受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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さ~話が迷走してきました!!一体どう終着するのでしょうね!

……なんてはしゃいでいられない所まで来てしまいました…。
ちゃんと人里終われるのか不安でもあります…。

初めは三人称。


それではどうぞ。





第41話 思いの丈を語る

~団子屋前~

 

 

 

 

「…特別な感じがしないこの素朴な味がまたいいな」

「やっぱり温かいお茶が合うね〜」ハフゥ〜

 

 満足したかのようにこいしは温かな吐息を漏らす。

 

 一通り注文した団子を食べ終えた二人はリラックス状態になっていた。

 

「やめろよジジくさい……いや、そもそも団子食ってる時点で若いかどうか知らんけどもさ」

「合う物は合うんだから仕方が無いじゃん♪それじゃお進はお茶要らないの?」

「…俺はジジイで結構だから」

「ほらね」

 

「…………」

 

 そんな二人を見ては一口…また一口と、自分の愚痴で一進から同情され奢られてしまった為椛はいつも以上に味わって団子を食べていた。

 

「…すまないな…何だか奢ってもらう形になってしまって…」

「いやいや、そんな事気にしなさんな。俺は大体の場合苦労人の味方だから」

「そうは言われてもな…」

 

 『金はあるから気にするな』…一進からはそんな風に言われても実際自分達はまだ知り合ったばかりの関係のため、椛は(いささ)か気が引けていた。

 

「じゃんじゃん食べてもいいんだよ〜♪お進だってその方が喜ぶんだから……お姉さーん!わたしぜんざい食べた〜い!」

「プラスでよもぎと焼団子二串ずつ頼むよ!」

「――はーいすぐにー!」

「…………」

 

 そんなよそよそしい心境とは裏腹に、店先から店内に新たな注文をするこいしとそれに乗じる一進…。

 

「二人ともよく食べるな…」

 

 椛自身あまり食べていないとはいえ、それでも二人とも倍以上は軽く平らげていた。

 

「まぁな。俺らは朝抜きでこっち来てるからな…まぁそんな訳で椛も食え食え、そもそも俺は諸事情で人里で金を使うって仕事を請け負ってもいるんだよ」

「ああ!だからそんなに持ってたんだ」

 

 一進の膝の上でこいしは何か納得したように手を打ってるが…当然椛には伝わる訳も無い。

 

「仕事?散財が仕事とは何とも分からない事をやっているな…」

 

 自分だって仮にも山の警備なりで仕事がある身なので、社会のしくみが全く分からない妖怪と違ってそれぐらいの常識を椛は持っていると理解している。

 

 …普通妖怪はある程度のルールは守るが基本的には好き勝手に生きる者が多い。

 

 しかし、天狗はそういった妖怪と違い…珍しくもちゃんとした組織関係が成り立っているため規律などに厳しい種族である。

 

「……ああそっか。まだ地底との条約うんぬんが出回ってないのか…」

「まぁ、天狗お得意の情報網だからしょうがないよね」

「いやいやいやそれを言ったらダメだろう」

 

「…は、ははは…」

 

 一進はこいしの唇に人差し指を当てて口止めのジェスチャーをするが……そんなのは後の祭り、椛は二人のやりとりを乾いた笑いでしか返す事が出来なかった…。

 

 

 すると、コホン…と話を変えたかったのか…椛が小さく咳払(せきばら)いをする。

 

「いや、地底については文さんがちょうど記事を書いているから分からなくは無いんだがな……」

 

 実は文が条約撤廃の記事を書くように紫から言われているのは天狗の中でも僅かしか知らない…。

 

「…逆に二人は何故それを知っているんだ?」

 

 ……だからこそ椛は疑問に思う。

 

 文自身そんな話題性に富んだネタならば自分の新聞で公表する為に内密に作業を進めていた…。

 

 となれば、さっきも記述したように椛は山の警備を生業としているのでこの二人は自分の能力を掻い潜って山に入って来れる実力者だと行きついたからだ。

 

「え?だって〜わたしがその地底から来た妖怪だもん」

「俺も幻想郷暮らしは地底からスタートだし……撤廃については紫から直接言われたんだ」

「……何だ…そういう事か」

 

 だがそんな思いと裏腹に、追加注文で来た団子を頬張りながらもあっけらかんと答えたこいしと一進の言葉に椛は納得し弛緩する。

 

 確かに地底に居たのなら新聞を知らないのも無理はない…なにせわざわざ鬼に近づきたいなんて思う酔狂な天狗などいやしないだろう……。

 

「おう。そんで一足先に外交官?として地底のイメージアップ戦略をしに来たってわけよ」

「…ほう。だから話が金を使うに繋がってはた迷惑な若者たちの粛清もしてたのか」

「あれ?もみ~も見てたんだ?」

「『もみ~』って私の事か…。まぁ構わないが…私の能力が千里眼でな、大体の距離なら見通せるんだ」

「すっげぇ便利な能力だな」

 

 そうか?だからこそ部隊長なんてポストが用意されたんだがな。と一進の賛辞をやや自慢混じりの軽口で流そうとするが普段から褒められる事なんて無かったので可愛らしく尻尾を振っていた。

 

「わ~いもふもふ~♪」

「…ち…先越されたか」

 

 そんなものを見せられたこいしは我慢など到底出来ず、いつの間にか一進から降りて椛の尻尾を触っていた。

 

「ひゃう!?お、おい!いきなり触るのはやめろ!」

 

 こいしに自分の尻尾を触られ思わず過敏に反応してしまう椛…。

 

 天狗だの白狼だの言ってても所詮は犬に変わりない…地霊殿には様々な動物が居る為それらの面倒を見ていたこいしの撫でテクに抗える訳が無かった。

 

「はうぅ~…///」

「……こいし。次交代な」

 

 こいしに触られている姿を見て、ニヤニヤした顔を浮かべ隣でスタンバイ…。

 

 無論地霊殿で暮らしていた以上当然一進も取得している。

 

「!?/// ええい手をワキワキさせるな!!お前も人里の男たちと同じか!?」

 

 流石に男に触られるのに抵抗がある椛は慌ててこいしを引っ剥がして一進に押し付ける…。

 

「へいへい分かったよ……って言いたいんだがあいつら(男たち)はマジで何をやったんだ?いくらなんでも毛嫌いし過ぎのような気がするが…」

「あ~、それわたしも気になってた」

 

 出していた手をナチュラルにこいしの頭に乗せて一進は気になっていた事を椛に尋ねる。

 

「……単純な上に馬鹿馬鹿しい事だぞ…」

 

 鬱陶しそうにため息をついて尻尾を手櫛で整えながらもしぶしぶ言葉を紡ぐ…。

 

「人間が妖怪を恐れる気持ちが薄まってきてる所為で多少強引でも妖怪たちに近づきたいと思う奴らが増えているんだ。因みにココの店の息子もそうだぞ」

 

 …何かが吹っ切れたのか…椛は散々遠慮していた団子に素早く手を付け頬張り始めていた。

 

「……すみません…」

「あ、…いや……」

 

 しかし店の中から申し訳なさそうに頭を下げる当事者の母親を見て少し言い淀んでいた。

 

「あ〜把握した、だからあんだけシバいたのに感謝されたのか…」

 

 椛の説明でやっと一進の中では殆どの事が整理される。

 

 妖怪なのだから強引にきたら返り討ちにすればいい…しかしそれはルールがある為人里において人間たちに手を出す事が出来なかった。

 

 それならば良識ある人達で止めればいい…しかしそれはやり合って分かったが無駄に洗練されていた彼らの動きから他の人達ではでは止められなかったのだと思い当たっていた。

 

「…本当にありがとうございます。あれで息子も真面目になればいいんですが…」

「いやいや、俺は襲われたから返り討ちにしただけだよ……。もっとも…こいしに手を出してたら――なぁ息子君?」

「ワヒィ!!?ス、スミマセン!!これからは真面目に団子屋継ぎますから!!」

「そうかそうか、励めよ青年!」

 

 近くの小屋の陰から様子を窺っていた男に気付いていた一進は笑いながら彼を脅す。

 

「(……ノリで青年とか言ってるけどお前は何歳だって話だよな)……ってどうしたんだ?」

「…………」

 

 冷静にツッコミを入れようとしていた椛は真剣な顔をしているこいしに気付いて声を掛ける。

 

「ん~?いや、え~っとね~(能力で服買う場所分かる?)」

「(……そこを真っすぐ行って左手だ。だが急に何故…)」

 

 そんな耳打ちをされ、椛はすぐこいしに目的地を教えたがそれでも理解が追い付かない…。

 

「(ふふ~♪)ねぇお進?わたし最後に触られたんだけどな~」

「そういやそうだな…よしシバくか」

「何がよし!?ちょ、ちょっとぉそれ俺じゃないですよ!!」

「one for all all for one」

「何言ってるのか分からないっすが良くはないっすよね!?」

 

 ゆっくりと立ち上がって男に近づく…残念ながら流石に英語は伝わらないらしい…。

 

「……連帯責任」

「それなら分かるけ――分かりたくなかったぁ!!」

 

 実際意味は多少違うが……どちらにせよ一進は彼に制裁を与える気だったのでどっちでも良かった。

 

 …そうして騒ぎ立てる男の前で軽く構えた一進は手を上げる……。

 

「ふんふふ~ん♪……は!?」

 

 だがこの時一進は力で制裁しようだなんてこれっぽっちも考えてもいない、本人もただ脅かしてやろうと遊び半分で手を振り上げただけなのだが…それを制された事に驚いていた。

 

「「「えっ?」」」

 

 確かにこれが別に彼の母親だったり、見かねた椛が止めようとするのであればまだ理解出来る…。

 

「ノンノン違うんだよ~♪わたしはそんな事の為に言ったんじゃないよ?」

 

 だけどこいし自身の手によって止められるのは少々予想外の事だった。

 

「え?えぇ??」

 

 最早全くついてこれていない彼は一旦放置しておくが、なんだかんだ言って一進は危機管理能力や理解力が高い人間である。

 

「…………服か…」

「あったり~♪」

 

 こいしの満面の笑みを見て冷や汗を流す…。

 

「……なんとなくで言ってたら当たったけど…一体触られたのと何の関係があるんだ?悪いけど繋がりなんて――「はいどーん♪」メキィ カハッ!?」

 

 突然の不意打ちで…こいしの手が容赦なく一進の腹部に突き刺さる…。

 

 あれだけ団子に夢中になっているものだから誤魔化し通せるのではないかと一進は思っていたけど……それは大きな誤算だった。

 

「…………」シーン

「よしよし…お姉さ~んお会計~」

「……え、あ、はい!」

 

 動かなくなった一進を尻目にポケットから財布を抜き取ってお金を払い始める…。

 

「…ですが息子が迷惑を掛けた件もありますのでお代は結構ですよ」

「いいっていいって!わたしも使っとかないとお姉ちゃんに何か言われるから、ん〜と…もみ〜の分も払うよ?」

「あ、ああ。ありがとう…」

「うん♪わたしもお進を着せ替え人形にしなくちゃいけないからそれじゃ〜ね〜」ズルズル

 

 初めの時にした約束は覚えていたようで、しっかりと椛の分のお代も払ってこいしは荷物を持って席を離れる。

 

「「「…………」」」

 

 ただそれだけなのに三人ともこいしが手に引きずっているものが気になって目を離す事が出来なかった。

 

「…俺らが集団でかかって触れる事が出来なかったあの人を一撃で……」

「それもあれだけ仲良さそうだったのに…」

「(ん?ああ…なるほどな…)いや、驚いている様だが妖怪ならあれぐらい普通にやるぞ」

 

 二人の反応を見た椛はこいしの考えに気付き…上手い感じに言葉を繋げ妖怪への恐れを高めさせていた。

 

「ルールが決まっているとはいえ…やろうと思えば理不尽なんてざらだからな」

「………妖怪って怖ぇ…」

 

 それが功を奏し、バカをやってた自分達の身が今まで無事だった事に安堵を覚えてより一層真面目に生きていこうと彼の心に刻ませることに成功した。

 

 

「(……すまんな一進…犠牲になってもらって)」

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

sideこいし

 

 

 

 

「…お進もういいよ」

 

 もうさっきの店はもう見えないし、お進も何時までも引き摺られたいとは思ってなさそうだしそろそろ起こしてもいい頃かな。

 

「…はぁ~あ」

「ゴメンね?痛かった?」

「割とマジで…まぁ納得はしてるけどな」

 

 ん~ちょっと強すぎるぐらいでやっちゃったけど~大丈夫そうだね!よかったよかった♪

 

「流石にあんだけ見せつけておいたら…これからは変に妖怪にちょっかいを出したりしないだろうし、同じ若者たちにも広まっていくだろうよ」

「あの様子じゃもみ~も昔あったんじゃない?お団子食べながら迷惑そうに話してたよ?」

「はっはっは!確かにそうらしかったな……ま、こいしの考え上それだけじゃ無いよな」

「――!?」

「人間が妖怪を恐れなくなる事に危機感を覚えたのか…」

 

 …………。

 

 ……ふぅ……バレちゃってたか…。

 

「うん。わたしは…お進を利用したの……」

 

 言い訳をしても仕方が無い…。

 

 もみ〜の話を聞いて、ここの人間はわたしたち妖怪をそれほど恐れてない事に気付いたからちょっとだけ手を加えた。

 

 上手くいけば妖怪への恐怖が里に伝染してわたしたちの存在が危ぶむ事も無くなると考えたんだけど……。

 

「ゴメンなさい…ゴメンなさい……」

「…………」

 

 だって、これは結局のところお進を自分のために(てい)()いように利用しただけだもん……。

 

「はぁ……本当に悲しいからもうやめろよ」

 

 お進がわたしの頭に手を下ろしてくる…だけど何て言われてもしょうがない…。

 

「はぁ〜…」

「――ッ!?」ビクッ

 

 叩かれると思ったお進の下ろされた手は…ゆっくり、ゆっくりとわたしの頭を撫でてくれていた。

 

「そんな事で謝るな、俺が怒ると思ってんのか?」

「……え?」

「……その様子じゃ怒られると思ったのかよ…」

 

 顔を上げると…少し悲しそうな顔をしてわたしを見ているお進が映る…。

 

「よっと、俺だって納得してるって言ったろ。だから文句を言うつもりも怒る気もさらさら無いぞ?」

「…だってわたしはお進を都合のいいように――「気にしてねぇって」…」

 

 お進は自分についた土汚れをほろって、またわたしを抱っこして笑ってくれる…。

 

 何でそんなに優しく出来るの?何で自分が酷い目にあっても笑ってられるの?

 

 ……わたしの中ではそんな気持ちがいっぱいになってる。

 

「……何で?」

「気にするわけ無いだろ?俺の身一つでこいしやみんなが救えるんだったらさ…そんなんだったらいくらでも利用してくれよ」

 

 まぁいきなり殴るのは勘弁だけど……ってそんなのおかしいじゃん!!

 

「何で!?何でお進はそこまで人の為に自分を犠牲に出来るの!?」

 

 今回はお進からすればただ殴られただけだし…もっと言ったらわたしが一緒にいなかったら襲われる事もなかっただろうし!

 

「…………どう足掻いたとしても、自分の為にも、人の為にも動けないあの頃と比べればな」

「……ッ…」

 

 わたしの叫びに返してきたお進の話を聞いて言葉が詰まる。

 

 お進が外界でどうやって生きてきたのかわたしは知らない……そもそもそれだけ嫌われていたとするとまともな生活なんて望めない筈なのに――。

 

「地底って旧地獄って言ったよな?……だったら俺が思うにそれはちげぇよ。いや、他から見たら実際にはそうなのかもしれないけど…」

「……?」

 

 足を止めたお進が突然話の腰を曲げてくる。

 

「それが何?」

 

 動いてないならちゃんとお進の顔を覗き込んでしっかりと話を聞こうとする。

 

 …わたしは少しでもお進の事が知りたいから……。

 

「……お燐に拾われてさとりに守られた、お空に懐かれて勇儀に認められた、そんでもってこいしに受け入れられて救われたんだ……」

「…………」

 

 だからさ…って一語一語丁寧に言葉を繋げるお進はいつもより格段に真面目な表情をしていた。

 

「……俺にとっちゃあそこは地獄なんかじゃなくて天国なんだよ」

「………うぇ…」

「…え!?ここで泣くの!?」

「ウワァァン!!」

 

 って言われても止められないんだよ〜。

 

「ふぇ〜ん!」

「ああゴメンゴメン!!流石に今のは気持ち悪すぎたな!」

 

 違うよ〜違うけどまさかここまでお進に思ってもらえてるなんて思ってなかったんだもん〜。

 

「「「ざわざわ」」」

「……ハハッ…こりゃ俺の悪評が広まりそうだな…」

「…グスッ……大丈夫だよお進」

「何がさ?」

「えへへ~♪」

「『えへへ~♪』じゃねぇよ…ったく……」

 

 ふふっ…心配しなくて大丈夫だよ♪

 

 

 ……だってわたしがそれ以上にお進のいいところをいっぱいい〜っぱい知ってるから♪

 

 

 




みなまで言わないでください…『どうしてこうなった』ってのは私も理解しています…。
恐らく妖怪の山の話の為に椛を出しておこうとしたのが浅はかでした…まさかこんな長くなってしまうとは。

もう沢山の荷物を貰ったのはカットでいいですかね?グダり始めていて非常にテンポが悪い状態なんですよ。


それではまた次回。

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