新キャラ(?)を出しただけなのに何故こうも展開がスローになるんでしょうね?私には全然わかりません(開き直り)
それではどうぞ。
〇
side一進
空に浮かぶは宝の船。そして、誤解と俺のミスにより始まった魔理沙との弾幕ごっこ。異変解決者の実力を知る良い機会だとも考えたのも束の間…俺は幻想郷の流儀である弾幕ごっこと言うのを完全に失念してしまっていた。
魔理沙を迎撃しようにも弾幕は兎も角、スペルカードについてはほぼほぼ知識が無かった為にこいしからのアドバイスで回避だけでこの場面を切り抜く事になってしまった。
「次から次に厄介な問題が増えてる気がするよ…」
「奇遇だなこいし。俺もだ」
しかし、現在弾幕ごっこなんてものはやっていない。突発的に放ってしまった俺の弾幕が、魔理沙の後ろを飛んでいた第三者の少女に見事ぶち当たり急遽弾幕ごっこは中断とされていた。
「痛たた…魔理沙さんは既に弾幕ごっこをやっていたんですね」
「…ん」
魔理沙は俺に向かって指を差しているのがなんとなくだが遠目でも分かる。…ん~この間にトンズラしてもいいけど、後に引かせない為にもこれは行くしかないよなぁ。
変に悪評が広まるのも避けたいし、マジで当たったのは偶然だったから早めに謝るのが是だよな。
「二人じゃないですか!?さっきの方もそうでしたがまたですか!」
「ああ、そういやお前に押し付けたやつもタッグ組んでたな」
「大変だったんですよ!!魔理沙さんは一人で先走り過ぎです!ちゃんと足並み揃えて行きましょう!」
「お?悪い悪い、次からは雑魚は蹴散らしながら進んでやるからさ」
「そう言う事を言ってるんじゃありません!」
おいおい喧嘩か?ったくこれから誤解解かなきゃならんのに勝手にヘソ曲げるのはやめてくれよ。
そんなこんなで、溜息を吐きたいと思いつつも俺とこいしはわーわーと騒いでる彼女達を見て渋々といった感じに近づく。…事故とはいえ、当たってしまった事に変わりない。俺は魔理沙と言い争う彼女に取り敢えず謝罪の一つでもしなきゃと―「ああ!!」
? 何だそんなデカい声出して…。
俺が謝ろうとした束の間、目の前の緑髪の少女は驚いた様に目を見開いて俺を見上げてくる。かと言ったって俺はそんな反応されてもどう返せばいいか分からない。
ほとほと困ってると、魔理沙の方も疑問に思ってくれたみたいで、呆然とする少女の心配をする様に声を掛けてくれた。
「おいおい、なんかあったのか?」
さんきゅ魔理沙。流石に俺も攻撃を食らわせた手前バツ悪いからな、後は上手くその子と俺の間を取り持ってくれ。
「………そんな…まさか…」
「は?どうしたよいきなり。もしかしてこいつと知り合―「……一進…さん?」……早苗?」
ッ!?
…いや…いやいやいや…。嘘だろう?
魔理沙が彼女の名前を呼ぶと同時に、記憶の奥底からは懐かしの姿…外界にいる時の幼き頃の自分の姿が浮かび上がって来る。
しかし重要なのはその隣。幼い俺の隣に映るのは…俺と同様に周りの人間から…いや、世間から気味悪がられて生きていた筈の女の子。それが今俺の目の前に立っている。
「知り合いだったのか?早苗?」
「はい!この方、一進さんとは外界の頃にお会いした事のある人なんです。…確証は無いけどと諏訪子様から聞き及んでいましたが…本当に一進さんが幻想郷に来ているとは」
…神様が見えると…神様は居ると豪語していたあの時の少女がそこには居た。…いや待て、あの時のだと語弊がありそうだな。それなら、あの時の少女がそのまま成長を遂げた様な姿って所で伝わるだろう。
「私…本当に嬉しいです…。あの時は、まともにお別れする事も出来なかったですから」
「早苗!?おまッ!急に泣き出してどうしたんだぜ!?」
「え?あ、あれ?私泣いて――いや違うんですよ魔理沙さん。心配はいらないです」
そう言って少女は笑って涙をこぼす。
……魔理沙が慌てるのも無理はない。と言うか魔理沙が慌てていなかったら俺が取り乱していただろう。案外自分以外に慌てている奴がいれば自然と自分は冷静になれるもんだ。
だけど、それだけ俺は彼女と再び出会う事が衝撃的だったのだ。
全てに疎まれていたあの時…俺は彼女が居てくれたから自分を見失わずにすんだのかも知れない。
…涙をこぼしてる違いはあれど、その花の咲いた様な笑みは昔のままだった。
「早苗ちゃん…で良いよな?」
「はい!昔のままお呼びください!」
屈託の無い…万人に安らぎを与える様な笑顔で俺を見据えてくる。
こんな感じで、昔から早苗のちゃんは良く笑う子供だったさ。周りから忌避の目で見られていたにも関わらず、それをおくびにも出さないで早苗ちゃんは毎日を過ごしていたのを知っている。
……だけど、正直俺には外界から知っているその笑顔に対して正面から向き合うのは重たすぎた。
「…………ごめん」
ただ一言。彼女を前にして、俺の口からはそんなちっぽけな言葉しか出なかった。
「……何が、ですか?」
恐らく早苗ちゃんは俺が何を伝えたいのか分かっている。分かっているのだろうけどその上で敢えて俺に聞いているんだと思う。
……。
……。
昔、早苗ちゃんとの最後に交わした言葉を思い出す。
『…いい加減に現実見ろよ!俺らは周りから疎まれてんだ!』
どうしようもなく心が弱かった俺は、自分の境遇と近しい彼女に依存してしまってたんだ。
過ちを悔いる様に詫びる事しか出来ないけれど、それでも俺はずっと悩んでいた。
『何が神だよ馬鹿馬鹿しい…。こんな不条理を許してる時点でそんなの信じられっかよ』
『居ます!神奈子様だって諏訪子様だって私を大切に――』
『して貰ってるってか!!…だったら!お前はそいつらに支えて貰えばいいだろ!』
喧嘩別れ…とは言い難いが、俺は自分で言い出した手前それ以降早苗ちゃんとは会わなかった。そして自ずと疎遠となり完全に会う事は無くなってしまっていた。
「……神って、本当に居るんだな」
「ふ、ふふっ、何ですかそれ。久々に会って言う事ですか?」
「さぁな。ま、そう言う事にしといてくれや」
「分かりましたよ。ホント仕方のない人ですね…一進さんは♪」
…ああ良かった。憑き物が落ちたよ。早苗ちゃんの笑顔が特別変わった訳では無いが、それを受ける俺の心は些か晴れやかな物に変わってくれた。
何せ、外界で俺が紫に出会い、幻想郷に来る決意をした時だってこの事だけは心の奥で引っ掛かっていたからな。
「…神ってのにも謝んねぇとな」
「神奈子様と諏訪子様ですか?…そうですね、何時でもお待ちしておりますよ」
「…そいつは何より。お前の言ってた神様とやらに漸く会えるぜ」
「はい!」
そっかそっか。それじゃあその内拝みに行ってやろうかね。幼い子供には耐え難い境遇だったにも関わらず、その心に笑顔を咲かせていた神ってのも興味がある。
……ハァ。それにしてもまさか幻想郷で長年の心残りを解消出来て良かったわ。
「…な~んかあの二人距離近くてわたしはご立腹なんだけど~」
「知り合いだっつってんだから大目に見てやれよ。けど、それなら外来人っつーのはてっきり隠れ蓑だと思ってたんだが予想が外れたなぁ」
おっとっと、完全に空気扱いされてた二人が文句を言い出してきたぞ?…まぁそれもそうだな。いくら懐かしいからって、いい加減切り上げないと進行が滞ってしまう。
でも、まさか魔理沙の言っていた異変解決者の霊夢
「それでは魔理沙さん!私は一進さんを守矢神社に連れて行きたいので迅速に異変の解決をしましょう」
「…へいへい。ってか早苗?霊夢の奴は?」
「ああ、それが霊夢さんってば初めに倒した方とずっと話し込んでるんですよ。何だかこれでお宝見つけ放題とかなんとか…」
「…で、置いてきたと」
「しょ…しょうがないじゃないですかぁ!あまり遅くなったら神奈子様が心配するんですもの!」
…ははは…何かよく分からんが霊夢は霊夢で異変解決時でも我が道を突っ走ってるらしいな。
そして早苗ちゃん?確かに俺は神さんに会いに行くとは言ったけど…さっきの言い方から察するにこの後無理やり連れて行こうとしてないかい?
だけど、この話の変わり方からおそらく、魔理沙との勝負は無くなっただろう。だとしたら俺は安心して船に向かうなり――。
「じゃねぇや魔理沙!アリスからのメッセージって一体どう言う事だ!」
あっぶねぇあっぶねぇ、早苗ちゃんの衝撃で忘れるとこだったわ。流石にこれだけは聞いとかなきゃ不味いわな。
「あ?アリス?そりゃお前が魔界生まれのアリスの同郷って事だから何か手助けしてやってくれと頼まれたんだよ」
「アリス本人は!!」
「あいつは魔界だ。だから私はお前を幽香に会わせてくれって頼まれてな。まぁ少し前に香霖堂で幽香にゃ会ったが…もう既にあいつはお前と会ってた後みたいだったがな」
…そうか、メッセージって事はアリスは俺に会えなくなるのを予め見越していたのか。それで魔理沙を使って俺を幽香の所まで連れて行って、そこで俺の記憶を呼び起こす算段…と。
「…う~ん。何かよく分かんないけど、結局アリスは味方って事で良いんだよね?」
「ああ。言ったろ?あいつが俺と敵対する筈無いって」
暫くほっとかれて寂しかったのか、こいしが後ろから方に腕を回すように抱きついてきたのだけど今はあまり気にしてやれない。
でもこれでアリスの居場所も分かった事だし、早々に紫や幽香と連絡を取り合って次のステップへと進まなくてはならないからな。
「む~」
「はいはい後で構うから今はやめてくれ。…つっても現状こっちから紫に連絡を取る手段が無いのか」
いや、実際は札型のエセ携帯を持たされていたから連絡が取れない事は無いのだろうけど…随分と前の事過ぎてどっかにやって紛失してるんだわ。
ちょっとばかし自分の物持ちの悪さに悩みつつも、こいしを片手間であやしつつも効率の良い方法を頭の中で画策――。
「あの~すみませんが私には何が何やら…」
していたら早苗ちゃんが当然の様に困って首を傾げているではないですか。
うん。まぁそりゃそうだわな。早苗ちゃんは前情報を何も持ってない状態なんだからいきなり目の前でこんな話展開されても困るだけだろう。
「……え~っと早苗ちゃん、多分今更遅いんだろうけど忠告しておく。聞いたら後戻りは出来ない―「ハッ!もしかして昔神奈子様が仰っていた呪いの様なものと関係があるのでは!?それならば私一進さんの手助けがしたいです!」」
お願いだから話聞いてぇ~。多分どっかで言った気もするけどこいつもこいつで人の話を聞きやしない子だね…。ったく最後まで人の話を聞けっての。
…でも…ま、嬉しい事にこいつは俺の手助けがしたいんだとよ。正直な所いきなり俺達のチームに巻き込むのは些か気が引けるけど、一番聞きたかった所がハッキリしているからこの調子だと早苗ちゃんも十分にこっち側に立ってくれる事だろうな。
「……分かった早苗ちゃん。それじゃあ今の所考えうる結末を先に言うけど…もしかしたら幻想郷は魔―「お前だなッ!!私の正体不明の種をことごとく無力化していったのは!」…ハァ」
…おい、いきなりしゃしゃり出てきた黒ニーソ、お前さんは一体全体どちらさんよ。こちとら早苗ちゃんに大切な説明をしようとした所、突如として現れた何かよく分かんねぇ黒ニーソの妖怪に邪魔されたんで非常に腹が立つ事この上ないんだが。
……つーか何か知らんけど今日俺の言葉遮られる事多くねぇ?再三に渡って言葉被せられてる様な気がするわ。
「折角放ったっていうのに全部無駄にしやがって…何故お前は私の正体不明の種を消せるんだ!」
そんな俺の苦悩を知りもせずに矢継ぎ早に言葉を繋ぐ黒ニーソ。はいはいそうですかそうですか、そいつはすごいですねー(棒)
…っと…ん?正体不明の種?あ、あ~あ~あ~成る程、あの認識を誤魔化す変な物体はこいつの仕業だったのかい。へぇ~そうか、それじゃあ…。
「ちょいとお前。こっちは大切な話してっから遠くで遊んで来い」
「はぁ!!?」
考えた結果関わらないのが手っ取り早そうなので触れないのが正解だろう。
生憎にも紫の捜索が功を奏し、正体不明の種(?)が全部無駄になったって言ってるし現状こいつはほっといても問題無いだろ。
「ちょ…は?…えぇ!?」
まさか黒ニーソは自分が相手にされないとは露にも思っていなかったのだろう。少女は眼を数度瞬かせると、信じられないといった表情を向けて来て思いっきり狼狽えているよ。
扱いが酷い?知らんわ。こっちは既にアリスの事や早苗の事でお腹一杯なんだ。今更新手の人物程度のインパクトで俺の意識割けると思うなよ。
「何か面倒なのが出て来たな…私が片付けるか?」
そんな感じでいきなり現れた妖怪を無視する方向で行こうとしたところ、ありがたい事に魔理沙は懐から取り出した六角形の道具を手に取りやる気に満ち満ちてくれていた。
…う~ん面倒か…うん、そうだね面倒だね。だとしたらその申し出は非常に都合が良い。
アリスや幽香との繋がりがあった事を考えると、魔理沙はこっちの都合を知ってるみたいだし改まって説明する必要は無いしな。だったら折角だし早苗ちゃんにこれからの事を説明してる間にちゃっちゃとやって貰いますか。
「よし魔理沙―「大丈夫ですよ魔理沙さん。ここは一進さんに任せて私達は異変の大元へ向かいましょう」……え?」
俺に任せて異変の大元へ向かう…?……ん!?それって何か嫌な話の流れになってないか!?
だとしたらこの少女の相手をするのは必然的に俺に……おい、おいおい、何いらん事口走ってるのよ早苗ちゃん!俺は早苗ちゃんに伝えて起きたい事があったのを素晴らしい事に魔理沙が汲み取って時間を作ってくれようとしてんだよ?
ほら…ね?早苗ちゃん?ってな訳で魔理沙に任せよう?折角の魔理沙の気遣いなんだからさ、無駄にするなんてとてもじゃないが俺には出来ないよ。
「それにこの方は一進さんに用があるみたいですし」
「…それもそうか…。だけどお前は話を聞かないで良いのか?」
「はい!異変が解決した後にでも神社でゆっくりと聞きますから」
知ってたよクソが!途中から分かっていたけど案の定面倒な事になりましたわ!
あ~あ流石にここまで進んでから魔理沙にお願いするなんて出来ないよな…。だったら困惑してる黒ニーソはこっちで引き受ける羽目になったよこんちくしょう。
……そしてちゃっかり異変後に早苗ちゃんとこの神社に行かされる事が確約したんだが…まぁそれぐらいは目を瞑るからいいんだけども…。
「それでは一進さん!またすぐに会いましょう!」
「どのみち異変は解決しなくちゃならないからな。おい一進、早苗の後でいいけど私にもアリスの事とか詳しく教えろよな」
「え、ちょいマジで行くんお前ら?」
駄目元で残ってくれるかと打診してみたけど、結果は言うまでも無く芳しくなかった。
言う事は言ったのであろう。二人はスペルカードのスの字も知らない俺をおいて結構なスピードで船の下へと向かって行ってしまう。
「ハァ…こっちの気も知らないで勝手にそうやって物事を決めないで欲しいよな。俺だって船に行きたいっつーの…」
「仕方ないよ。だってお進は別に異変解決をする気は無いんでしょ?だったら関係無さそうなのを引き受けるのは妥当だと思うよ?」
「…へいへい分かってますよ」
異変が起きた理由に俺が関与していないなら異変解決の手助けなんてやらなくていいと考えていたけど…正直こいしの言い分はもっともだよな。
くそ面倒だけど二人には優先する事があるのだし、俺もあまり我が儘を言ってられないから早々に片付けますか。
……さて。
「俺に用があるって事は分かったけど…どちらさん?」
「やっとか!!やっと私に話振って来たか!」
そうだよ。アリスの事は早苗の事でいっぱいいっぱいだったけど、やっとお前に焦点当ててもいいぐらいには事が片付いたんだよ。寧ろ言えばお前が現れなけりゃそんな事する必要すら無かったんだがな。
……つーか逆に良く今の今まで黙ってたなこいつ。普通はもっと早い段階で文句なり何なり騒ぐと思うんだけど…。
「…ふん!お前は積極的に私の正体不明の種を無力化していったんだ…それは私の力を恐れての事だろう?」
「恐れて?見る奴によって認識が変わるやつか?」
そう言って俺は少々あの物体について思い返す。
…確かにアレがついた対象は、周囲の人間からそれぞれ異なった認識を受けてしまうから恐れるか兎も角凄い力だと思う。直接的な攻撃手段では無いが、攪乱や混乱を引き起こすには十分すぎる力だろう。
「そうだ!見るものが分からなくなり、ましてや自分の姿は周りから恐怖の対象と捉えられる。正に大妖怪におあつらえ向きな能力じゃないか!」
うんうん、そうだな。そこまで自分の能力を理解して運用出来るのであれば上出来だな。
な~んて事を頭の片隅で考えて少女を見てるんだけど、当の少女は話を振られて気分が良いのか、その演技ぶったセリフに拍車がかかる。
「正体を判らなくする能力を持つ大妖怪…。それが私!封獣ぬえ様だ!!」
バン!と、どうやら一通り言いたい事は言い終えたらしい少女は俺らの反応に期待しているのか、誇らしげにこっちに視線を向けてくる。
……さてさてどう返したもんか…。
う~ん。妖力量から鑑みて…確かに紫や幽香程では無いが本当に大妖怪を名乗れるぐらいの強さはあるらしい。それに…ふむ。能力の使い方から頭も悪く無い事は汲み取れる。
「あっそ。俺は藤代一進…んでもってこっちは古明地こいし」
「よろしくね♪」
まぁ、多少凄そうだからって俺がそう簡単にこの横柄な態度を崩す訳無いがな。こいしに至っては彼女に対して不信感や警戒心を持ってないのか、それとも持っていて尚平気と判断したのか、平然と近づいて手を差し出していた。
…マジかぁ…会った奴にいきなり握手求めますかぁ。…でも、話してる感じから俺もこいし同様に、さほどその子に警戒する必要が感じないんだよな。
言うならば近所のいたずらっ子。幼い見た目が相まって良くマッチしてると思う。
「あ…うん。よろしく――じゃない!!」
あ、察した。実はこいつチョロいわ。
笑って手を差し出したこいしに普通に握手を返した後、彼女は思い出したかのように慌ててこいしの手を払いのけ声を上げている。
ノ…ノリツッコミ…?何だこいつ…マジもんの子供なのか?そんな姿見せられたら低い警戒心が尚更が下がったぞ…。
「(お進。この子面白いかも)」
「(あ、ああ、結構弄りがいありそうだな)」
この時俺とこいしの間で交わされたのは一瞬のアイコンタクトのみ。それだけで大体の意思疎通は出来ると俺は自負しているよ。まぁ、そんだけ長く一緒にいるから出来る芸当だと言えれば聞こえは良いんだが…実際はこいしの性格が段々俺に毒されているからだとはあまり大きな声では言えない。
…ってかそれ以前に話が進まんから結構困る…。分かってると思うけどお前まだ自己紹介ぐらいしかしてないからな?そもそもこいつが割り込んで来た癖に目的がハッキリしてないからこんな長い事考える羽目になってるんだよ。
「そんで?お前は何の用で来たのさ?」
って事で核心に迫ろう。あんまりグダグダと引き伸ばしても時間だけが過ぎて勿体無いからね。
「それは初めに言ったろ。…どうやってかは知らないけど、お前は
「いや、それは聞いたけど…」
問題はそれがどう俺に関係してくるかが聞きたいんだが…まさかそこまで問いたださなきゃ伝わんない事は無いだろうな。
「ははぁ…成る程ねぇ」
「こいしは気づけたのか?」
イマイチ話が進展しない事にいい加減辟易してたところ…どうやらこいしは理解したらしく感慨深い息と共に数度に渡って頷いていた。
はて?俺はそこまで察しが悪い人間じゃ無いと思っていたんだけどなぁ…。それでもどうやら今回はこいしが分かるって言ってるからそのまま進めて貰いましょ。
「まぁね。だってわたしも妖怪だし似た様な事考えた事あるもん」
ほほう。わたしも妖怪だし…か。って事は妖怪に起こる限定的な何かって事で良さそうだな。
ふふふ、さっきは察しが悪いなんて言ったけど少ない情報からでもここまでの推測が出来るんだ。後はこの調子でピースを繋ぎ合わせれば……。
「って言うかお進も人里で一枚噛んでたよ?」
「はい?噛んでた?俺が?」
「うん」
なんてこいしが言うもんだから一瞬にして土台から崩される。…俺も噛んでいた?
んん~?……はい分からん!考えんのなんて止めだ!たとえ諦めが速いのはご愛敬だとしても、二人の事柄からは何が言いたいのか要領を得ない。それに、こいしはこいしで俺の疑問に頷いて返したら、『後はもう分かるでしょ?』みたいな感じで見てくるだけだからこれ以上は聞いても辿り着かんだろう。
……くっそ、ならいったん整理して考えよう。こいしの言い分から妖怪だからって事が重要されてて…尚且つ俺が人里で一枚噛んでた――いや、俺がここで関与してるって言ってるんだから、妖怪ってのは大して重要じゃ無い…?
ん!?人里!?だとしたら俺が関与してるって方じゃなくて、俺が人里でやった事の方を思い出した方が確かじゃね?なんせ俺が人里でやった事の数なんてたかが知れてるだろうし…。
「ん~……あ。ああなるへそね。単純な事じゃんか」
「やっと分かった?」
「おう」
こいしの説明もやっとの事で氷解する。何だ何だこんな事だったのか。そうだな、確かに俺が人里で一枚噛んでいるし妖怪にとっちゃ死活問題になりうる事柄だな。
「分かったみたいだな。そう、私達妖怪は人間の恐れを糧にする。だからお前に居られたら私にとって都合が――「人里で人間に馴れ馴れしくされて困ってたんだろ?心配しなくてもあいつらは改心してるから大丈夫なんだけどな」
うんうん、きっと彼女も人間達に迷惑していたのだろう。阿求ちゃんも椛も、人間が調子づいた所為で被害被ってたとか言ってたからな。その時に堪った鬱憤が今俺に来た訳ね。
ま、それなら仕方無い。俺は関係無いと言っても良いんだろうけど…身近に人と妖怪の共存させるのに努力した奴がいるのだからこういう事に強力して多少なりとも恩を返しておくのも偶には良いだろ。
「それじゃあ妖怪娘のストレス発散に付き合ってやるよ」
「「いや違う!そうじゃない!!」」
…え…えぇ~何その類稀なるコンビネーション…。
…おいおいお前ら、そんなに俺の回答がおかしかったのか?会ったばかりなのに息もピッタリで二人仲良く突っ込み出来るなんてなかなかだぞ?。
いや~やっとこさ早苗を出せました。すぐにどっか行きましたけど…。ですが、これで漸く山方面にも取っ掛かりが出来ましたので良かったです。
さて、星蓮船の方々は一部を除いて主人公と全く関わらせる気が無かったのですがどうしましょう…。下手に出しても出演過多状態でまともに動かせなくなるのが目に見えているので、出演がほぼほぼ無い方を関わらせるなら関わらせるで本編関係無しの番外編や日常編とか作って出したいですねぇ~。(ギャグ系がやりたいのです)
……過去に作った番外編を含め需要があればですけど…。
それではまた次回。