受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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やっと宴会に入れそうです。まぁ触り程度何ですが…。


それではどうぞ。


 


第31話 宴会の起

side一進

 

 

 

「はぁ…?美鈴との組み手で怪我を……それであんな事に」

「夜明けからバカな事やってたみたいで私まで駆り出されたのよ。…ホントやめて欲しいわ」

 

 美鈴との死闘?から約一時間後、俺はパチェさんに診てもらってから現在に至る。

 

「バカって…好き勝手言ってくれやがってさ……」

「お兄様大丈夫?」

「あぁ。聞いてくれよフラン…美鈴とレミリアがさ、寄ってたかって俺をイジメてくるんだよ」

 

 机に突っ伏してる俺の頭をよしよしと撫でてくれるフランに癒しを感じつつも…果てしなく捻じ曲がった事実を伝える事で腹いせを試みる。

 

 ……まぁ、間違ってるとしか否めないけど…やられた本人がイジメられたと思ってたらそれはイジメに含まれるという事にしておこう。

 

「パチェさんもさ〜、診てくれたのは有難いんだけど『要安静』の一言ってなんか酷いと思わない?もうちっと気遣い精神を見せてくれてもいいような…」

「はいはい、自業自得の怪我人は黙ってなさい」

「…身も蓋も無ぇ事言いなさんなよ……」

 

 別に俺だってそこまで優しくされる事も求めてねぇけどよ、心身ともに疲弊してる時くらいはいいんじゃないかい?

 

 どーせ…何処まで行ってもパチェさんは中立だし、咲夜はレミリア側だからな……。

 

「…はぁ、俺の味方はフランだけ――」

「お姉様は面白かったって言ってたよ?あ〜あ私も見てたかったな〜」

「…………えぇ〜…」

 

 アカン散々癒されてたけどやっぱりこの子レミリアの妹だわ…、まさかイジメられてる所を見たいと言い出すとは思わんかった。

 

 ていうかどうやら若干の修正が必要だな…フランの場合味方っつーより無差別の遊撃の方がしっくりくる。

 

「…ふふっ」

「流石フランね」

「?」

 

 おうそこの二人、さも他人事みたいに笑ってるけど当人の俺は何一つ笑えないからな。…イジメられてんの見られたいなんて、そんな実にマニアックな趣味はしてないよ……。

 

 …ところでさ、普通に話してたけどぶっちゃけ疑問があるんだわ。

 

「…あ〜っとさ……お前ら二人朝早くね?何でこんな時間からテキパキしてんの?」

 

 陽ぃ昇ってるけどまだ早い時間帯…まぁフランはレミリアと同じ様に活動時刻の違いだろ?だったらパチェさんと咲夜は何でこんな時間から……。

 

「…………」

「私はいつも通りですよ。妖精メイドが居ようが居まいが私の仕事は沢山あるので、それにいくら時間を操れるといっても限りがありますし」

 

 ほえ〜やっぱメイドって大変なんだな〜。

 実際俺も執事(だと思いたい)をやってる身だから仕事はあったけど…地霊殿のみんなは自発的にそれぞれ仕事をやってたからかなり楽だったぞ?

 

「へぇ〜、咲夜は仕事…ね。そんでパチェさんは?」

「……今日の私にそれを聞くかしら…?」

「はい?」

 

 何ぞ何ぞ?そんなレミリアっぽく急に機嫌悪くされても俺は心当たりが――あ…、

 

「……正直スマンかった」

 

 あっちゃ〜、そういやパチェさんって俺の所為で叩き起こされた様なもんだったな…。そりゃ怒りたくもなるわ。

 

「ふん…謝る気があるのか甚だ疑問だけど…、まぁ自分で気付けたから許してあげるわ。それに私にとっては大した事でも無いし…」

 

 ほう、向こう(レミリア)とは違ってお優しい事で…。……流石にこの状態で説教とかが始まったら素直に泣けるレベルだったからな。

 

「たいした事無いって…確か捨虫の法や捨食の法とかで必要無いんだっけ?」

「へぇ…そうよフラン、ちゃんと勉強している様で嬉しいわ」

 

………………。

 

「えへへ〜♪ちゃんとパチュリーの言ってた事は覚えてるよ!」

「そう。…けどまぁ厳密に言ったら私は生まれつきの魔女だから少し違うんだけど…そうね、時間を掛けるつもりだったけどフランは物覚えがいいから更に次のステップに進んでも大丈夫でしょう」

「うん♪」

 

………………。

 

 ……虚しい事に、机に顔を突っ伏していてもしっかりと聞き取れてしまうパチェさんとフランの会話…。

 

「どうしたの?」

 

 フランは既にパチェさんの下に移動しており少し寂しくなったところ…、急に押し黙った俺を心配してくれたのか咲夜が声を掛けてくる。

 

「…いや…どうしたもこうしたもさ…才能って残酷だなって…」

 

 パチェさんにほぼほぼ見限られ状態に入ってる俺と違って、フランは次に次にとノンストップで進んでく。

 

 …これを才能の差と言わずして何て言う?

 

「あら、才能の点を見れば十分一進もスゴイわよ?」

 

 へいへい、慰めてくれて有難うよ。それでも魔法って便利そうだから使えるもんなら使ってみたかったんだよな。

 

「……それで何をしに来たの…八雲紫?」

 

 …………は?紫?

 

「あら、私は宴会が今夜になったのを貴女達に伝えに来ただけよ」

 

 ………ッ!

 

「えっ!紫さん!?」

「はーい一進♪」

 

 机から顔を上げると、いつものようにスキマを使って顔を覗かせている紫さんと目が合う…、っていうより咲夜だと思って受け答えしてた相手が紫さんだった訳で……。

 

「…えーと咲夜は?」

「お姉様呼びに行ったよ」

 

 そんな俺の問いにフランがすかさず教えてくれてくれる事で、俺が勘違いをしてたのを把握する。

 

 うわ恥っず!!寝かけてて注意力散漫してたけど気付かなかったの俺だけかよ!

 

「ねぇ聞いて〜…一進が私を無視して別の女を気にするのよ〜」

「…私に言われても知らないわよ…。……一進、コレどうにかしなさい」

「あぁ悪い、今相手するわ」

 

 別に無視してるつもりなんて無いんだけどな…。ついだよつい!いきなり出てきたから話逸らしちまっただけで。

 

「……若干思うところもあるけどまぁいいわ…。それで一進はもう元気になったの?前回来た時は倒れてたんだけど…」

「いや元気……とは言わないけど平気だよ、ってか随分と急にやって来たんだな。今日宴会って…当日に伝える内容じゃ無いだろ」

「別にいいじゃない。さっきようやく条約も改正出来たんだしその打ち上げって事で」

 

 …へぇ。

 

「……じゃあこれからは地上と地底の行き来が出来る様になったのか」

「ええ。まぁ…この話はまだ全然浸透してないんだけどね」

 

 そっか。紫さんの話を聞く限りじゃ改正って事は不可侵条約が廃止になったんだろうな。

 

 これで俺も地底に戻れる様になって一安心だわ。

 

「だから今日は関係者プラス貴方に恩がある紅魔館(ココ)を借りて騒ぎましょうって事よ」

 

 …でも……久々に見たけど紫さんってこんなに仕事する人だったっけ?

 

 俺の記憶の中にいる紫さんはもっとポンコツ気味だから大幅に違うような……。

 

「それでね…ご褒美に…とは言わないけど、一進の手料理が食べたいな~って///」

「…………さいで」

 

 ……はぁ、目的はそれか…。そういや地上初めの頃は紫さんの家で藍さんと料理を作ってたからな……。

 

 どうやらその時に味を占められた様だから嬉しいっちゃ嬉しいが、

 

「…思ってたんだけど……どうしたの?」

「…………」

 

 願わくはこれ以上死人に鞭打たないで下さい……、これでも一時間程前まで死にかけてた人間なんすよ…。

 

 紫さんに気付いてからは自分では平常を装っていたつもりなんだけど、難なく紫さんに俺の状態を見抜かれてしまう。

 

 

「あ〜これはな……」

 

 …どうすっかな、美鈴にやられたって言ったら前回同様(俺は知らないけど)に面倒な事になりそうだし……。

 

「それはウチの門番と手合わせした時にちょっとしたダメージがあったのよ」

「…へぇ」

 

 なんて言い淀んでいるとパチェさんから助け舟が出される。

 

 サンキュパチェさん、いくら何でも自分の口で自滅したなんて言うのは抵抗があったからな。

 

「…ふーん…そう。…それなら……これでどう?」

 

 なんて言いながら紫さんが俺の背中を触ってなんかして―—って?

 

「…スゲッ……あっさり治った」

 

 腕を回して確認してみたけど違和感無し。

 

 いつの間にか先程まであった怠さが解消されていて、自分の身体にいつもの感覚が戻ってきていた。

 

「貴方の気の巡りが変になってたから境界でちょちょいとね、もう…ダメよ無茶なんてしたら」

 

 心配してくれるのは素直に嬉しいんだけどそれより境界が怖ぇよ。

 

 既に何でもありなんだな境界って……、気の巡りって最早何のこっちゃ分からん小難しい回復ですら可能なのかよ。

 

「ああ。ありが――」

「ふふっ、これで今日の宴会で美味しい料理が食べれるわね♪」

 

 …………感謝したくねぇ…、そもそも俺が作る前提なのかよ…。

 

 労働→疲労→回復→労働→疲労→回復…ハハッ、一体何処の拷問かな?

 

「…一進さんは料理が出来るのですか……これで少しは楽が出来そうですね」

「え?咲夜って家の事何時も一人で頑張ってたの?」

「はい。そうですよ妹様、私はこの紅魔館のメイドですので」

「……咲夜、こあ使っていいわよ」

「…いえ…一度試したところ小悪魔だと無理がありました」

「……そう…。ま、あの子はお手伝い程度だからね」

 

 おいちょっと待てそこッ!!

 

 俺に拒否感が無い事なんて今更文句言わねぇけどよ、ハードル上げるのだけは止めろ!!俺だってセンスで作ってる様なもんだから舌に合う合わないがあるんだよ!

 

「全く…当日になってから言われてもな…。お前は準備というものがあるのを知らな――」

「あら?どーせ貴女は準備なんて何もしないじゃない」

「…………」

 

 レミリアが紫さんに言い負かされてんのはどうでもいいとして、材料とか買い溜めしてあんのかココ!?ってか紫さん?宴会って言われても時間も人数も把握して無いんだけど。

 

「咲夜が大変そうだから私も手伝ってあげる♪」

「えッ!?……い、いえ妹様は時間まで自由に寛いでいて下さい!!これは私達従者の仕事ですから」

 

 咲夜……『逹』を付けるな『逹』を。

 それともその、従者は皆一蓮托生って感じなのか?

 

「…う、うるさいッ!どうせお前だってあの狐が居ないと何も出来ないだろ!!」

「うぐ…、けど私は少なからず家事は出来るわよ!」

「なにぃ!?」

 

 ほほう紫さんよ、キッチンをあれだけ汚す事を貴女の中では家事が出来ると言うのか。……アレ藍さんが泣く泣く掃除してたよ。

 

「…一進、頼んだわよ」

「…はいよ」

 

 後ろの会話から目を逸らしているパチェさんからそんな事を言われる…。

 

 パチェさんから置かれた手にはイヤに力が込められている。それは俺の勘違いという事にしておきたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜それから数時間後〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガッシャーン!!

 

 音の鳴る方へと顔を上げてみる…。

 

「スキマァ!!初めに地底に連れてったってどうゆう事だコラァ!!!」

「しょーがないでしょ!!私だって連れて行きたくて落とした訳じゃないんだから!!!」

「ハァ!?逆ギレなんてしてなくていいから、先ずは私が頼んだってのにそれを忘れてた事について頭下げるべきだろって言ってんだ!!」

「あ〜ら残念ね〜。悪いけど貴女程度のお子様の願いなんて私ぐらいになるとは聞く必要も無いのよ〜」

「ハッ!年寄りの(ひが)みほど聞いてて煩わしいものは無いな!」

「なんですってぇ!?」

 

 見えるのはぎゃーぎゃーと一色触発状態で、両者共いつ手が出てもおかしくは無い…そんな二人の大妖怪の言い争い。

 

「アッハッハッハ!やれやれ二人とも!!」

「おいレミリア〜いくら紫が相手でも簡単に負けんじゃないぜ!」

「いや、煽ってないで二人を抑えるのを手伝って下さいッ!館を直したばかりなのに再び壊されたら堪りませんよ!」

 

 二人の勃発を今か今かと待ちわびている楽天家が二人…そしてそれを見て一人で奔走している可哀想な美鈴。

 

「本当にすまない…まさか紫様があれ程荒れるとは……」

「別に気にしてないわ。荒れてるのはウチのバカ(レミィ)も同じだし…、それに原因を作ったのもウチのバカ(こあ)だし」

「…これはお空を置いてきて正解でしたね。あの子が酔ってしまっていたら笑い事じゃ済まなくなってました」

 

 比較的冷静に、それでいて周りの状況を見て話し合ってる藍さん、パチェさん、さとりちゃんのグループ。

 

 …俺的には、そこに混ざってゆっくりと楽しんでいたいと切実に思ってるんだが……、

 

 

「んふふ〜お兄様ぁ〜♪」

「あ!!もうまたお進はフランちゃんにベタべタしてさぁ!」

「してないって断じてしてない!!寧ろどっちかって言うとされてる側!!」

「ほら見て下さい可愛らしいお顔を真っ赤にさせてお怒りになってるお嬢様を!!あれ程怒ってらっしゃるお嬢様見られるなんて稀ですよ稀ッ!!ホントに一進さんは運がよろしいようで――って何でお嬢様を見てないんですかッ!!」

「ウルセェ!!!今どうでもいいんだよそんな事!!」

 

 だぁぁ!!ちっくしょ何なんだよこの状況ッ!!

 

 そりゃな?俺だって宴会だから騒ぐのもハメを外すのも分かるよ?分かるけどよ…それでも限度ってもんがあるだろう普通…。呑める事なら静かに呑みたかったよ…。

 

 いやもう無理だって悟ったけどな!別に夢ぐらい見たっていいだろ!?

 

「…ところがどっこい……夢じゃありません………スピー」

「おいこあッどっから受信したそのセリフ!…ってか事の元凶が何真っ先に寝てんだよ!!」

「お進聞いてるの!!?」

「聞いてる!聞いてるからこいしちゃんは一回酒瓶から手ぇ離せ!」

 

 紅魔館ホール内……二ヶ所で起こっている耳を塞ぎたくなるような壮大な喧騒……。

 

 

 

 ……はぁ~あ…、

 

 

 どうしてこうなった……。

 

 

 

 




次からはちゃんと宴会に移行していきます。人数が人数ですから捌ききれるかどうか…。


それではまた次回。

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