受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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もう少し延ばして二話構成にしても良かったのですが…始めの方の文と終わりの方の文を同じ回に入れたくて長めの一本になりました。

…それにしても私っていつまで紅魔引っ張るんだろ?


それではどうぞ。


 


第39話 ドSのM

sideパチュリー

 

 

 

 

 

「はぁぁ〜…羨ましいですねぇ~」

「…何がよ」

 

 場所は大図書館のいつものスペース…。

 

「はぁぁ~あ」

 

 それでねぇ…こあ?私の前でそんな嫌がらせかってぐらい盛大なため息を吐くのは止めてもらいたいのだけど…。

 

「何が…って決まってるじゃ無いですかぁ〜。こいしさんですよこいしさん!」

「ああ…あの子ね」

 

 彼女なら今朝早く一進と出掛けたそうだけど…一進は大丈夫なのかしらね…。

 

 さとりに遅くまで働かされてたのもそうだけど…それでなくても最近まともに休んで無い筈だったし…。

 

「そうですよ!好きな人とデートに出掛ける……あぁ〜もう羨ま妬ましいですッ!私だって!私だってぇ!!」

「そうね、あんたを好いてくれるのがいれば別に出掛けてきてきてもいいわよ……いればの話だけど」

「どうせ私にはいませんよォ!!」

 

 はぁ、煩いわね……それぐらい知ってるから騒がないで欲しいのだけど…。

 

「ギャーギャー!!」

 

 はいはい…え〜とコレとコレは読み途中で…コレは終わったわね…。

 

「しょうがないじゃないですかぁ!こんな劣悪な環境で働かせられてる乙女を救ってくれる王子だなんて――」

「ほら、ほざいてなくていいから「ほざッ!?」この本をしまって――……何が劣悪な環境よッ!!」

 

 さらっと流しそうだったけど劣悪ッ!?

 

 この子は言うに事欠いて私が管理しているこの図書館が劣悪って言ってるのかしら!?

 

「だってそうじゃないですか〜地下だから日当たりが悪く風通しも悪く湿気も酷いの三拍子ですよ!」

「ウッ…」

 

 あんな事言われてつい怒ってしまったけど…確かに風通しが悪いのは良く無いわね……。

 

「あ〜あこのままだとここの魔導書が読めなくなるのも時間の問題ですね」

「し…仕方が無いじゃないここ以外に空き場所が無いんだし…それに日が当たらないのなら本が褪せなくて好都合だわ!」

「魔導書がカビたりでもしたらどうするんです?」

「それは…」

 

 いくら日が当たらないから本が褪せないと言っても流石にカビたりでもしたら本末転倒になるわ……。

 

…衝撃からの保護ならともかく、私でも本がカビないようにする為に保護魔法を掛けるのは骨が折れる事だしね。

 

「私だってここにある本が衝撃等で破けたりはしないようにパチュリー様が頑張っているのは理解してます」

 

 ええその通りよ、だけど本一つ一つにこれ以上魔力を裂いて尚且つ新たな条件を加える事はしたく無いのよ…。

 

「…ですからカビさせない為にも、これからはこまめに掃除をしていきましょうって私は言っているんですよ!!」

「…………」

 

 そう叫んだこあの言葉には…周りの本を慈しむ心が宿っているように私には聞こえた…。

 

 …ふふ…本を好む私にとってこれほど嬉しい事も無いわね…。

 

 

 …………はぁ~。

 

「…分かったわよ…こあには負けたわ…。これからは気をつけるようにするからそれでいいでしょう?」

「はい♪頑張りましょう!」

 

 ……全く…。

 

 この部屋は薄暗いし…明かりだって大したものは無いけれど……。

 

 それでも明るい微笑みを見せてくれたこあの顔を見て私はついに………()()()()()()()

 

「――ってなる訳無いでしょ!!何しれっと私まで掃除させようとしてんのよ!?」

 

 あんたの手口ぐらい分かってんのよ!自分一人でやるのが面倒だからあんな事言って手伝わせようとしてるだけでしょ!!

 

 全く…あんたは私の使い魔として契約しているんだから私を巻き込んで楽しようとなんてしないでもらいたいわ!

 

「………私が……」

「……今度は何よ…」

 

 思惑が見破られたからだろうか…こあは顔を俯かせて微かに震え出す…。

 

 ハッ!そんなに打ちひしがれていたって契約上貴女は私の従者代わり――。

 

「私がここまで煩く言うのもパチュリー様を考えての事ですよッ!」

「……ッ」

 

 …驚いた…突然ガバッと顔を上げたこあの瞳には涙らしきものが…。

 

「パチュリー様はお身体が弱い…それは私も重々承知しています!」

「…そ…それは………」

「だから…!私は少しでもパチュリー様のお身体を壊す要因を取り除きたくて…私は…私は…!」

 

 そこまで言ってこあは声を震わせながら再び顔を伏してしまう…。

 

 …いくらなんでもそこまで言われたら何も思わない私では無い。

 

「……劣悪な環境…ね」

 

 人手が欲しかったから魔界から呼び出して無理やり契約してこき使ってたけど……今までこあの事を考えずにいたみたいね。

 

「…………」

 

 …せっかくレミィとフランの仲が直ったっていうのに私達が拗れてどうするのよ。

 

「…そうね…悪かったわ…私も意地になってたからもう少し――」

「まぁ偶然にもイイハナシダナー雰囲気になりそうだったので言ってみただけなんですがね…」

「お前ぇぇぇ!!」

 

 ハァ!?何なのこの悪魔は!?さっきまで泣いてたかと思ったらケロッとして!さっきまでの私の感動を返しなさいよ!!

 

「いや〜すいません〜」

「……ああ…あんたが悪魔だったのを再確認したわ」

 

 さも私に怒鳴られるのが当然だったかのようにヘラヘラしてして…謝ってるでも舐めているでも取れる様子…。

 

「自分の従者だってのにこの身の振りようは考えものね……」

 

 これは一度さとりから飴と鞭のやり方でも聞いたほうがいいかしら…。

 

「へへへ〜…て言ってもパチュリー様だって実は楽しんでいるでしょう?」

「……いいからこの本を片付けてきなさい…」

「またまた〜隠さなくてもいいじゃ無いですか〜」

 

 ……渡した本を机に置き、まだ居座ろうと話し出すこあ…。

 

 昔はもう少し素直だったのだけど…どこでこんな面倒な子に育ったのかしら…。

 

「パチュリー様にお仕えしてからですかね?」

「…しれっと心読んでんじゃ無いわよ」

 

 あんたとの契約内容に心情の共有なんてあった覚えは無いわよ。

 

 そもそも怒るポイントが若干ズレている気がしなくも無いけど…今更こいつを怒った所でどうせのらりくらりと流されるだけだしね。

 

「…長く生きる者にとって最大の敵は暇ですからね」

「さも当然のように私の言葉を無かった事にしたわね」

「暇とはツラ〜い事なんですよ〜」

 

 あ、これ私が折れない限り話が先に進まないやつだわ。

 

「…まぁ…そうね」

 

 もうメンドくさいし…あんたに合わせるから好きにしなさい。

 

「私達も長いですからね〜。パチュリー様は私と初めて会った時の事を覚えてます?」

「…さぁ?どうだったかしらね」

 

 ……こあの言う通り私達はゆうに百年は生きている。そしてこれからも長く年月を生きるだろう。

 

 こあの言った通り変わり映えしない日常なんてものを続けていたらいつかはおかしくなる…。

 

 …仮に私が本当に人手が欲しかっただけならきっと魔法で洗脳紛いの事をして忠実な人形を作るわ。

 

「それならまだ少し語りましょうよ。私達の馴れ初めを思い出したいですか?」

「冗談、興味無いわ」

「…そうですか、じゃあそうですね〜」

 

 確かに自分の意に沿わないのに乗る事も一つの暇潰しになるのは正しい…。

 

「…あまりしつこく言ってるとまた折檻されるわよ」

「うぐ!?そ…それは遠慮したいですね…」

 

 そう言うとこあは顔を青ざめて微かに震え出す…。

 

 何を言うつもりだったのか分からなかったが…やはり一進達の事らしい。

 

 …私の知らない所で起きていたけど…どうもこあと美鈴がデートに行く一進をからかったようでその時に酷い痛手を受けたって聞いたわ。

 

「そもそも貴女悪魔のくせに何が乙女よ」

「ピンポイントにそこの話掘り返さなくていいじゃないですかぁ!!」

 

 まぁ、こあが乙女だろうが気にしないのだけどね…精々『はい』だけしか言わない人形にはなって欲しくないだけだし。

 

「私だってあんな素敵な恋をしたい年頃なんですよぉ〜」

「ハッ!」

「鼻で笑われた!?」

 

 おっとごめんなさいね…ちょっと冗談抜きでバカバカしいと思ったからつい……。

 

「あ〜!そもそもでズルいんですよ…悪女なんです!こいしさんは咲夜さんとよろしくやっているのに他の男にまで手を出して…」

「……咲夜?」

「あ!?」

 

 こあは『シマッタ!』みたいな顔してるけど…あの子が悪女?それに咲夜がどう関係しているのよ?

 

「…あ〜ですけど一進さんは最初パチュリー様に言うつもりだったので……大丈夫ですかね〜?」

「だからなんの話よ」

 

 流石に気になる私は眼を泳がせて言い淀んでいるこあに一喝。

 

 いくら行き過ぎないぐらいの態度なら容認しているといっても所詮は主従…一つ強気に出ればこあだって言うことを聞かざるを得ないわ。

 

 

 …………ん?

 

「え〜とですね〜。何と言うか…咲夜さんとレミリア様がデキていて……その上咲夜さんがこいしさんに毒牙を掛けているらしく」

 

 …………。

 

「なんでも咲夜さんは小さな子を手篭めにして楽しんでいるそうなんですよ……あ、当然ですが他には言わないでくださいね」

 

 …………そう。

 

「ええ分かっているわ。…それに私が言う必要も既に無いしね」

「はい?」

 

 ……正直申し訳ない気持ちがあるのだけれど。

 

「……陥れたようになってしまったけど……これは偶然よ、私の所為じゃないわ」

 

 

 …え?どういう――……ヒィ!?咲夜さん!?

 

 昼食の用意が済んだので呼びに来ましたが…少し別の用が出来てしまいましたわ。

 

 痛ッ!?髪千切れーー痛い痛い痛い!!頭の羽(?)引っ張らないでください!

 

 小悪魔?私は少〜し聞きたい事があるのだけど?

 

 笑顔でナイフ!?パチュリー様ぁ!助けてくだ――。

 

「さて冷めてしまっては咲夜に悪いから急がないと」

 

 何で今だけはそんなに機敏なんですかぁ!?いつもはもっと――。

 

 誰が手篭めにしてるって?誰が毒牙を振りまいてるって?

 

 ヒィィィ!!?

 

 

 ……私は知らないし何も見てない…。決してこあを見捨てたとかそんなんじゃないから安心していいわよ。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「おっす〜先にいただいてるぜパチュリー」

「…あら魔理沙…貴女はまだ居たの……」

 

 図書館での起こったこあの惨劇……いけないいけない私は何も知らないんだった。

 

 …そうしていつも通りに食事をしに来たらレミィ、フランに加えて魔理沙が先に食事をしていた。

 

「ひっでぇな〜これでも起き抜けにフランと遊んでやってたんだぜ!」

「そうか?フランに遊ばれていたんじゃないのか?」

「…煩いぜレミリア」

 

 どうやらレミィも知ってるようね…私は起きてから上に行ってないし…(フランの部屋は地下からレミィの隣になってるわ)。

 

「…そう。フランが遊んであげたの…」

「うん♪魔理沙に魔力操作の仕方を教えてたの」

 

 …へぇそうな――え?魔力操作の仕方…?

 

「魔理沙…貴女……」

「仕方が無いんだぜ!?私はそういう細かい作業が嫌いなんだからよ!!」

 

 て言ってもフランがまともに魔力を感じ取ったのはつい最近の事よ…。

 

 それなのに貴女は……。

 

「ハァ……」

「何でそう私が悪く言われなきゃいけないんだ!?別にいいだろう?弾幕はパワーだぜ!!」

 

 なんて憤慨して熱弁されても…。

 

 そりゃ貴女のマスタースパークは目を見張るものはあるけど……ねぇ?

 

「…食べ終わったのなら図書館に来なさい。フランと一緒に面倒見てあげるわ」

「わーい♪魔理沙も一緒だー♪」

「いやちょっと待て!?私はお前らと違って細かい理論なんて立てずにガーッってフィーリングで――」

「フランもフィーリングよ」

「一緒だね!」

「……マジかよ」

 

 マジよ。お陰で私も教えづらいったらありゃしない、普通魔法使いは魔法式の組み立てからいって理論派の筈なんだけど…。

 

「だけどお兄様は理論派なのに如何してか上手くいかないんだよ」

「お兄様…?ああ一進の事か……ん?あいつも魔法が使えるのか!?」

「……微妙ね」

 

 彼はフランの言うように理論派らしいのだけど……まだ方程式を知らないようなものだから魔法使いには程遠いわ。

 

「魔法が分かっているけど実行まで至ってない。だけど魔理沙みたいに閃きで魔法が使えない分一回出来れば色々な応用が利くわよ」

「私は?」

「フランの場合素が強いからどうにでもなるでしょう」

 

 そもそも魔法は基礎の仕組みを知ってから考えて考えて発展させていくものだと私は思っているわ。

 

 それなのに魔理沙は新しい魔法を思いつけば失敗を恐れずに貪欲にまで強くあろうとする。

 

「……そっかあいつも苦労してんだな」

 

 なんて遠くを見る魔理沙を見るのは別に珍しい事では無い。

 

 私は魔理沙が魔法を覚えた詳しい経緯(いきさつ)を知らない…それに捨虫の法、捨食の法を使わずに人間であり続けようする執念なんてものは尚更分からないわ。

 

「だったらアリスも交えようぜ!その方がパチュリーもやりやすいだろ?」

「そうね。貴女にしては気が利くじゃない」

「…その程度の悪態で反応する私じゃ無いぜ!」

 

 それだけ元気なら大丈夫でしょう……まぁアリスは私と同じ理論派の常識人だしね…。

 

 だから手伝ってもらうにしろ、新たな発見を見つけるにしろ頼もしい事に違いないわ。

 

「アリスって?」

「ああ私と同じで魔法の森に住んでる魔法使いでな、たまに人里に出向いて子供相手に人形劇やってるような奴だから面倒見がいい筈だぜ」

「人形劇!?」

 

 アリスの紹介に目を輝かせて反応するなんて…やっぱりフランもまだまだ子供みたいね……。

 

「失礼します…。お嬢様…一進が一人で帰って来たかと思えば何やら急ぎの用事があるとのことです」

「アイツが一人で帰って来た?」

 

 あら?咲夜いきなり現れるわね……ホントにこあは処理されたのかしら…。

 

「よ~レミリア~飯食ってる所悪いんだけど美鈴借りたぞ」

「せめて私に聞いてからにしようという心すら無いのかお前は!!」

「あ~思ったより帰ってるのか…人数少ないな…」

「話を聞けッ!!」

 

 続けざまに一進が入って来ていつも通りなのはいいけど…何やら荷物が多いわね……。

 

「はい咲夜!取り敢えず生ものは全部持って来たからしまっといてくれ」

「それはいいけど……どうしたのよコレ…」

 

 そうね、咲夜も疑問に思ってるけど…魚や肉やらが多く入ってる…。どうしてそんなに買って来たのかしら?

 

「簡潔に言うと人里の男どもをシバいたら貰った」

「はい?」

 

「そんな事いいから人里直行!雑貨やら色んなのが阿求ちゃん家に残ってるから魔理沙も手伝ってくれ」

「ん~そうだな~それなら――「欲しい物があったらやるから」任せろ!」

 

 物で釣られた魔理沙は聞くや否や飛び出して行く……まぁ別にいいわね。

 

 それよりシバいたら貰ったって方が気になるし…何やら不穏な感じがするのだけれど……。

 

「フランとパチェさんは当然ダメとして……あ、日が出てるからレミリアもダメか」

「出て無かったら私は行かされてたのか!?」

「無論」

「無論!?」

 

 …そろそろレミィの扱いに同情しそうになるけど…まぁそこまで言い合える仲も必要でしょう。

 

「……お姉様が不憫すぎる…」

「八雲紫相手にならレミィも言い合えているのだけどね」

 

 彼相手に言い合えてるかは(はなは)だ疑問になるけど…。

 

「…一進、小悪魔なら図書館に居るわ」

「あ、そういやこあが居たか…。んじゃ図書館に寄って――」

「いいえ、私が連れて行くから先行っていいわよ」

「そうか?だったら頼むわ」

 

 ………………。

 

 一進はそう言って足早に部屋から出て人里へ行ってしまう……こあがどんな目にあってるかも知らずに…。

 

 

「ええ。……何をしてでもしっかりと連れて行ってあげるわ」ニヤァ

 

 ………………。

 

「…………」ガタガタガタガタ

「パチュリー?どうしたの?」

「え!?い、いや何でもない…何でもないのよフラン!」

 

 大丈夫…大丈夫よ私…これは寒いだけで咲夜が怖いわけじゃないわ。

 

「それでは少しの間行って来ますので」

「それほど心配もしてないけど気をつけなさいよ」

「はいお嬢様」

 

 ……ごめんなさいね…こあ…、これからは貴女の休みを増やすし掃除も手伝ってあげるわ。

 

「?……荷物運びするのに咲夜何か楽しそうだよ?」

「……サディスティックなだけよ」

「え?」

「…いえ……」

 

 もう少し待遇を良くしてあげるから、

 

 ……だから…ちゃんと帰って来なさいよ…。

 




パチュリーのキャラがブレ過ぎてて正直途中で恐怖を覚えました…そもそもが病弱設定なのにココのパチュリーが元気過ぎる所為が一理あるかと…。

因みにドSはご存知の通り…Mはメイドです。

……そろそろ上下関係というかキャラごとに使い分ける口調を纏めた表を作らないとヤバいですね、もう私の中がパンクして酷い事になってます。


それではまた次回。


 

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