私は希望が大嫌いだ 作:希望抹殺隊隊長
俺にはデュエル描写はこれしかできなかったよ…。非力な私を許してくれ…。
皆凄いよな…デュエル出来て…。
ハートランドシティを良く見渡せる、秘密の場所があるらしい。
その場所からハートランドシティを一望すれば、それはとても美しく、幻想的である。よく晴れた日には、星空が満天に広がり、まるでハートランドシティに幸福を与えようとしているみたいらしい。
真月零ーーー基ベクターは、紫のベールに身を包んでそこに訪れた。
誰にも見られていない。こんな時間に、こんな場所に来るのがおかしい。
どうせ彼女はわからない。あれはただの勝手な憶測である。あれは、彼女の狂った戯言だ。そうベクターは自分に言い聞かせ、彼女の誘いに無視を決め込もうとした。
だが、何故か気になった。歩いている度に言い寄らない悪寒が走り、ベクターを嫌な気持ちにさせてしまう。
何を狼狽えている。あんなの、あの女の言い分だろ?
それにあれは、俺を指しているわけでもない。そうだ、分身を行かせればいい。そうしてあいつは狼狽えればいい。そうだ、そうしよう。
そう、最初は分身を送り込んで、彼女の真実を図ろうとした。
だが、そう考えた時、ベクターは頭を振った。
待て、本当に分身を行かせていいのか?
分身を行かせて、何になるんだ?
いや、行かせていいんだ。情報はこちらまで来る。なら問題ない。
でも、でも、でも。
ついに何もすればいいのかわからなくなったベクターは、もはや無意識とも言える結論を叩き出した。
自分で行って、敵かどうか判断すればいい。
何故そう思い至ったのかはわからなかった。
でもベクターは、本能的に感じた。
『これは自分が行かなければならない』と。
ほんの数分前まで、分身を行かせようとしたベクターは、分身を消し、紫のベールで身を包んで、指定された場所に向かった。あいにくだが、もう場所に検討はついている。
そこは自分が良く行く場所だからーー。
■
非常階段を登り、中に入る。
中は当然鍵はかかっていない。当然だ。この建物は、もう管理者がいないのだから。
建物内に入り、ベクターはさらに上に行く。ここから行けば、後は普通に屋上に行ける。
心臓がバクバクする。
嫌な汗が出る。
大丈夫だ、あいつはいないであろう。もう深夜なんだ。こんな時間に、人間が出歩くなんて、ましてや女だ。直ぐ警察に見つかって戻される。
自分はバリアンだから大丈夫だが、人間はそうは行かない。
なのに何故、自分はここに来ている。まさか、いると思っているのか?
いや、違う。真実を確かめに来たんだ。あいつが敵かどうか、見極める為に。
ベクターは屋上に続く扉の前に立ち、ゆっくりとドアノブを握り、捻る。
ギィ、と音を立て、ベクターはまず覗き込むように見た。
そして、目を見開いた。
彼の視線の先には。
「待っていたわ、ベクター」
彼女が、いたから。
◆■◆■◆
「ふふふ。何を驚いているの?『ベクター』。私は言ったわよ?ここで待ってるって。ずっと、ね」
「……俺の名前までも知ってるのか。テメェ、何者だ?」
ベクターの目に警戒が走る。どうやら、バリアルフォーゼはしていないみたい。なら彼は、本物のベクター。
良かった。偽物だったら完膚無きまでに潰そうかと思ったけど、これなら事が進みそう。
彼がここに来たということは、私に利用価値があるか、それとも協力をしに来たかの二択のみ。
でもそれでも構わないわ。
さぁて、対話を始めましょう。
「もう一度、名乗っておきましょうか。改めて初めまして。ハートランド学園中等部二年の、碓氷刹凪よ。好きなものは特になし。嫌いなものは光、希望、絆、勇気などなど。どうぞよろしく、ベクター」
「ンなこと聞いてんじゃねェよ。俺はテメェが『何者』かが聞きたいんだ」
「あら、それはあなたも聞いたことでしょう?」
「何?」
ベクターの声が低くなる。
私は座っていた鉄格子から降り、ゆっくりとベクターに近づいた。
「私の中には『悪魔』がいる」
「…!」
「私の憎悪が膨れ上がると共に、悪魔はそれを餌として貪る。そしてその闇の力で、悪魔はさらに、さらなる力を遂げる。……ああ、この事は言ってなかったわね。『真月零くん?』」
そう私が言うと、ベクターが驚いた表情をした。フード越しでも、それが伝わってくる。
もしかしたらベクターは、自分が真月零とバレてないのか確かめに来たのかもしれない。でもねベクター。私はもう、あなたの正体を知っているの。
さぁ、どうでるの?ベクター。
「……何のことだ。その真月零ってのは誰だ」
ベクターは嘘をついた。
それを聞いた私は、舌打ちがしたくなった。
そうか、ベクターはあくまで、私と協力する気はないの。
じゃあその気にしてあげる。
ベクターと2メートルくらいの距離を取り、私は腕を組んだ。
「あら、惚けるつもり?別にいいわよ。そのままはぐらかしても。私はあなた、真月零もといベクターに用があるから」
「…………」
「もしまだ警戒しているのなら、そのフードを取りなさい?その行動で、私はあなたを敵か味方か判断をつける。あなたもそうでしょう?私に利用価値があるか、確かめに来たのでしょう?ふふっ、それを見極める為に、私と協力するのもありじゃなくて?」
ベクターはまだ警戒をしている。
この言葉で、ベクターがどう出るかが問題だ。
もしベクターがフードを取った場合、ベクターは私に協力するも同じ。
逆にフードを取らなかった場合、私を敵と見做すのも同じ。
私の予想が外れていなければ、そうなる。
数十秒の間を空け、ベクターはゆっくりとフードに手をかけた。
そしてベクターは、パサリと、フードを取る。
「……それは、私に利用価値があると見做しての行動と取ってもよくて?」
フードを取ったベクターは、やはり人間の姿だった。
まだ警戒があるものの、敵とは見なしていない目。
これで、次のステップに移れる。
これでベクターは、主人公の色に染まらなくて済む。
まずは話を聞いて、完全に私と協力するか、確信しなければ。
ベクターはハッと鼻で笑う。
「勘違いするなよ。あくまでお前に利用価値があると判断しただけだ。別にテメェと共闘する気は一ミリもねェよ」
「ふふ。あらそう。別に構わないわよ」
「だが、俺にも提案ってもんがあるんだよ」
ベクターがニヤリと笑う。
……ああ、この流れは、なるほど。これで私を試すってわけね。私の実力を。
ベクターは腕を突き出し、そこからバリアンの力で作り出したデュエルディスクをつける。……バリアンの力は、デュエルディスクには有効なのね。
「デュエルだ。俺を見事倒したら、お前と協力してやる」
「私が負けたら?」
「俺の命令に従え」
「ふふ。いいわよ」
左手を天空に向かってあげる。すると、私のデュエルディスクが徐々に悪魔の力を借りて創り出される。
形状は、黒い翼に青の宝石が埋め込まれたもの。要するに、ベクターのものとよく似ている。
このデュエルディスクは、悪魔そのもの。悪魔にしか創り出されない、負の感情がより詰まったもの。
でも、このデュエルでは出さない。
悪魔の力を本格的に借りるのは、九十九遊馬の心がポッキリ折れ、絶望を感じた時よ。
だから、このデュエルは負けてもいい。
あなたの命令に従えるなら、別に構わない。
だって。
その方が、あなたを縛れるでしょう?
「「デュエル!」」
SETSUNA
LP4000
手札×5
VECTOR
LP4000
手札×5
「先行はテメェからだ」
「あら、お先に。私のターン、ドロー」
SETSUNA
手札×5→6
……さて。
『普通の人』とデュエルをやるのはこれが初めてだ。
今までは悪魔と脳内でやっていたので、あのように回せるかはわからない。
だが、やるだけやってみよう。このデュエルは『負けてもいい』んだから。
「自分フィールドに魔法、罠がない場合【彼岸の悪鬼 アリキーノ】を特殊召喚できる。来なさい、アリキーノ」
私の場に、悪魔の翼を司り、紫の髪をふわりとさせ、私を守るように立った、女性のようなモンスター。
【彼岸の悪鬼アリキーノ】
星3 /闇属性 /悪魔族
攻 1200/守0
「そして私は、【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】を、通常召喚」
アリキーノの隣に、鋭い牙と、獄炎の如くの鋭い爪を立たせて現れた、狼の悪魔。
【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】
星3 /闇属性 /悪魔族
攻1000/守1500
「さぁ、まずは小手調べよ。私は【彼岸の悪鬼アリキーノ】と【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】の二体で、オーバーレイッ!」
二体の悪魔は、銀河の渦に吸い込まれる。
それは爆音を立て、地を浸透させる。
「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。
来なさい、【ゴーストリック・アルカード】」
【ゴーストリック・アルカード】
ランク3/闇属性/アンデット族
攻1800/守1600
現れたのは、体が真っ白な、幽霊の吸血鬼みたいなモンスター。
ゴーストリック・アルカードは現れた直後、マントの端を持って上品にお辞儀をする。
「私はこれで、ターンエンド」
SETSUNA
LP4000
手札×4
【ゴーストリック・アルカード】
ランク3/闇属性/アンデット族
攻1800/守1600
「俺のターン。ドロー!」
VECTOR
手札5→6
「俺は【アンブラル・グール】を召喚!」
【アンブラル・グール】
星4/闇属性/悪魔族
攻1800/守0
「あら?」
この時点で、ベクターはアンブラルを使っていただろうか。この場合真月零のデッキを使うと思っていたが、どうやら私の間違いだったようだ。
彼はベクターで挑んでいる。なら、私も答えなければならない。
「【アンブラル・グール】の効果発動!こいつの攻撃力を0にすることで、手札から攻撃力0の【アンブラル】と名のつくモンスターを一体、特殊召喚する!俺は【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】を、特殊召喚!」
【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】
星1/闇属性/悪魔族
攻0/守0
「そして、ウィル・オ・ザ・ウィスプの効果発動!こいつが召喚、特殊召喚に成功した時、自分フィールドにいるモンスターと同一のレベルとなる!俺のフィールドには、レベル4のアンブラル・グール。よってこいつのレベルは、4になる!」
【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】
星1→星4
「俺はレベル4のウィル・オ・ザ・ウィスプと、アンブラル・グールで、オーバーレイ!さぁ、俺もお前を試させてもらう!」
そんなの尺も承知。
さぁ、破ってきて。
「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」
銀河の爆風から現れたそのモンスターは。
金色の体を持ち、ギチギチと翼を広げ、私を威嚇するかのように吠える。
まるでカブトムシのような、モンスター。
「【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】」
【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/闇属性/昆虫族
攻 2500/守 800
初っ端からNo.を出してきたか。
この世界じゃ、No.はNo.でしか破壊できないはずだ。
だが生憎、私はNo.を持っていない。どうやらあの悪魔でも、No.は創りだせないらしい。
『らしい』というのは、元々このデッキは、悪魔に作ってもらったものだ。それに慣れる為に、私は脳内で悪魔とデュエルをした。ーーーー魂をかけた、デュエルを。
身も心も削っても、私がそれを続けた理由は一つしかない。
彼らに、希望が無意味だと思い知らせるため。
だから私は続けた。
でも今は、その力を発揮しない。
だってこのデュエルは、負けてもいいんだもの。
「今はこいつの効果は発揮できねェが、そのモンスターを破壊することはできる!俺は、マスター・キービートルで、ゴーストリック・アルカードを攻撃!【キー・ブラスト】ォ!!」
マスター・キービートルの角が、アルカードを突き刺す。
アルカードはそれに悶え苦しみ、やがて爆風によって消えた。
SETSUNA
LP4000→3300
「俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド」
VECTOR
LP4000
手札×2
【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】
伏せカード×2
「随分と好戦的ね。いきなりNo.を出すなんて」
「まァな。テメェも遊馬クンと一緒にいたら、No.の効果は当然わかってるな?」
「ええ、わかっているわ。No.はNo.でしか攻撃できない。でもごめんなさい。私No.は持ってないの」
「あァ知ってる。だから俺は、敢えてこいつを出したんだよ」
……ベクターは、私に勝とうとしているのか。
そして命令で私を従わせて、自分の下僕として扱おうとしている。
……ああ。
さいっこう。
別にそれに乗ってもいいけど、このままやらないとベクターに手を抜いたのかと気づかれてしまう。
せめて、あなたの満足するデュエルを。
ああ、これだから。
「ふふ、じゃあ私は、地道にダメージを与えましょうか。私のターン、ドロー」
悪役は、大好きなんだ。
いつから刹凪と悪魔の会話があると思っていた…?
と言うわけでデュエルでございます。今の刹凪ちゃんのデッキは【彼岸】軸のデッキです。
デュエルの続きは書ければ…今は思い思いに書くのよ!
ところで聞きたいんですが、No.はNo.でしか破壊できない。じゃあ魔法や罠では破壊できるんでしょうか?それとも、それを全て入れて、【No.モンスターしか破壊できない】ということなのでしょうか?
アニメではNo.同士が破壊しあってたので、そこが曖昧なんですよね…。
ちなみに刹凪ちゃんがベクターに対して変態になっているのはお口チャックよ。