後、自分的にリベロが好きなんですよね。
まぁ何もしてなくても、かっこいいんですけど。
のやっさん、モテキャラにしてみたかったんですっ!
「あの……ずっと好きでしたっ!!」
「………………………………はっ!?」
烏野高校排球部、体育館裏。
烏野高校一年でバレー部の日向翔陽は、この現場に居合わせて
「(えっ……えっ、えぇぇぇ!?だ、誰か告白してるぅぅぅ!?)」
そう、日向が告白されている訳では無いのだ。
―――さっさと立ち去った方がいい。
誰もが一瞬はそう思うだろうが、人というのは興味がそそられたものを、我慢して立ち去ることなど出来ない。日向も普通の人間の一人、立ち去る気などさらさらない。
「(ん~~~、相手が見えない…。)」
日向のいる壁の方を向いている女子生徒の顔は見えた。そして、その顔に日向は見覚えがあった。
一つ年上の先輩。田中や西谷らと同じ学年の、学年一と言われる美人の先輩だった。数日前に、日向は田中に教えてもらっていた。
「日向、何やってんだ。」
「げっ!!影山っ!」
前の光景に夢中になっていた日向は、後ろからやって来たチームメイトの影山に気づかなかった。
「げっ、って何だっ、あァァ!?」
「と、とりあえず静かにしろっ!」
「はぁ?なんでだよ。」
「………、あれだよ、あれ。」
少し間があったのは、影山に教えたくなかったから。まぁ、当の本人は気づいてないみたいだから、言わないでおこう。
「あの、女子生徒って……。」
「この前、田中先輩が言ってた人だよなっ。」
「あぁ……。相手は、、、見えねぇじゃねぇか。」
「なんで、俺に当たるんだよっ!」
日向と影山が、すぐそこで聞いているとも知らず、告白された男子生徒は口を開いた。
「あぁ……わりぃな。俺、好きな奴いるからさ。」
「「……!?」」
その声は、日向も影山もよく知る声。
「き、潔子先輩ですか?」
「いやいや!潔子さんは、俺みたいな奴と釣り合うような人じゃねぇから!」
「じ、じゃあ……。」
「俺の幼馴染…みたいで、仲間で、ライバルで、尊敬してる人で、大事な奴がいんだ。
だからすいません。あんたなら、俺なんかより良い人見つけれるさ!」
「……。」
「………。」
告白を丁重に断られた女子生徒だったが、はっきりいってくれたことにすっきりしたのか、清々しい顔で去って行った。
「「…………。」」
「でー、、、さっきからそこで聞いてる悪い後輩は……」
「「!?」」
「だ~~~れ~~~だっ!!」
「「ギャァァァァァ!!!」」
「しょーよー!影山っ!!待でやゴラアァァ!!!」
「田中さん、あれなんですか?」
「日向?影山??のやっさんっ!?」
日向と影山を追いかける西谷を、部室から見ていたのは田中と月島。
「……あー、多分、見ちまったんだな日向と影山は。」
「何をですか?」
「告白だよ、告白。」
「西谷さんがしたんですか?」
「されたんだよ、多分だけどな。」
一年生だけでなく、田中以外の全員が動きを止める。
「「「「「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」」」」」
「そんな驚かなくても……。」
―――――――――――――――――――――――
「で……なんだ、これは。」
その日の練習終了後、西谷は全員に取り囲まれた。
「のやっさん、バレた。」
「お前がバラしたの間違いじゃねぇだろうな、龍?」
冷や汗を流す田中を横目に、西谷はため息をつく。
「特に何もねぇ!ただ、部活の前に体育館の裏に来て欲しい、っていう手紙をもらったから、行っただけで、、、」
「でっ、でもっ!!」
西谷の言葉を遮って、叫んだのは日向。
「あぁ?」
「す、好きな人……いるって、、、。」
「……。」
「かっ、影山も聞いたよなっ!?」
「おっ、俺に振んじゃねぇよっ!!」
動揺しまくる日向と影山。意外そうに西谷を見る他のメンバー。
「へぇ、西谷好きな人いるのか。」
「別にそんなんじゃないっすよ、大地さん。それに、しばらく会ってねぇし…、向こうは俺のこと好きかもわかんねぇし……。」
あの西谷が、少し悲しそう顔をしたことに、驚くバレー部一同。
「のやっさん!でも、今度会えるんっすよね?」
「「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」」
「まぁな!」
とたんに笑顔になり、元気になる西谷。
「のやっさんの、彼女かぁ~~!!見たいっす!!」
「しょっ、しょーよー!別に彼女じゃねぇよ!!」
「いつ会えるんすか!?」
日向と影山は、直球で興味津々。
「あっ、明日……。」
「「「「「「「「「明日っ!?」」」」」」」」」
明日は……春高決勝の日。
「みんな知ってると思うぜ。
『白鳥沢高校・女子バレー部、リベロ
今の女子バレー界において、唯一天才と呼ばれるリベロ。」
「「「「「「「「有川佳澄っ!?」」」」」」」」
今、バレー雑誌はほとんど彼女の話題でいっぱいである。それほどの大物なのだ。
「明日は男子の決勝の前に、女子の決勝があって!白鳥沢VS新山女子高校の試合なんだっ!!」
それぞれの想いを抱えて……
全日本バレーボール高等学校選手権大会…『春高』決勝戦へ……