私は希望が大嫌いだ 作:希望抹殺隊隊長
今回は真月零と仲間になる前を書きました。いい具合に刹凪ちゃんが狂って私は満足です。
※これは短編集です。私が書きたいと思ったのを書くので、時間例はバラバラです。
※もしそれが見にくい場合、割り込み予約投稿させていただきます。
授業が終わると同時に、私は弁当箱を持ってあるところに行く。
すれ違い様に声をかけられるが、私は設定に応じて優雅に応え、屋上に続く階段を登った。
「遅くなりました、皆さん」
ガチャリと扉を開ければ、そこには。
「あ、刹凪さん!こんにちは!」
「刹凪ー!こっちだぜー!」
ナンバーズクラブの面々がいた。
観月小鳥はこちらを見て笑い、九十九遊馬は隣に座るように催す。
そしてその隣にはーーー。
「……遊馬君、誰ですか?あの人は」
きた。
私は込み上げる笑顔をしまって、設定上の笑顔を浮かべた。ついでにもう一人の女にも。
「初めまして、私中等部二年の碓氷刹凪と申します」
「まぁ、あなたが碓氷さん?私は神代璃緒と申しますの。兄共々、よろしくお願いします」
「僕の名前は真月零です!初めまして、碓氷さん!」
「えぇ、よろしくお願いします。神代璃緒さん、真月零くん」
やっとだ。やっとこいつが来た。
長く感じた。例え一ヶ月でも二ヶ月でも、私にとっては一年くらいだった。
九十九遊馬にデュエルを教えてもらうと口実で言ってから、それ以来九十九遊馬とその仲間達と行動を共にしてから、本当に吐きそうな毎日だった。
やっとだ。ここから、次の段階へと上がる。
着々と迫っている。私の恨みを晴らす時が。
もう絶対に、あなたをあの様にはしない。
主人公に染まらせたりはしない。
さぁ、参ろう。
次のステップだ。
■
ここまで色んなことがあった。
九十九遊馬にデュエルを教えてもらうと約束してから、それ以来九十九遊馬にデュエルを教えてもらっている。正直、九十九遊馬の説明は下手すぎてどうにもならないが、知り合い以上の関係にはなったであろう。
九十九遊馬が仲間を紹介したことで、私の心はだんだんと悪魔に支配されるように感じた。
彼らの笑顔を見る度に憎悪が湧き、嫌悪を湧き、そして終いには吐きそうになる。
もう主人公だけの問題ではない。希望を抱き、光に包まれてるもの全てを拒絶するようになってしまった。
神代凌牙はまだマシだった。天城カイトもまだマシだった。
Ⅲはダメだった。Ⅳはマシだった。Vとトロンはそもそも会っていない。神代璃緒はあった後にダメになった。
でもいずれ、彼らは希望を抱くことになる。
だけど彼らに期待などしていない。
私が期待しているのは、ただ一人。
ベクターだけ。
あの時の自己紹介から、私は彼に接触する機会を図っていた。
その為にはまず、着々と事を進めなければならない。
そう、着々と。
「あら、真月零くん」
『偶然』見つけた真月零ーーもといベクターを見つけ、私は声をかける。
ベクターは私を見て少し驚いたが、直ぐに真月零に戻った。
ーーー大丈夫、私がその化けの皮を剥がしてあげる。
あの様子からすると、九十九遊馬達を待っているのだろうか。
まぁ、私にとっては好都合だ。
ベクターは私の嫌いな笑顔を見せて、話してきた。
「あ、偶然ですね碓氷さん!今から帰りですか?」
「ええ。そういうあなたは?」
「僕はよかれと思って、補習で居残ってる遊馬くんを待ってるんです!先に帰ってろって言われましたけど!」
純粋な笑顔。これを向けられたら、さすがの九十九遊馬も信じるしかあるまい。
というか、こんな演技良くこいつは持つものだ。それは人の事が言えないと思うが、演技力ならこいつの方が高いであろう。
…ここでカマをかけるか。
「なら、私と一緒に帰りませんか?」
「えっ、でも…」
「九十九遊馬さんからは先に帰れと言われたのでしょう?なら問題ありませんこと?ちょうど、私も帰るとこでしたし。それに、私あなたに聞きたいことがあるの」
「………………」
一瞬、ベクターの目が鋭くなった。
だけどそれはほんの一瞬で、直ぐに人の良さそうな笑顔を浮かべる。
「わかりました!では一緒に帰りましょう!」
ベクターは私より先に校門に向かう。
私もそれを追うために、歩き出した。
ケタケタと笑う悪魔が、私に問いてくる。
『そろそろ、本番だな』
ええ、そうよ。
これで私は、さらに上の段階へ進めるの。
もう直ぐ、もう直ぐだ。
込み上げる笑みを、偽善者の笑みで押し殺して、私は真月零の隣に並んで歩き出した。
■
「それで、遊馬くんがーーー」
ペラペラと九十九遊馬のことを喋っている。
正直言って、耳障りで仕方がない。誰が好き好んであの光の塊の話を聞かなくてはならない。
もういいだろう。そろそろ、私の話をさせていただく。
「ねぇ、真月零くん」
「?何ですか?」
九十九遊馬の話を中断して、私に注目してくる。
そして私は、彼にとって意味のわからないことを口にした。
「実は私の体に、悪魔が潜んでいるの」
「…悪魔?」
「そう、『悪魔』」
もちろんこの『悪魔』とは、あの悪魔のことも指す。
彼は一瞬考える素振りをして、やがて何を言っているんだこいつはという目をした。その目は完全にベクターだというのを、彼は気づいていない。
「そうですか。取り憑かれやすいんですか?」
「いいえ。悪魔に取り憑かれたのはこれが初めてよ」
「へ?ならなんで急に」
「何でだと思う?」
わざと彼に問いかける。
まだベクターの目を向けている彼は、真月零かのように考え出した。「うーん」とわざとらしく声を出し、やがてペカリとハテナマークを易々と出す。
「急にそっちの力が強くなったとか」
「残念、不正解」
「んー…?」
本当にわからないようだ。こういうのには鈍いのだろうか。
別にわからなくてもいいんだけど、なんか少し悲しい。
私は考える彼を見て、胸に手を当てた。
「正解は『私の憎悪が大きくなったから』私の悪の力を、悪魔は感じ取ってしまったの」
「憎悪?碓氷さんにも、憎んでいる人がいるんですか?」
「ええ。とっても憎くて憎くて、殺したい程に目障りな人が」
そう言うと、明らさまにベクターは驚いた。恐らく真月零での設定なのだろう。本来の彼なら、こんな大袈裟に驚くことはない。
そろそろ真月零の瞳に戻って来ている彼は、私に質問攻めの如く詰め寄った。その表情は酷く楽しげで、やっぱり彼はベクターなんだなと思う。
「碓氷さんにそんな人がいたなんて!誰なんですか?誰を殺したい程に憎んでいるんですか!?僕何も言わないんで、教えてください!!」
「あなたの近くにいるわよ」
最初で最大のヒントを、私は出した。
彼はこの言葉を少しだけ考え、いやまさかという顔をした。こういうところは鋭い。が、まだ信じ切れてはいない。
「へぇ、僕の近くにいるんですか。男ですか?女ですか?」
「男よ。あなたと同じ一年生。元気いっぱいで、希望ばかりを振りまいてる目障りな存在」
これを言うと、ベクターは本当に驚いた表情をした。
そしてベクターの目が、また変わる。その目は『バリアンのベクター』。恐らく「こいつは利用価値がある」とか思っているはずだ。
残念だが、私は利用するのではなく『共闘』を望んでいる。それを、彼にわかってもらえなければならない。
慎重かつ大胆に。
もっと警戒心を募らせて。もっと私を怪しんで。
私はあなたの味方なんだから。
「……それって、九十九遊馬くん、ですか?」
「大正解。よくできました」
「で、でも。なんで遊馬くんを?遊馬くんとあなたは、いつも仲よさ気に話してたじゃないですか」
「あれ?あれは私の『仮面』よ。誰が好き好んで、あんな光の塊を相手にしなくちゃならないの?私はあいつを絶望に陥れるために、コツコツと3話から積み上げてきたの。彼のように、あらまびっくりと驚かせるようにね」
「そ、そんな言い方…っ」
「だって、事実じゃない。
あいつは私の持ってないものを全て持っている。
私はそれが許せないの。
私がどんな思いで、どんなに苦しく、希望を望んでいたか、あいつは、いやこの『作品』自体がわかっていない。
希望なんて、望んでも存在しないのよ?希望はやって来ないのよ?
その希望を、彼は易々と振りまいてるのよ?これを憎まずして何をするの?
作られた作品でもわかってる。もちろん、これは私の被害妄想でしかない。この作品自体も、あいつも、登場人物だって何も非はない。
だけど私が許せないの。私自身が許せないの。
ここで何もかも許してしまったら、今度こそ私が壊れてしまうの。
だから、私は自ら壊しに来たのよ?
あいつに、希望とか、絆とか仲間とか、そんなのはただのほつれた糸の関係にしかならないって、思い知らせるの。
それが私の願い。そしてそれが、私の最後の達成となる」
これがいつあいつらにバレるのかわからない。
もしかしたら、ここでベクターが九十九遊馬に話して、その時にバレてしまうかもしれない。
もしかしたらこの現場をあいつらの仲間が効いてて、先に私が敵だというのを知らされるかもしれない。
それらの返答なんて、これしかない。
上等。
かかってきなさいよ。
あいつらは私を倒せない。
憎んで、憎んで、憎しみを倍増させた私を。悪魔に魂を売った私を、あいつらは倒せない。
光は闇に飲み込まれる運命なの。
だからベクター。私があなたを、正解の道へ導いてあげる。
この日常が面白おかしくなるように。九十九遊馬を、信じれなくなるように。
私が、あなたを導く。
「……変な話で混乱したでしょう?でも、これが私なの。これが、私の本性。
あなたと同じなのよ?真月零くん」
「…僕と、同じ」
「気づいているでしょう?薄々と
もし私と一緒に来るのなら、今夜、月がよく見える所で待ってるわ。
あなたの、本来の姿を、ね」
敢えて「ベクター」という言葉を出さずに、私は彼の元を一度去った。
これでいい。
これで彼が来なかったら、彼は一人で九十九遊馬と戦うことになる。
なら私は、それを影でアシストしようではないか。
あいつらを打ち砕くなら、何だってする。
さぁ、出番よ?悪魔。
『この13年間。待ち侘びていた。この時を』
ええ、待たせてごめんなさいね。
これからは、思う存分使って行くわ。あなたの力を。
『希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は美しい顔をする。俺はその顔が大好きなんだァ。あァ…九十九遊馬も、そのような顔をするだろうなァ』
「するわ、絶対」
絶望に歪んだ顔が美しい顔。いい響き。
やっぱり、あなたと私は気が合う。
あなたに魂を売って、良かったわ。
『あァ…お前の魂は心地がいいなァ。いい具合に負の力が溜まってやがる…さぁ、俺の娯楽の為に、ちゃんと成功させろよ?女ァ』
「決まってるじゃない」
私はその為にこの世界に来たのよ?
それを成功させなきゃ、私がこの世界に来た意味がなくなるわ。
その為には。
私は、次のステップへ移らなければならないの。
ああ…早く宵になって?そして、私の元へ来て?ベクター。
私があなたを、導いてあげるから。
だから、
九十九遊馬に、『希望』を与えないで?
ここまで書いてて思ったこと。
刹凪ちゃん狂い系変態。
なんだこの子、ベクター大好きっ子じゃねえか!てか悪魔も変態じゃねえか!
刹凪ちゃんの嫌いなもの↓
光関連
希望
絆
仲間
笑顔
主人公
主人公色に染まっていく悪役
明るい系アニメ
まぁプラスなものが嫌いです。
正直言って刹凪ちゃんのデッキ決めてない…時間があれば、OCGとオリジナルデッキ両方書きたい。
何かいいデッキがあれば教えてください。
次は悪魔の力を使う刹凪ちゃんの話です。えっ、ベクターとの対話?その前にあるのでご安心を。
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