やはり私と同中の彼との青春ラブコメはまちがっている。   作:巣羽流

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34話

昼休み、私はいつの面々である基子と美波の三人で昼食をとっている。

 

私、愛川花菜は昨日想い人である比企谷君にデスティニーランドに二人だけで行こうと誘われなのだが…

 

「どう思う?」

 

「ど、どう思って…本当に二人だけで行こうってさそわれたの…?」

 

「本当に本当だよ。ほら!証拠のチケット!」

 

「これ本当に本物…?」

 

そ、そんなに驚かなくても…。私も昨日の夜なんども現実か疑ったけどさ…。

 

「で!これってさ!やっぱりあれだよね?期待してもいいやつだよね!?」

 

「あったりまえだろ!これでダメとかあり得ないって!」

 

「だよねだよね!きゃー!やっぱ行けるよね!」

 

よっしゃー!きたきたきたきた!ふつうに考えてそうだよねやっぱ!

 

「ちょっとまって」

 

基子と二人でキャッキャッと盛り上がって居たのだが驚くほど冷静な声で美波がそれを遮る。

 

「どうかしたか?」

 

「行けるって…本当にそう思う?」

 

「えっ…でもふつうに考えてさ…」

 

「比企谷君が普通に該当するって言う考えが甘いと思うなぁ」

 

「うっ…」

 

た、たしかに…。

 

「それに…そのチケットって平塚先生から貰ったものなんでしょ?」

 

「うん」

 

「ならさ、今まで色々手伝ってくれてありがとうってお礼の意味しかないかもしれないよ?」

 

「…」

 

あれ?比企谷君なら確かにその可能性あるよね…てかその可能性の方が高くない?

 

「過度に期待しすぎるのもよくないんじゃないかな?」

 

「うぅ…仰る通りで…」

 

やばいな…気持ちだけが先走ってたかも…。

 

「そんなに落ち込まないでよ。あまりにもはしゃいでたからつい…大丈夫だって!」

 

「でも…」

 

「それでもチャンスに変わりはないだろ?」

 

「そうだね…」

 

「期待はし過ぎるなってだけなんだからさ、そう落ち込むなって!」

 

「うん…そうだよね」

 

くよくよしてても仕方ない。前向きに行かなきゃ!

 

「よーし!楽しんじゃうよ!」

 

「その意気!その意気!」

 

「ねぇねぇ花菜ちゃん。デスティニーってさ、完璧じゃない?」

 

完璧?

雰囲気とか面白いとかインスタ映えとか?

色々お高いのを除けば確かに完璧だろう。

 

「完璧ってなにが?」

 

「そんなの決まってるよ。告白する場所として」

 

「こ、告白!?」

 

告白ってあれだよね?自分の気持ち伝えるあれ的なあれ?

 

ちょっとまって真っ暗な夜空に綺麗に光るお城と花火が写ってて雰囲気なにもしなくても作られててこれってやっぱ告白するのに最適とかいうあれなのか?

 

「パニクってんなぁ。とりあえずこの数字見て落ち着け」

 

4…9…16…25…36…49…64…81…100…121…144…169…196…あぁ…落ち着く。なんて美しい数字なんだろう。

 

って

 

「告白とか無理無理!まだ早いって!」

 

「そんなことないよ。そろそろ告白してもいいとおもうよ?」

 

「いやいやいや…」

 

「あれだけ比企谷君の為に頑張ったんだよ?きっと行けるって」

 

…そんなことない。

 

「…今比企谷君の頭の中は奉仕部の事でいっぱいなんだと思う。まだ私が入る隙間は無いよ…」

 

奉仕部内に充満していた嫌なものはもうない。比企谷君の心からの言葉によって振り払われた。きっといっぱい悩んだろうな…まだそんなに時間がたってないし私に気を回す余裕はまだ無い…。

 

「花菜ちゃん…」

 

「まぁ告白とかさ、そういう進展はなくても絶対に楽しいだろうし大丈夫だよ」

 

「…なぁ花菜」

 

「ん?」

 

「なにを比企谷君に遠慮してるんだ?」

 

「え?」

 

「奉仕部の事で頭がいっぱいなのってさ…お前に関係ある?」

 

「確かに無いかもだけど…今比企谷君大変だし…」

 

「そんなの関係ないだろ」

 

「そ、そんなこと…」

 

私は比企谷君に辛い思いをしてほしくない。すこしでも負担を減らしたいだけなのに…

 

「今比企谷君の頭が奉仕部の二人でいっぱいだとするならその原因はお前にもあるだろうな」

 

「え?」

 

「あの二人は比企谷君を引っ掻き回して独占してる状態を作ってる。でもお前はどうだ?比企谷君に迷惑はかけられないからって何を大人しくしてるんだよ」

 

「…」

 

「花菜は文化祭で二人に宣戦布告したんでしょ?遠慮なんかしちゃダメだよ。話を聞く限り現時点で確実に二人に負けてるぞ?」

 

「でも…」

 

「大丈夫大丈夫。迷惑になんてならないよ」

 

にっこりと美波が割り込んできた。

 

「ほとんどの男の子はね?女の子に頼られたいって欲望を持ってるものなの。多少の我が儘な位がグッと来るはずだよ」

 

「そ、そうなの?」

 

「そうそう。比企谷君って面倒見良さそうだしそっちの方が絶対良いって!だからさ、思いっきり引っ掻き回そうよ」

 

確かに今まで比企谷君が大変だからって身を引いたこともあった。それでもちょくちょく迷惑はかけてたけどね…。

 

「よーし!分かったよ!私!頑張る!」

 

「その意気だ!いっちょ頑張れ!」

 

もっと私も我が儘に、私もここに居るんだぞ!ってアピールしなきゃ…。

 

「それにもしだめでも一回告白された異性って良くも悪くも意識しちゃうからね。他の娘に比べて一歩リード出来るんじゃないかな」

 

フフフっと少し黒い笑みを浮かべる美波の顔はとてもイキイキしています。なんで美波ってこんなに強かなのに教師を好きになっちゃったのかな。やっぱ愛は理屈じゃないってこと?

 

「まぁとりあえず目先のクリスマスイベントだよな。私たちも当日は行くからよろしくね」

 

「オッケー!楽しみにしててよ!」

 

こうして私はクリスマスの日に人生初の告白をすることになった。

 

告白か…何て言えばいいのかな…男の人って何て言えばグッと来るんだろ…。

 

考えておかなきゃ…。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

時は経ってクリスマスイベント当日。

 

あれから両学校は、すさまじいペースで作業を進めぎりぎり間に合わせることに成功した。

 

最初からこうすれば良かったのでは?なんて言うのはナンセンスだ。最近から別々にやっていたならあの限界を越えたかのようなペースで仕事は出来なかっただろう。

 

各々己のポテンシャルを理解するには良かったのかもしれない。

 

まぁそれは結果論であって余裕があるにこしたことはないのかな?

 

「愛川さん。この生地を混ぜておいてくれる?」

 

「オッケー」

 

イベントは本日の午後から。私たちは午前中、一色さんの指示を受け奉仕部and私はケーキやらクッキーを焼いていた。

 

え?料理できるのかって?

 

この愛川花菜はなんでもそつなくこなすスペシャリストですよ?並みには出来ますとも!

 

そんな何ともいえない戦闘力を持った私だがちょっと雪乃ちゃんの前じゃ霞むかな…うん…。

 

なんかちょっと小洒落たケーキとか作ってるし…これなんか細か!

 

てか本当になんでもできるんだな…反則すぎやしませんか?

 

「比企谷くん」

 

「ほい」

 

「ありがとう」

 

「むぅ…」

 

名前しか読んでないのに生クリーム寄越せってちゃんと伝わったのか…なんか熟年の夫婦みたいでずるい…こうなれば!

 

「比企谷君!」

 

「あ?」

 

伝わって!私の想い!

 

「むむむー!」

 

「…なにやってんだお前」

 

「…なんでもありません」

 

そんな真顔で引かれたら流石の私も堪えますよ…。

 

昨日に引き続き長時間の作業をしていたせいか頭がやばくなってきたのかも…。

 

突然ガラガラっと控え目に、あまーい臭いが充満していた調理室の扉が開けられた。

 

そこから顔を出していたのは…

 

「戸塚くん?どうしたの?」

 

「うん!生徒会の人に聞いたらここだって言うからさ。手伝おうかなって。ね?」

 

そういう戸塚君の後ろには小町ちゃんの姿が見える。どうやら二人とも手伝ってくれるそうだ。

 

「小町さんは料理の方の手伝いをしてもらおうかしら。クッキーとケーキ、どっちがお得意?」

 

「小町、どっちもいけますよ!」

 

「そう助かるわ。ならこのレシピ通りにお願い」

 

「はーい!」

 

「ありがとうね小町ちゃん!」

 

「いえいえ。雪乃さんと花菜先輩とお菓子作りできるなんて、小町、色々捗って幸せです!」

 

何が捗るんだ一体。

 

手を洗い準備を終えた小町ちゃんを加え、楽しく談笑しながら作業は進んでいった。

 

なんか平穏って感じでいいなぁ…。

 

「そう言えばなんですけど、お二人ともあしたの予定って決まってるんですか?」

 

「えっ、あした!?」

 

「はい!お二人はクリスマスをどう過ごすのか気になってちゃって!」

 

「私は由比ヶ浜さんが家に来てなにか、パーティーをするそうよ」

 

「へぇー!楽しそうですねぇ~。もちろんうちの愚兄はお呼ばれしてないですよね」

 

「それが…由比ヶ浜さんが誘ったらしいのだけれど…本当に用事があるからって断られたと言っていたわ」

 

ギクゥ!そ、そうですねそれ私ですたぶん。

 

なぜかチラッとこっちをみる雪乃ちゃんはエスパーなんじゃないでしょうか。大方察しがついているぞとそういいたいのかな?

 

「愛川さん…あなたはどうなの?」

 

「私は…」

 

「なにか答えられないような不都合なことでもあるのかしら?」

 

比企谷君が隠してるのに私がばらしても良いものか…うーん…。

 

「…なんて冗談よ。比企谷くん本人に聞いたわ、あなたと出掛ける用事かあるって」

 

「そ、そうなの?」

 

「ええ」

 

嬉しそうに笑う顔はまるでいたずらが成功した子供のようだ。

 

余裕あるって感じしてない!?なんか!

 

「からかうなんてひどいなぁ…っていつまで笑ってるの!?」

 

「ふふっごめんなさい。あなたの困った顔見てたらつい…」

 

「そんな変な顔してた!?」

 

私顔はそこそこ可愛いと思うけどな…。

おっかしいな…一時期モテ期も来たのに…。

 

でも最近は確かに前ほど告白とか無いかも…むしろ全く無いかも…。

 

「むむ…これはもしや…」

 

「小町ちゃんはどうしたの?」 

 

「いえいえー!やっぱ捗ってるだけなんでお気になさらず!」

 

捗ってるってなにがよ。お菓子作りの事?

 

なにやらずっと悩ましい顔でお菓子をもくもくとつくっていると思ったけど何を考えていたのやら…。

 

なんか独り言もぶつぶついってるし…そういうところお兄さんとそっくりだな。

 

「少しお喋りし過ぎたわね…二人とも、すこし急ぎましょう」

 

「「はーい」」

 

そこからみんな真剣な顔になり、しばらくお菓子作りに没頭してた。

 

 

ーーーーーーー

 

「つっかれた…」

 

クリスマスイベントはなんのトラブルもなく終了し、片付けも済ませて私は帰宅していた。もう日は完全に沈み辺りは暗くなってきている。

 

終わってみればあっという間だったなぁ…あれだけ色々大変な思いをしたというのに。人間の感性はやっぱ不思議だ。

 

それにしてもいろいろ大変だった…本当に…

 

「つっかれたぁ」

 

でも、いつまでも部屋でぐだぐだしてるわけにはいかない。明日は比企谷君と二人で!二人で!!デスティニーデートだ!

 

さてなに着ていこうかなー、デスティニーだから地味だと似合わないし…でも派手すぎるのは比企谷君好きじゃなさそうだし…うーん…やっぱモコモコ系?

 

「あっ」

 

明日の準備をあれやこれやとしていたときに大切事を思い出した。

 

明日の集合時間と集合場所、決めてないじゃん…

 

どうしよ、もう連絡して平気かな?

 

途中で奉仕部の三人とは別々に片付けしてたから彼らがもう帰ったかは分からない。

 

うーん…どうしよっか…まだ仕事してたりして。

 

ない話じゃないよね…。

 

私がどうするか悩んでいると好きなJPOPのサビが部屋に響き渡った。

 

で、電話…比企谷君だ!

 

「も、もしもし!」

 

『よう。明日の事だけど…いいか?』

 

「うん!大丈夫!なんじにどこ集合しよっか」

 

『そうだな…じゃあ俺たちの最寄り駅に朝七時とかでいいか?』

 

「えっ?」

 

『どうかしたのか?』

 

「てっきり比企谷君の事だから朝イチは混んでるしひるからにしよーぜーとか言うと思ってた」 

 

『一応誘ったのは俺なんだけど…まぁでもたしかにそれもいいか』

 

「いやいやいや!嘘だから!あした駅に7時半ね!了解!」

 

『おう、あといい忘れてたけど今回も手伝ってくれてありがとな』

 

「どういたしまして。また何かあったら言ってよ!出来だけ力になるからさ!」

 

『あぁ…そのときは頼むかもしれん…とりあえず今日はお疲れさん。またあしたな』

 

「おつかれさまぁ!」

 

ふぅ…。

 

明日は七時半か…よーし!

 

今日はあしたに備えて早く寝なきゃ!疲れを完全に回復しなきゃだしね!

 

このあと9時に布団には言ったがなかなか寝付けず2時まで起きていました…。

 

 




色々あって遅くなりました。

この季節は忙しいですね…やらなきゃならんことが多すぎる。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。

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