何をかは見てからのお楽しみです。
それではどうぞ。
○
side一進
「んふふ〜お兄様ぁ〜♪」
「あ!!もうまたお進はフランちゃんにベタべタしてさぁ!」
「してないって断じてしてない!!寧ろどっちかって言うとされてる側!!」
「ほら見て下さい可愛らしいお顔を真っ赤にさせてお怒りになってるお嬢様を!!あれ程怒ってらっしゃるお嬢様見られるなんて稀ですよ稀ッ!!ホントに一進さんは運がよろしいようで——って何でお嬢様を見てないんですかッ!!」
「ウルセェ!!!今どうでもいいんだよそんな事!!」
突然だけど現在の宴会状況を教えよう。
先ず大妖怪の激戦区は…紫さん、レミリア、魔理沙、勇儀、美鈴の五人で前二人が酔っている。
次に傍観組は…藍さん、パチェさん、さとりちゃんで全員が正常。
そして、我関せずで食事してる霊夢と酔い潰れて寝てるこあ。
「フランちゃん!一回離れてッ!」
「お兄様あったか〜い♪」
「ああ…お嬢様の洋服にワインが掛かって――」
最後に俺の所にいるのは…こいしちゃん、フラン、咲夜で三人とも酔っている。
……割合オカシクねぇ!?
…取り敢えず一向に話が進まないからフランはパチェさんにでも押し付けて……。(咲夜は知らん、レミリアに夢中だからほっとく)
「…………」
いや…露骨に嫌そうな顔するなよ。
「ふふふ、託児所みたいね」
笑ってる所悪いけどさとりちゃん…その幼児の片割れが貴女の妹って事は理解してるよな?して言ってるんだよな?
それに託児所っつっても、どれだけ長くても預かるのは17時ぐらいが妥当だろう…今は20時回った頃……。
………あ、なるほど。てことは返していいんじゃね?
「あらお姉ちゃんこいしちゃんを迎えに来たの?エライね〜それなら今すぐ返してあげ――」
「バカにしてるんですか?勇儀さんでも呼んで
やめて下さい死んでしまいます。
ひのきのぼうも無いのにいきなり魔王に挑めってか!せめて物理で殴れるぐらいのレベルアップを――。
「……それに貴方はこいしの従者でしょう。良いんですか?あの子を遠ざけたりして?」
「……分かった分かった、こ〜さんだよ…俺が悪かった」
…ったく、そう言われたら何にも言えねぇじゃんかよ。
へいへい…んじゃちょっくら相手しよっかね…だからさこいしちゃん?
「…せめて降りよ?」
実は肩車してるんですわ。
軽いとはいえ話しづらいからいつまでも乗せてたいとも思わんし…。
もうこの際酔ってるのはいいとするけど……良くはないな、俺の疲労がマッハだし…。
「……あれは?」
降りてくれる気配は無し…と。
それで何ぞ?俺は諦めてこいしちゃんが指を指した方を向くが…恐らくレミリアかな?多分だけど紫さんと騒いでるレミリアを指してると思う。
「レミリア?」
「じゃあその妹は!」
「フラン」
いや、当然それぐらいは分かるよ…この歳でボケてて堪るかってんだ。
…寧ろ意識がハッキリしてるかを確かめるんだったら俺じゃなくてこいしちゃんにやらせたいんだけど……。
「それならわたしはァ!!」
「こいしちゃん」
「それだよそ・れ!はぁ〜あ…だからお進はダメなの!何っでそうなるかなぁ」
足をバタバタさせて何かの抗議をしてるんだけど…返ってきた
ってかもうヤダこの酔っ払い…何故俺はダメ呼ばわりされてんだよ。
「何でわたしはいつまで経ってもこいし
「え?」
「フランちゃんもレミリアも会ってそんなしてないの名前で呼んでさぁ!」
……ん?ん〜ああ〜なるほどなるほど…つまりは『ちゃん』を無くせって事ね。
ふ〜ん…。
「……って事になってるんだけど、主人に向かって名前のみで呼ぶのはいいのか?」
取り敢えずさとりちゃんにコンタクトをとる…咲夜もそうだしお空とお燐も然り、みんなしっかり主人に敬ってるからな。俺だって――。
「……『ちゃん』で呼んでる時点で貴方の場合敬う気なんてサラサラ無いでしょう…」
「はっはっは」
流石さとりちゃん、色々並べて本音隠してたんだけどがっつりバレてましたわ。
いや〜俺だって敬う気が無い訳では無いんだよ?ただ今更だと恥ずかしいってだけでさ。
「……ズルいよ…フランちゃんばっかりさ……」
「一進!」
あん?どうしたよさとりちゃん?
…ん……上?肩にいるこいしちゃんは足のバタつきも止めてようやく落ち着いてくれたけど――って嘘ぉ!泣きそう!?
「ゴメンゴメンゴメン!!俺が悪かったこいしちゃ……あ…」
「うぅぅ〜…」
「一進!!」
怒んないでさとりちゃん!俺のライフはとっくにゼロ――なんてやってる場合じゃねぇ今のは完全にやらかした!!
つーか『ちゃん』付けた自分のバカさにビックリだよコンチクショウ!!
ええっと名前呼んでどうしてあげれば…。
「いや、ね?確かにフランも構ってるけど…俺の中じゃこいしが一番大切だから!!それに俺の主人もこいしだけだよ!」
「―――ッ///」
あ~と~は~…何言えばいいんだ?これ以上踏み込んで地雷踏む訳にもいかないし…。
「……ヒュ〜♪やるじゃないか」
「…ん、勇儀?」
…何がやるって――アイエエエ!?勇儀!?勇儀ナンデ!?
何で向こうに注目してた奴がこっちにいんの!?
「…………あ」
……勇儀どころじゃねぇ…全員こっち見てるじゃないですか。
「ブハッ!アハハハハッ!あいつ大物過ぎるぜぇ!!!」
「…よくもまぁあんなでかい声で…聞いてるこっちが恥ずかしいわよ」
…は…ははは…。
魔理沙と霊夢の声が聞こえて俺は乾き切った笑いしかあげられなかった…。
そして騒いでた筈の紫さんとまで目があう…うん、これはもうバッチリ聞かれたみたいだな。
…取り敢えずこいしを降ろして適当な椅子に座らせて…ほんとゴメンねそんなに顔赤くさせてさ…。
でも俺の方が恥ずかしいのは分かってもらいたい。
……フランも殆ど潰れかけてるから三人は省いてえ〜とヒーフーミー…十人か…。
オーケーオーケー、それじゃあ力ずくでも能力でも頑張ってみるか。
「……お前らの記憶消してやる」
「「「ハァ!?」」」
理不尽だって?分かってるさそれぐらい…だけど恥ずかしい時に都合良く穴が空いてるとも限らねぇんだよ!!
「大丈夫だよ、上手くいったら痛くないから」
「上手くいったら!?」
さてさて、ここ一分の俺の発言がみんなから上手く消えてくれるといいな。
〜数分後〜
ハァ…ハァ……。
……十人を相手に奮闘した俺は…何と見事に!
「いや〜…な?お前も頑張ったけど紫と藍、鬼や吸血鬼に挑むのはいくら何でも無謀だぜ?」
…見事に撃沈して魔法使い二人から治療を受けていた。
「…何で一日に二回も同じ人間を治療しなきゃいけないのよ」
スンマセン…パチェさんと魔理沙…俺もまさか数秒しか持たないとも思わなかったよ。
「……さて、もういいでしょう」
「何でだぜ?まだ完全には治ってないけど…」
「怪我人ならむやみに暴れたりはしないでしょう」
ごもっともです、流石に俺もこんな状態じゃはしゃぐ元気は無いよ。
そして中途半端に回復された俺はパチェさんと魔理沙にほっとかれてたので大人しくしようと……、
「あらあら〜平気なの一進?」
……した所出来ないようです♪…その上一番厄介なのがおいでなすった…。
「…紫さん、ここで追い打ちかけられたらマジで笑えないからな」
正直この人なら面白がって俺に止めを刺しかねない…
「うふふふ…バッカね〜私が貴方にそんな事する筈無いじゃない♪ちょ〜っとお願いがあるだけよ」
今の俺に何かさせる気でいんの!?鬼かこいつは!?…いや
「あれは?」
そう言って紫さんは、俺がちょうど見ていた勇儀に指を指し――。
「うるせーよ二番煎じ」
「二番煎じ!?」
はいはい…もう何が言いたいのか完全に分かった。
少し前にこいしとやったやつをやるだけだろう?
だったら無駄な時間は省略させてもらうよ。
「い、いいじゃない!勇儀は普通に名前で呼んでるしこいしにだって名前で呼んであげる約束したんだから!!」
約束っつーかあれは強制だったけどな。
「俺だってまさか泣かれるなんて思わなかったし……」
「だったら私も泣きましょうか!?私だって今ここで号泣してもいいのよ!?」
お前自分捨てすぎだろ…、っていうか先ず第一にそんな姿見たくない…。
「ええっと…あのな〜俺が敬称をつけるのにも理由があるんだぞ?」
「……そうなの?」
そうなんだよ、初っ端は恥ずかしいとか何とか言ってたけどぶっちゃけた所それだけじゃ無いんだよ。
「俺が敬う相手だと思ったり、立場や状況…雰囲気でつけたりする」
これは初回で会った時のさとりちゃん…さとりでいっか、あとレミリアがそうだったな。
「そして外されてんのは敬う必要が無いと思ったり、ノリや雰囲気によるものが大きい」
ノリや雰囲気で外されたのが勇儀、レミリアとフランになるな。
……シリアス場面だからつい外してたんだけど…まぁ文句は無いからいいだろう。
「じゃあ私は敬われてるって訳?」
「うんうん」
と、思うだろ?
若干気分良くしてる様だけどさ〜…、実際には散々な失態を見てるお陰で敬う気なんて抱けてないんだよなぁ…。
「…ん〜と、別に外してもいいんだけどそれだったら形だけの式と主人の――」
「なら外してもらうわッ!!」
「そ、それでね!早速呼んでもらいたいんだけど…」
「藍さーん怪我人を虐めてくるのがいるんですがー!」
「何で!?」
甘いなッ!!俺が呼ぶのは名前じゃなくて助けだ!!
「すまない一進…少し目を離したスキにな…」
「藍お願いだから今だけは少し待――イヤ〜!」
はっはっは、藍さんに引き摺られてく紫…実に良い眺めじゃないか!
折角パチェさんが気を利かせて?作ってくれたんだからもう暫くはこの安息を楽しませてもらうよ。
「……いい趣味してますね」
「だろう?俺もそう思う」
「…………」
さとりが近付いてたのは分かってたから驚く事も無く言葉を返したんだけど…。
「どうしたんだよ?そんな顔して」
「…いえ、皮肉を逡巡の迷い無く本音で返されたからつい…」
って言われてもな、さとり相手なら能力使わん限りもろバレするのは理解してるから必然的にそうなるだろ。
「分かってても実行する人はいないですよ」
さいで…。ま、近くで騒がれないんだったら俺も歓迎するよ。
…ほれグラス貸しな…ワインしか無いけど。
「ありがとうございます。…そしてありがとうございました」
……こいしの事か…。
「はい。私も気掛かりだったんですよ…こいしが恋した貴方を紫さんも狙っていたんですから」
くくっ…こいしが恋した…洒落かい?
「誤魔化さないでください」
つれないねぇ、酒の肴としちゃ上等な話をして欲しいもんなんだけどな。
「……まだ完全には読めませんから何とも言えませんが…貴方はこいしの為にも動いていましたよね」
………………。
「沈黙は肯定と取ります。…周りにはフランさんを助けたのを理由づけしていますが――」
「さとり」
俺はさとりの名を呼ぶ事でさとりを制する。
さっきまでは楽をしてたけど、ここから先は心を見せるのでは無く口で伝えよう。
「俺は騒がれるのが好きじゃないけど…それ以上に静かすぎるのが好きになれなくなった」
どうしてだろうな、外界にいた頃は進んで孤独になってたのに…。
……まぁ、ここに来て俺も変わったって事だな。
「確かに一人は静かだ…自分の中で自己完結する世界だから他人から横槍を入れられる事が一切無い」
だけど結局さ…人生一人じゃ楽しく無いだろ。
「…持ちつ持たれつの関係、一緒にバカやって盛大に笑いあえる仲間ってのがいると人生変わるもんだよ」
……俺は幻想郷でそれを実感したから。
「……酔いそうですね」
「ハハハハっ!酒か?それとも俺の言葉にか?」
自分でも似合わない事言ってる自覚はあるけどさ、俺だって酒が入りゃ饒舌になるもんよ。
「そうですね……今はお酒という事にしましょうか」
「そうかいそうかい、だったら俺は呑ませるのを止めるさ。…代わりにさとりが俺を酔わせてくれるんだろう?」
「……さっきの酒瓶探してきます」
あら逃げられた。
くっくっく!さとり、冗談だよ冗談。本気で俺を酔わせてくれなんて言うわけ――。
………………。
……ちょっとさとりさん?
さっきのは冗談だって…何で注いでんの?それマジで俺に呑ませようとして無いよな…無いよな?
「イーッキ…イーッキ」
「俺の肝臓が死ぬわァ!!」
確信したね…今日はきっと厄日なんだわ。
私は主人公ですら各キャラの名前の呼び方を把握して無いです。…この回を書いていて自分で読み直そうと思いました。
そろそろ宴会も終わりに近づいています。否、近づけています。
それではまた次回。