受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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スランプというかなんというか…少々変な事になってしまいました…。
最初は三人称です。


それではどうぞ。


 


第30話 武術の極意

~紅魔館 門前~

 

 

 

「ねぇ美鈴、貴女ってそこそこ強かったわよね?」

「はい?…何ですかレミリアお嬢様?藪から棒にそんな事聞い……ってレミリアお嬢様ァ!?え、何でこんなトコに!」

「そんな事いいから速く答えなさい」

 

 主から従者へのこんな質問……いつもならばこんな事はありえない…。

 

 勤務中に突然主人が現れた事で美鈴は驚いたのだが…続け様に放たれた有無を言わさないレミリアの言葉に美鈴は従うしか無かった。

 

「…………」

 

 そんな中、現在一進もレミリア直々に連れられて紅魔館門前にまで来ている。

 

 腕を組み…直立のまま目を閉じて、定期的な呼吸を繰り返していた。

 

「私の強さですか〜。いや〜…お恥ずかしい事ですが…、よく魔理沙さんに突破されるぐらいの実力なら持っていますよ」

 

 そんな一進を気にしつつも美鈴は歯切れ悪く答える。

 

 端的に強いか弱いかで言ってしまえば、自分は今の幻想郷の中だと弱いと自覚してたから。

 

 そして、こんな事を聞かれるという事は自分の防衛率に不満を持たれたのでは無いかと美鈴はやや不安になる…。

 

「……変な謙遜は止めなさい。弾幕ごっこなら私だってあいつに勝てるか分からないわ」

「は、はぁ…」

 

 確かに美鈴の勝率は低い…。

 

 だがそれは、別に本気で侵入を拒んでいる訳でも無く、本気を出して追い払う事もしてない為でもある。

 

 それに加え、相手になっているのが数々の異変解決をしてきた魔理沙となってはそれも仕方ないと言えば仕方ない。

 

 

 ……だがレミリアの求めている答えとは少し違う。

 

 

「それなら……貴女の土俵でやり合うとしたらどうなの?」

「…………」

 

 

 その一言で空気が変わる。

 

 口調と声質はそのまま、妖力だって先程と変わらない。

 だが変わった、レミリアの纏う空気が明らかに変わっていた。

 

「ははは!な〜に言ってんですかお嬢様」

 

 おそらく、美鈴もそんなレミリアの言い方や雰囲気で彼女が言いたい事に気付いたのだろう。

 

 自分の解雇という線が無くなった事を確信して笑う。

 

 そして、それと同時に確かな闘志を漲らせている。

 

「武術家が接近戦で遅れを取ったら立つ瀬が――」

 

 妖怪の身でありながら中国武術…もとい人間の技を学んでいる特異さ。

 

 美鈴はこれまでの生きてきた人生の中でも武術にその年月を費やし続けてきた。……妖怪らしからぬ、力ではなく技を求めて。

 

 だから()()幻想郷が弾幕ごっこを主流としている為美鈴の勝率が低いだけで、彼女自身が決して弱い訳では無い。

 

「……私の価値が無くなってしまいますよ!」

 

 …今一度言うが、妖怪の基礎能力を土台にして人間の技を身に付けている美鈴が接近戦において弱い訳が無い。

 

「ククッ、そうか…。…それならば、自分の価値を再度私に知らしめてみろ!」

「はい!」

 

 美鈴は一進に向き直り構えを取る。

 

 自身が積み上げてきた努力と誇りに確かな自信を抱きながら、今か今かと開戦を待ち望む…。

 

 

 対する一進は腕を解き、長く息を吐いてから目を開ける。

 

 そして、ポツリと一言だけ…、

 

 

 

「…いや、俺はやらんぞ」

「「え?」」

 

 紡いだのは呆れの混じった対戦拒否の言葉だった。

 

 

 

 

 

side一進

 

 

 

 

 ふぁ〜あ…。

 

「そんな事いいから速く答えなさい」

 

 あ〜寝みぃ〜。

 

 なぁレミリアよ…俺は帰っててもいいか?いきなり引っ張り出されてそんな会話始められてもどうでもいいんだが…。

 

「私の強さですか〜。いや〜…お恥ずかしい事ですが…、よく魔理沙さんに突破されるぐらいの実力なら持っていますよ」

「……変な謙遜は止めなさい。弾幕ごっこなら私だってあいつに勝てるか分からないわ」

「は、はぁ…」

 

 ……ん〜、魔理沙?そういや大ちゃんも言ってたし、地底でさとりちゃんの手伝いしてた時にチラッと見たような気がするけど〜誰だったっけそれ?

 

 でもレミリアに勝てる実力って凄いような――。

 

「それなら……貴女の土俵でやり合うとしたらどうなの?」

 

…………。

 

 ああ…成る程、そういう事か……。何でわざわざ俺を連れてきたのかやっと合点がいったわ。

 

「ははは!な〜に言ってんですかお嬢様。武術家が接近戦で遅れを取ったら立つ瀬が――いえ、……私の価値が無くなってしまいますよ!」

 

 う〜わ実に面倒くさい…あん時レミリアに着いて来なければこんな事にならなかったのにな〜。頼むよ断ってくれよ美鈴…。

 

「ククッ、そうか…。…それならば、自分の価値を再度私に知らしめてみろ!」

「はい!」

 

 いや…はい!ってお前…、一切合切俺の方に確認が無かったんだけどこれ既に決定事項っぽくなってないか?

 

 ……それにあのな、ものすっごいやる気出してるところ悪いんだけどさ……。

 

「…いや、俺はやらんぞ」

「「え?」」

 

 当然断らせてもらうからな。

 

 どーせ俺だろ、どーせ俺が美鈴の相手をさせられるんだろ?もう何となく分かってたよ。

 

 因みに分かってたついでに重要な事もあるんだ。

 

 

 …それはな、

 

「は!?ここまで来て止めるのか?」

「ええ〜戦いましょうよ一進さん〜。レミリアお嬢様と張り合ったのを聞いて私楽しみにしてたんですよ」

 

「……今何時だと思ってんだお前ら!!」

 

 ぶっちゃけ朝4時だぞ朝4時ッ!起こされて外連れ出されて今までなぁなぁと話し聞いてたけどam4時だかんな!

 

 普通寝てるわこんな時間!おはようからおやすみまでにだって含まれてねぇよ!

 

「?4時の何が悪いんだ?」

「何言ってんですか一進さん?私は職務時間が始まる時間帯ですよ」

「うるせぇよ夜行性と惰眠むさぼ郎!!」

 

 俺の時間をお前らの感覚と一緒にすんなや!方や普通に活動時間帯で方や何時でも休んでるだけじゃねぇか!!

 

「「???」」

 

 あ〜もうダメだこいつら…速く何とかしないと…、この二人に時間の概念なんて無かったんや。

 いやホントに時間の概念が無いのは館内に居るけども…。

 

 つ~かダメだ…結構頑張ったけど眠すぎてマズい…。

 

「……こちとら就寝したのなんて1〜2時間前なんよ」

 

 それまでパチェさんのとこで魔法の訓練してたんだけど……。

 その結果さ……悲しきかな…どうやら俺にはセンスが無いようで発現しないみたいなんだ…。

 

「ああ〜分かった分かった、私が日光に当たるのを気にしてるんだろう?大丈夫だそれなら心配いらな――」

「お疲れっしたー!俺は館内に戻っていますのであとは勝手に楽しんで――」

「お前張っ倒すぞ!!」

 

 チッ!

 レミリアが良く分からん事言いだしたからそれに乗じて帰ろうとするも残念な事に失敗に終わる。

 

 くそっ…いくらお嬢様だっつってもワガママが過ぎるんじゃないか?ホント何なのこいつマジで面倒くさい…」

「……私も参戦してやろうか?」

 

 ん?止めてくれよ一人でもツライってのに追加なんて以ての外だろ……ってか何で怒って参加する気なん?いや一対一でもやる気は無いんだけど……。

 

「あ、声に出てた?メンゴメンゴ」

「…………」

 

 つい流してしまっていたけど…、どうやら俺の本音がだだ漏れになっていたらしい。レミリアの機嫌がみるみる悪くなっていく。

 

「…やれ、美鈴やっていいぞ。寧ろ速く…殺れ」

 

 おこなの?レミリアさんおこなの?カルシウム足りてます?

 

 ていうか殺れってあんた…それ殺害予告じゃ無いですかやだー。

 

「さぁ一進さん!始めましょう!」

「もうやる気MAXのお前は一回置いとくぞ?…で、俺のメリットは?戦う理由も分からんし…」

 

 そもそも何でこんな事をしなければ行けないんだって話なんだよなぁ。なんか理由や意図があっての事だったらまだ理解出来ない事もないんだけど……。

 

「私が楽しむのに理由がいるかい?」

「ホントいい笑顔でありがとうございますよッ!!(半ギレ)」

 

 オーケオーケー、魔法は上手くいかないし睡眠不足だしおぜうが自由過ぎて久々にキレちまったよ。なぁ美鈴、屋上行こうぜ。

 

 ……全部ただの八つ当たりなんだけど…。

 

「美鈴片したらあとで泣かすから待っとけよ」

 

 取り敢えずレミリアには睨みを利かせておく…。

 

 無論俺の苛立ちが八つ当たり程度で収まる訳も無いから本人に手ぇ出すのは仕方ないね。うん仕方ない仕方ない。

 

「ああいいぞ。その挑戦私は何時でも待っているからな」

「……咲夜懐柔してでもお前の朝飯をピーマン炒めオンリーにしてやる……」

「え、え!?ちょっと待って!?泣かすってそういう感じで来るの!?」

 

 ?何を当たり前な事を言ってんだこいつは?戦うのが面倒だっつってんのに馬鹿正直に挑むわけ無いだろ…。

 

 それにこの方が俺的に――

 

「…嬉しいですね」

 

 ん?

 

 何だ美鈴そんなに俺と戦いたかったのか?まぁあんな事言った手前だから俺も引き下がる訳にはいかないんだよな。

 

「…最近は弾幕ごっこでしか戦う事が無かったですから燻ってたんです。……久々ですよ…自信がある方と直に手合わせが出来るなんて」

 

 あれッ?ちょい、美鈴さ〜ん…。目が笑って無いんですけど何で?それと(おもむ)ろに丁寧に柔軟始められたら怖いんだが…。

 

『美鈴片したらあとで泣かすから待っとけよ』

 

「……あ」

 

 ヤベッ!?やっちまった!!……図らずして美鈴を軽んじてたわ。

 

「さて始めましょう一進さん。もちろん手加減なんて要りませんよ」

「ええ〜……こっちは加減して欲しいな〜なんて」

「はっはっは、嫌です♪」

 

 うん知ってた。

 

「……始めていいのか?」

 

 レミリアの問いかけで俺は意識を切り替える。

 

 さて…と、

 

「んじゃ手合わせだけだからな」

「はい」

 

 なんて言ってはみたものの…もう勝ち負けなんてどうでもいいからさっさと負けよう…、そんでもってゆったり寝てしまいたい……。

 

「そうかそうか。それでは…、開始だ!」

「ハァ!」

「はぁ…」

 

 そんな俺の心算も虚しく、レミリアの掛け声に掻き消される…。

 

 フッフッフ…だが甘いぞレミリア、俺はお前の思うようには動かないからな!あっさり負けてこの場を白けさせやるよ。

 

 迫る美鈴の拳…、俺は速めに終わらせてもらう為に極力ハデに見せてかつ威力を抑えられるよう態勢を整え——

 

「ゴフッ!!!」

「えぇッ!!?避けないんですかァ!!」

「ゲッホ!!!ゲホッゲホ!!………ヒューヒュー…」

 

 

……………………。

 

 

 

「…………」

「…………」

 

「…………ッ」ガクッ

 

 

「ちょ!?大丈夫ですか一進さんッ!!」

「…何やってんだこいつは?」

「すいませんッ!てっきり避けると思ったので思いっきり気を練り込んで打っちゃいました!」

 

 

 ……気?…なにそれぼくしらない…。

 

 ってか死ぬ……。ホンキで動けないっつーか死にそうなんだけど…。

 

 

「パチュリー様ァァーー!!」

 

 美鈴が慌てて館内に向かうのが見える…。……多分館内に向かってるんだと思うんだけど目が霞んできてイマイチ分からない。

 

「…………」ヒューヒュー

「ま、まぁ……大幅に予定と違ったけどこれはこれで面白かったぞ」

 

 うっせーよおぜう…。俺は決してお前を許さんからな。

 

 

 

 ……これを機に心にしかと刻み込んださ…。組み手だろうが手を抜かないでやらないと危険だって。

 

 

 

 

 

 




一進と美鈴の対戦カードを期待したでしょうか?残念!美鈴を出したかっただけの茶番回でした!!

は~満足満足…ところで1話1話でしっかりと話を終わらせられる技術って何処かに売ってませんかね?あったらいい値で買うんですが…。


それではまた次回。


 

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