移動していると敵の死体が転がっていた。そこから拳銃と弾倉、サバイバルナイフをいただいて素人の様に警戒する素振りの見せながら、広範囲を警戒する。そうしていると敵を見つける。できれば始末したいが、今は非戦闘員が2人いる。ならばできるだけ戦闘は避けるべきだ。だからなるべく先頭は避けていたが、それでも見つかったりした。時々戦いながらも進んでいく。そうしていると蒼衣から声をかけられた。
「ねぇ、どうして殺せるの?」
「どういうこと?」
「何でそんな風に躊躇いなく人を殺せるの?」
「ここが戦場だから」
「だからって、どうしてそんなことができるの!?」
「じゃあ貴女は死にたいの?」
「嫌に決まってるでしょう!」
「そうですね。私も死にたくありません。だからこうするんです。死にたくないなら、殺られる前に殺るしかない。それだけです」
「アンタ、何なの?」
「私は私ですが?」
「そうじゃなくて!」
「では何ですか?」
「アンタ何者なの?こんな状況なのに冷静でいる、武器の使い方もわかってる、敵を見つければ確実に仕留めてる。本当にアンタ何者なの?」
そう言って私から距離を離していく。
「すみませんが、それは言えません」
そう言うしかない。
「それで納得しろと…!」
「私の立場からすればそうとしか言えないし、そうしてもらうしかないです」
そこまで言うと、少女は黙った。なんと思っているかわからないが、無理矢理にでも納得してもらいたいところだ。そうしていると、
「止まれ!!」
後ろからそう警告された。霊夢達と同じ言語で言われたので、恐らく味方だろう。一応手に持っているすべての武器を地面に置き、両手を挙げて後ろを向いた。すると2人の男がこちらに銃口を向けて立っていた。予想通り軍人だ。どうやら何か質問しそうな雰囲気なので、ここは嘘はつかない事にした。
「私は恩納基地の士官の風間だ。幾つか君達に質問させてもらう。念のため聞くが、君達は民間人か?」
「はい」
「どこへ行くつもりだ?」
「近くに軍の基地があると知って、シェルターがあるのではないかと思い、あれば保護してもらおうと思ってここまで来ました」
「君が持っていた武器は何処で手に入れた?」
「貴方方とは違った服を着た軍人の死体から手に入れました」
「他に人は?」
「私達と貴方方以外は死体と敵の兵士だけしか見ていません」
まだ納得してないようだが、一応理解はして貰えたようだ。親について聞かなかったのは今の私の姿とこの子達を見てわかってくれたのだろう。
「この際だから仕方が無い。君たちの予想通り基地にはシェルターがある。そこまで案内しよう」
「ありがとうございます。ですがその前に…」
そう言って私は足元に置いた拳銃を足で蹴り上げ、すぐに手に取って引き金を引いた。狙いは2人の軍人の顔の間、その先にこちらに向かってアサルトライフルを構えている敵がいた。その敵の脳天に、私が放った弾丸が吸い込まれ、その敵は倒れる。
「軍人ならもっと周りに気を付けた方が良いですよ」
「すまない。一応警戒はしていたのだが気づかなかった」
「自分もです。もしかしたら先程の敵は魔法で気配を消していたのでしょう。私やましてや風間さんでも気づかなかったのです。おそらく精神干渉系魔法を使ったのだと思われます」
その会話を聞いてふと疑問に思った。
外の世界には魔法は無かったはず。では何故彼等はあたかも魔法があるかのように話しているのだ?
「取り敢えずここから移動しよう。ところで、君のそのバッグには何が入っている?」
そう言って風間さんは私のバッグを指さした。
「医療用器具とそれ関係の薬品が入っています。それ以外も入っていますが、それは言えません。が、私は貴方方が敵にならない限り私も敵にはなりません」
「そうか…一先ずその言葉を信用しよう」
それでいいのだろうか。隣にいた人も、少女も驚いた顔をしている。
「状況が状況だ。今はその言葉を信じるしかない」
そう風間さんが言うと、渋い顔をしながら隣の人は「わかりました」と言った。どうやらこの人は真田さんと言うらしい。シェルターに向かってついて行く途中、少女が質問をしてきた。
「医療用器具とかが入っていると言ってたけど、それで助けられなかったの?」
その言葉には怒気が含まれていた。だが、無理だったのだ。その理由は、
「腹に何も刺さっていなくて、もっと早く見つけることが出来れば助けられたかも知れません」
そう言うと少女は悔しそうに俯いて泣いた。先導してくれている2人は何も言わずに歩いている。おそらく彼等もその言葉の意味を理解したのだろう。まだ幼い弟は自分の手を引いている姉が何故泣いているのかわからず、慰めようとしている。お師匠様なら可能だったかもしれない。医療用バッグの中にある薬品の1つは蓬莱の薬だ。だが、これは効果を文字通り
シェルターの近くまで来ると私達は一安心した。
「そういえばここまで一緒だったけれど自己紹介して無かったわね。私は蒼衣。この子は弟の颯兎。助けてくれた礼を言うわ、ありがとう」
「たすけてくれてありがとう!」
「どういたしまして。私は鈴仙 豊花。私は貴女たちのお母さんに頼まれたからやっただけですよ。どこから何処までを頼まれたのかはわからないですけど」
苦笑いしてそう言うと蒼衣はクスリと笑った。ある意味緊張の糸が解けたのだろう。
「何かあったら頼むわ、鈴仙」
そう笑顔で言ってきた。
「面倒事は御免ですが?でも、なんか嫌な予感がするんですよね」
その予感は直ぐに当たった。銃声が突然鳴ったのだ。
聞こえた方向はシェルターの中からだった。
今回で原作追憶編の敵艦隊撃破直前までやりたかったですが、そう上手くいきませんね。もう少し続くのでどうか楽しんで頂けると嬉しいです。