受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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執筆リハビリでちょくちょく過去の話を直しつつ書いておりました。永らくお待たせしてしまいましたが続きとなっています。


それではどうぞ。


第83話 異変解決と山のニ柱

sideこいし

 

 

 お進と一緒に空飛ぶ船を追い回したあの日から早数日経っていた…。

 

「さ~て、前もって私が通達してやった時間もそろそろだし、もうじき皆も集まるだろ」

 

 そう言うは先の異変と称された騒ぎの解決者の一人である霧雨魔理沙。何処か待ちきれなさそうにしているのが声色からも分かる。

 

 今は日も沈み、月が煌々と照らしている夜も更けた時間帯にあの時異変に関わった関係者数人が博麗神社に集まっていた。

 

「毎度毎度ご苦労な事ね。私はあんたと違ってそんな面倒な事はごめんだわ」

「ああ?分かってねぇなぁ霊夢は。少しでも面白い奴に会えるかもしんねぇんだから色んな事に顔出すのは当たり前だろ?」

 

 博麗神社の縁側。そこでは巫女さんと魔理沙が互いに軽口を言い合いながら談笑をしていたのをわたしは傍目から見ていた。

 

 ああ、えっと…それで、先に何の集まりがあるのかを言っちゃうと…今回の異変が無事解決したからいつも通りの如く宴会を行うんだってさ。ホントここの人達って宴会大好きだよねぇ。一見わたしとお進は関係なさそうなんだけどさ、結果的に微妙にだけど関わっちゃったし、異変が解決した後巫女さんの神社で過ごしていたからそのままの流れで参加なんだって。

 

 因みに、異変はちょっとした騒動にまで発展したんだけど~最後は魔理沙とお進の知り合いだった早苗って人がちゃんと解決して一件落着になったんだよ。結局巫女さんは最後まで加勢しないで見てただけだったしね。

 

 それにしても巫女さんだけじゃなくてあの二人も人間なのに凄いんだなぁ。……はぁ、わたしも巫女さん相手にたまに稽古つけて貰ってるけどさ…あの二人になら通用するのかなぁ「――」……っと?

 

「すみません霊夢さん。お待たせしてしまいましたでしょうか?」

「ん?ああ、大方時間通りよ」

 

 何て思ってたら聖白蓮を筆頭に話題の異変ご一行が到着。うへぇ…少しとはいえ異変が終わった直後に顔を合わせてたから知ってたけど…やっぱり大所帯だねぇ。

 

「はぁー着いた着いた。ここの神社は参拝させる気あるのかなぁ?ねぇ一輪?」

「知らないわよ。気になるなら後で本人に聞けばいいでしょ」

「…どうしましょうナズー…ここまで来て緊張してきたのですが…」

「大丈夫だよ。ご主人は堂々としていればいいだけなんだから」

 

 やって来たのは命蓮寺御一行。法界って所に封印されていた聖白蓮を筆頭にして、そして彼女を助ける為に奮闘した村紗水蜜、雲居一輪、寅丸星、ナズーリンが続々に顔を表し始めた。

 

 彼女達が今回の異変騒動の正体で…ばっさり言ったら退治された人達だね。まぁ実際大半は早苗が相手したらしいんだけどね。

 

 ……それにしても、どうやら本当に関係無い人も混じってるみたいじゃん。

 

「……で、何でアンタまで居んのよ…?」

 

 わたしと同じ事を思ったのか、巫女さんは気になる来訪者に対して呆れた顔を向けつつ住職さん達を神社内へと招き入れていた。

 

「私が呼んだって訳じゃ無いぜ。ま、こいつの事だからどっかから聞きつけてやって来るとは思ってたけどな」

「あやややや~。魔理沙さんは私の事を良くご理解されてらっしゃいますね~」

 

 特徴的な言葉から察するように来訪してきた人物は射命丸文。文々。新聞のとこの新聞さんが白蓮達にくっついて博麗神社までやって来ていたのだった。

 

「おや、お久しぶりですね~こいしさん。冥界以来ですか?」

「そうだけど…よく来たね」

「面白い所に私ありですからね」キラーン

 

 どや顔で言われても答えになってないんだよなぁ新聞さん。いやまぁ、それでも殆ど答えになって無い中言いたい事が分かるから別にいいんだけどさ…『キラーン』じゃないでしょ『キラーン』じゃ…。

 

「はぁ……」

「ふむ、どうやら私は歓迎されていないようですが別にいいでしょう。いやぁそれにしても驚きましたよ~まさか異変に貴女方が関わっていようとは」

「そりゃわたしだってビックリだよ」

 

 何せわたしだって異変に首を突っ込むなんて思ってもいなかったもん。ただただお進が野次馬感覚で近づいていたらそれが結果的に異変だったってだけで…。

 

 そんな訳で、わたし達が異変に関わっていると言っても異変を起こした~とか異変を解決した~とかそんなことは一切無いからそこのところ悪しからず。

 

「いやぁ~異変が終わった後に挨拶と新聞作りを兼ねて命蓮寺に顔を出したんですがねぇ~」

「新聞作りって…ホントいつも思うけど新聞さんってこういう時の行動は速いよね」

 

 基本的に何かイベント事があると度々見かけるような気もするし、多分新聞の為に好奇心任せで色々な場所に首を突っ込んでいるんだろうね。

 

「あや?分かっちゃいます?」

「ははは…そりゃね」

 

 だってわたしの身近にいるのがそのまんまそんなのがいるんだもん。お進が自分の好奇心に忠実過ぎるからわたしはいつも振り回されっぱなしなんだよ?

 

 ま、と言う訳でそこのところの心情は何となくだけど理解出来ちゃうんだ。

 

「そうですか?……まぁそうですね。これだけが我々天狗の持ち得る娯楽ですから当たり前の様に感じていましたよ」

「当たり前って…。案外天狗もやる事無くて暇なんだねぇ」

「あややや。こいしさん、その言葉決して椛の前では言わないで下さいよ」

「へ?」

 

 どうしたことか、新聞さんは苦笑いを浮かべた後に珍しくも少し真剣になってわたしに口止めをしてきた。

 

「いいですかこいしさん。懲戒に情報収集に山の警護、本来天狗は集団で生きている為にそれぞれに振り分けりれた仕事が山積みであるのです」

「ふ~ん。…いや、そう言われてもわたしはそんな仕事してる新聞さんの姿見かけた事無いよ?」

「まぁ私は新聞然り情報収集に重点を置いていますからね。適材適所ってやつですよ」

 

 少し誇った風に新聞さんはそう教えてくれる。確かにわたし自身妖怪の山にはそんなに行かないから確かめようも無いんだけどさ、それに新聞作りってあれ仕事じゃなくて趣味の範疇じゃなかったっけ。

 

「で、情報収集の為に前に命蓮寺に伺ったのですけど、残念ながらその時はあまり時間を取って貰えなかったので今回ここに参ったという訳でして。……所で、一進さんの姿が見えませんがどちらへ?」

「あれ?知らないの?」

「あや?」

 

 これはホントに新聞さんは何も知らないみたいだね。割と大きな話になっていたから情報網の広い新聞さんなら予測出来ると思ってた…まぁ別に隠し事でも無いんだから教えちゃっても構わないよね。

 

 

「え~っとお進は今ね……」

 

 

 

 

 

 

 

side一進

 

 

「………」

「………」

 

 宴会……だったんだけどなぁ…。

 

 そんなブルーな気持ちを引っ提げて、俺はただただ立ち尽くす事しか出来なかった。辺りを見回せばちゃんと舗装された道に掃除が行き届いている綺麗な境内、俺がよく知る神社とは別物の様に見えてくるけどもここだって神社に変わりない。

 

 はい、つー訳で俺は宴会の始まる直前、宴会に参加しに来たと思われる早苗ちゃんに会うやすぐに流れる様に拉致られて妖怪の山…強いては守矢神社に連れて来られています。

 

「……」

「……」

 

 で、え~っと…百歩譲って無理やり連れて来られたのはまぁいいとするよ?異変時にそんな感じの事約束されてたからさ、どうせその内行く羽目になると思っていたもの。

 

 …でも、何かここまで来る道中で既に嫌な予感バリバリだったんだよ。夜の闇に紛れて殆ど数も把握出来なかったけど…何人もの視線という視線が身体中に突き刺さってたし。

 

 そんでそんな注目を浴び捲くってたのも我慢して神社に到着。まぁ着いたら着いたでそこで待ち受けていた大きいのと小さい人――じゃないや、神様達に無言で見られてますのん。

 

 あ~あ…非常に気まずい事この上ないっつーの。

 

「ちょ、ちょっと神奈子様に諏訪子様?一体どうしたんですか…?」

 

 あまりの重苦しい雰囲気の中、痺れを切らした早苗ちゃんが両名に対して至極当然な質問をぶつけてくれたので非常に助かる。

 

 いや、だって、何せ俺をここに連れて来るよう早苗ちゃんに頼んだのが俺の目の前にいる二人なんだとさ。無論この話はここに来る途中早苗ちゃん本人が言ってくれた事だから嘘では無い。

 

 しかし、嘘では無いとしたらそこで疑問として挙がるのが一つ…。俺を呼んだのはこの二人のくせに何故にこんな値踏みみたいな事されてるんです?

 

「胃が痛い…文さんがサボらなければ私が付き添う必要は無かったと言うのに…」

「サボりってマジかあいつ…。分かってると思うが流石にそれは俺の所為じゃないぞ」

「…ああ」

 

 重い空気だからか、俺の隣からそんな恨みがましい声が上がるのでそちらに目を向ける。……本音を言うと神様方の二つの視線から目を背けたい一心なんだがな…。

 

「…どうした?」

「…いや」

 

 まぁ、そんな俺の諸事情は置いとくとして…先程小さな声で文句を垂れてたのは人里以来の再開を果たした犬走椛である。

 

 目を向けていた故に椛もこっちに反応を示しているが、内心は彼女もこの場から離れたい気持ちでいっぱいいっぱいだろう。

 

「小言言われた所で俺も何で呼ばれたか分からんからどうすればいいのかも分からんからな」

「…珍しく午後は非番だったのに」

 

 ……椛の悪態が非常に心苦しい。俺が悪い訳では無い筈なのに罪悪感に苛まれているよ。

 

 なんて、そうこうしているうちに向こうも行動を開始してくれたみたいらしく、大きい神様の方がやっと口を開いてくれた。

 

「いや、すまなかったな藤代一進。少々こちらも思う所があって時間を取らせて貰った」

 

 ああはい、さいでっか。もうぶっちゃけ精神的疲労の蓄積の所為で対応の悪さなんて気にしてないっての。

 

 …そんじゃ話を進めてくれ。

 

「私は八坂神奈子で、隣のが洩矢諏訪子。まぁ私は結果的に紅魔館のレミリア・スカーレットや白玉楼の西行寺幽々子と同様、お前が幻想郷に来る要因になった一人って感じだ」

「あ、そうなん」

 

 だから今こうして俺が呼び出されてる訳ね。あ~成程成程、漸く納得したよ。

 

 レミリアと幽々ちゃんか~確かにあの二人は俺に対して用があったからなぁ…まぁそれも既に直接会ってるわけだし終わった事なのだが。

 

「すまない、突然山にまで連れて来られて困惑しただろう。こちらも話を通すのが遅れた所為で多くの天狗がお前を警戒しに行ってな」

 

 『確かに早苗に連れてくる様に話したのだがまさか直ぐに行動に移すとは思って無かった』なんて続けてきたけどそんな事だろうと思ってたよ。いかんせん早苗ちゃんの呼び出しがあまりにも急だったからそんな気はしてたさ。

 

「まぁ、早苗からどこまで聞いているかは知らないが、私達はこの山の神である為に自由が利かないんだ」

 

 すると、そんな感じに八坂神奈子…(様をつけた方がいいのか知らんけど内心では構わないだろう)が言うが、扱い的にはどこかの大御所か有名人みたいなものなのかね?

 

 それにしても案外話の分かりそうな方だから助かるな。目の前の神はしっかりと上に立つ者として振る舞い会話を続けてくる。

 

 ……で、だ。

 

「神奈子。さっさと本題に入ろうよ」

 

 そう、それだよ。まったく…隣に居るもう一人の神が話を進めてくれて助かったよ。

 

 いい加減俺が呼ばれた理由を聞きたかった所だからな。

 

「そうだな。では、一先ずは良かったと言っておく」

「あ~っと…何が?異変の解決?」

 

 神奈子からそんな言葉を受け取ったが、こちとら理解が追い付かずそれらしい返答でしか出来ないでいた。

 

 まぁ仮に異変の解決だったとしても、あれは俺に被害があった訳でも無いし解決したのも俺の功績でもなんでもないからなぁ…。

 

「いや、全くと言っていいほど異変とは関係は無い。……信じて貰えるかは分からないが…私達は外界に居た時からお前の事を知っているんだよ」

「プラスで言えば早苗からよく話を聞いていたよ~」

 

 ん?外界?あぁ…な~るほど。そっかそっか。

 

「と言うわけで、ここからが本題なんだ」

 

 外界から幻想郷に移り住んだ者同士、用件は俺本人に対してか。さ~てどんな話になるのでしょうかね?

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ霊夢ぅ~!他の奴らはど~こ行ったんだぜ~?」

「暑苦しいわよこの酔っ払い!」

 

 ……。

 

 …山での用事も終え、神社に戻ってくると早々に目に写ったのは赤い顔をして確実に酔っている魔理沙に、それに対してめんどくさそうに対応している霊夢…。

 

 ……。

 

「村紗?皆は何処に?」

「星はさっき酔い潰されたしナズーリンはその介抱に行ったよ。一輪は多分それに乗じて逃げたんじゃないかな?」

「…友好を深める為に今日ぐらいは禁酒を解いたんですが…慣れていない事をさせるべきでは無かったのかもしれませんね」

「まぁ…あははは。(…星は兎も角私を含めナズーリンと一輪は普段から隠れて呑んでるなんて言えないねぇ)」

 

 急に早苗ちゃんから声が掛かったものだから、結局ほんの挨拶程度の会話しか交わせていない聖白蓮と村紗水蜜。

 

 ……。

 

 

「シリアス…だったんだけどなぁ」

 

 所変わりまして現在俺は博麗神社の縁側にて項垂れております。

 

「お進どしたの?」

「ん?」

 

 俺の近くに居たからか~なのかは分からないけど、腑に落ちない俺の声色を聞きつけたこいしが声を掛けてくる。そうね、取り敢えず宴会なのに端から傍観しいてたら不審に見えるわな。

 

「…いや、どうしたって言われてもよ…」

 

 言ってしまえばとても簡単な事、守矢神社から現状俺が居るのは宴会をやっていた博麗神社なんよ。そんな訳で既にデキあがってる奴らが居るのを見るに宴も終盤に差し掛かっているのだろう。

 

 ああ、まぁ別に宴会うんぬんは特に問題じゃねぇのさ、そこは然したる問題でも何でもない。

 

 俺が切実に頭抱えてぇのは…何故にさっきまでシリアスな雰囲気出しといた奴が今更こんなどんちゃん騒ぎにどうやって混ざれってんだよって事でさ。

 

 分かる?ぶっちゃけた話し恥ずかしい訳さね。

 

 しかも周りは既にデキあがってる状態が多数だから尚更絡みヅラい…いや、俺がスッパリ気持ちとテンションを切り替えていきゃいい話しなんだとは思うが流石になぁ…。

 

「…お進?」

「あ~なんつーか…短時間の間に場の雰囲気が変わる変わる変更されてる所為で話に着いていけんって感じ」

「……はい?」

 

 再度こいしが聞いてくるもんだからそれっぽく返してはみたものの…そりゃこんな事を言った所で理解なんてされないだろうよ。言った本人の俺でさえよく分かんない事言ってる自覚あるしな。案の定こいしは小首を傾げながら俺が何を言いたいのか分かっていない風に声をあげるだけだったよ。

 

「いや、まぁ俺の事は別にいいんだよ。それじゃそろそろ他の奴らの所に行ってみるか」

 

 そう言って俺は頭を振って気持ちを切り替える。

 

 どうでもいい事を考えてここで時間を潰していても仕方がないだろう。だとすれば交流を兼ねて開かれた宴会なのだからそちらに向かうのが妥当ってところだしな。

 

「そんな訳でやっほー命蓮寺諸君。元気してる?」

 

 未だに疑問符を浮かべているこいしを引き連れて、俺は折角だし新規の人達と交流を図る為に白蓮達に声をかけてみる。

 

 まぁ、諸君つってもさっき聞こえてた白蓮と村紗の会話の中身から三人ほどいないのは分かってるがな。それに俺も聞きたい事があったから丁度良いし。

 

「これはこれは一進さん、お疲れ様です」

「おー何さ何さ、急な呼び出しだったらしいけどそっちの用事は終わったみたいだねぇ」

「ああ、急に言われたから若干面倒だったけどな」

 

 俺の登場に柔和な笑みを浮かべる白蓮に対して村紗は軽快に言葉を返してくれる。二人共反応の違いはあれど…そんな二人を見て俺は僅かながら安堵した気持ちになっていた。

 

 いや、だってさぁ、こちとらさっきまで神二人の御前で全然気の抜けない状態が続いてたもんだからこういった平凡な掛け合いがスッゲェ気楽なんだわ。

 

「ま、ちょっくら山登ってお偉いさん方との話し合いに勤しんでただけだよ」

「『だけ』って…神々から直々に声が掛かるのでも十分凄いのにそんなショボい事みたいに言うなよ」

 

 あっけらかんと話す俺に対して村紗が驚いた様に返して来たけど…そうか?確かに神様って言葉通りに受け取れば凄そうだけど、日本には九十九神やら八百万の神がいるとかだから神自体は珍しくなかろうて。

  

「…お進にとっちゃ神様もただの会話相手に過ぎないからね」

「うわ~お…価値観がぶっ飛んでんだか頭のネジ外れてんだか分かんないねぇ」ハハハ

 

 いや、笑ってんじゃねぇよ村紗。誰の頭のネジ外れてるっておい?

 

 ったく、これでもこの世界来てから身の振り方に気を付けてるってのによ。ホントに頭のネジ外れてりゃ相手が誰であろうと後先考えずに動いて楽出来るんだが…実際そうはいくまい。

 

「自由奔放なのか恐れ知らずなのか…それともただただ無知なだけなのか」

「概ね全部当たり。大概わたしも苦労してるよ」

 

 あ、おい待てぃそこのど失礼二人。確かに俺は他者に対して敬う感情を抱く事は少ないがそれは相手を軽視しているわけではないぞ。

 

 大体身の振り方を理解していたから現在こうして幻想郷に適応出来てるって事を分かって欲しい。例えば紫…は兎も角さとりやレミリア…も別にいいな。

 

 ……え~っと。そうだな、先生とか幽々ちゃん相手にはそんなふざけた態度とらんし気苦労が絶えないって事だ。それに考えりゃさっきの山の神様達の御前でもそうだしよ。

 

「なぁ二人共…。実際俺はそこまで変人って訳じゃないんだが」

「「いやそれはない」」

「お前ら…」

 

 こいつら失礼過ぎね?しかも二人そろって即答しやがった分、割と心にダメージが来るんですがそれは。

 

「はぁ、まさかこいしは兎も角村紗にまで言われるとはな」

 

 そりゃ溜め息も吐きたくなるってもんさ。

 

 何せ村紗とは異変後にちょっと顔を会わせただけなんだからな…それでここまで言われるって事はそれだけ俺は周りの眼からヤベェ奴に見えてるらしい。

 

 ……こいしは…まぁ知らん、今更取り繕おうとも思わないから変人って事でいいよ。

 

「いけませんよ村紗、些かそれは失礼です」

 

 そんな時に差し伸べてくれる白蓮からのフォロー。うんうん、何だやっぱりこの人は聖人じゃないか。

 

 白蓮は俺の荒みそうな心を保護してくれるかのように、優しい言葉を――。

 

「一進さんだって好きで変わり者な訳ではありません」

「掛けて!?優しさを少しぐらい!!つーかあんたが一番失礼だわ!」

 

 援護の筈の白蓮が手酷い裏切りをしてきたお陰で私の心には大打撃…。何?俺ってそんな罪深い生き方してきたっけ?

 

 ……いや、まぁ天国か地獄かで言えば地獄行きになっても何一つ文句は言えんぐらい善行を積んどらんがな。

 

 ってかそもそも何なんこの仕打ち?そろそろ酷い扱いのされ過ぎが一周回って標準みたいになってるのがいよいよもって納得しかねるんだけど…。

 

「こういう役回りは紫じゃ無いのかよ…」

 

 我ながら思考回路が紫=損な役回りとなってるのが申し訳ないと思わなくも無くも無いんだが…俺が弄られる側になるのはゴメン被るので尊い犠牲とでもなって貰いたい。

 

「はい!そんなわけで紫おいで~!」

 

 …………。

 

 ……。

 

 …来ねぇな…ってあれ?そういや紫の奴居なくね?

 

 話題の標的を紫に擦り付けようとしたいんだけども~右見ようが左見ようが紫の姿が見当たらない。宴会開始前当たりには居たような気がするから不参加でもない筈だよな。

 

「もう~お進そういう所だよ?それにやっぱり皆もこう言ってるんだからさ、お進ももうちょっと慎ましく生活した方が敵を作らなくて済むしいいんじゃない?」

 

 すると、こいしがやれやれといった感じに首を振りながら俺に進言を始める。

 

 そりゃ仮にも大妖怪なんて立場の奴をバカにしてりゃいつか痛い目をみてもおかしくはないから当然と言えば当然の判断だろう。しかも、俺の場合生い立ちと立場が厄介だから頼れる奴は大切にすべきなのだ。

 

 って事で俺も少しは真剣に考える。これから佳境になって行くんだからそういった打算的な考えも必要になってくるかもしれない。

 

「そうだよなぁ、あんなんでも紫は頼れる時もあるっちゃあるからこいしの言い分は最もだよな…」

「あんなんでも……何か言い方がスッゴイ引っかかるけど取り敢えずそれじゃ―「だが断る」……はぁ」

 

 おい、何だこいし。その色々言いたい事はあるんだけどもう面倒だからどうでもいいやって感じの溜息は。

 

「アッハハハ!やっぱり最高だよこの人!」

「あらあら」

「笑い事じゃないんだよもぉ!!」

 

 そしてそんな俺達の掛け合いを見て楽しそうに笑ってる二人や少々疲れた様子を見せるこいしを見て少々楽しい気持ちになる。けれども、俺の心はそれでも重いものとなっていた。

 

 自分を誤魔化すつもりは無かったがどうやら軽口を言い合った所で気分転換にすらならなかったらしい。それほどまでに山での出来事が俺の心を暗鬱にしている。

 

「(敵対……か)」

 

 山の神々に明確にそう言われてしまった以上はどうしようもない。避けては通れない道が出来たと腹をくくるしかないだろうさ。

 

「(どうしようかなぁ……)」

 

 二柱の神から大切な話だと言われ、その場からは早苗ちゃんや椛すら払われて俺達は三人だけで顔を合わせていた。そこで言われる…。

 

『すまないが私はお前を認めようとは思わない』

『私は批判する気なんて無いんだけどね。神奈子がこの調子だからさ』

『……賛同してくれる気は?』

『…あぁそうだね。勘違いさせちゃ悪いからちゃんと言うね。――私は批判する気も賛同する気もさらさら無いよ。ただ純粋に危険因子を消したいだけさ』

『…成る程』

 

 答えを聞く前から分かっていた事だけど、どうやらこの山では俺に対しての風当たりが強いらしい。

 

「(取り敢えず時間稼ぎは出来たけどそれだけじゃどうにもならないからな。…やっぱり、行くしかないだろう)」

 

 そうして、俺は覚悟を決めて白蓮に事の顛末を話した。

 




一年近く失踪していてこの度は投稿させて頂きました!今更話覚えて無ぇよって方は是非読み返してみましょう!(最低な宣伝)
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。


それではまた次回。

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