魔法科高校の月兎   作:樹矢

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対談

SHRも終わり先輩達の実技の見学となった。特に七草先輩の射撃は目を見張るものがあった。やはり『エルフィン・スナイパー』の二つ名は伊達ではなかったといった印象が強い。時間があれば早撃ち勝負でも挑んでみようか。所々で先生からの質問があったが、森崎とかいう人が片っ端から自爆し、私と深雪さんが模範解答をするという光景が繰り返されため、あまり面白みもなかったとしか言いようがない。工房も見たがもっと良い設備を揃えられるはずだ。今ある設備は旧式だろう。この事は七草先輩に進言しておくことにした。

昼食の時はあまり良い気分で食べられなかった。誰と食べようが人の自由だというのに、深雪さんがお兄さんと食べようとしたら、やい「雑草(ウィード)はどけ」だの「身の程をわきまえろ」だのと低レベルにも程がある。これだから地上の人間は。そんな人間達としばらく共に生活しなければならないのは億劫にしかならなそうだ。この辺はまだ幻想郷の方がまだマシだろう。達也さんが気を利かせて先に立ったのはファインプレーかもしれない。昼食の後に自由に見学できるようになったが、深雪さんの後ろにカルガモの親子の様にクラスメイト(主に男子)が付いて行く光景は誰得なのだろうか?気の置けない蒼依と一緒だったからよかったものの、もし蒼依がいなければドス黒い負のオーラがこの学校を覆っていたかもしれない。後に蒼依の愚痴でわかったことだが、見学の最中にクラスメイトはしつこく話しかけてきたが、深雪さんは蒼依とほのかと雫としか話さなかったらしい。どうやら他のクラスメイトはアウトオブ眼中だったようだ。

 

さて、今私がいるのは鍵が掛かった一高の応接室。盗聴、盗撮の類の機器は発見できなかったが、念のため様々な障壁と魔法を展開してある。蒼依には先に深雪さん達と帰ってもらうことになっており、私の目の前にいるのは3年生の七草先輩と十文字 克人(じゅうもんじ かつと)先輩の2人だけだ。昨日約束を取り付けたのだから破るわけにもいかない。どうせ他の数字持ちの様にいつもの社交辞令とか婚約の話とかだろう。せっかくだから愚痴でも聞いてみようか。

 

「今回は会談の場を設けていただき、ありがとうございます」

「こちらこそ急ではありますが、わざわざ応じていただきありがとうございます」

 

流石七草先輩、この辺は随分と手慣れているようだ。

 

「今回の内容ですが、結局はいつも通りなのですが…」

「結局は我々十師族は貴方がたを手中に収めたいということです」

「まあ大方予想は出来ていました。ここには私達しかいないのでわざわざそんな言い方はしなくてもいいですよ。そんな風に言われると違和感があるので」

「ですが…」

「その程度のことで邪険にはしませんよ。私はですが」

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……ありがとね豊花ちゃん。私もあまりこういうのには慣れないの」

 

やはり七草先輩は砕けた口調の方が話しやすい。

 

「七草、お前はそういう所を直したほうがいい」

 

が、十文字先輩はこういう所は特に厳しいらしい。

 

「えーいいじゃない。必要な時にはしっかりやってるし」

「そういう問題じゃない。申し訳ない。話を戻させてもらいますが、返答はいかがでしょうか?」

「我々の答えは変わりません。貴方がたの当主にそう伝えて下さい。それでも引き下がらない場合はこう伝えて下さい。『我々は貴様ら雑種の戯言を聞いている暇などない』と」

 

最後の一言は無意識にではあるが、殺気を込めてしまった様で、前の2人も震えてはいないが、冷や汗をかいている。

 

「申し訳ありません。ですが一字一句違わず伝えていただけませんか?こちらもいい加減迷惑しているので」

「いえ、あなた方がそう思うのも致し方ありません。わかりました。我々が代表として各十師族に伝えますがよろしいでしょうか?」

「構いません、むしろこちらから頼もうと思っていました。よろしくお願いします」

「畏まりました」

 

これで一旦この案件は解決となるだろう。もう必要ないだろうから障壁等は解除する。その後学校の設備について進言してみた。どうやら七草先輩や十文字先輩も同じらしく、夏休み中に全て最新式に変わる予定らしい。さて、さっきからうずうずしている七草先輩は何をするつもりだろうか?

 

「さて!これで私達の仕事は終わりだから、豊花ちゃん?色々と聞かせて貰うわよー?」

「はて?私に聞きたい事とは?私は先輩に興味を持たせることはした覚えが無いのですが」

「貴女に無くても私にはあるわ!それよりもあなた達はその名前だけで興味を持たせるには十分なのよ!さあ!あなた達のプライベートについて聞かせてもらうわよ~」

「それ私達関係無いですよね?しかもプライベートを知ろうとするとか変態ですか。十文字先輩、この変態な先輩を風紀委員に突き出しても?」

「俺は構わん。が、連れていく必要も無さそうだ」

 

十文字先輩がそう言うと応接室の扉がノックされ、ショートカットの威圧感のある(十文字先輩には劣るが)女子生徒が入ってきた。昼休みに食堂にいた一年生の中にはこんな人は居なかった為、恐らく先輩だろう。

 

「安心しろその変態は後でしっかり私が指導しておいてやる。真由美、校門でいざこざが起きているらしい、ついてきてくれ」

「わかったわ。それと一応自己紹介しておいたら?」

「む、それもそうか。私は3年の渡辺 摩利(わたなべ まり)。この学校の風紀委員をしている」

「鈴仙 豊花です。よろしくお願いします」

「鈴仙……そうか、君がか」

「どのような事に心当たりがあるのかは知りませんが、問題の解除を急いだ方がよろしいのでは?」

「それもそうだな。ところで君は今CADを持っているかね?」

「解散になればそのまま帰る予定でしたので、もう受け取ってあります」

「そうか…ならば、話が早い。君もついてきてくれ」

 

そうして私達は応接室を出た。

 

「渡辺先輩、私を連れていく理由は何ですか?」

 

私達は昇降口に向かっている中で、私は疑問を投げかけた。

 

「一つは君の実技試験の事故と結果を知っている。君は発動された魔法を後から発動した魔法で打ち消すことができるのは先生方と生徒会、風紀委員では公然の秘密となっている。無論、それを行なったこともな。二つ目だが、これは私情も入るし、君を連れて行く大部分の理由になるのだが、君の実力をこの目で見てみたいというのが本音だ。これでいいか?」

 

その程度なら問題は無い。何かしらの制限がありそうだしついでに確認しておこう。

 

「まあいいでしょう。もし相手が魔法を行使しようとしていた場合、術式解体(グラム・デモリッション)か領域干渉を使用しても構いませんか?」

「いいだろう。但し、それ以外での魔法を使用して拘束するのは無しだ」

 

なんだその程度か。

そう思いながら昇降口を出ると校門を占領している一団がいた。

必要となれば自己加速術式で行けばいい。

そう思った刹那、一団の1人が懐に手を入れた。恐らくCADを取り出すのだろう。

 

「そうですか、チョロいですね。ではお先に」

「ーーーは?」

 

渡辺先輩の間抜けた声が聞こえると同時に私は自己加速術式を発動。自分のスピードを一瞬で音速まで上げ、音速の世界を駆けながら、集団のいる校門へと向かって行った。


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