私は希望が大嫌いだ   作:希望抹殺隊隊長

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俺にはデュエル描写はこれしかできなかったよ…。非力な私を許してくれ…。
皆凄いよな…デュエル出来て…。



私は彼を満足させる

 

 

ハートランドシティを良く見渡せる、秘密の場所があるらしい。

その場所からハートランドシティを一望すれば、それはとても美しく、幻想的である。よく晴れた日には、星空が満天に広がり、まるでハートランドシティに幸福を与えようとしているみたいらしい。

真月零ーーー基ベクターは、紫のベールに身を包んでそこに訪れた。

誰にも見られていない。こんな時間に、こんな場所に来るのがおかしい。

どうせ彼女はわからない。あれはただの勝手な憶測である。あれは、彼女の狂った戯言だ。そうベクターは自分に言い聞かせ、彼女の誘いに無視を決め込もうとした。

だが、何故か気になった。歩いている度に言い寄らない悪寒が走り、ベクターを嫌な気持ちにさせてしまう。

何を狼狽えている。あんなの、あの女の言い分だろ?

それにあれは、俺を指しているわけでもない。そうだ、分身を行かせればいい。そうしてあいつは狼狽えればいい。そうだ、そうしよう。

そう、最初は分身を送り込んで、彼女の真実を図ろうとした。

だが、そう考えた時、ベクターは頭を振った。

待て、本当に分身を行かせていいのか?

分身を行かせて、何になるんだ?

いや、行かせていいんだ。情報はこちらまで来る。なら問題ない。

でも、でも、でも。

ついに何もすればいいのかわからなくなったベクターは、もはや無意識とも言える結論を叩き出した。

 

自分で行って、敵かどうか判断すればいい。

 

何故そう思い至ったのかはわからなかった。

でもベクターは、本能的に感じた。

『これは自分が行かなければならない』と。

ほんの数分前まで、分身を行かせようとしたベクターは、分身を消し、紫のベールで身を包んで、指定された場所に向かった。あいにくだが、もう場所に検討はついている。

そこは自分が良く行く場所だからーー。

 

 

 

 

非常階段を登り、中に入る。

中は当然鍵はかかっていない。当然だ。この建物は、もう管理者がいないのだから。

建物内に入り、ベクターはさらに上に行く。ここから行けば、後は普通に屋上に行ける。

心臓がバクバクする。

嫌な汗が出る。

大丈夫だ、あいつはいないであろう。もう深夜なんだ。こんな時間に、人間が出歩くなんて、ましてや女だ。直ぐ警察に見つかって戻される。

自分はバリアンだから大丈夫だが、人間はそうは行かない。

なのに何故、自分はここに来ている。まさか、いると思っているのか?

いや、違う。真実を確かめに来たんだ。あいつが敵かどうか、見極める為に。

ベクターは屋上に続く扉の前に立ち、ゆっくりとドアノブを握り、捻る。

ギィ、と音を立て、ベクターはまず覗き込むように見た。

 

そして、目を見開いた。

 

彼の視線の先には。

 

 

「待っていたわ、ベクター」

 

 

彼女が、いたから。

 

 

◆■◆■◆

 

 

「ふふふ。何を驚いているの?『ベクター』。私は言ったわよ?ここで待ってるって。ずっと、ね」

 

「……俺の名前までも知ってるのか。テメェ、何者だ?」

 

ベクターの目に警戒が走る。どうやら、バリアルフォーゼはしていないみたい。なら彼は、本物のベクター。

良かった。偽物だったら完膚無きまでに潰そうかと思ったけど、これなら事が進みそう。

彼がここに来たということは、私に利用価値があるか、それとも協力をしに来たかの二択のみ。

でもそれでも構わないわ。

さぁて、対話を始めましょう。

 

「もう一度、名乗っておきましょうか。改めて初めまして。ハートランド学園中等部二年の、碓氷刹凪よ。好きなものは特になし。嫌いなものは光、希望、絆、勇気などなど。どうぞよろしく、ベクター」

 

「ンなこと聞いてんじゃねェよ。俺はテメェが『何者』かが聞きたいんだ」

 

「あら、それはあなたも聞いたことでしょう?」

 

「何?」

 

ベクターの声が低くなる。

私は座っていた鉄格子から降り、ゆっくりとベクターに近づいた。

 

「私の中には『悪魔』がいる」

 

「…!」

 

「私の憎悪が膨れ上がると共に、悪魔はそれを餌として貪る。そしてその闇の力で、悪魔はさらに、さらなる力を遂げる。……ああ、この事は言ってなかったわね。『真月零くん?』」

 

そう私が言うと、ベクターが驚いた表情をした。フード越しでも、それが伝わってくる。

もしかしたらベクターは、自分が真月零とバレてないのか確かめに来たのかもしれない。でもねベクター。私はもう、あなたの正体を知っているの。

さぁ、どうでるの?ベクター。

 

「……何のことだ。その真月零ってのは誰だ」

 

ベクターは嘘をついた。

それを聞いた私は、舌打ちがしたくなった。

そうか、ベクターはあくまで、私と協力する気はないの。

じゃあその気にしてあげる。

ベクターと2メートルくらいの距離を取り、私は腕を組んだ。

 

「あら、惚けるつもり?別にいいわよ。そのままはぐらかしても。私はあなた、真月零もといベクターに用があるから」

 

「…………」

 

「もしまだ警戒しているのなら、そのフードを取りなさい?その行動で、私はあなたを敵か味方か判断をつける。あなたもそうでしょう?私に利用価値があるか、確かめに来たのでしょう?ふふっ、それを見極める為に、私と協力するのもありじゃなくて?」

 

ベクターはまだ警戒をしている。

この言葉で、ベクターがどう出るかが問題だ。

もしベクターがフードを取った場合、ベクターは私に協力するも同じ。

逆にフードを取らなかった場合、私を敵と見做すのも同じ。

私の予想が外れていなければ、そうなる。

 

 

 

 

数十秒の間を空け、ベクターはゆっくりとフードに手をかけた。

そしてベクターは、パサリと、フードを取る。

 

「……それは、私に利用価値があると見做しての行動と取ってもよくて?」

 

フードを取ったベクターは、やはり人間の姿だった。

まだ警戒があるものの、敵とは見なしていない目。

これで、次のステップに移れる。

これでベクターは、主人公の色に染まらなくて済む。

まずは話を聞いて、完全に私と協力するか、確信しなければ。

ベクターはハッと鼻で笑う。

 

「勘違いするなよ。あくまでお前に利用価値があると判断しただけだ。別にテメェと共闘する気は一ミリもねェよ」

 

「ふふ。あらそう。別に構わないわよ」

 

「だが、俺にも提案ってもんがあるんだよ」

 

ベクターがニヤリと笑う。

……ああ、この流れは、なるほど。これで私を試すってわけね。私の実力を。

ベクターは腕を突き出し、そこからバリアンの力で作り出したデュエルディスクをつける。……バリアンの力は、デュエルディスクには有効なのね。

 

「デュエルだ。俺を見事倒したら、お前と協力してやる」

 

「私が負けたら?」

 

「俺の命令に従え」

 

「ふふ。いいわよ」

 

左手を天空に向かってあげる。すると、私のデュエルディスクが徐々に悪魔の力を借りて創り出される。

形状は、黒い翼に青の宝石が埋め込まれたもの。要するに、ベクターのものとよく似ている。

このデュエルディスクは、悪魔そのもの。悪魔にしか創り出されない、負の感情がより詰まったもの。

でも、このデュエルでは出さない。

悪魔の力を本格的に借りるのは、九十九遊馬の心がポッキリ折れ、絶望を感じた時よ。

だから、このデュエルは負けてもいい。

あなたの命令に従えるなら、別に構わない。

だって。

 

その方が、あなたを縛れるでしょう?

 

 

「「デュエル!」」

 

 

SETSUNA

LP4000

手札×5

 

 

VECTOR

LP4000

手札×5

 

 

「先行はテメェからだ」

 

「あら、お先に。私のターン、ドロー」

 

 

SETSUNA

手札×5→6

 

 

……さて。

『普通の人』とデュエルをやるのはこれが初めてだ。

今までは悪魔と脳内でやっていたので、あのように回せるかはわからない。

だが、やるだけやってみよう。このデュエルは『負けてもいい』んだから。

 

「自分フィールドに魔法、罠がない場合【彼岸の悪鬼 アリキーノ】を特殊召喚できる。来なさい、アリキーノ」

 

私の場に、悪魔の翼を司り、紫の髪をふわりとさせ、私を守るように立った、女性のようなモンスター。

 

 

【彼岸の悪鬼アリキーノ】

星3 /闇属性 /悪魔族 

攻 1200/守0

 

 

「そして私は、【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】を、通常召喚」

 

アリキーノの隣に、鋭い牙と、獄炎の如くの鋭い爪を立たせて現れた、狼の悪魔。

 

 

【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】

星3 /闇属性 /悪魔族 

攻1000/守1500

 

 

「さぁ、まずは小手調べよ。私は【彼岸の悪鬼アリキーノ】と【彼岸の悪鬼グラバースニッチ】の二体で、オーバーレイッ!」

 

二体の悪魔は、銀河の渦に吸い込まれる。

それは爆音を立て、地を浸透させる。

 

「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。

来なさい、【ゴーストリック・アルカード】」

 

 

【ゴーストリック・アルカード】

ランク3/闇属性/アンデット族

攻1800/守1600

 

 

現れたのは、体が真っ白な、幽霊の吸血鬼みたいなモンスター。

ゴーストリック・アルカードは現れた直後、マントの端を持って上品にお辞儀をする。

 

「私はこれで、ターンエンド」

 

 

SETSUNA

LP4000

手札×4

【ゴーストリック・アルカード】

ランク3/闇属性/アンデット族

攻1800/守1600

 

 

「俺のターン。ドロー!」

 

 

VECTOR

手札5→6

 

 

「俺は【アンブラル・グール】を召喚!」

 

 

【アンブラル・グール】

星4/闇属性/悪魔族

攻1800/守0

 

 

「あら?」

 

この時点で、ベクターはアンブラルを使っていただろうか。この場合真月零のデッキを使うと思っていたが、どうやら私の間違いだったようだ。

彼はベクターで挑んでいる。なら、私も答えなければならない。

 

「【アンブラル・グール】の効果発動!こいつの攻撃力を0にすることで、手札から攻撃力0の【アンブラル】と名のつくモンスターを一体、特殊召喚する!俺は【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】を、特殊召喚!」

 

 

【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】

星1/闇属性/悪魔族

攻0/守0

 

 

「そして、ウィル・オ・ザ・ウィスプの効果発動!こいつが召喚、特殊召喚に成功した時、自分フィールドにいるモンスターと同一のレベルとなる!俺のフィールドには、レベル4のアンブラル・グール。よってこいつのレベルは、4になる!」

 

 

【アンブラル・ウィル・オ・ザ・ウィスプ】

星1→星4

 

 

「俺はレベル4のウィル・オ・ザ・ウィスプと、アンブラル・グールで、オーバーレイ!さぁ、俺もお前を試させてもらう!」

 

そんなの尺も承知。

さぁ、破ってきて。

 

「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

銀河の爆風から現れたそのモンスターは。

金色の体を持ち、ギチギチと翼を広げ、私を威嚇するかのように吠える。

まるでカブトムシのような、モンスター。

 

「【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】」

 

 

【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/闇属性/昆虫族

攻 2500/守 800

 

 

初っ端からNo.を出してきたか。

この世界じゃ、No.はNo.でしか破壊できないはずだ。

だが生憎、私はNo.を持っていない。どうやらあの悪魔でも、No.は創りだせないらしい。

『らしい』というのは、元々このデッキは、悪魔に作ってもらったものだ。それに慣れる為に、私は脳内で悪魔とデュエルをした。ーーーー魂をかけた、デュエルを。

身も心も削っても、私がそれを続けた理由は一つしかない。

 

彼らに、希望が無意味だと思い知らせるため。

 

だから私は続けた。

でも今は、その力を発揮しない。

だってこのデュエルは、負けてもいいんだもの。

 

「今はこいつの効果は発揮できねェが、そのモンスターを破壊することはできる!俺は、マスター・キービートルで、ゴーストリック・アルカードを攻撃!【キー・ブラスト】ォ!!」

 

マスター・キービートルの角が、アルカードを突き刺す。

アルカードはそれに悶え苦しみ、やがて爆風によって消えた。

 

 

SETSUNA

LP4000→3300

 

 

「俺はカードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 

VECTOR

LP4000

手札×2

【No.66覇鍵甲虫マスター・キービートル】

 

伏せカード×2

 

 

「随分と好戦的ね。いきなりNo.を出すなんて」

 

「まァな。テメェも遊馬クンと一緒にいたら、No.の効果は当然わかってるな?」

 

「ええ、わかっているわ。No.はNo.でしか攻撃できない。でもごめんなさい。私No.は持ってないの」

 

「あァ知ってる。だから俺は、敢えてこいつを出したんだよ」

 

……ベクターは、私に勝とうとしているのか。

そして命令で私を従わせて、自分の下僕として扱おうとしている。

……ああ。

 

さいっこう。

 

別にそれに乗ってもいいけど、このままやらないとベクターに手を抜いたのかと気づかれてしまう。

せめて、あなたの満足するデュエルを。

ああ、これだから。

 

「ふふ、じゃあ私は、地道にダメージを与えましょうか。私のターン、ドロー」

 

 

 

悪役は、大好きなんだ。

 

 





いつから刹凪と悪魔の会話があると思っていた…?
と言うわけでデュエルでございます。今の刹凪ちゃんのデッキは【彼岸】軸のデッキです。
デュエルの続きは書ければ…今は思い思いに書くのよ!
ところで聞きたいんですが、No.はNo.でしか破壊できない。じゃあ魔法や罠では破壊できるんでしょうか?それとも、それを全て入れて、【No.モンスターしか破壊できない】ということなのでしょうか?
アニメではNo.同士が破壊しあってたので、そこが曖昧なんですよね…。

ちなみに刹凪ちゃんがベクターに対して変態になっているのはお口チャックよ。

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