そこで閃く…悪魔的奇手っ…!
カイジ?好きですよ、本編と関係ありませんが。
それではどうぞ。
○
sideさとり
「パチュリー様ぁ〜」
「…どうしたのよ咲夜?」
私が一進の下を離れてから暫くして、パチュリーさん、藍さんと談笑している所に咲夜さんがふらりと現れる。
……どうやら霊夢さんと魔理沙さんが面白がってけしかけさせたのでしょう、二人が向こうで笑っているのが見えます。
「…ったくあの二人…面倒になったからって押し付けたわね……で、何よ?」
「私…お嬢様に捨てられるんじゃ無いかと思って怖かったんですよ…」
「ブフッ!?」
捨てられッ!?いきなりなんて告白をするんですか!
「…へぇ珍しい、貴女にも不安になるような事があったの…」
ちょっと!?パチュリーさんはそこを気にするんですか!?もっと咲夜さんの思いを――。
「はい…本当に良かったです。お嬢様から私が必要無くなったのかと…」
「あ〜…ハイハイ、レミィはそんな事しないから安心しなさい」
…………。
「一進さんは…料理や掃除の腕で私に引けを取りませんし、強さだって私以上にありますから戦闘にだって起用出来ます…」
「…そうね、それに魔法も使える可能性まで秘めてるからなかなか面白い素材かもしれないわ」
……え〜とこれは…。
「はははっ安心しろさとり…お前が案じてるほど大層な話じゃ無いさ」
「藍さん…どういう事でしょうか?」
二人を見ている限りじゃどうやら本当に切羽詰まった話じゃないようですので安心しました。
…ですがよっぽどの事が無い限り、仕えている者が捨てられるなんて気持ちを抱く事なんて無いでしょう。
「な〜に、
「はぁ……?」
彼女が一進と紅魔館の従者の座を…?
はて…こいしがそんな事を許すとは思えませんし、気付けばすぐに止めに入ると思うんですが。
「…分からないか…ま、私も前情報があったから予測を立てられてただけなんだけどな…あいつの執事服は
それならば私も気付いていますよ、こいしから詳しくは聞けませんでしたが予想ぐらいは出来ます。
…ですがそれが従者の雇用と何の繋がりが……。
「
まぁ子供ならやりかねないけどな、と笑う藍さんを見て私は納得する。
「レミリアさんが一進を気に入ったので自分がお払い箱になるかも…と」
服まで用意するという事は、館に新たな人物を迎い入れる事に繫げられる…答えは出しましたがこれで当ってるのでしょうかね?
「ああその通りだ」
「……へぇ」
お燐やお空がそのような事を考えていた事が無いので私もここまでなかなか思いつきませんでした。
…私は主人の側なので立場が違いますが、それでも従者はこのように考えるかもしれないと知っておく必要がありますね。
「自分が敬愛する者の一番ではないと捨てられる…ふふっ家事が出来てもやはりまだまだ若いな」
「私達と違って人間ですからね…ですがレミリアさんの器はそこに楽しみを見出したんじゃないですか?」
今だって人間に友好的で無い妖怪なんてのは数多くいます。
それなのに人としての暮らしを捨ててまで妖怪と共に生きる決意をさせたレミリアさんの手腕…カリスマ性とでも言いましょうか、目を見張るものがあります。
「人間を迎い入れる主人の器か…それならさとりは楽しみを見出せたのか?」
「……そういえば一進もでしたね…」
一進は人にしてはやけに達観していますのでつい忘れていました。
「まぁ、あいつは人間らしく無いからなぁ。それで?結局どうなんだ?」
ふむ…そうですね……。
「……私の場合は楽しみを見出した訳では無く、二人の事を優先させたんですが…結果的に見つけましたよ」
今は二人の行く末が楽しみですね。
幸せになる事を望みますが…まぁ、あの二人なら困難があっても笑って乗り越えるでしょう。
「くっくっく…私から言わせて貰えばな、代表三人の中で一番主人らしいのはさとりなんだよ」
「それでは私に乗り換えますか?そうですね、ウチには猫と鴉が居るので仲良くしてくれると助かります」
「はっはっは!それなら私は狐だってか!全く、嫌味でもなく褒めているのだから素直に受け取って欲しいのだがな」
と言われましてもね、紫さんより主人らしいですか……真意が分からないですね。
私だって呑んでいる所為もありますが、流石に酔っている相手の心を読んでも確かではないんですよ。
「ああ〜やっと寝てくれたわ…。普段が優秀だからここまでだらしなくなる咲夜を相手するなんて思わなかったわよ…」
そう言って私と藍さんの下に戻ってくるパチュリーさん。
…どうやら咲夜さんはこいしとフランさんの所に退場したようですね。
「お疲れ様です」
「良いじゃないかこんな時ぐらい、私は立場が近いから羽を伸ばしたい気持ちは分かるぞ」
「……残念だけど私は仕えてる訳じゃないから分からないわ」
「『こあは使役してるけどレミィとは親友だから』ですか…」
「……趣味悪いわよ」
すみません、コレが私の生きがいみたいな所がありますので。
……おやおや、ですがそうなるとパチュリーさんには使役する者がいるようで…。
「これはパチュリーさんも主人側に入りますね」
「そうだな、それなら四人にすべきだったか?」
「いいわよ入れなくて、大まかにだけど話は聞こえてたわ」
おやおや残念です、折角パチュリーさんも巻き込めると思いましたのに。
この場にいる者で私だけが名前を挙げられるのは少々恥ずかしかったのですが仕方無いですね。
「……主人らしさね…私もさとりが主人に向いてると思うわよ」
「…それは嬉しいですね」
「ホラな!言った通りだろう」
痛いですよ藍さん…元の
そんな私の視線に気付いたのか藍さんは私から手を離し…代わりにグラスを手に取って仰ぐ。
「フー…だがまぁ、私は自分の仕えたい主人を選べと言われれば紫様と言うがな」
「…ハァ、結局は惚気ですか……」
別に私が選ばれなかったからって拗ねている訳ではありませんよ。
純粋に、『ああ…やっぱり酔った人はこんな風になるんだ』って思っただけですから。
「はははっ!そう気を悪くしないでくれ、一番主人らしいと言ったのは本当のことだ」
「……そうですか」
フォロー…では無いですよね……。
どうやら藍さんが言うには主人らしさと当人が仕えたい主人の理想は違うものらしいですね。
「手のかかるのが良い…という訳では無いがな、何故かこの人の為に働きたいと思えるようになったんだよ」
「昔のレミィなんて今よりも酷かったわよ…ま、こういうのは理屈じゃ無いのよ」
どことなく微笑む二人を見て、私は少し考える。
理屈じゃ無い…ですか、難しい言葉ですね。
私は人の心を読むので相手の真偽は見慣れていますが、それ故に理由も無い…本能で選択されるのは苦手です。
「心から慕われ、そして慕っているんですか」
藍さんがいくら優秀だとしても、それは生半可な思いや努力では到底就き続けるものでは無い筈です。
それも従者としてでは無く、館で唯一対等に話し合える仲として…。
「あのお二人は幸せですね、貴女達にそこまで思われているんですから」
「何言ってんのよ、どーせ一進だって頭のどこかで貴女の為にとか考えてるわよ」
『実際はどこまで考えているのか分からないけど…』ですか。
…私としてみればこいしを優先にしてくれればそれでいいんですけどね。
「まぁ、結局は三者で欲しがった人間を手中に収めたのはさとりなんだからな」
そうでしょうか?一進は従者になる道しか殆ど残されていない状況に置かれていましたから必然と言えば必然でしたよ。
それに彼は私が縛っておけるほど小さな人間では無いですし、それで満足するような人間では無いですからね…。
「……手中に…と言われても彼に鎖やレールは必要無いですよ」
まぁ、強いて言えば現状こいしが鎖になってますが…あの子だって分別はあります。
…本気で一進が出て行くこと望めば分かってくれるでしょう。
「…自由に、自分の生きたい様に生きる事が彼の幸せです。……それを見守るのが私達年上から出来る唯一の事じゃないですか?」
「…可愛い子には旅をさせよ理論ね」
「ハハハ!どうやら一進は一番の当たりを引いたらしいな!
…そうですか。
触れられたくないと思ってしっかりと聞く事は無かったですが…外界での彼は心苦しいものがありましたから。
………………。
ガラガッシャーン
「だー!!勇儀が酒に強すぎる!」
「アッハッハ!鬼の私に勝とうなんて甘いんだよ」
けれども今は楽しそうでなによりです。
「ならレミリア行きなさい!西洋の鬼も似た様なものでしょう!!」
「いや紫、それは吸血鬼って言葉が中国にあったから定着しただけで厳密に同じとは――」
「そんなどうでもいい事知るかッ!お前達が挑んだのだからお前達で呑んでいればいいだろう!」
まぁ、私が呑ませたのですが…すっかり周りと馴染んで騒いでいるのであれば今後も安心ですね。
「いけレミリア、君に決めた!」
「話を聞け!!背中を押すな!」
「かっかっか!子供に頼るとは情けない二人だなぁ」
「……子供だと……いいだろう。ここで引いたら紅魔の名折れだ…一進、あるだけ持ってこい!」
「アイアイサ〜!」
ニヤニヤしてレミリアさんのグラスにお酒を注いでいるのを見ていると、どうにも酔っているというか楽しんでいる様に見えますが気のせいでしょう。
「さぁ行きなさい襲!強者を薙ぎ払いなさい!!」
「いやいやいや、流石にそれは無粋ってものだろう。紫〜風情を台無しにするなよ」
「ウグッ…」
おや?伊達に紫さんの式神になったわけじゃないですね、一進も一進で力をつけたようです。
……レミリアさん?傍で倒れていますが…レミリアさんには目を向けない方いいですね。
「紫と違ってお前は分かってるよな〜」
「…ああ当然だろ、だからコレは最終手段で残す」
「なんだかんだ言って結局手元に残すんじゃない!!」
勇儀さん相手に紫さんと一進で最終戦ですか……、さて…あれが終われば頃合いですかね…。
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「…………ハァ…それじゃボチボチ片づけましょうか」
「そうだな、咲夜が潰れた時点で私が一人で片づけるつもりでいたから助かる」
酔った皆さんが死屍累々で転がっている光景を見ながら藍さんも腰を上げる。
少しして寝息が聞こえるほどに静まったので生き残りで掃除をしませんと。
「…取り敢えず寝ている者をどかしましょうか」
「……そうね……」
どれだけ面倒なんですかパチュリーさん……酔った方々に絡まれていた時以上に疲れた顔してますよ。
「それでは霊夢さん…起きてるのは分かってるので手伝ってください」
「「え?」」
やりたくないからって寝たふりなんてしても私には通用しませんよ、僅かな心の機微があればバレバレです。
「……チッ、しょうがないわね。………一進!あんたも起きてんでしょ!」
「ゲゲッ!?何でばれたし!」
「勘よ」
ほう……一進も…でしたか、これは分かりませんでしたからナイスです霊夢さん。
「…ずっりぃ勘ですこと…んじゃ何から手を付けようかね…」
おや?
一進…何を迷っているかは分かりませんが貴方のやる事は決まってますよ。
「私達四人が彼女達を運びますので、一進はココを綺麗にしといて下さい」
「へいへ――四人で!?こっち俺一人でやんの!?」
「男の子でしょう?なら大変な方を率先してやるべきです」
私達だって掃除がやりたい訳ではありませんからね、使える者は当然使わないと。
「男の子って…だったら重い分俺がそっちをやるべき――」
「紫さーん!一進が重いって言ってますよー」
「やったぁ俺掃除大好きッ!!さぁ喜んで掃除しよう!!これぐらいなら俺一人で十分なんで皆さんは彼女達を運んで下さい!」
「はい分かりました♪」
さて…快く一進が引き受けてくれたので私達は早々と終わらせて休みましょうか。
「(なぁ、盛大に見方が変わるが…あれもあれで一種の主人らしさだよな?)」
「(完全に従者の使い方を心得ているわね…。アレは上に立つ者のなせる技よ)」
「ほらあんたらも喋って無いで運びなさい!寝てなかったとはいえ私だって疲れてんのよ」
?どうしたのですか二人とも見る目が変わ――って霊夢さん…やる気を出してくれたありがたいのですがいくら気の知れた人でも引き摺るのはちょっと……。
「…それでは一進…あとはお願いします」
「……はぁ〜あ…さとり、明日から休暇をもらうぞ」
休暇…ですか…日付は変わってるけどいいんですか?…なんて野暮や事は流石に言いませんよ。
「分かってますよ…私からは何も言いませんのでゆっくり休んでください」
「ヨッシャァァ!!」
全く…休み一つで喜び過ぎでは?
ですがこれでモチベーションが上がるならそれはそれで良いに越した事はないでしょう。
「…さとりー!あんたも早くやりなさい!」
「分かってますよ霊夢さん」
…では一進、休みの為に頑張ってくださいね。
「ひっさびさの休日〜♪」
……ふふふふっ、確かに私は何も言うつもりはありませんが…。
……まぁ、こいしがなんて言うか知りませんけどね。
皆様…宴会の話はもうゴールしてもいいよね?
そろそろ新しい展開が欲しいのです。
それではまた次回。