受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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もういっそ射命丸呼びでいいかもしれません。文って名前呼ぶのがパっとしないんですよねぇ。
後クッソどうでもいいですがサブタイがラノベのタイトルみたいになっちゃいました。

初めは会話のみの構成。


それではどうぞ。


 


第61話 畑の主はお知り合い?

〜永遠亭に残った者の会話〜

 

 

 

「…ちょっと永琳、一進は本当に大丈夫なの?」

 

「何よ紫。自分だって彼を送り出したくせに何今更不安になってるの?」

 

「だって、それはそうじゃない…。一進は何も知らないで行ってるのよ…なのにいきなり幽香を相手するなんて…」

 

「確かに危険度は高い相手ね」

 

「……因みにですが、前回私が薬草を貰いに行った際にはストレス発散と称して幽香さんに嬲られましたよ…」

 

「それは貴女(優曇華)が弱いからよ。彼は貴女相手に立ち回れたのでしょう?ならある程度は大丈夫よ」

 

「それは…そうなんですけど…」

 

「そう言えば優曇華、貴女は一進とやりあったのでしょう?幽香とどっちが上だと思うかしら?」

 

「…あ〜…どうでしょう。強さは測りかねますが…正直な所恐ろしいのは幽香さんかと」

 

「貴女は薬草を取りに行く度にでも刷り込まれてるのかしらね」

 

「……」

 

「…でも彼女の言うように幽香を相手にするなら真っ当な判断よ…やっぱり私も――「やめなさい」…なんでよ」

 

「貴女は心配し過ぎよ。私だって彼にただただ無駄な時間を過ごさせていた訳じゃ無いわ」

 

「(…そうなの?)」

 

「(…さぁ…私の目には遊ぶ姿と家事をやっていた姿なら映っていましたが…)」

 

「優曇華。貴女の目は何?飾り?飾りなのかしら?飾りなら要らないわよね」

 

「はいぃ!?すみません!!」

 

「永琳、話が進まないわ。…で、結局貴女は一進に何をやったのよ?」

 

「え、ああ…。コレよコ・レ。霊力や妖力を集約しやすくする薬を彼に使ったのよ」

 

「…霊力や妖力の集約?何よそれ」

 

「あ!?だからですか!?通りであいつの一撃一撃が異様に重いと思ったんですよ!」

 

「ふーん。って事はちゃんと効果が表れてるみたいね」

 

「使っていたなら先に教えて下さいよ!拳を流す事すら難しかったんですからね!」

 

「悪かったわ。私の弟子なら言わなくても分かると思っていたから」

 

「うっ……」

 

「いや、二人で盛り上がって無くていいから私にも分かるように教えなさいよ」

 

「ああ、それもそうね。これは元々患部の治癒能力を引き上げる――」

 

(長ったらしい説明はスキマ送りにされました)

 

「――なのよ」

「へぇ…単純に言えば強化薬なの。…で、副作用はあるのかしら?」

 

「流石は紫ね」

 

「そう言うって事はあるのね」

 

「ええ、まぁ副作用と言うより行程が厄介なのよ。この薬は定着まで時間が掛かるし、その上痺れや違和感を感じながらもその間は自然体で定着部位を動かしておく必要があるわ」

 

「ああ!そんな面倒な制約もありましたね〜」

 

「そう。それでも()()()なんて言われて出来るものじゃないわ。だから使用者には言わないのが一番の方法なのよ」

 

「…よく一進相手にバレなかったわね。あの子、無駄に勘が良いから気付きそうだけど」

 

「…姫様とてゐにはかなり手伝って貰ったわ。まぁ自ら家事がしたいと言い出した時には勝ちを確信したけど」

 

「えッ…と言う事は知らされてないの私だけですか」

 

「敵を騙すなら先ず味方から、それに優曇華は嘘が下手だからね」

 

「……永琳のやってくれた事には感謝するわ。…でも――」

 

「これでもまだ心配だって言うの?都合良く来た天狗だってオマケに着けたからそこまで気にする必要無いわよ」

 

「いや師匠…いくらネタを提示しても流石に幽香さんと敵対するのは……と言うか私からしたら何故一進が幽香さんと戦わされるのかも分からないんですが…」

 

「あ〜」

 

「それはね…」

 

「それは?」

 

「「まだ秘密よ」」

 

「はぁ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

side一進

 

 

 永遠亭から歩いてかなりの時間が経った頃…漸くして俺達の目の前に太陽の畑が姿を現していた。太陽の畑…それは、一面に広がる向日葵畑の事で、名の由来通り空に浮かぶ太陽に向かって数多くの向日葵(太陽)が見える大地であった。

 

 そして、俺達はメディスンの案内でそんな向日葵畑を歩いていると――。

 

「何落ち着いてんですかぁ一進さん!?自分が今何しでかしたか理解してます!?」

 

 なんて折角俺が太陽の畑について詳細を語っていたと言うのに、射命丸は喧しくも騒ぎ立てて俺に詰め寄ってくる。

 

 全く…こいつはこんなにも素晴らしい景色を見ているのに何も感じないのだろうか…。例え作ってる新聞が真っ当な新聞では無いとはいえ、仮にもジャーナリストなのだからもっと言う事があるだろうに。

 

「終わりましたね!あー終わりましたよ貴方のお陰で!!」

 

 そうやって風情云々をガン無視して何を俺に突っかかっているのだろうか。

 

 …例えばもし俺が故意に何かをしてしまったのなら謝るべきだろう。しかし、しかしだ!俺は射命丸から受けた忠告通りに花を傷付けないようにしていただけだから何の問題があろうか!

 

「さて射命丸。速さに自信があるんだろう?俺抱えて今すぐ飛べ」

「何逃げようとしてんですか!?と言うか私まで共犯にしないで下さい!!」

「だって仕方ねぇだろ!!イキナリ襲われるなんて思ってねぇよ!!」

 

 すまんな、皆置いてけぼりになってると思うからそろそろ自白しよう。実は俺達が太陽の畑を歩いていると急に現れた白い日傘を持つ女性に襲われたんだ。だから俺は反射的にグーを出してしまいこんな事に…。

 

「あ〜あ、大丈夫なのゆうか?」

「…ふ、ふふふ」

「もう誠心誠意謝りましょう!もしかしたらなんらかの奇跡が起きて許してくれるかもしれませんから!」

「俺は悪くねぇっ!」

 

 射命丸が俺の襟元を掴んでくるからテイルズでアビスってる奴みたくなったがそんなものは意味をなさない。寧ろ俺が殴ってしまった所為で少し離れた所で空を仰ぎ見るように横たわる女性が楽しそうに笑うのが聞こえて冷や汗が流れる。

 

 しかも、どうやら俺が殴ってしまったその相手が厄介な事に目的だった人物(風見幽香)だそうで…射命丸曰く相当危険な人物らしい。

 

「ふふふ、出会い頭に面白い事してくれるじゃない」

 

 そう言って(くだん)の危険人物は微笑んでいるが、こちらからしたら堪ったもんじゃない!!そもそも俺から始めたみたいに言ってるけど出会い頭に襲ってきたのはそっちなんだぞ!?俺は襲われたから防衛したんだし!

 

 つーかダッシュで逃げてぇ!射命丸の言葉を聞く限りもうこの先壮絶に嫌な予感しかしねぇもん!!

 

「十分に気を付けて下さいって言いましたよね!それなのに何をいきなり突発的でアグレッシブな奇行に駆られてるんですか!」

「奇行ってなんだよ!?いや確かに俺の行動は悪いのだろうけど俺がお前から聞いたのは花を傷付けるなだけだったからな!」

「そうですよ!そうですけどそれでも必死に伝えようとした私の頑張りから汲み取って下さいよ!!」

 

 頑張り?知るかそんな事!こちとら畑に入る直前に近くで転がってた痛ましい妖怪の姿が目に焼き付いてるっての!しかもおまけに芳醇な血の匂いまで香り出して軽いパニックだわ!

 

「まさか貴方がここに来るなんてねぇ」

「何だ。ゆうかは知り合いだったの」

「そうよ」

「「えっ!?」」

 

 はぁ!?いや…はぁ!?俺はあんたを全く知らないんだけどマジで言ってるのか!?

 

「メディスンもご苦労様。暇潰しに兎でも呼ばせたら予想以上のが掛かったわ」

「え〜折角面白い反応を期待したんだけどなぁ。これじゃ連れてき損だったよ」

 

 ……え?

 

「(…ちょっと射命丸…)」

「(ふぅ焦りました…。一進さんも人が悪いですねぇ、初めから幽香さんの知り合いならば――「(…違うんだ)」…はい?)」

 

 俺は小声で射命丸を呼ぶ。うん…この様子を見るに射命丸も完全に誤解してるな…。確かに今の言い方だったら誤解しても仕方なかろう。

 

 だが残念!!お前が思うほど現実は甘くない!

 

「(少なくても俺の記憶の中には風見幽香なる人物は存在しないんだが)」

 

 俺は一切この人と会った記憶を持ち合わせていないんだからなぁ!!何だ!?人里か!?仮に人里で会ってたとしてもどうせ人混みに紛れてたら分かるわけねぇだろ!

 

「(え?ですけど幽香さんは一進さんの事を知ってるみたいでしたけど――って一進さんもしかして…)」

「(…ああ。どうやらその通りだわ)」

 

 おそらくだが射命丸も気付いたようだからここで俺が考えるいくつかの可能性を紹介しよう。

 

 先ず、風見さんが本当は知らないのにデマで俺を知ってると言ってる線。…だがまぁそんな事するメリットも無い為これは無いだろう。

 

 次に、上で記述したように向こうが俺を見た事ある線。…確証が無いから可能性は無きにしも非ずってところだな。

 

 最後に、

 

「(単純に俺が忘れてる可能性がでかい…)」

 

 何と言ってもこれ。俺が夢子を忘れてた実例がある所為で記憶障害の可能性も大いに考えられる。つまりぶっちゃけた話これが一番有力説ってわけで…。

 

「(正直に言います?)」

「(…大丈夫かなぁ?スゲェ怖いんだけど…)」

「(大丈夫です。骨は拾いますから)」

「(後半の言葉のお陰でより一層足取りが重くなったわ!)」

 

 そんな訳で、俺は全く知らない妖怪に対して正直に弁明する事になっていた。

 

 

 

 

 

「…知らないってあんた…」

 

 そして、必死に弁明する事数分…。結果的に言うと俺は助かった。と言うより風見さんのやる気が目に見えるように萎えていったのである。

 

 その際に飽きたとか何とか言ってメディスンが居なくなったり、逃げ出そうとする射命丸を押さえつけたり色々あったが、一先ず気まずくなった俺達は誘われるがままに風見さん宅にお邪魔していた。

 

「…紅茶でいいわね?」

「…あ、はい」

「寧ろ私としては早々に帰りたいので――「紅茶でいいわね?」…はい」

 

 何故だろう…同じ言葉なのに当人から発せられる圧力が変わる事でこうも強制力が変わるものなのだろうか…。

 

「それで?覚えて無いって…ちょっとどういう事よ…」

「それにつきましては俺は何とも…」

 

 俺が悪いのだろうか…?紅茶を持って来てくれた風見さんに文句を言われるが、甚だ疑問ではあるもののこっちが忘れている可能性がありありとある為あまり強く言う事が出来ない。

 

「前回カッコつけた私がバカみたいじゃない…」

 

 いやそれは知らんけども。急激にメメタァな発言されましてもねぇ?

 

「…私を覚えてないって…もしかして魔界であった事全部忘れてるんじゃないの?」

 

 その言葉を聞いて俺は僅かにほくそ笑む。ビンゴだ!やっぱりこの人は予想通り魔界の関係者だった!

 

 それに話の通じる相手(殴られかけたけど)だし色々魔界の事を聞いておきたいので俺は頭を巡らせて情報を――。

 

「……魔界?…え!?魔界!?」

 

 ただまぁ問題点として何も知らない射命丸に俺の秘密ががっつりバレてしまったっていうね。…それにしてもマズったな…何人も何人も俺の事情に引き込みたく無かったんだが…。

 

 今の所巻き込んでしまった紫一家とこいしと先生が味方になってくれてはいるが、この話が広がってしまうのは非常にマズい。味方が多いに越した事は無いが、当然俺を快く思わないのも出てきてしまう。そうならない為にも内密に話を進ませたかったからな。

 

「あ〜射命丸…事を荒だてるのは――」

「こ、これはもしや大スクープですか!?私はもしかして大スクープを聞いてしまったんじゃないでしょうか!?」

「聞けやコラ」

 

 流石パパラッチ。既に頭の中では構想が練られてるようで聞く耳持ちやしねぇ。…どうすっかな、新聞で広められたら俺も堪ったもんじゃねぇし。

 

「戻ったら早速原稿を書きませんと!新たに幻想郷に来た外来人はまさかの魔界――「貴女…羽占いに興味ない?」

 

 心ここに在らず状態だった射命丸にまさに鶴の一声。…もしくは地獄からの通告。射命丸は楽しげな表情から一変して苦痛な表情で、壊れたブリキのように風見さんの方に振り向き始める。

 

「花では無く…羽?ゆ、幽香さん…付かぬ事お伺いしますが羽占いとは…」

 

 なんかもうスッゲェ泣きそうになってるけど俺は助けられないから自分で頑張ってな。それに、俺自身この事を黙って貰える様になるなら好都合なんだわ。悪いけど風見さんにつかせて貰うよ。

 

「? スキキライ(生か死か)のやつよ」

「二分の一でデッドオアアライブ!?…いや、分かってましたけどね!何と無く分かってましたけどもしかしたら〜と思って賭けてみたかったんですよ!」

 

 射命丸は諦めた表情で項垂れながらも手帳とペンをポケットに仕舞い、暗に新聞には取り上げないと行動に示す。ふぃ〜良かった良かった、風見さんのアレンジのお陰で思ったより簡単に射命丸の手綱を握れたな。これで広まる事は無いだろう。

 

「まぁ左右の二回で終わらすけどね」

「「まさかの根本から!?」」

 

 これには俺もビックリだよ!…羽では無く翼から…か。しかもそれだと死が確定されてる訳だからこの人俺よりかなりの畜生に分類されると思う。……絶対に本人の前では言わないがな。

 

「それじゃあ始めましょうか、藤代一進と魔界の関係を」

「あの〜私は聞かないっていうのは〜」

「ある訳無いじゃない。貴女も聞くのよ?」

「ここまできたら一連托生だろ?」

「ジーザス…たまには守矢で参拝でもしておくべきでした…」

 

 新聞に書けないのであれば我が身の保険。それは正しい行動だけど逃がさんよ?俺としても強い奴が味方にいるのは心強いからさ。ちょっくら最後まで付き合って貰うよ。

 

 

 

 

 

 




憐れ…文。動かしやすいツッコミが欲しかったが故に主人公勢に巻き込みました。
そしてなんと散歩や筍堀りやゲームは立派な伏線だったのだぁ!…完全な偶然なんですけどね。


それではまた次回。

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