やはり私と同中の彼との青春ラブコメはまちがっている。   作:巣羽流

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16話

文化祭初日。わが総武高校の文化祭は初日は学校内のみでの開催となる。

 

記録雑務は二日目に仕事が集中する。そのため一日目には時間に余裕がある。その事を基子に言ったら・・・

 

『だったら初日にいっぱい働いてもらうよ!』

 

だってさ。まぁ良いんだけどね。

 

「花菜ちゃ~ん!はいこれ衣装!」

 

美波がはいっと紙袋を渡してくる。

 

「ありがと・・・てか美波凄い似合ってるよ!」

 

「えへへぇ・・・ありがとう」

 

美波の衣装は水色のスカートに白いエプロン。不思議な国に迷い込んでしまった少女をモチーフにしているんだと思う。

 

悔しいけど・・・本当に可愛いなぁ

 

「・・・凝ってるな」

 

衣装だけでなくクラスの装飾も凄い。全体的な配色を紺と水色で統一し青色や赤色などのLEDを使い、良い雰囲気を出している。とても高校生が作ったものとは思えないほどの出来だ。

 

「当たり前でしょ!今年は本気だからね」

 

「基子か・・・」

 

基子がどうだと自慢げに歩いてきた。

 

「凄いよ。それに基子も似合ってる」

 

基子の衣装はTHE人魚の姫って感じだ。流石は水泳部だな。

 

それにしてもこれも凄いできだ。

 

下半身の魚の部分なんかどうやって作ったんだろうか?それに露出も多いな。胸に二つ装備した貝殻の下には何か着けているんだろうか。

 

「サンキュー!あんたも早く着なよ。取って置きの用意したからさ」

 

「とっておき?」

 

「うん!ほらこっちこっち」

 

「ちょっ、押さないでよ」

 

ーーーーー

 

「・・・」

 

「「おぉ・・・」」

 

私の衣装は青いドレスに白い髪飾り、そしてガラスの靴。女の子なら誰でも憧れてしまうあのお話のお姫様の衣装だ。

 

「ど、どう?」

 

やっぱりこういう格好するのは少し恥ずかしいよ・・・

 

気のせいかクラスの男子の視線をたくさん感じて痛い。

 

やっやめて!これ以上精神的に攻撃しないで!

 

「なんというか・・・想像以上?」

 

「花菜ちゃんってやっぱり可愛いなぁって実感した感じ」

 

「あれ?それって誉められてます?」

 

「誉めてるよ。まじであんた可愛いよ」

 

「そ、そうかなぁ」

 

可愛いか・・・やっぱりそう言われると嬉しいな。

 

「これなら比企谷君もメロメロだね」

 

「っ!」

 

ひ、比企谷君がメロメロ?

 

『愛川・・・いや花菜。可愛いよ』

 

きゃーーー!ありがとう比企谷くぅーん!

 

あまりの嬉しさに頬が緩むの感じる。

 

「花菜・・・しまりの無い顔をしないの」

 

「流石に今のは無いよ」

 

「う、うっさい!」

 

想像だけでこれとは・・・比企谷君への愛恐るべし。

 

比企谷君との妄想に恐れをなしてると文化祭の開始を合図する校内放送が流れた。

 

「よーし!お前ら!やるぞぉ!」

 

「「おぉーーーー!」」

 

さてと。仕事しますか。

 

 

ーーーーー

 

「ご注文は以上ですか?」

 

現在時刻は14時。

 

12時頃店は予想を上回るほど繁盛していた。今日だけで黒字になるんじゃないだろうか?

 

しかし今はかなり落ち着いていて余裕が出始めた。

 

「おーい!オレンジジュース二個とホットケーキ二個ね!」

 

「はーい!」

 

「ふぅ・・・」

 

つ、疲れた・・・やっと一息つける。

 

客席から見えない裏方に行きマッカンを啜る。

 

あぁ・・・美味しいなぁ。

 

「よお花菜」

 

「基子か。お疲れ」

 

「うん。お前最初はめっちゃ恥ずかしがってたのに後半とかお構いなしだったな」

 

「流石に馴れたよ。あんだけ長い間着てたしね。もう微塵も恥ずかしくないよ」

 

「ほーん。なら明日の私たちのバンドこの格好で出ようよ!」

 

「良いよー」

 

「じゃあ決定ね」

 

「明日はこの格好で歌うのか・・・思ったけど衣装と曲があってないのあるけど大丈夫?」

 

「うーん。まぁなんとかなるでしょ」

 

めっちゃ良い笑顔を作って言う。基子って時々無計画に行動するんだよねぇ・・・

 

「花菜ちゃーん!」

 

「美波か。どうした?」

 

美波が裏方にいそいそと入ってきた。美波は外で客引きをしてたはずなんだけどもう戻ってきたのか・・・

 

「お客さん連れてきたよー!花菜ちゃんお相手して」

 

「えぇ・・・今休憩入ったばかりなのに?」

 

「良いから早く!」

 

「分かったよ」

 

はぁ・・・もう少し休みたかったな。

 

よいしょっと立ち上がり店に戻る。

 

えーっと・・・あの席か。

 

他にお客が居ない中男子生徒が一人で座っている後ろ姿が見えた。

 

うわぁ・・・文化祭なのにこの店に一人で来るとは・・・勇者だな。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

後ろから声をかけるとびくっと跳ねた。

 

あれ?よく見ると見覚えのあるアホ毛が・・・

 

「っ!比企谷君!?」

 

「・・・よう」

 

ななな何で比企谷君が!?

 

そんな事を思った今の私の状況を思い出した。

 

お姫様のコスプレ中。

 

いやぁぁぁぁぁぁ!

 

「は、恥ずかしいよ」

 

手に持っていたお盆で顔を隠して、その場にしゃがみこんでしまった。

顔が!顔があついよぉ!恥ずかしい!

 

「ちょ、俺がなんかしたみたいじゃん。もしも誰か入ってきたら誤解されるだろ。やめろやめてくださいお願いします」

 

「うぅ・・・わかった」

 

私は力を振り絞り立ち上がりお盆を体の前で抱える。

 

そうすると比企谷君が私の事をじーっと見ていることに気がついた。

 

な、何で見てるんですか恥ずかしいんですけど。

 

「ど、どうかな?」

 

「その・・・なんだ。似合ってると思うぞ」

 

「ほんと!?」

 

「あぁ・・・」

 

比企谷君は何時ものように頬を赤らめそっぽを向く。

 

そっか・・・似合ってるか・・・

 

彼の言葉を聞くと頬が赤くなりだらしなく緩んでいった。

 

やっぱり・・・嬉しいな。

 

「比企谷君」

 

「ん?」

 

「ありがとう!嬉しい!」

 

まだ頬が赤くなっていたが飛びっきりの笑顔でそう伝えた。

 

そうすると彼は頬の赤みを濃くし、こっちに目を向け見開いたまま動きが止まってしまっている。

 

「あれ?どうかしたの?」

 

「っ・・・なんでもない」

 

そうしてまたそっぽを向いてしまった。頬の赤みがどんどん増しているのは気のせいだろうか?

 

もしかして私の事を女の子として意識しちゃってた?

 

「ほんとの本当に?」

 

「本当だ」

 

「えぇー!でも」

 

「注文はコーヒーだ」

 

「・・・かしこまりました」

 

お客という立場をうまく利用されてしまったか・・・ちっ

 

本音を聞きたかったな。

 

裏方に行くとコーヒーは既にできていて後は運ぶだけだった。

 

ちょっと仕事早すぎやしませんかねぇ。もしかして聞いてたのか?

 

ジトーッとした目で二人を見るとニヤニヤして見返してきた。

 

こいつら・・・

文句のひとつでも言おうと思ってたら美波がにこりと笑いコーヒーと私をつれて比企谷君の元へ歩いてく。

 

「お待たせしました。コーヒーです。」

 

「ども」

 

「それとサービスでこのガラスの靴のお姫様とツーショットを撮れます!」

 

「「はぁ!?」」

 

そ、そんなの聞いてないよ?

 

「ちょっと美波。聞いてないんだけど」

 

ひそひそ話で美波に文句を言う。

 

「比企谷君限定サービスだよ」

 

「でも・・・」

 

「花菜ちゃんは比企谷君とツーショット撮りたくないの?」

 

「・・・撮りたい」

 

そんなの決まってる。こんなに好きなんだから思い出の写真はもっとほしいもん。

 

「じゃあ決まり!比企谷君!立って立って!」

 

「え?まじでやるの?」

 

「ほらほら並んで並んで!」

 

「愛川・・・」

 

「私は撮りたいな・・・嫌?」

 

「嫌ではないが・・・」

 

「お願い」

 

上目使いで涙ぐみながら頼む。文化祭の雰囲気やこの格好もあってか比企谷君はあっさりと折れた。

 

「じゃあいくよー!はいチーズ!」

 

パシャと良い音がなった。ちなみに比企谷君のスマホで撮っている。後で送ってもらわなきゃ。

 

「もう1枚撮るよ!次は比企谷君は花菜ちゃんをお姫様だっこして!」

 

「っ!」

 

お、お姫様だっこ!?比企谷君にしてもらえる!?

 

『姫、あなたの八幡が来ましたよ』

 

きゃーーー!この人誰ですかってレベル。

 

でも実際されたら嬉しくて鼻血が出る気がする・・・

 

「さすがにそれは無理だよ」

 

「俺も流石にな・・・」

 

「えぇ・・・じゃあ肩抱く位で良いよ」

 

「まぁそれなら」

 

「おい愛川騙されるな。あれはわざと最初に凄いことを言っておきながら後から妥協案を出し妥協させる手口だ」

 

「は!」

 

た、確かに今そのくらいならって妥協してた・・・美波って意外に恐ろしいなぁ。

 

「ふぅ・・・分かったか」

 

「うん!とりあえず写真は撮りたいから肩抱いて」

 

「・・・説得の意味無かったか」

 

「残念だね」

 

「まったくだ。てかお前は俺にそんなのされるの嫌なんじゃないか?」

 

「全然嫌じゃない。むしろ・・・ちょっとしてほしいかな」

 

いきなり何言ってんの私?

 

恥ずかしすぎますよもう!もう顔の血液が沸騰してるんじゃないかってくらい熱い。

 

比企谷君に、何言ってるんだ私は。死ぬのか?恥ずかしさで死んじゃうのか?

 

あぁ・・・また今夜も思い出して悶え眠れない夜になるのか・・・

 

「・・・」

 

今の言葉聞いた比企谷君は何やら呟いている。

 

何て言ってるのかな?

 

「もういい?早く撮ろうよ!」

 

「おっけぇー!ほら比企谷君早く!」

 

「えぇ・・・」

 

「もう!男らしくないよ!」

 

「本当に良いんだな?」

 

「うん」

 

「じゃあ・・・お邪魔します」

 

そう言って彼は肩を抱き寄せてくる

 

ひゃぁ・・・

 

なんか。なんかもうすごい!

 

思っていたよりも大きな手が私の肩を掴む。

 

体も固くて女の子とは全然違う。

 

比企谷君ってやっぱり男の子だなぁ・・・

 

そう思ったらドキドキがさらに大きくなる。

 

私どうにかなりそう!

 

「はい撮ったよ!」

 

「ふぅ・・・終わったか」

 

比企谷君がすぐさま肩を離す。

 

えぇ・・・もう終わりなの?あと少しだけやってほしかったなぁ。

 

「はい。」

 

「さんきゅ」

 

彼はスマホを美波から受けとり中をちらっと見た。

 

「やべ」

 

「どうかした?」

 

「長居しすぎた。俺のクラスの係りの仕事やる時間になりそうだ。もう行くわ」

 

「え?」

 

「じゃあな」

 

ガラガラっと出てく。はやいなぁ・・・

 

でも比企谷君とツーショット撮れたなぁ・・・えへへ。

 

顔をだらしなくして喜んでいたが、二つの視線に気付きすぐさますっといつも通りに戻す。

 

「やぁ花菜。ずいぶんと楽しそうだったな」

 

「なんの事かな」

 

「花菜ちゃんの、デレデレモード始めて見たけど可愛かったよ」

 

「う、うるさい!」

 

やっぱりこいつらずっと見てやがったな・・・くそぅ。

 

「愛川さん!あの人好きな人なの?」

 

「誰よ誰よ!教えなさいよ!」

 

他にも店番をしていた女子三人も見てたのか・・・

 

「他のやつには絶対言うなよ?」

 

「わかってるよ基子」

 

「ほんとにお願いだからね?」

 

「まかせて!」

 

はぁ・・・言いふらさないでほしいなぁ。

 

ーーー

 

この後滞りなくクラスの出し物は進み、初日は終了した。

 

明日からは実行委員の仕事にバンドだ・・・

 

頑張らなきゃな。

 

 




ここまでです!

今回は花菜ちゃんのクラスだけで終わりましたね。

男子はどうしたって?みんな外に呼び込みですよ(笑)

さて文化祭ですがあと何話やるんだよって思った方、あと1話か2話かな・・・って感じです!

ではでは今回はこれで失礼します!

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

次回もよろしくです!


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