魔法科高校の月兎   作:樹矢

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遅くなって申し訳ありません!!熱中症になったり大会で予選突破等あって遅れてしまいました。ではどうぞ!


始まる

 私達はA組の教室の近くまで来ていた。キャビネットの中で聞いたのだが、蒼依もA組らしい。

 

 「「おはようございます」」

 

 私達は教室の入口で同時に言った。私たちにとっては当然のことをしたのだが、周りからは好奇の目で見られる羽目になった。私達が何をしたというのだ。ついでに入学式の時に感じた視線も向けられた。

 

「あ!豊花さん、おはようございます!!」

「豊花おはよう。そっちの人は?」

 

 私達の席を探していると、ほのかさんが私たちに気付いて返してくれた。こちらも手を小さく振って答える。少し声が大きい気がするが、少し驚いた(当然フリである)が、こうやって返事をしてくれると嬉しいものだ。どれだけ幻想郷がこの『外の世界』の非常識で構成されているのかがよくわかる。そう思うとそんな世界で暮らしてきた自分に自己嫌悪しかけてしまった。あ、頭痛と胃痛が…

 

「ちょっと豊花、大丈夫?」

「大丈夫です、少し忘れていたかったことを思い出しただけなので」

「???」

 

 蒼依が心配して声をかけてくれたが適当に返事をする。お師匠様に許可貰ってこっちで病院でもしようかなぁ…あのイロモノしかいないあの魔境に帰るのはとても心苦しい。一応2人に蒼依の事を紹介しておこう。

 

「紹介しますね、私の義妹の蒼依です」

「どうも、豊花の義妹の鈴仙 蒼依よ。豊花と間違えかねないから蒼依でいいわよ」

「はじめまして、光井 ほのかです!それでこっちが幼馴染みの」

「北山 雫です、よろしく。雫でいい」

「ほのかと雫ね!よろしく!」

 

 2人とも自己紹介をした。どうやら蒼依は早めにこのクラスに馴染めそうだ。

 

「しっかし、いつ2人と知り合ったのよ」

「入学式の時ですが?」

「へぇー、貴女が友達を作るだなんて珍しい事もあるのね」

「心外ですね」

「えー?だって貴女友達とか連れてこなかったし、ずっと自分の部屋に引きこもってたじゃない」

「貴女の家庭教師としての教材と『アレ』のプログラムを作るので忙しかったのですが?」

 「あはは、ごめんごめん、だからその『そんな事も忘れたのですか』とでも言いたそうな顔をやめて!?」

 「わかってるじゃないですか」

「あのー、2人とも?何の話をしているの?」

 「あ、すみません。蒼依にどのような制裁を加えようか迷っていたもので」

 「「酷い(くないですか)!?」」

 「そうでしょうか?」

 「豊花は少し手加減するべきだと思う」

 「そうでしょうか?」

 「ほら!雫だってこう言って……」

 「敢えて時間をかけてじっくりと長時間続ければいいと思う」

 「「雫!?」」

 

 まさかの発言に2人は驚いた。

 

 「わかりました。やってみましょう」

 「やめなさい!!」

 

 流石にヤバイと思ったのか蒼依が止めてくる。その時、

 

 「おはようございます」

 

 教室の入口から凛とした声が教室に優しく響いた。その瞬間教室の喧騒が止み、クラス中の視線が入口に注がれる。それに怯むことなく優雅に自分の席に向かって歩く少女は、こちらに向かって声をかける。その相手は、

 

 「おはようございます、豊花さん、蒼依」

 「おはようございます、深雪さん」

 「おはよー深雪」

 

 今期の新入生総代、司波 深雪だった。

 そのまま深雪が席に座るとクラスメイトが深雪の周りに集まっていった。私ははそのまま自分の席でCADに関する本を読み始めた。

 

 「総代とあの美貌も相まって早くも人気ね」

 「深雪さんっていつもあんな感じなんですか?」

 「そうよ?私は中学の頃からしか知らないけれど、いつもあんな感じに人が集まっていたわね。後輩からは『深雪お姉様』の愛称で呼ばれて人気だったわ」

 「慣れてるんだね」

 「みたいね」

 「ほのかも行ったら?」

 「え?何で?」

 「深雪さんと友達になりたかったんでしょ?」

 「そうなの?」

 「あ、う、うん。実技試験の時に深雪さんがやっているのを見てて、その時に魔法を行使する時の精密さとかそういうのに憧れちゃって」

 「へー、なら尚更行ってきた方がいいわよ?このままだとSHR始まっちゃうわよ?」

 「うーん、今日は先輩達の授業の見学とかできるからその時でいいや」

 「そう?そういえば豊花、貴女は実技試験どうだったの?」

 

その言葉にクラス中が反応する。

 

 「文句無しの主席でしたが?」

 

 その言葉に深雪さんと蒼依以外のクラスメイトがざわつき始める。

 

 「そうじゃなくて、やっている時どうだったの?」

 「周りが五月蝿くなりそうですが言ってもいいでしょう。簡潔に言いますと試験用のCADが壊れました」

 「「え?」」

 「…ごめん、私にもわからないのだけれど」

 

 ほのかと雫はわけのわからないと言った表情で私をを見つめ、流石の蒼依でもその発言に困惑していた。そして周りのクラスメイトも唖然とし、深雪も私の方を向いて驚いていた。

 

 「正確には私がCADに送ったサイオンの量に耐え切れなくて壊れました。私の基準で普通に流し込んだら壊れてしまうのは一目瞭然でしたので、一応ですが、相当手加減したのですがそうなるとは思ってもいませんでした」

 「……確か試験用のCADって『シルバートーラス』が全国の魔法科高校の考査基準に則って実技試験用に作った専用機よね?」

 「確かそうだったはず」

 「でもそれが壊れるって……」

 「実技試験をその後5回ほど繰り返して、ようやく5回目で壊れない程度にサイオンを流し込んで魔法を使えましたね」

 「つくづく貴女の規格外さに驚かされるわね」

 「あれ?てことは豊花の魔法式の展開速度って…」

「一般的な魔法科高校の生徒の展開速度が2、深雪さんが1だとすれば、私は0.001を更に超えると試験監督が言っていましたね。正直、CADはあっても無くても差はありません。使うのであれば『サテライトシリーズ』を使った方が今より早く展開できますね」

 

 さも当然のように言い放ったその言葉はクラス中を騒然とさせる。

 

 「嘘だろ!?あの深雪さんよりも!?」

 「そんな奴がいたのかよ!?」

 「もしかして蒼依さんも?」

 

 等と言っているが、私はどうでもいいと言わんばかりに無視する。

 

 「流石の私でも深雪に0.1追いつかなかったのよ?これと一緒にしないでくれる?」

 「それでも凄い」

 「蒼依も十分凄いよ!」

 「でも試験当日に依姫様から何か言われていませんでしたか?」

 「あぁ、アレね。『手の内を明かす必要は無いから手加減してあげなさい。けれども、もし、それをしたくない相手がいるのであれば手加減すること無く本気で行きなさい』と言われたわね」

 「手加減しましたか?」

 「生憎だけど、今回は本気で行ったわ。手を抜いたりなんかしたらさっきからこっちを見てる新入生総代(ライバル)に失礼よ」

 

 その蒼依の言葉に深雪は喜んでいた。共に魔法を研鑽し合う相手が手加減すること無く挑んできたのだ。手加減等されたらたまったものではないのだろう。

 

 「依姫様にその事は?」

 「勿論言ったわ。その件は納得して許してもらえたわ」

 「そうですか」

 「でもそれだけの技量があるなんて凄いよ!」

 

 ほのかがそれでも褒めてくる。そこにいつの間にか移動してきた深雪さんが参加してきた。

 

 「2人共凄いですね。蒼依に勝ったというのは本人から聞きましたが豊花さんがそれ程とは思っていませんでした」

 「貴女に手加減して勝てる程の奴はこれだけよ」

 「人をこれと呼ばないでください」

 「豊花さん、もしそのようになる方法があれば御教授いただけないでしょうか?」

 

 深雪さんは今の自分に納得いっていないのか、どうすれば私のようになれるか聞いてきた。

 

 「魔法師の大前提の時点で私は規格外だったので。恐らく十師族を優に超える程ありましたし、それにどうすればもっと上に行けるか幾つも試しましたが、試した例が多すぎてもうどれがどの結果になったのか覚えていません。すみませんが、私がその件で教えられる事はありません」

 「そうでしたか…ですが豊花さんでも自分の現状に納得いかない事もあったのですね。現状に甘えずにどうすればもっと上に行けるか模索するその姿勢に尊敬できます」

 「ありがとうございます。少なくとも私がやった事は私に今の結果をもたらしたのであって、他の人が行ったらどうなるかはわかりません。そういった事は自分で探すしかないのだと思います。時に探し、時に模倣し、時に教えられる。それで自分を磨くしかないのだと思います。それに、貴女は私の行った事に尊敬の念を抱いているようですが、私としてはその程度の事をするのは当然の事であり、」

 

 そこで私は一旦切ってこう言った。

 

 「綿月様に使える者、その程度の事を出来ずにどうします?」

 

 その一言でざわついていた教室は静まり、深雪さんは納得行った表情で頷いていた。

 

 そして校舎にチャイムが鳴る。

 

 私達の魔法科高校での生活の始まりの合図が。




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