受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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ホントにすみません!!ここ数日間pcが使えない環境に居た所為で多大に投稿が遅れてしまいました!

そしてこういう時にツイッターを使えば良かったのか!と今更気付いた私は愚かすぎて涙も出ませんよ…。


それではどうぞ。


 


第37話 二度目のデート

side一進

 

 

 

「おし〜ん!足止めない!」

「……はいはい」

 

 俺はこいしに軽くどやされたので、渋々自らの歩を進め始める。

 

「(はぁ〜あ…俺は初めて来たんだからもう少しゆっくり回りたいんだかな…)」

 

 なんてボヤキは一先ず置いといて、やぁどうも久々の挨拶になるけど一進だ。

 

 そんなこんなで俺とこいしは現在、幻想郷において人間達の安地とも言える人里に到着していた。

 

「へぇ〜和服…それに日本家屋か」

 

 往来する人々、立ち並んでいる家々を見つけて少し感慨深い気持ちになる。

 

 歩いている俺の目に映るのは外の世界では見かけなくなった特徴的であり珍しい風景…見慣れた者から見ればどうとも感じる事は無いと思うがこれはこれは…。

 

「…?何か面白いものでもあったの?」

「ああ、俺からすればね」

 

 物珍しそうな俺の反応に気付いたのか…こいしは上から疑問の声を掛けてくる。

 

「じゃあそっちに行っていいよ♪」

「……行くも行かぬも俺次第なんだけどな」

 

 ……そう、()()()声を掛けられてるんだ。

 

 …何を気に入ったのか…または何が楽しいのか…こいしは紅魔館を出てからずっと俺の肩に座っている。

 

「取り敢えず面白そうな事がないかグルって回ってみよ〜♪」

「……へいへい(自由な主人だこと…)」

 

 …そんでもって何で自由な主人の足となり人里に来たかってのは…なんでもこいし曰く『ずっと紅魔館にいるからたまには二人でどっか行きたい〜!』とかでな…。

 

 それで極力近場で危険の少なく、どーせそのうち訪れないといけなかったから人里に来たって訳だ。

 

「デート♪デート♪」

「嬉しいか?」

「うん♪」

 

 そっかそっか…。こいしから『二人でどっか行きたい』なんていきなり言われて俺も戸惑ったし…こあと美鈴からは茶化されもしたけど人の肩ではしゃいで喜んでいるのを見ると来て正解だったと感じる。

 

 

 …………当然だけどこあと美鈴には相応の罰を与えている事はここに記しておこう…。

 

 …まぁそんな事はどうでもいいとして…地底の時と似た様な状況なのは別に良いんだけどさ…あん時と比べて危険度が天と地ほどの差があるから油断しきっているんだわな。

 

「あ〜…なぁこいし…飛ぶか歩くかした方が楽だと思うぞ?」

 

 俺が大変って訳じゃないんだけど…正直な所肩車をされている方がバランスなりなんなりで大変だと思うしな。

 

 それに体重は感じてるから飛んでる訳でも無さそうだし……そもそも長々と肩に座る方が苦痛な様な気が――。

 

「うげっ!?」

「うふふ〜…イ・ヤ♪」

「分かった分かった!?降ろさない!降ろさないから!!」

 

 俺はこいしの締めつけを受けて大急ぎで言葉を撤回する。つーか撤回せざるを得ない!!

 

「えへへ〜♪」

「…………ハァ」

 

 …どっと疲れたぁ……それに少し血圧も上がったような気がする…。

 

 …別にな、こいしだって本気で締めつけている訳じゃないから苦しいって事では無いんだ…。

 

 無いんだけどもさ……。

 

「こいし…」

「な~に~」

 

 ……だけどさこのカッコが問題でよ…この状態でぎゅ〜ってなんてされたら…。

 

 …その…な?当然の如くふとももがさ……。

 

「むやみにこういう事したらダメだからな」

「何で~?嬉しいくせにぃ~♪」

「……ぐぅの音も出ねぇ…」

 

 …ハハッ…俺…顔の側面が幸せ過ぎて死ぬかもしんない…。

 

 無論それはこの後自分にどんな不幸が降りかかってくるのか不安で仕方が無いんだが…。

 

「………」チラッ

 

 …仕方が無い…俺の心情はそんな所に留まらない。

 

 というより、降りかかってきそうな不幸が予測出来るから尚更不安になっている。

 

「……フンッ!フンッ!フンッ!」バヒュンバヒュン

「……セイッ…ハッ!」バシュン

 

 僅かに後ろを見ると往来を歩いていた人達の掛け声が微かに聞こえる…。

 

 ……見えてない見えてない…人里の男性諸君がこっち見て舌打ちしながらクワやスキやらで素振りしてるのなんて幻覚だから大丈夫。

 

 仮に本当だとしてもこいしを降ろす事の出来ない俺ではどうしようも――。

 

「なるほどお前達か…怪しい二人組みというのは」

「はい?」

 

 現実逃避を決め込もうとしてた俺を現実に引き戻してきたのは青を基調とした服の銀髪の女性…。

 

「いやいやいや!いきなり怪しいって言われてもな…」

 

 どっちかっていうと俺達の後方で農具振り回してる奴等の方が常軌を逸してる気がするんですがそれは…。

 

 それを伝えたくて俺は肩越しに自分の後方に指を向ける。

 

「ん?……ハァ」

 

 それに目の前の女性は上手く気付いてくれた様でため息を吐いていた。

 

「……ちょっと待っていてくれ、あのバカどもに一喝入れてくる」

「快くお願いするよ」

 

 俺もそろそろ農具で起こせそうに無い風切り音に疑問を持ってた頃だし…気が気でなかったからちょうど良かったな。

 

 

「…お前達は何をやってるかァ!!」

「止めねぇでくれ慧音さん!俺達はあの男を消さなければ――アガァ!?」ガンッ!

「次郎ぉ!?聞いてください慧音さん!俺達は人里の為を思って進んで汚れ仕事を――ヒギィ!?」ゴンッ!

 

 二度に及ぶ不穏な音と響き渡る悲鳴…。

 

「わ〜痛そ〜」

「…だな。頭が固いのか脳みそまで筋肉なのか…」

 

 相手方なんて地面に転がってるし、頭突きで男達を屈服させるなんてよっぽどじゃないか?

 

 なんて他人事と思ってると、見てるこっちまで頭が痛くなってきそう……って何で俺まで睨まれてるん?

 

「…少しはお前にも女性に対して使う言葉を叩き込んでやろうか…?」

 

 頭突きでですね分かります。

 

 だけどこっちにはこいしが座ってるから手…じゃ無いな、頭出しなんて――。

 

「…よっと♪」ピョン

 

 ………………………。

 

 …………え〜と。

 

 ……うん。ま、まぁ…あっさりこいしに裏切られたのは傷ついたけど、俺が頭突きを食らうって事は先ず無いだろう。

 

 ……べ、別に裏切られたのなんて悲しくないんだからね(棒)

 

「ほらッ!!早くかがめ!」

「だが断る!」

 

 好き好んで頭突きされたがる奴はいねぇよ。

 それにいくら怒られようが下から見上げられてたら恐さだって半減するもんよ。

 

 ふんふふ〜ん♪そりゃこれだけの身長差があったら俺が低くならない限り届きはしないからな〜。

 

「〜♪」

「ええい頭をポンポンするなァ!それとむやみに女性の髪を触るなッ!」

 

 ん?いや〜、つい変わった帽子をかぶってたから気になってさ…。別に撫でようなんて他意は無いよ。

 

「〜〜♪」

「――ックー!!そっちの!普通女性はむやみに男から触られる事は避けたいよな!?なぁ!?」

 

 必死か!!遂に俺じゃなくてこいしにまで話振り出すとか必死過ぎねぇか…。

 

「ん〜?…まぁそうだね」

「そうだろうそうだろう!…ほら見た事か!」

「へいへい…離しゃいいんでしょ」

 

 そんな『してやったり!』みたいな顔されても…俺は特にどうも思う事無いんだけどな。

 

「さぁ!悔い改めて頭を下げ――」

「だけどお進限定なら寧ろわたしは触ってて貰いたいかな?」

「――えぇ……」

「ブフッ!アッハッハッハ!『えぇ……』ってなんだよ『えぇ……』って!」

 

 俺に怒れると思ってテンション上げて〜からの落ちた後の温度差が…ククッ…あまりにも酷すぎて笑えてくる……。

 

「…ひ」

「ひ?」

 

 ダメだ…予期せぬ事過ぎたからツボに入ってまともに顔を見れない……。

 

「人里にいるならちゃんとルールは守れよッ!!」

 

 くっくっく…慧音は半泣きになりながらもそんな捨てゼリフを吐いて走って行ってしまう。

 

 ……そんな背中を見つつもえ~と……最後に何か弄れそうな事は。

 

「……お進…すっごい悪い顔してるよ」

「はっはっは!今だけは許してくれよ」

 

 ……ルール…か、…ふーんそうかそうか。それじゃあ間違いがあったら困るからちゃ~んと聞いておかないとな。

 

「なぁ慧音〜!人里じゃ髪触るのはダメなのかァ?」

「うるさいバーカ!!」

 

 ハイ思った通りの反応をありがとう!

 

 最早こっちを見ずにひたすら走っていく慧音に嗜虐心(しぎゃくしん)を覚えそうになる。

 

「あ〜楽しかった」

「もう!からかったらダメだよ〜お進。あれでも人里の守護者なんだからね!」

 

 おいおいこいしさんや…立派に彼女を泣かせた立役者(たてやくしゃ)が何を言うか。

 

 まぁ、罪悪感がない事にはないけど…上手くあしらえたから満足満足♪

 

「だってさ〜ただでさえ期待していた休みを潰されて絶望していた所が実際はこいしとのほのぼのデートだったから気分最高潮になってるんよ」

「……もう///」

「ふふっ…可愛い可愛い」

 

 赤面するこいしを可愛がりつつも少しばかり思索に(ふけ)る。

 

 楽しんでいたとはいえ…そもそもで慧音で遊んだ実際の理由は折角の二人っきりなんだから極力面倒なのに絡まれたくなかっただけだからな。

 

 ……そこに俺のSっ気が混じってるか混じってないかは各自の判断に任せるとするよ。

 

 …え〜と何が言いたかったんだっけかな……ああ…言うなれば俺のテンションが上がって下がって上がってたから普通よりテンションが高いんだよ。

 

 …もっと分かりやすく言ったら希望を見させてからの絶望はより酷く感じる理論…の逆が起きてるって訳だ。

 

 結論を直訳しよう…こいしの可愛らしさと相俟(あいま)って俺は今最高に機嫌が良い!

 

「さ〜てさてこいし、何か欲しいのでもあるか?お兄さんが何でも買ってあげるぞ〜」

「気持ち悪いよ」

 

 バッサリ言われてちょっと自分でも不審者感満載だった事に後悔するけどそんな事は気にしてない。

 

 ……ええい泣いてないッ!!気にしてないったら気にしてないんだからなッ!!

 

「それに…お進お金持ってたっけ?」

「……ほれ」

 

 ……俺ってそんな貧乏人に見えるのだろうか…。

 

 流石に子供に金銭面で不安がられるとは思って無かったからへこみそうになったぞ……ってなわけで俺は財布を取り出してこいしに渡す。

 

「あー!すご〜い!」

「そうだろうそうだろう!」

 

中身を確認したこいしの反応を見て、俺も若干気分を取り戻す。

 

 宴会の時にさとりが地底から財布を持ってきてくれたし、追加で貰った分があるんだなぁこれが。

 

「…へぇ〜お進ってこんなにお金持ってたんだ…。はい」

「ん…。最初は地霊殿に住まわせてもらった恩があったわけだし給料なんて要らないって言ったんだけどなぁ」

 

 ホントさとりには頭下がるよ…『それならお小遣いとして受け取ってください』って言われればそりゃね。

 

 なんでもこいしの面倒を見る事が俺の仕事に含まれてるって事と、条約撤廃で地上との商品貿易が始まるのを見越しての先行投資らしい…。

 

 つまりは俺が予め地上で売買する事で、それをネタに地底の者が地上との売買をスムーズにさせる寸法だな。

 

「これの殆どはさとりから貰ったもんだよ…労働の対価なんだってさ」

 

 因みに今見せた財布とは別にパチェさんから今までの感謝と同情と労りの末に貰った価値が全く分からない純金をいくつか所有している。

 

「えぇーお姉ちゃんからぁ!?わたし貰ってないよ!?」

「そんな愕然とした声で文句言われてもな…それはさとりに言ってくれ。そう判断したのは向こうなんだから」

 

 ……なんて言ってこいしの苦情を全部さとりの所為にしているが…俺だってさとりの気持ちが分からない訳ではない。

 

 …こいしの場合基本行動原理が自由だし何に使うのか想像も出来ないから不用意にお金を持たせたくないんだよなぁ。

 

「うむむむむ…」

「ほら、だから欲しいものを買ってあげるからそう怒りなさんな」

 

 納得出来ない!って顔してるけど…自分が金銭管理を出来ないのは理解してるらしく反論出来ないのが余計に可愛らしい。

 

 俺は慧音にやったようにこいしの頭をポンポンと撫でて少し考える…。

 

 確かにお金は貰っているんだがイマイチ幻想郷の物価が分からない…それにさとりからの依頼をこなす為には多くの店に回る必要があるからな。

 

「………///」

 

 だけど俺は特に必要な物なんて無いからな…お金が足りなくなるような事は考えなくても大丈夫だろう。

 

 ……まぁ強いて言えば味のアクセントをつける為に塩が欲しいんだけど、そんなの買うぐらいならこいしにプレゼントを買ってあげたいし……。

 

 こいしが喜んでくれれば当然俺も嬉しい…それにそれならお互いがwin―winになれるしな。

 

「んじゃ…行くか」

「……うん♪」

 

 ふ~良かった良かった…さりげなく手を引いて確認したらこいしは笑顔を浮かべてさっきまでの不機嫌さが嘘のように消えていた…。

 

 さてこいしが好みそうな物が並んでる店は何処に――。

 

「ほら阿求!あいつが騒ぎになってる男だ!」

「はえ〜…あの人がですか〜」

 

 

 ……またお前か…。

 

 

 どこに行こうか悩んでいる…そんな俺達の前に現れたのは…今度は頭に花飾りを付けた着物を着た少女を連れた慧音だった。

 

 

 

 




一進の行動範囲を広げないと!(使命感)

そんな訳でほのぼのとした人里を(一部例外)楽しんでください。


それではまた次回。


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