里の方角をぼうっと見ていたら、「根」の忍が2人やってきた。
「お前達、今から俺とキンの部隊として里へ向かってもらう。」
「今、里に音隠れという里の忍と砂隠れの忍が里を襲っている。」
「そんな!」
「人手が足りない。故にまだ正式な配属がされていないお前達にも里の守護の任務が回ってきた。……すぐに着替えて来い。」
「「はっ!」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫?」
「……うん。」
クロは不安そうな顔で頷く。初めての実戦だ。緊張もするだろう。
「先輩達から絶対に離れたらダメだよ。危険だと思ったら、真っ先に逃げていいから。」
「……ありがとう、シロ姉さん。」
偉そうな事を言っているが、私の実力も精々が上忍に手が届くか届かないか程度の中忍レベルだ。敵には私よりも強い人が履いて捨てる程いるだろう。
忍装束に着替えて、暗部の動物の面を被る。
「行こう。」
「……うん。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
里の状況は酷い有様だった。
砂隠れと音隠れの忍が里を襲っていた。木ノ葉の忍は暗部問わず戦っているが、単純に2対1の状況で常に数の劣勢を強いられている。
しかも、里の至る所で巨大な蛇が暴れまわっていた。まだ住民も避難しきれていないようでより守勢に立たされて苦しい状況だ。
私の口寄せとは比較にならない程の強力な口寄せ動物。しかもそれを複数体使役できるなんて。これを口寄せした忍が如何に強力であるかを物語っている。
「行くぞ!」
「はいっ!!」
先輩の号令で私も戦線に加わる。
私の持ち味は瞬身の速度!
止まらずに常に走り続ける!
目の前には3人の敵!
千本を投げる。
「風遁・烈風掌!!」
投げた千本を加速させる。
「チィ!」
あまりにも速い千本を回避するのは不可能。故に迎撃する。だけど、その隙に次の印を結び終えている。
「風遁・風切りの術」
「グアァ!!」
高速で飛ぶ風の鎌鼬が敵を切り刻む。
私の背後で何かが爆発する。
おそらく私目掛けて術を放ったけど、この速度で移動しているから当たらなかったんだ。
そのまま速度で圧倒して千本と風遁で処理していく。
だけど、空から何か巨大な物体が飛んできて、否応でも足を止めさせられる。
「シャアアアアア!!!!」
巨大な蛇だ。それも巨体に見合わない速度で動き回り、他の忍を蹴散らしていた。
尻尾の叩きつけがくる。瞬身の術で回避する。
「風遁・風切りの術!!」
風の鎌鼬を飛ばすけど、硬い鱗にはダメージが通らない。
クソッ!
私は基本的に速度で戦うタイプなのに!!こいつを仕留めるにはどうしても火力がいる!私の手持ちの術では二つ。だけど、街中で破奔流は無理だ。ならもう一つしかない!!!
今度は突進してくるが、これも難なく回避。
いくら速いって言っても、私の瞬身には敵わない。そして、隙は見逃さない!
「風遁・獣破烈風掌!!!」
巨大な手を象った風が大蛇に直撃。悲鳴を上げた大蛇は煙を上げて消滅した。
「ふう………。」
何とかなった………。
落ち着いたのも束の間、再び大蛇が現れる。しかも今度は三つの首がついた更に大きな蛇だ。
ちょっとは休ませてよ!!
攻撃パターンに変化はない。さっきよりも威力と防御力が上がったぐらいだ。
動きは見切っているだから、躱して術を当てるのは容易い。ただ、ダメージを与えるのが大変だ。
更に火力が必要か。
最近開発した新術を使うしかない。威力は破奔流や獣破烈風掌よりも上だけど、消費するチャクラもそれ相応に多い私の奥義。
右手に破奔流、左手に獣破烈風掌。その状態で術を放たずに両手を合わせる。二つの大きなチャクラを混ぜる。両手の中で暴れるチャクラを繊細なコントロールで手懐ける。そのまま両手を前に突き出せば、術は放たれる。
「忍法・颶風水禍の術!!」
巨大な水の竜巻だ。その大きな竜巻は大蛇を真っ二つに切り裂き、更には粉々に切り刻む。一瞬で消滅する大蛇。それと血の雨。
「…………」
自分でもドン引きするレベルの威力だ。こんな威力の術。通常なら無駄な火力だ。こんな物なんて、それこそ伝説の尾獣とかが相手じゃなきゃ使わないだろう。
私の血筋ならこれで氷遁になるはずなんだが、何故かできない。
でもこれはこれで凄い威力だから、使えない事は無いな。
とは言っても、早速この術のデメリットが現れ始めていた。
「はあ、はあ……はあ」
チャクラの殆どを失ってしまった。
ドスンッ……
「シャアアアアア!!!!」
また……
もう一体、蛇が出る。
流石にチャクラがしんどい。
大蛇が攻撃してくるが、瞬身で全て回避する。
「風遁・獣破「忍法口寄せ・屋台崩しの術!!!」!!」
なけなしのチャクラで術を放とうとした時、頭上から巨大な蛙が降ってきて大蛇を押しつぶした。
「全く、みんな右往左往して見てられんのォ!」
先輩や他の忍も集まってくる。
「……あの人は?」
「あの方は自来也様だ。」
あれが伝説の三忍。
私がチャクラをすっからかんにして、倒していた大蛇をこんな簡単に。
「だが、お主。なかなかやるのぉ。」
「…あ、ありがとうございます!」
「蛇はワシに任せておけ!」
「了解しました!」
私は立ち上がり駆け出した。
ビンゴブックでも見た事がある。
独特で多彩な術を操る伝説の三忍。蛙の口寄せを得意とし、実力は影クラス。
自来也様に大蛇を任して私は音と砂の忍を相手取る。
少ないチャクラを繊細なチャクラコントロールと体術で対処した。上忍にも出会ったが、私よりも実力が上な相手には無理をせずに、速度で引き離し逃げる。
そうして立ち回っていると、敵が撤退し始めた。こうして、木ノ葉崩しは終わった。
この戦いで多くの犠牲が出た。三代目火影の死亡が一番大きな犠牲だろう。
全ての人間を救えるようになりたいだなんて、神様のような事は言わない。だけど、もっと私が強かったら犠牲は減らせたかもしれない。兄さんと再不斬さんを失ったあの悲しみを繰り返さないように、更に強くなろうと思った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「根」の訓練場に帰ってみれば、クロも無事だった。
「クロ!無事だったのね!」
「シロ姉さんも無事でよかったです!」
「怪我はない?」
「大丈夫です!ずっと先輩に着いていましたから!」
「よかった。私も大丈夫。少し疲れちゃったけどね。」
その日はすぐに食事を摂って眠りについた。この後すぐに砂隠れが音隠れに裏切られた事が明かされ、砂隠れが木ノ葉に降伏。この戦争に終わりが打たれた。