ハルケギニアの超越者――オーバーロード――   作:サルガッソ

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ゼロの使い魔、オーバーロードのクロスオーバーです。
世界の舞台はゼロの使い魔。ナザリックが転移した異世界がハルケギニアだったらというお話。
時系列はオーバーロードは物語開始時(転移してすぐ)、ゼロの使い魔は使い魔召喚の儀式が終わって数日といったところです。

基本的に超慎重派のモモンガ様、そして属性極悪のNPC達が『ハルケギニアに来たらどんな感じになるんだろう?』と言う妄想を綴ったものとなっております。


我が名を知るがいい

(ルールー。イルククゥは不幸なのねー)

 

 始祖の加護に守られしハルケギニア。その中にある一国、トリステイン王国の草原。

 そこを走る人攫いの馬車の中、青い髪とナイスボディが特徴的な少女、イルククゥは己の不幸を嘆いていた。

 

 彼女は、とある事情で主人から渡された金を損失してしまった。ぶっちゃけ使い込んだのだが、決して悪意が有ったわけではない。ただ、金が使えばなくなるものだとは知らなかったのだ。

 とてもここまで育った人間とは思えないだろうが、そもそも彼女の正体は人間ではない。この世界において既に絶滅したとされる、韻竜と言う種類のドラゴンなのだ。

 

 そして、彼女はつい先日人間の魔法使い――メイジの使い魔となった。

 いろいろ暇な竜生に刺激を求めたのだが、当の主人は青い髪のチビスケ。しかも韻竜たる自分に敬意を払わず、満足に肉もくれない。イルククゥは、不満たらたらであった。

 だからこそ、変化の魔法で人間に化けてお使いに行けと言う命令にも真面目に当たったとは言えない。お金の意味もイマイチ理解していないそんな彼女が、本代だと渡された硬貨が肉と交換できるとしればまあ、どうなるかは自明の理と言う奴だった。

 だが、お金がないと本が買えない。たらふく食べた後でその事実をしったイルククゥは、道行く人にお金をくれと頼み込んで回った。

 その結果、こうして悪い人攫いに騙されて縛り上げられているのだった。ご丁寧に、偶然とは言え真の姿に戻ることができない魔法のロープで。

 

「イルククゥは世界で一番不幸な竜なのねー」

 

 結局、こうしていろんなことに恨み言を言うくらいしかできないのだった。

 韻竜と言う、鋭敏な感覚が、外に発生した異常を感知するそのときまで――。

 

 

「はぁ……」

 

 その数時間ほど前、絢爛豪華な神の居城。そう言われても誰一人疑いを持たないであろう、この世の財と宝を尽くして作り上げられたような玉座の間で、一人の男がため息を吐いた。

 

(守護者達に忠誠心があるのを確認できたのはよかったけど、これからどうするかなぁ……)

 

 神の居城でその玉座に座るのは、この城――ナザリック地下大墳墓の主、モモンガだ。

 その絶対なる姿、死を具現化したアンデッドたる皮も肉もない骸骨――死の支配者(オーバーロード)の姿にはそぐわない、弱気な愚痴を内心で溢していた。

 

(やっぱり情報収集が先決だよな。でも、外は沼地じゃなくて草原。こんな、ユグドラシルじゃありえないこと満載の世界でまず何をすればいいのか……)

 

 モモンガは悩んでいた。今、自分がどんな状況に置かれているのかさっぱり分からないことに対して。

 

 今でこそ、モモンガは完全無欠の化け物、アンデッドとしてここにいる。だが、その本来の姿は人間なのだ。

 更に言えば、本当の名はモモンガではない。彼は鈴木悟と言う名の、冴えないサラリーマンなのだ。

 何故そんな普通の人間が、こうして神の居城の玉座で骸骨やっているのかと言えば、はっきり言って詳細不明だ。

 と言うのも、鈴木悟はただゲームしていただけなのだから。ユグドラシルという名のDMMORPG――体感型ゲームを。

 

(ここは間違いなくナザリックだ。俺たち、アインズ・ウール・ゴウンの結晶だ)

 

 モモンガとは、ユグドラシルで鈴木悟が作り上げたゲームキャラ、アバターだ。彼がギルド長を勤めた、最高時でギルドランク9位まで上り詰めた伝説のギルド、アインズ・ウール・ゴウンに所属する骸骨の魔法使いだ。

 そして、この神の居城に匹敵――いや、勝ると言っても過言ではない地たるナザリックとは、彼らギルドメンバー41人が総力を挙げて作り上げた最高傑作なのだ。

 今でこそ、リアルの事情などで次々とメンバーが引退し、そして先日のサービス終了日には安定したイン率を誇るのがモモンガただ一人なんて状況であったが、ここは間違いなく彼らの努力の結晶なのだ。

 

(既にサービス終了日を迎えている。なのに、俺は強制ログアウトを受けることなく今もここにいる。この、右も左も分からない世界で)

 

 数々の冒険を魅せてくれたユグドラシル。誰一人として忘れられない大切な友達に合わせてくれたユグドラシル。それも、既にサービスを終了したのだ。

 だが、何故かモモンガが鈴木悟に戻る事はなかった。戻ることが出来なくなったのだ。

 

 ログアウト機能の消滅。GMコールが使用不可能と言う事態。倫理コードで禁じられている行為の解禁。現代の技術では決して実現不可能な数々のリアリティの追加。

 そして何よりも、彼らギルドメンバーが夢と希望と欲望と性癖と中二病とノリと勢いその他もろもろを注ぎ込んで作り上げたNPC、ナザリック地下大墳墓のキャラクターに命と魂が宿ったと言う信じられない現実。

 それを踏まえて、モモンガは結論した。ここはユグドラシルではなく、何故かユグドラシルの能力と姿のままで異世界に飛ばされてしまったのだと。

 

(俺たちアインズ・ウール・ゴウンメンバーの子供達とも言えるNPCが設定のままに動き出し、そして忠誠を誓ってくれるのは嬉しい。それに、ゲーム通りのスキルや魔法を使えたのも喜ばしい事実だ。でも、外のことがまったく分からないんだよなぁ)

 

 未知の現象によって異世界に飛ばされたモモンガは、まず自分の身の安全を確保した。ユグドラシルにおける最高レベル100であるモモンガだが、同格のNPC――守護者達に敵意を持たれてはかなり危険なのだ。

 その不安は杞憂に終わった――逆に、狂信にも近い忠誠心と言う名のプレッシャーを浴びた――のだが、だからと言って安心するほどモモンガは馬鹿ではない。

 ここは未知の世界、知り尽くしたユグドラシルではないのだから。

 

(ユグドラシル時代とは違って、今のナザリックは草原にある。昨日の夜にみた夜空はまさに絶景だったけど、それはつまり俺の知らない世界ってことなんだよなぁ)

 

 昨日の夜、モモンガはちょっとした気分転換に外に出た。そして、そこで今まで見たことも無い美を目にした。

 モモンガ――鈴木悟の世界は、大気汚染によって淀んでいる。美しい自然なんてものが滅んで随分経つのだ。

 だからこそ、第六階層のような自然に憧れたかつての仲間の一人のような人間も多くいたのだが、昨夜見た光景は、まさに本物の自然だった。

 あくまでも作り物であるユグドラシルでは感じることのできない、宝石箱のように輝く本物の大自然がそこにあったのだ。

 が、それは同時に一つのことを証明する。この地は、モモンガの知識のどこにもない世界なのだと言うことを。

 

(今はとりあえずマーレの魔法と幻術でナザリックを隠しているとは言え、どこまでこの隠蔽が通用するか……)

 

 NPC達に命じ、モモンガはナザリックの隠蔽を目論んだ。大地を操るドイルドの力を持つ階層守護者マーレによって。

 それにより、周囲の地形を大幅に変えつつも、ナザリックの姿は隠されている。元の姿を知る者からすれば何かがあったのは一目瞭然だろうが、それでも何の遮蔽物もない草原にポツンと立っているなんて、そんな危険な状態からは脱したのだ。

 だが、未知の世界の未知の存在からすれば、こんな隠蔽何の意味もないんじゃないかなんて不安が頭にチラつく。それでもやらないよりはマシだが、安心はできないのだった。

 

(やっぱり、ナザリックの警戒網強化と平行して情報収集も始めるべきだよな。それも、できる限り安全な方法で)

 

 思考の堂々巡りは、結局そこで結論する。その方法も悩みながら考え終えたモモンガは、骨しかない指に嵌めた9個の指輪の内の一つに念を集中する。

 この指輪こそ、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。転移阻害がかかっているナザリックの中で自由に転移できる魔法が込められたマジックアイテムだ。

 

「セバス。私は自室に行く。お前も後から来い」

「かしこまりました」

 

 至高の存在であり、ナザリックの支配者であるモモンガを一人にするわけにはいかない。それが、愛すべきNPC達の総意だ。

 本来この玉座の間に待機しているべき守護者統括にして、些細なイタズラ心のせいで『モモンガを愛している』なんて設定を加えてしまったアルベドも、今はモモンガの命令でナザリック内の警備体制強化に勤しんでいる。

 そんなわけで、今はナザリックのランド・スチュワードたるセバスがモモンガの側に控えている。だが、指輪を持っていないセバスはこの第十階層からモモンガたちの私室がある第九階層まで歩いていかねばならない。

 せっかく指輪があるのにトコトコ歩いていく気もないモモンガは、自分が思う精一杯の支配者の貫禄を醸し出しつつ、一応どこに行くかだけ告げて転移したのだった。

 

 

 

「あー、落ち着く。やっぱり、一人っていいなー」

 

 そして、自室に跳んだモモンガは、つかの間の自由を満喫しつつ――支配者の演技は、一般人であるモモンガにはいろいろ堪えるのだ――アイテムボックスから一つのアイテムを取り出した。

 

「これユグドラシルじゃ微妙アイテムだったけど、役に立つといいなー」

 

 取り出したのは、一つの鏡だ。この鏡の名は遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)と言い、周囲の映像を写してくれるマジックアイテムだ。

 一切動くことなく周囲の情報を得られると言う点では素晴らしいのだが、如何せん情報系魔法であっさり破られるために、買い物に行くときに客が少ない時間帯を狙うくらいのことしかできないアイテムであった。

 だが、周囲の確認をしたいだけなので、とりあえずこれで問題ない。もし情報対策魔法を使用できるものが近くにいた場合も考えて、こちらも対情報系魔法対策を施すのは忘れないが。

 そうして、モモンガは活動を開始する。この鏡による周辺監視を確立できれば、ナザリックの警備に役立つはずだと言う目論みも込めて。

 

 

 

 

「……うまく行かんものだな」

 

 そして、そんなことを始めてからはや数時間。とっくの昔にセバスもモモンガの背後に控えている為、支配者の演技も忘れない。

 今、モモンガは直径一メートルほどの鏡に映る映像を何とか動かそうと四苦八苦していた。一応画面は動くのだが、中々思うように動かないのだ。

 

(うー、流石に疲れてきたな。アンデッドには疲労とか関係ないはずなんだけど、やっぱりセバスが怒ってるからかなぁ)

 

 モモンガは代わり映えしない草原の映像に飽きつつ、チラッと背後のセバスを見た。

 モモンガには、背後に控える老人の姿の執事、セバスが怒っているように感じられるのだ。それも、セバスを創造した、モモンガの恩人にしてギルド最強の男、たっち・みーを感じさせる雰囲気で。

 

(いいじゃないか、別に一人で歩き回ったってさ。そりゃ、支配者には相応しくないのかもしれないけど)

 

 昨夜の散歩。実は、供を連れて行かなかった。支配者の演技に疲れての気分転換だったのだから当たり前だが、それがセバスにはお気に召さかったんじゃないかとモモンガは感じているのだ。

 実際、すぐに変装したモモンガに気がついたナザリックの頭脳にして守護者、デミウルゴスもそれには反対していた。やはり、支配者が供を連れ歩かないのはNPC全てにとって間違ったことらしいのだ。

 実際にはモモンガを含むギルドメンバーを至高の41人と敬い、忠義を尽くすNPCが怒りを感じるなんてことはないので、これはモモンガの勘違いと言える。しかしそう感じてしまうのは、やはり心配をかけさせてしまったという罪悪感から来るものだろうか。

 

(こりゃ、当分気の休まることはなさそうだ)

 

 そんな諦めとともに、何となく伸びをしてみる。生憎骨の体ではなんの気持ちよさもなかったが、しかしその動作によって鏡が新たな動きを見せたのだった。

 

「おっ」

 

 言ってしまえば、バンザイのポーズ。それのおかげか、鏡の視点が大きく下がったのだ。

 それを見たモモンガは、ようやく動いたと達成感を感じる。そして、その後ろからセバスの拍手が鳴り響いたのだった。

 

「おめでとうございます、モモンガ様。このセバス、感服いたしました」

「ありがとうセバス。……さて、これでようやく周囲の映像を……?」

 

 正直、そこまで大した事はしていない。そう思うモモンガだが、セバスは心から賞賛を述べている。ならば、それを素直に受け入れるのがギルド長たる自分の正しい態度だろう。

 そう思って軽く手を上げてから周囲の観察に戻るモモンガだが、そこでようやく知的生命体らしきものを見つけたのだった。

 

「これは……馬車か? 二つ続けて走行しているが、仲間か?」

「はい、見たところかなり薄汚いですが、これは間違いなく馬車でしょう。御者をしているのは、どうやらどちらも人間のようですね」

「ふむ……。友好関係に持っていければいいんだがな……」

 

 鏡の映像を見ながら、モモンガはそう呟いた。

 モモンガは、この世界に喧嘩を売るつもりはない。そもそも自分達の保有する力がこの世界に通用するかも不明な段階で喧嘩腰になれるほど、モモンガは豪胆ではないのだ。

 昨夜はちょっとテンションが上がって『世界征服なんておもしろいかもしれない』なんて言ってしまったが、全く本気ではないのである。

 そこで、とりあえず現地住民との友好関係を結びたいと思っていた。情報収集にもなるし、かつての仲間達を迎え入れる為、ナザリックを維持すると言う意味でも有効な手段だろう。

 

「さて、ではもう少し詳しく調べるか。セバス、無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァサック)を」

「はっ!」

 

 セバスから無限と言う割には搭載制限のある背負い袋を受け取り、その中から一枚のスクロールを取り出す。

 ユグドラシルでは、自分の習得している魔法以外の魔法を発動する方法がある。これはその一つで、クラス適正さえあれば未修得の魔法でも発動できる使い捨てアイテム、スクロールだ。

 当然スクロールごとに発動させられる魔法は違い、これは不可視の感覚器を作り出す魔法が記されている。遠隔視の鏡では建物や馬車の中までは覗けないため、この魔法でカバーするのだ。

 

「相手の人数や、積荷なんかがわかれば交渉の材料に……ん?」

 

 せっかく発見した現地人の情報を集めるために、馬車の中を覗き見るモモンガ。

 ナザリックにはかなりの量の宝があり、場合によっては交渉材料になり得る。もちろん仲間達が残していった財宝に手をつける気はないが、この世界の人間が何を望んでいるのかを知るのは決して無駄なことではない。

 そんな思いで中を見たのだが、そこに映ったのはある意味予想を超えた代物だったのだった。

 

「……セバス、どう思う?」

「恐らく、人攫いでしょう」

 

 馬車の中は、目に涙を浮かべてすすり泣く、縄で縛られた少女達でいっぱいだった。それ以外にも、薄汚い傭兵風の男が一人。間違いなく見張りだろう。

 ならば後ろの馬車はと見てみれば、こっちは武装した人間が沢山おり、どこからどう見ても誘拐犯と被害者であった。

 

「いかがなさいますか?」

「そうだな――」

 

 ここで、モモンガは沈黙する。助ける場合、見捨てる場合の利益と損害を計算しているのだ。

 

(見捨てた場合のリスクは、せっかくの情報源を逃すことか。だが、別にこんな面倒な連中をわざわざファーストコンタクトに選ぶ理由もない。逆に助けに行く場合、下手をすれば命の危機だ。この世界の人間の力が不明な段階で、リスクを犯すのは危険だな)

 

 一応、助けることに成功した場合、この世界の人間に恩が売れると言うメリットもある。同時に犯罪者からは恨まれることになるが、まあ全員攫って情報源や実験台にしてやればいい話だ。

 そんなことを、当然のように人間の生き死にを計算で判断するモモンガは、ふと自分の異常さに気がつく。

 果たして、自分はこんな薄情な人間だったか、と。こんな、放置すれば死ねればいいなんて結末以外待っていなさそうな少女達をあっさり見捨てられるような人間だったか、と。

 

(どうやら、心まで人間を止めたらしいな。ならば――)

 

 自分の異常を、やはり冷静に把握するモモンガ。その異形の心は、一つの決断を下すのだった。

 

「――見捨てる。現状で、あの者達を助ける理由がない」

「――畏まりました」

 

 助けた場合に得られるメリット。戦闘が発生する場合のリスク。それらを天秤にかけた結果、モモンガはリスクをとった。

 どう見ても犯罪者である一団を敵に回してもこの世界との友好関係に支障はないだろうが、やはり敵の力が完全な未知である段階で戦闘行為は危険だろうと。

 だが――

 

 ――誰かが困っていたら助けるのは当たり前。

 

 そんな言葉が、セバスの後ろから聞こえてきたような気がするのだった。

 

(……そうですよね、たっちさん。誰かが困っているのなら、助けるべきですよね)

 

 セバスを創造した、モモンガの恩人、たっち・みー。公務員で妻子持ちの完璧リア充で、その信念によってPKに悩まされていたかつてのモモンガを救い、アインズ・ウール・ゴウンを作り上げた男だ。

 そんな男の影を、彼の子供と言うべきセバスから感じ取った。ならばもう、モモンガに選べる選択肢なんて一つしかないではないか。

 

「前言を撤回するぞセバス。ナザリックの警戒レベルを最大限に引き上げろ。それと、アルベドにワールドアイテム以外で完全武装し、私の警護に当たるように伝えろ」

「畏まりました。ただ――」

「セバス、お前は連絡係だ。この周囲に人攫いを躊躇しないような人間がいることが判明した以上、ナザリックの警護に当たれ。ああ、それと、いざと言うときのために不可視化能力か隠密能力を持った者を複数体送り込め」

 

 自分が警護に当たる。そう言いたげなセバスを制し、モモンガは一つの杖を手にする。七頭の黄金の蛇が異なる宝玉を加えた、美しさとおぞましさを極限のバランスで融合させた杖を。

 これは、アインズ・ウール・ゴウンの努力の結晶、規格外の力を持つワールドアイテムにも匹敵するギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン――の試作品だ。

 本物は間違いなくナザリック最強の武器だが、破壊されればナザリックが物理的に崩壊する致命的なリスクがある為、この試作品しか持ち出せないのだ。

 そんな試作品でも、モモンガのステータスはぐんぐん上昇していく。それを自らの体で実感した後、モモンガは魔法を使う。

 至高の命令に了解の意を示すセバスを尻目に、ユグドラシルでもっとも信頼できる転移魔法〈転移門(ゲート)〉が発動された。

 

 

 

(成功か)

 

 魔法の門をくぐり、視界が一変する。先ほどまでナザリックの自室にいたモモンガは、今は誘拐犯の馬車が通るであろう草原に居た。

 もし誘拐犯たちが転移阻害系の魔法を使っていた場合、先手をとられる危険性もあった。それが杞憂であったことに、モモンガは内心でほっとする。

 そして、もう数十秒でやってくるだろう誘拐犯に向けて準備を始める。流石に真正面から戦うのは危険極まりない為、最低でも自分の攻撃が効果あるのかくらいは確かめたかったのだ。

 

「〈完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)〉」

 

 まず、モモンガは音や気配、体温、振動、足跡その他あらゆる情報を隠す魔法を唱える。

 不可視看破の能力持ちが居れば無意味だが――そして、人攫いなんて人種に盗賊系スキルの持ち主が居ないなんて考えにくいが――とにかくできることはしておくべきだ。

 

「ついでに、情報系魔法対策もしておくか」

 

 モモンガは元々情報系魔法への攻性防壁を展開している。だが、念には念を入れ、周辺一帯に情報系魔法を完全遮断する結界を敷く。

 これで、万が一ターゲットにこちらを瞬時に感知するような何かがあったとしても――自分の魔法が有効であるならばだが――見えはしないはずだ。

 

 自分の力がどの辺りにあるのかも不明。その状況で戦うためにモモンガが選んだ戦法。それは、奇襲なのだから――

 

「〈魔法三重化(トリプレットマジック)心臓掌握(グラスプ・ハート)〉」

 

 全くこちらを警戒していない集団に対し、杖を持っていない手を伸ばして魔法を発動させる。即死の力を持つ、モモンガがもっとも得意とする魔法を。

 魔法発動と同時に、モモンガの手の中に三つの脈打つ心臓が現れる。そして、次の瞬間には容赦なくその三つ全てを握りつぶす。

 すると、人攫いの馬車で先頭の御者をやっていた男が一人と、馬車を走らせていた馬二頭が倒れたのだった。

 

「ふむ……。とりあえず、第九位階魔法は効果あり、か」

 

 モモンガの得意とする死霊系魔法。その中でも高位に属する、一から十位階までと例外一段階で構成される、ユグドラシルの位階魔法。その中の最強クラスの魔法ならば、この世界の人間や動物にも効果があることが実証されたのだ。

 モモンガは、抵抗された場合の追撃の一手を引っ込めつつ、安堵のため息を漏らした。

 

「な、なんだ!? 何事だ!?」

 

 馬が倒され、その衝撃で馬車が二台とも横転した。中の被害者たちも怪我をしたかもしれないが、それは必要な犠牲と割り切らせてもらうことにする。

 所詮赤の他人だ。モモンガからすれば、敵対関係にあるものを逃がすリスクを残しておく方がよっぽど問題なのである。

 

「さて、では次はどの辺りの魔法を使うか……」

 

 突然の事故に混乱して慌てる人攫いたちを見つつ、どんな魔法を試そうかとモモンガは考える。

 まだこちらの存在は露呈していない。これが動揺のせいで純粋に自分が見つかっていないのか、それとも透明看破のスキルを持つものが居ないのか。

 その答えは、次の攻撃で判明するだろう。

 

「〈集団標的(マス・ターゲティング)龍雷(ドラゴン・ライトニング)〉」

 

 今度の魔法は、丁度中間レベルに位置する第五位階魔法だ。モモンガ的には、はっきり言って弱すぎる魔法である。

 数が多いから集団を狙えるような補助魔法を加えたが、威力的には全然大したことのない魔法だ。

 仮にこれをモモンガが、あるいはモモンガと同格の守護者やプレイヤーが受けた場合、恐らくダメージ発生前にかき消してしまうだろうと言えるくらいに。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……ぇ?」

 

 だが、そんな弱小魔法で最初に出てきた人攫いたちは皆黒焦げになり、あっさりと死んでしまった。これにはモモンガもビックリだ。

 

(弱すぎだろ……)

 

 とりあえず、防御能力は信じられないくらいに低い。散々警戒した自分の心配を返せと言いたくなるくらいに脆い人攫いたちを前に、モモンガは思わず呆れてしまう。

 だが、完全に気を抜くわけにもいかない。今出てきたのが偶々雑魚だったと言う可能性もあるし、ひょっとしたら攻撃に関してはモモンガを凌いだりするかもしれないのだから。

 

「い、今の光はライトニング・クラウドか!? 風のトライアングル、いやこの威力はスクウェアクラスか!?」

「お前達! 周囲を警戒しな!」

(……ライトニング・クラウド? トライアングル?)

 

 黒焦げになった仲間を放置し、人攫い達が纏まって出てきた。更には素早く人質を引きずり出し、襲撃者に対しての盾に使おうとしている。

 だが、そんな彼らを無視し、モモンガは思考に入ってしまう。今の彼らの言葉に覚えがなかったからだ。

 

(今のを見ても自然現象だと思わないと言う事は、魔法の存在自体はあるのか? それとも電気を利用した兵器でも……。いずれにしても、俺は電撃(ライトニング)は知っていても、ライトニング・クラウドなんて魔法や兵器は知らない。それにトライアングルとかスクウェアなんて括りも未知だ)

 

 彼らは魔法か、それに匹敵する兵器を知っている。だが、その知識はモモンガとは全く違うものだ。それを認識したモモンガは――警戒心をよりむき出しにするのだった。

 

(危険だ。奴らは全くの未知の知識、能力を有していると考えた方がいい。ここはやはり、隠れたままで敵の戦力を測る!)

 

 未知のものほど恐ろしいものはない。かつてアインズ・ウール・ゴウンがPVP(プレイヤー対プレイヤー)の勝負で常勝を誇ったのも、全ては事前情報を完璧に集めていたからだ。

 

(ぷにっと萌えさんの誰でも楽々PK術の一つ、まずは安全な場所で捨て駒を切る!)

 

 ――中位アンデッド作成・死の騎士(デスナイト)――

 アインズ・ウール・ゴウンの諸葛孔明。そう呼ばれた仲間の一人が考案した戦術に則り、モモンガはスキルを発動させた。

 その発動に伴い、不可知化状態のモモンガから黒い靄が立ち上る。そして、その靄はそのまま最初に心臓を握りつぶした人間の死体に吸い込まれていったのだった。

 

「ォ……オオオォォォオォォォオオ!」

「な、何なんだこいつはぁ!?」

「ば、化け物だぁ!」

(うわ、今ってこんな感じなんだ。ユグドラシルとは全然違うなぁ)

 

 ユグドラシル時代とは大分違う誕生の仕方に驚きつつ、モモンガは無事にデスナイトを作れたことに安堵する。

 このデスナイト、ぶっちゃけ弱い。レベル100の戦いに放り込めば、二発で壊されるだろう。何せ、所詮レベル35のモンスターなのだから。

 だが、その程度のモンスター――モモンガのスキルで多少強化されてはいるが――でも、モモンガはデスナイトを愛用している。どんなダメージを受けても1ポイントHPを残すスキルがある為、壁としてはそこそこ優秀なのだ。

 もしこのデスナイトを一撃で崩壊寸前まで追い込めるのならば、この世界の人間は攻撃特化型と考えていい。第五位階魔法で即死する程度のレベルをユグドラシル風に言えば、恐らくこのデスナイトにも勝てないだろうから。

 

「ちぃ! ウインド・ブレイク!」

(やはり知らないな。あの女は魔法詠唱者(マジックキャスター)なのか? だが、それなら何故回りの男達が前衛を務めない?)

 

 小さな杖を持った女が、何か呪文を唱えた。すると、恐らく風の衝撃がデスナイトを襲った。……無傷だが。

 

 そんな光景を見て、モモンガの困惑は更に深まる。

 接近戦に弱い魔法詠唱者(マジックキャスター)は、前衛の後ろで戦うのが基本中の基本だ。なのに、戦士っぽい男達は棒立ちで、未知の魔法を使う魔法詠唱者(マジックキャスター)らしき女が前面に出ている。

 未知の魔法の使い手をユグドラシルの常識で判断するのは危険だと分かってはいるが、どうしてもモモンガの違和感は消えない。

 だが、それでもわかった事はある。それは、この人間達はモモンガの敵にはなりえない、と言うことだ。

 

(未知の魔法は危険だが、流石にデスナイト一体も倒せない程度なら警戒の必要はないかな。……まあ、もしかしたらとんでもない隠しだまがあったりするかもしれないから、ギリギリまで俺は出ないけど)

 

 一応の警戒心だけは残し、モモンガは魔法的な繋がりを通してデスナイトに命令を送る。人質は傷つけずに、目の前の人間達を殺さないで無力化しろ、と。

 

「オオォォオオォオォ!」

「ギャァァァァ」

「助けてお頭ぁぁぁぁ!」

 

 デスナイトは創造主たるモモンガの命に従い、行動を起こした。剣は使わずに、盾で人攫いたちを殴り始めたのだ。

 そんな、ユグドラシル時代にはありえなかった自由度に軽く驚きつつ、モモンガは戦況を見極める。

 人攫いたちは、人質にするつもりだったのだろう少女達をすぐに突き飛ばしている。デスナイトから守るためではなく、単純にアンデッドであるデスナイトなら人質ごと殺すだろうと言う判断だろう。相手が止まってくれないのなら、人質など足手まといでしかないのだから。

 

 さあ、こちらから攻撃に出た以上、何か切り札があるのならば使うしかないだろう? と言う思いをもって、デスナイトの戦いを影から観察する。

 だが――

 

(……完全に遊びのデスナイト一体で壊滅とか……よわ)

 

 結局、何の対抗手段も示せないままに、人攫いの一味は壊滅に追い込まれた。

 だが、そこでモモンガの目に一人だけ異質な人間が留まる。あれはそう、頭と呼ばれていたマジックキャスターの女だ。

 

「チクショウッ! 何だってんだよあの化け物は。……でも、流石にフライは使えないだろう!?」

 

 女は一人、勝てないと判断して逃走を選んでいた。部下を見捨てての即決は優秀な証拠であり、所詮非合法な集団でしかないと言う事だろう。

 モモンガとしては、別に逃げようとするのはどうでもいい。仲間を見捨てる行為に不快感を覚えないわけではないが、所詮その程度の人間なのだろうと言う思いもある。

 そんなことよりも、モモンガが注目したのは、その逃走手段であった。

 

(〈飛行(フライ)〉? ユグドラシルの魔法もあるのか……?)

 

 女は、空を飛んで逃げていた。何故そのルートを選んだのかは不明だが、とりあえずデスナイト対策としては正しい。デスナイトは、対空能力は持っていないのだ。

 そして、ユグドラシルには確かに、第三位階魔法の〈飛行(フライ)〉がある。

 女が使っているのはそれなのか? それともただの偶然か?

 モモンガは、この世界の未知への警戒心をより一層深める。もし奴らの使っている魔法がユグドラシルと関係がある場合、モモンガを、そしてナザリックを滅ぼせる力をもった他のプレイヤーの存在を疑わなければならないのだから。

 

「やはり逃がすわけにはいかんな……不可知化解除。〈飛行(フライ)〉。そして〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉!」

 

 空に対処できないデスナイトには頼れないため、モモンガ自らが動く。別に対空能力を持ったアンデッドを作ってもいいのだが、とりあえずこの連中は全く脅威にならないと判断したので自分でやることにしたのだ。

 まず不可知化を解除し、姿を晒す。死の支配者、オーバーロードとしての姿を。

 更にモモンガもフライの魔法を発動し、空を飛べるようにする。次に転移魔法を発動し、空を一人で飛んで逃げる人攫いの頭の真正面に姿を現すのだった。

 

「なっ!?」

「ごきげんよう、人攫い君」

 

 いきなり目の前に現れたことで、人攫いの女は心底驚いたようだ。

 

「ば、バケモノ……!」

「……君は、私のような者を見た事がないのか?」

「あ、あるわけないだろ動く骸骨なんて!」

 

 アンデッドであるモモンガは、ユグドラシルでは珍しくない。高レベルダンジョンならモンスターとしてオーバーロードはよく出てくるし、プレイヤーキャラとしてもそこそこいるだろう。

 しかし、目の前の女は自分を知らない。低レベルだからオーバーロードを知らないと言うわけではなく、骸骨のモンスターそのものを知らないと言うのだ。

 

(だとすると、不味いな。友好関係の構築にどう動けばいいのかがわからん)

 

 人は未知を恐れる。モモンガが自分の知らない魔法に最大限の警戒心を持っているように、この世界の人間がアンデッドを知らないのならば、それだけでまともに会話が成り立たなくなる恐れがある。

 そんなモモンガの苦悩を知ってか知らずか、人攫いの女はモモンガを無視して逃げ出そうとした。

 

「クソッ! 何でこんなことに……。あのバケモノは先住魔法か!?」

「フム……先住……それも知らないな。やはり、もっと詳しく話を聞くべきか。だが、ただ背を向けて逃げるのは感心しないぞ?」

 

 絶叫にも似た人攫いの女の叫びから、またもや未知の情報をモモンガは聞いた。

 それにより、目の前の女を含む人攫い一味を情報源兼実験台として確定する。同時に、女の行動に呆れ交じりの苦笑を漏らした。

 ユグドラシルでは、逃げるにしても数々の戦略を要求される。手っ取り早く転移魔法で逃げられれば一番簡単だが、PK(プレイヤーキル)ならば転移阻害でそれは真っ先に潰されるだろう。

 となると、逃げるときには牽制の攻撃をしてみたり、煙幕でかく乱したり、囮のモンスターを召喚したりといろいろしなければならないのだ。間違ってもただ背を向けて逃げるなんてことはありえない。

 なのに、目の前の女はなんの遮蔽物もない空で、ただ背を向けて飛んでいる。せめて、あのしょぼい風の魔法で攻撃しつつ飛ぶくらいのことをしてもいいのになとモモンガは笑っているのだ。

 そしてモモンガは、そんな無駄な努力をする女を捕らえるべくその骨の指を女に向けるのだった。

 

「絶望のオーラ……レベルⅠ」

「カッ! あああぁぁぁぁぁ!?」

 

 本気で撃てば即死の効果を発動するオーラを、限界まで弱めて発動させ、女を恐慌状態へと変化させる。

 そのせいで魔法が不安定になったのか、フライの効力を失って地面に落ちていった。

 

 何故こんな手段で墜落させたのかと言えば、正直、相手のHPがどのくらいあるのかわからない為、下手をすると第一位階の最弱魔法でも死んでしまうのではないかと言う、ここに来る前とは真逆の不安がモモンガにはあったのだ。

 まあ殺してしまったとしても、モモンガは習得していないが、ユグドラシルには蘇生系の魔法もある。

 正確にはデスペナルティを軽減するものであり、プレイヤーは実質無限復活できるのだが、この魔法をこの世界で使った場合はどうなるのかがわからない為に使いたくないのだ。

 仮に復活させたら、復活ポイントが人攫いのアジトだった為にこちらの情報を持ち逃げされましたーなんてことにもなりかねないのだから。

 

「あっ、落ちちゃった……」

 

 そんなわけで、知っていることを全て話し終えるまでは生きていてもらわねばならない。そう思ってダメージは発生しないスキルを使ったのだが、ついうっかり墜落した後のダメージまでは考えて居なかった。

 それ故に一瞬焦るモモンガだったが、急いで降りて確認したところ、女はまだ生きていた。骨でも折れたのか苦しんでいるが、それはつまり生きている証拠なのだ。

 

「が、クソッ! 痛っ! な、なんなんだよいったい……」

「やれやれ。たかが落下でそんなに痛がるなよ……」

 

 苦しむ女を見ても、黒焦げにしたほかの人攫いを思い出しても、モモンガの心は全く動かない。精々、虫でも潰した気分だ。

 そんななんともいえない感覚を味わっていると、モモンガの背後に異変が生じた。モモンガも使った、転移門(ゲート)だ。

 

「申し訳ありませんモモンガ様。遅れました」

「構わないともアルベド。むしろ、丁度いいタイミングだ」

 

 転移してきたのは、レベル100にしてナザリック守護者統括のアルベドだった。モモンガの命に従い、全身を覆い隠す漆黒の鎧姿でこの場にやってきたのだ。

 本来は美しい美女であり、ヤギのような角と堕天使の翼をもつ異形なのだが、今は全身を鎧で隠しているため、声からかろうじて女性であることがわかると言う感じである。

 

「お、おまえ! 何だ! 何なんだ!」

「おまえ……? 至高の御方に対し、下等生物風情が……!」

「よい、アルベド。既にこの者の処遇は確定しているのだからな」

 

 そんな風にアルベドと談笑していると、悶え苦しんでいた女が多少は持ち直したのか、モモンガに向かって叫んだ。

 その無礼な口調に対してか、それとも会話を邪魔されたからか、アルベドから生命の危機を感じるような殺気と歯軋りのような音がするが、モモンガは抑えるように命じる。

 

 そして、女の言葉を、何者なのかと言う問いについて考える。

 

 自分は何者なのか。そう言えば、今の自分は誰なのだろうか? 鈴木悟か? それともモモンガか?

 何故かはわからないが、モモンガはそのどちらでもない気がした。今の自分は、そんな個人ではないと感じたのだ。

 では、なんと名乗ろうか? モモンガは、素直にモモンガと名乗るべきなのかを悩む。

 そもそも、この世界で自分がやるべきなのは何なのか。決まっている。ナザリックを守り、不敗のアインズ・ウール・ゴウンの栄光と伝説を汚さないことだ。

 そしてもう一つ。義務ではなくモモンガ個人の望みがあるとすれば、それはこの世界にモモンガ同様来ているかもしれない仲間達の発見だ。

 ならば、ここで名乗るべきはモモンガではない。誰が聞いても自分はここにいると、皆で作り上げたナザリックはここにあるとわかる名前でなければならない。

 そしてそれは、たった一つしかないだろう。もしこの名を自分が名乗ることを嫌うのならば、今すぐ目の前に来て言ってくれ。

 そんな思いを込めて、オーバーロードは自らの名を世界に宣言するのだった。

 

「その耳でしかと聞くがいい。我が名は、アインズ・ウール・ゴウンだ」

 

 歴史書にも載らない小さな戦い。いや、戦いと言うよりは蹂躙。そんな出来事。

 だが、間違いなくハルケギニアにおける新たな伝説、アインズ・ウール・ゴウンはここから始まったのだった……!




このSS内で最初で最後のモモンガ様ことアインズ様の魔法による戦闘。
だって、この人にガチ戦闘やられると本当に蹂躙にしかならないんだもん。
ゼロ魔一巻の内容で終わらせる(俺たちの戦いはこれからだEND)予定なので、対抗できそうな虚無や現代兵器も出番ないし……。

このSSを見た中に自ら筆をとる気概のある方がいれば、自らの手で本気アインズ様の戦闘を書いてみてもいいんですよ?

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