受け入れ先は幻想郷   作:無意識倶楽部

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今までで一番の難産でした…。


それではどうぞ。

 



第18話 少女の友達

 

 

 

side一進

 

 

 

 

 

 スキマから出て、まず俺の目に飛び込んできたのは緑だった。

 

 

 微かに吹いた風で、サワサワとそよぐ心地の良い音色…。

 

 天井から降り注ぐのは、心まで暖かくしてくれる神秘的な木漏れ日…。

 

 人の多い街中では絶対に感じる事が出来ないだろう、(よど)みの無い澄みきった空気…。

 

 子供の時ならまだしも、大人になった今では少し遠慮したい生き物たち…。

 

 

 ……なんて詩的に表現したところで限界があるんだよな。

 

 そろそろみんなも隠し切れない事実に気付いた頃だろうから言わせてもらう。

 

 

 

 それでは、せ~ので―――。

 

「(ナンデ森の中なんだよ!!!)」

 

 

 そう。俺たちが今いるところは森。たとえ三百六十度見回しても木、木、木で囲まれている森。

 

 え?木、木、木で=森だろって?やかましいわ!

 

 

 ったく…紫さん(あの人)は紅魔館の近くにスキマを開くって言ってたよな!

なのにくぐった先は森の中って…。

 

 ホントに何がしたいの!また適当に仕事してるんだろうけどさぁ…。

 

 まぁ、それでもこいしちゃんはこんな森の中でも大体の方向は分かるとの事で…一安心して俺たちは森の中を進んでいたわけですよ。

 

 

「それでこいしちゃん?これから俺達が向かう紅魔館ってどんなとこ?」

 

 どうせ紅魔館に着くまで少し時間が掛かりそうだし、話でもして行きましょうか。

 

 それに結局のところ、当主が運命を操る事ぐらいしか聞いてないからね。

情報は多めにあっても損はしないし、知れる事は出来るだけ知っておこう。

 

「ん〜、見た目が真っ赤で楽しい所?」

「(…これは完全にミスったな…ちゃんと藍さんにでも聞いておくべきだったわ)…けどまぁ、こいしちゃんの友達っていうのなら話もスムーズに進むよね」

 

 そういえば紫さんは、紅魔館には危険な妖怪がいるって言っていたけど…それも昔の事らしいし、何よりも友人関係に当たるこいしちゃんがいるんだから危険だって無いだろう。

 

 

「……う〜ん…ど〜なんだろう…」

「どったの?」

 

 えーと……多分だけど前言撤回するわ。

 

 向こうの用事なんてスムーズに進むと思ってたんだけど、こいしちゃんの反応が少しよろしく無いところから察するに…おそらく面倒事があるみたいだ。

 

「えっとね、先に言っちゃうとわたしと紅魔館の当主―――レミリア・スカーレットは知り合いじゃ無いの。正しくは向こうがわたしに会ってないんだけど…」

 

 ん?知り合いじゃ無い?…どういう事だ?

 

 ちょっと待て少し考えてみよう、向こうがこいしちゃんの事を知らないのは取り敢えずまぁいいとして……だけどこいしちゃんは向こうを知っているって事は―――!

 

 

 あぁ、なるほどね。

 

 

「能力を使っていた…と、じゃあ友達ってのは」

 

 これで合点がいったよ。

 

 こいしちゃんが能力を使う事で誰にも気づかれずに済み、また一方的にこいしちゃんがレミリアさんを知る事が出来るってわけか。

 

 でもそれだったら…酷い言い方かもしれないけどさ。

友達ってのもこいしちゃんが一方的に知って、もしかしたら言ってるだけの可能性が……。

 

「ううん。フランちゃんはわたしの事をちゃんと知ってるよ。えっと…フランちゃんっていうのが地上で出来たわたしの大切な友達なの♪お進が来る前まではちょくちょく遊んでたんだ〜♪」

 

 ああ良かった。どうやら友達の方はお互いに知り合いみたいだ……。

 

「あ〜、ごめんねこいしちゃん。少しでも疑っちゃって」

「気にして無いよ〜。それに服を貸してもらいに行った時に、そのうちお進を連れて来るって約束したし〜♪」

「そっか、ならちょうど良かったじゃん」

「うん♪」

 

 それに、こいしちゃんがこんなに嬉しそうな笑顔を浮かべるって事は、本当にフランちゃんとやらが大好きで大切な友達なんだろうって理解出来るよ…。

 

 まぁ、地上でのって言うけど…確かに地底では友達っていうより皆が仲間っていう意識の方が強かったからな。

 

 それだったら友達ってのも珍しいのか―――いや待て。

 

 

「だったら何でそこの当主に姿を隠しているのさ?」

 

 当然こんな疑問が出てくる。

 

 だっておかしくないか?

 

 一回ならまだしも…そんなに何度も紅魔館へと訪れているってのに、そこの当主であるレミリアさんには気づかれないように能力を使ってる。

 

 普通だったらそんな事する必要無い筈だろう。

 

 

 すると、こいしちゃんから笑顔が消えて表情が暗くなっていく。

 

「……閉じ込められてるって言えばいいのかな?紅魔館でそんな状態なの」

 

 そして、口にしたのは驚きに真実だった。

 

「は、閉じ込められてる?フランちゃんが?」

「うん……お進の言った通り、わたしは無意識の状態で誰にも見つからないように紅魔館に入ってたの。そして…そこの地下室でフランちゃんに会ったんだ……」

 

「へぇ〜地下室に…」

 

「…ずっと一人でいたんだって…。わたしがいきなり姿を現したのに、怖がらないどころか喜んで話しかけてきたんだよ」

 

 

 …ずっと、一人…か。

 

 

「それで仲良くなったと」

 

「うん、初めて出来た友達!ってスゴイ喜んでくれたよ。昔は誰かがたまに遊びに来てくれてたって言ってたけど、今はもう食事を届けてくれる人ぐらいしか会わないんだって」

 

「………………」

 

「わたしもフランちゃんを外に連れ出そうとしたんだけど、そしたら…お姉様たちに気づかれたら危ないし、そうなったらもう会えなくなるから無理にしてくれなくてもいいよ。って言われたんだ……だけどさ、そんな事言われたら余計に連れ出したくなっちゃうじゃん」

 

 …………。

 

 ふーん……お姉様ね…その姉がフランちゃんを閉じ込めてる元凶?って事でいいのか。

 

「そっか……そうだよな、そりゃ連れ出したくなるよな。俺もそういうタイプだよ」

 

 さて、俺に対する向こうの用事ってのがまだ分からないけど…決定事項として、フランちゃんを外に出させるぐらいの交渉はしなきゃなんねぇな。

 

 ……自分は一人で寂しい思いをするって分かってるのに、それでもなお友達の為に我慢が出来る優しい子を閉じ込めてるのかよ……全く何考えてんだ紅魔館。

 

 

 この時、俺はこいしちゃんの話を聞いて、未だに紅魔館に着いていないというのに…既にそこに住む者たちに不快な気持ちを抱き始めていた…。

 

 

 

 〜そして数分後〜

 

 

「あ!見えてきた!」

「どれどれ、……いや、いくらなんでもあれは悪趣味すぎるだろ…」

 

 ちょっとした決意をして歩く事数分…やっと目的地の紅魔館が見え始める。

 

 思わず口に出してしまったが…これは悪趣味と言ってしまったのも仕方がないだろう……。

 

 だって湖を越えた先に見えてきたのは、どこからどう見ても紅一色!(多少濃さの違いはあるけど)と主張が激しく、果てしなく目に悪そうな配色の洋館。

 

 ……完全に周りの外観をぶち壊して建てられている洋館からは、なんとも近寄り難いオーラが放たれている。

 

 

「……これから紅魔館(アレ)に入ると…」

「うん♪」

 

 はぁ〜あ…マジで見た目真っ赤だよ……。

紅って視覚の誘導によく使われる色の筈だろ……なのに不思議だね、俺の中では紅魔館(アレ)から目を逸らしたい気持ちでいっぱいなんだけど。

 

 そもそも何で自分の家を紅くした?何だ、センスか?だとしたら尊敬の念すら抱くぞ。

 

 ていうかよくこいしちゃんは初見でアレに入ろうと思ったな…勇気があるっていうか、怖いもの知らずっていうか……。

 

 俺だったら絶対に入らん。つーか知り合いになりたくないから近づきさえしないわ。

 

 けれど呼ばれているのなら仕方がない、俺だってせっかくの招待を無視するなんてマナー違反はしたくないからな…。

 

 

 さて、この湖を越えたら着くし…そろそろ覚悟を決め―――!?

 

 

「冷てぇ!?つーかさみぃ!!」

 

 何て考え事をしていたら俺の身体にリアルな冷たさが走る。

 

「わーい!おどろいた!おどろいた!」

「あわわわ!チルノちゃん何やってるの!?」

 

 すると、湖の上空には不思議な羽(翼?)を持った女の子が二人。

青い方が笑っていて、緑の方が慌てているように見えるが…。

 

「そこの人間!ここを通りたかったらあたいとショーブしろ!」

 

 

 いきなりの展開についていけなそうだが、まずは言わせてほしい…。

 

「いや、誰?」

 

 初対面の子に突然勝負挑まれたんだ、そりゃ困惑しても仕方ないだろ。

 

 

 

 

 




紅魔館着かず!

当初は二人をスルーしようと考えていましたが急遽(きゅうきょ)出す事にしました。


それではまた次回。

 

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