「失敗したじゃとォ!!お前達が元腕ききの忍者だというから高い金で雇ったんじゃぞ!」
耳が早い事で、ガトーは鬼兄弟が暗殺に失敗し、捕らえれた情報を聞いて怒鳴りこんできた。
高い金なんて嘘だ。寧ろ抜忍である事から足元を見られているのは知っている。……今言っても荒れるだけだから言わないけど。
再不斬さんが首切り包丁を振り回す。
「ぐちぐちうるせーよ。今度は俺様がこの首切り包丁で…そいつを殺してやるよ。」
「…ほっ…本当に大丈夫だろーな…!敵もかなりの忍を雇ったようじゃし…。その上鬼兄弟の暗殺失敗で警戒を強めているとなると…。」
「この俺様を誰だと思ってる……。霧隠れの鬼人と呼ばせたこの桃地再不斬をな!」
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波の国の島。その中の森を駆け抜ける。再不斬さんと兄さんの3人で走る。ターゲットはすぐに見つかった。既に島の中心近くまで入り込んでいた。タズナさんの姿も見えた。
忍は4人。3人は知らない子供。おそらく下忍。年齢は11〜13ぐらいかな。霧隠れ潜入していた時を思い出す。額当ては木の葉隠れのマーク。
最後の一人はビンゴブックで見た顔だ。写輪眼のカカシ。納得だ。この忍は再不斬さんクラスだ。任務の難易度が爆発的に跳ね上がった瞬間だ。
「お前達は様子を見ておけ。俺が行く。」
「僕も行きます。」
「これは命令だ。撤退の判断は藍に任せる。いいな?」
「………わかりました。」
「行くぞ。」
そう言うと再不斬さんは首切り包丁を投げて跳んだ。
だけど、流石はビンゴブックのAランク。すぐに攻撃を察知して躱す。そのまま再不斬さんと敵は睨み合う。
敵も再不斬さんの実力を察したのか、すぐに奥の手を使ってきた。
『あれが、写輪眼。』
『初めて見るね。………赤く光る瞳。確かにあの目立つ瞳は幻術をかける時の起点として優秀だ。』
『目そのもの能力としての極致の白眼。それに対し、コピーや幻術等の瞳術としての極致の写輪眼。』
伝説の血継限界。私達の氷遁以上の血継限界。それを再不斬さんクラスの忍が振るってくる。確かに一度様子見に徹して、能力を暴く事が先決か。なら尚更引き際は大事。
「さてと……俺はそこのジジイを殺んなくちゃならねぇ。」
再不斬さんが殺気を放つ。
3人の下忍がタズナさんを囲んで卍の陣で守る。
「つっても…カカシ!お前を倒さなきゃならねぇーようだな。」
再不斬さんは瞬身の術で移動。水遁が使いやすい水の上に移動。十八番の霧隠れの術を発動。だけど、霧は少し薄い。
「霧が薄めだね。」
「多分、再不斬さんも相手の能力を確かめようとしてるんだと思う。」
霧に乗じて再不斬さんは消える。そこからは敵と再不斬さんの水分身の応酬が始まる。結果的にこれは再不斬さんの勝利。池に敵を蹴り飛ばし、水牢の術で捕らえた。
勝敗は決した。
再不斬さんは水分身を一体作り出し、下忍3人を相手にし出した。
『せっかく白黒付いたのになんで遊び出しちゃうんだろう?』
『多分、再不斬さんは優しいから、下忍の3人には逃げて欲しいんだと思う。水分身も一体しか作らなかったし、この状況なら僕達を呼べば瞬殺できるけどしない。……そういうことだと思う。』
そして、水分身と下忍3人の戦いが始まる。水分身は本体の十分の一まで性能が落ちるけど、それでも3人との実力差は大きく、歯が立たない。だけど、誰も逃げ出す者はおらず、それどころか再不斬さんに一矢報いる事に成功。はたけカカシを救出するに至った。
機転がよく効く以上にあの精神力は凄い。あの再不斬さんの殺気を前に逃げずに食らい付く根性は見事。
そこからは敵に流れを掴まれる。水遁の術を悉くコピーされ、最後は印を先出しさせた上でそれをコピーして、再不斬さんを圧倒する。
こんな異常事態、嫌でも一つの可能性を想起する。
『幻術……』
『いつ掛けたか、わかる?』
『再不斬さんが風魔手裏剣を投げようとした時に、はたけカカシが止めた時だと思う。そこで写輪眼を直視した所為だと思う。』
「水遁・大瀑布の術!!!」
「な、なにぃ!」
とうとう再不斬さんの術スピードを越えて、再不斬さんが水流に飲み込まれた。
『兄さん、撤退の準備をお願い。』
『わかった……藍はそのまま隠れてて。』
『うん、わかった。』
兄さんが千本を取り出して、戦場に向かう。
「………何故だ。お前には未来が見えるのか…!?」
「ああ、お前は死ぬ。」
見れば、再不斬さんが追い詰められていた。如何に今回が敵状視察が目的とはいえ、再不斬さんをここまで圧倒できるはたけカカシの実力は本物だろう。
そこへ兄さんの千本が再不斬さんのツボを貫く。仮死状態となり、倒れる再不斬さん。
トドメを刺す瞬間の一瞬の気の緩みに割り込む乱入者に敵は警戒を強める。
だけど、兄さんは務めて追い忍の振舞いで敵を納得させて再不斬を回収、撤退した。
私もそれを木陰からそっと追いかける。視界の端で倒れるはたけカカシを見る。
恐らく、チャクラ切れ。派手な術も使用したが、それでもチャクラ切れが早い。あれが写輪眼を使うリスクなのかもしれない。それとも単純に写輪眼が肉体と合っていないか。「うちは」ではなく「はたけ」。つまりそう言う事なのかもしれない。
ある程度移動して、兄さんは再不斬さんを寝かす。
「まずは口布を切って、血を吐かせてから…」
兄さんはハサミを取って再不斬さんの口布を取ろうとする。
「…いい、自分で……やる…。」
再不斬さんが目を開き、兄さんの腕を掴んだ。
「もう生き返っちゃったんですか…。」
再不斬さんはゆっくりと起き上がり、千本を無造作に抜く。
「ったく手荒いな……お前は……。」
「あ!再不斬さんこそあまり手荒に抜かないでください。本当に死にますよ。」
「お前ら、いい加減その面を外せ。」
「前の任務での名残でつい。」
「だけど、お陰でバレませんでしたね。」
「1週間程度は痺れて動けませんよ。」
「でも…再不斬さんなら時期に動けるようになりますかね。」
「…全く、お前達は純粋で賢く汚れがない……そういうところが気に入ってる。」
「ありがとうございます。」
「霧が晴れましたね。」
「…次、大丈夫ですか?」
「次なら…写輪眼を見切れる。」
そうだ。写輪眼は結局のところ、視覚が要だ。なら写輪眼を封じるなら、目を封じればいい。再不斬さんの霧隠れの術は相性がかなりいい。しかも再不斬さんは目を閉じていても音だけで対象の位置を把握できる。
警戒すべきは風遁の術。霧を晴れさせように気をつけて戦えばいい。
次の本命に向けて戦術を考える。
私は自分の居場所を護る為に戦う。