魔法科高校の月兎   作:樹矢

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生徒会と風紀委員と模擬戦と

 次の日、蒼依は司波兄妹と一高の最寄り駅で待ち合わせ、通学路を歩いていた。当然鈴仙も一緒である。因みに今日は鈴仙が昼食を作っていた。というのも、蒼依が達也と昼食を食べたいと言い出し、いっその事鈴仙と深雪の分も一緒に作ってしまおうという話になったからなのだが。

 鈴仙はせめて今日は静かにしていたいと思っていたが、現実はそうはいかないらしい。

 

 「達也くーん、深雪さーん、蒼依さんに豊花さーん!」

 

 彼らを呼ぶ声が聞こえ、深雪と蒼依はなんだろうと思いながら振り向くが、達也と豊花は面倒くさい事に巻き込まれる予感を感じながら振り向く。するとそこには生徒会長の真由美が笑顔で走ってきていた。

 

 「おはようございます、会長」

 「おはよう達也くん。深雪さん達もおはようございます。いきなりですが、今日の昼休みに生徒会室に来ていただけないかしら?」

 

 達也が代表して挨拶をする。真由美もその場にいるメンバーに挨拶を返し、昼休みに生徒会室に来るように言ってきたので、そんなに真由美に深雪が質問をする。

 

 「いきなりですね。その要件とは何ですか?」

 「別にそこまで難しい事じゃないわ。深雪さんの生徒会への勧誘と達也くん達を生徒会メンバーに紹介するだけだから」

 「私は遠慮しま「あ、豊花ちゃんには先生方の方から伝えて欲しいって言われている事があるから必ず来てもらうわよ?」………」

 

 流石に教師からの事であれば断るわけにもいかない。鈴仙は面倒くさい事に巻き込まれると確信し、用が済んだのか校門にかけていく真由美を睨みつけた。

 ちなみに、通学路はレンガで舗装されている為、整備性と雨天の時の水捌けの為に人の手ではなかなかできないが引き抜く事はできる。その事を思い出した鈴仙は魔法を使って上手くレンガを動かして転ばしてやろうかと考えたが、何かを察した蒼依によって止められた。

 

 

 

 そして時は過ぎ昼休み。通学路で一緒になった4人は生徒会室の前に来ていた。深雪が扉をノックすると真由美の声が聞こえてくる。それぞれが名乗ると、扉から機械的な音が聞こえた後、ロックが解除された。

 

 「ようこそ皆さん、生徒会室へ」

 

 扉を開いた先にはそう言いながら手を振る真由美と風紀委員の摩利、そしてまだ知らない2人がいた。4人が空いている席につくと真由美が自己紹介を始めた。

 

 「紹介するわ。こちらが会計の市原 鈴音、通称鈴ちゃん」

 「そう呼ぶのは会長だけです」

 「それでもう1人の子が中条 あずさ、通称あーちゃん」

 「会長やめてください!!私にも先輩としての威厳というものが!」

 「そしてここに居ない副会長のはんぞー君が生徒会メンバーよ」

 「私は違うがな」

 

 真由美がそれぞれを紹介し、紹介されたそれぞれが反応を返し、摩利が否定を返す。丁度キリがいいと判断した鈴仙が弁当を取り出して広げるとそれぞれも弁当を取り出し、真由美が生徒会室にある機械での昼食を深雪達に勧めたが鈴仙が作ってきていると聞いてがっかりした。

 

 「鈴仙、それはお前が作ったのか?」

 

 昼食を食べている時に摩利が気になったのか鈴仙に問いかける。鈴仙の隣では達也に深雪と蒼依がいわゆる「あーん」をしたりされたりしていたり、それを見た真由美とあずさが興奮し、鈴音が呆れ返っているが2人は無視を貫く。

 

 「はい。渡辺先輩も手作りですか?」

 「そうだが…よくわかったな」

 「料理を作るものとしてはその手を見ればどれだけやっているかすぐにわかります」

 「そうか。すまないが1つ貰っていいか?」

 「どうぞ」

 

 鈴仙から弁当の具材をひとつ貰うと摩利は驚いたような顔をして硬直した。

 

 「……私なりに自身はあったのだが、これ程の物を作られるとどれだけちっぽけなものだったのか思い知らされるよ」

 「そうですか?こういうのはこなした回数と経験ですし。私はそれなりにやってきた回数が多いだけだと思います。渡辺先輩ももっとこなせば上達すると思いますよ?」

 「そうか…そうだな。ありがとう、私なりに目標が見つかったよ」

 

 そして2人は見向きもしなかった光景に目を向ける。

 

 「蒼依、今日は達也さんの家に泊まっても構いませんよ。豊姫様達には私が説明しておきますので」

 「それとそういうのはやっても構わないが、学校ではなく家でやってくれ」

 

 呆れた表情で勧める鈴仙とニヤニヤしながら注意する摩利の2人の言葉に深雪と蒼依が顔を赤く染めて自分の分を食べ始め、達也がようやく解放され、疲れたのか溜息をこぼす。そしてやはり一旦終わりにしようとした話を盛り返す者が出てくるが、早すぎないか?と鈴仙は思うが、そんな事知ったことかと言わんばかりに真由美が盛り返す。しかしそれは爆弾だった。

 

 「ねえ蒼依さん、達也くん。あなた達付き合ってるの?」

 

 その一言で深雪から冷気が溢れ出し、弁当やペットボトルの中身が凍っていく。

 ちゃっかり鈴仙は自分の分の弁当とペットボトルを凍らないように障壁を展開していたが。

 氷の女王と化した深雪を放置し、真由美の質問に対して蒼依は達也の右腕に抱きつき、

 

 「乙女の秘密です☆」

 

 と一言。それを見た深雪は更に冷気を増し、感情の篭っていないアルカイックスマイルで達也と蒼依に訪ねた。

 

 「お兄様?蒼依?いつからそんなに関係に?」

 

 そんなに深雪に達也は弁解し、蒼依は炎にガソリンを注ぐようなことを言い続ける。そんな彼等を横目に真由美と摩利は関心していた。

 

 「よっぽど事象干渉力が強いのねぇ」

 「流石実技トップクラスと言ったところか」

 「そんな事より早く私達を呼んだことについて教えて下さい」

 

 既に弁当を完食した鈴仙は真由美に催促をした。その一言で深雪達も大人しくなる。

 

 「そうですね。まずは深雪さん、貴女に生徒会に入って欲しいのよ」

 

 やはり呼ばれた理由は深雪の生徒会への勧誘だった。深雪は入ると答えたが達也も一緒では無理かと聞いたが、やんわりと断られていた。

 代わりに達也が生徒会の推薦で風紀委員に推薦された。

 

 「そして豊花さん。貴女には教師推薦枠、中でも校長からの推薦で風紀委員に入っていただきたいのよ」

 「私が選ばれた理由はありますか?」

 「ええ、昨日の騒動は覚えているわよね?」

 

 どうやらあの時対峙した森崎と鈴仙が教師推薦枠の候補としてあがっていたが、問題を起こした森崎ではなく、止めに入った鈴仙が選ばれたということらしい。プライドで問題を起こす人物よりもすぐに的確な対処をする人物の方が良いと判断された結果と思われる。

 

 「わかりました。引き受けます。が、私としても諸事情により活動に参加できない場合がありますので、他の人に変わっていただけるようにしてほしいですね」

 

 こうして昼休みの話は終わり、続きを放課後する事になった。

 

 

 

 更に時間は過ぎ、昼休みに生徒会室にいたメンバーは第三演習室に来ており、その部屋の真ん中では達也と男子生徒が対峙していた。そうなった理由は時間通りに生徒会室に来た4人だったが、生徒会副会長である服部刑部少丞範蔵改め、服部刑部が達也の風紀委員入りに反対し、蒼依と深雪が抗議し、達也の提案で模擬戦をすることとなったからだ。

 

 「それぞれ準備はいいな?それでは、始め!!」

 

 摩利の合図で服部が動くが、達也は消えた様に服部の後ろに回り込み、その直後服部は倒れた。それを見ていたメンバーは深雪と蒼依は当然と言わんばかりに頷き、鈴仙は無表情のまま、他のメンバーは唖然としていた。すぐに戻った摩利の合図で達也の勝利が確定した。

 

 「達也くん、さっきのは一体なんだ?予め自己加速術式を起動していたのか?」

 「それはありません。それをしていないのは先輩がわかっているはずです」

 「私もしていないと断言します。お兄様は九重 八雲さんに弟子入りしていますから」

 「成程、それならあの動きは納得できる。だが服部にしたことは一体なんだ?」

 

 摩利の疑問に達也と深雪が答えるが、摩利は更に疑問を投げ掛ける。するとその答えは思わぬ所から帰ってきた。

 

 「波の合成ですね。恐らく3つの周波数の違うサイオンの波を服部副会長に当たるタイミングで重なるようにしたのでしょう。周波数と発動時間等を変数化したのでしょうか?」

 

 鈴仙が答えると達也も含めて全員が驚いた。

 

 「数値の変数化は評価に入りませんから。それにしても鈴仙、よくわかったな」

 「私も似たような手を使うので」

 「なるほどな」

 

 その会話の途中で服部がふらつきながらも立ち上がり、深雪と蒼依、達也に謝罪する。

 

 このまま終わりだと思った鈴仙に、

 

 「ねえ豊花さん。私と模擬戦してみない?」

 

 真由美が勝負を挑んできた。




本当なら年が開ける前に投稿したかったのですが、ギリギリで年が開けてしまいました。兄ちゃん、ネトゲやりすぎや、パソの処理が重すぎやで。

開き直って、
皆さんあけましておめでとうございます。こんな亀投稿の作品ですがどうぞ宜しくお願いします。

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