私は希望が大嫌いだ 作:希望抹殺隊隊長
書きたいとこを書いただけ。更新するかもしれない。
主人公嫌いの女の子が、遊戯王ZEXALに悪魔の力を借りて転生する話。
そしてベクターよりも先に、主人公を絶望に陥れるために努力する話。
女の子は初期のベクターは好きですが、カウンセリング後のベクターは好きではありません。
私は「主人公」が大嫌いだ。
主人公はいつも輝いていて、ことあるごとに仲間だとか、絆だとかいう譫言をほざく、私にとっては憎たらしい存在だった。
私が何故そんなに主人公を憎んでいるのかというと、私が手に入らなかったものをやすやすと手に入れているから。
私には絆なんてない。仲間なんていない。温もりなんてない。主人公にあるものが、私にはない。それを知って、それ以来主人公を見ると…苛立つようになってきた。
幸福している主人公の姿が憎たらしくて、テレビを割ろうとした。だけど私は寸のところでやめた。それをやれば、私はさらにおかしくなると思ったから。
もちろんそんな主人公ばかりではない。だが、私はその主人公達が、徐々に私が憎い主人公に染まっていくのが、何よりも嫌だった。
そんな私が、なんで今までアニメを見ているのかというと。
私は悪役が大好きだった。
悪役は主人公を痛めつけてくれるし、主人公をドン底に陥れ、それを楽しむ。
私はそれが楽しくて仕方がなかった。
そう言われれば、私はおかしいと思われるかもしれない。だがこう思って欲しい。私はそれほど主人公が大嫌いだと。
希望だとほざく主人公が、大嫌いだと。
だから私はアニメを見続けている。
ボロボロになっていく主人公を見て、私は愉快に笑う。
もっとやれ、もっと主人公を絶望に陥れろ。そんなんじゃ足りない。もっと、光など思わせぬ程に。
だけどーーー悪役は、主人公に染まりつつある。
何故悪役は光に染まる?
悪役は悪に染まればいいのに。なんで、私の憎いものになってしまうの。
それが嫌なのに、でも求めてしまう。
私が求める『悪役』を。
そして、見つけた。
私の求める、悪役が。
『な〜んちゃって☆』
大型テレビに、愉快な顔をした少年が現れる。
その瞬間、私は立ち上がる勢いで乗り上げた。
『クヒヒヒヒ。おかしくって腹痛いわ〜』
私は、食い入るように見る。
その少年は、純粋すぎて私が嫌いに入る分類に入っていたキャラ。
いつも主人公とつるんでいた、哀れなキャラクター。
その少年は、あの純粋な笑顔とは別の笑顔を見せている。
『なら見せてやろうかァ!?もっと面白いものをよォ!!』
「………あ、はは」
気づけば私は笑っていた。
何に笑っていたのか、そんなのわかりきってきた。
私はーーー私自身に笑っていたんだ。
何故、今までこんな素敵なキャラクターに気付けなかったんだ。
何故、私はこのキャラを用心深く見ていなかったのだ。
ああ、なんとも哀れだ。私。
こんな素敵なキャラクターを見落とすなんて。
『本物の真月はどこだ!?』
『本物ォ?誰ソレェ。俺ベクター!』
「………ベクター」
私の求める「悪役」が、ここにいた。
その名は『ベクター』。
遊戯王ZEXALというカードゲームアニメに登場する、恐らく歴代で最大のゲス野郎。
こいつを超えるのは、そう簡単ではないであろう。
だからこそ、惹かれた。
この、素敵なキャラクターに。
私はその後を、食い入るように見ていた。
■
最初からーー二期から見直してみれば、細かな描写が描かれていたことが判明した。
何回も見なければわからない仕草や、その声に、私は酷く後悔した。
もっとちゃんと見ておけば。
もっとちゃんと知っておけば、私はこの素敵なキャラクターを見落とすことなんてなかった。
それ以来、私はベクターが出る回には必ず見ていた。
そして、歓喜した。
ああ、彼はなんとも素晴らしいキャラなんだ!!私の憎き主人公を、ドン底に陥れるために努力している!!
なんとも素敵なキャラクターだ!!
いいぞ、もっとやれ。そして主人公の心を壊れさせろ!!
そう願い続けた。なのに。
彼は、主人公の手によって染められてしまった。
この場面なら、普通の人なら「よかった」と済ませられるであろう。
だけど私は、激怒した。
「なんで!?なんでよベクター!!」
親がいないことをいいことに、私はテレビに向かって、正確には吸い込まれていったベクターに向かって言い放った。
「なんであなたは主人公の言葉なんて受け入れてしまうの…!?なんであなたは、そのゲスキャラを貫き通さないの!?これじゃあ、ベクターが改心しても同然じゃない!!」
あのゲスキャラが完全に消えるはずもない。
だけど、嫌だった。
あの頃のベクターが消えるのが、嫌だった。
私の大好きなベクターが。
「……九十九、遊馬」
私は、ベクターを変えた元凶を睨みつけた。
九十九遊馬。
遊戯王ZEXALの主人公。その信念を貫き通し、多くの人に光を与えた、憎たらしい存在。
なんであなたはそんなに輝いていられるの。
なんで私は、あなたが手に入れているものを手に入れているの?
なんで私には、この世界には、あなたのような存在がいないの?
八つ当たりなのはわかってる。
だけど、憎い。
ぶちのめしてやりたくて仕方がない。
九十九遊馬を、絶望に、闇に染めてあげたい。
ああ、もし私がこの世界にいたら。
もっともっと、苦しめてあげるのに。
世界に、あなたのような人がいても、そんなのは無駄って、わからせてあげるのに!
『なら、連れて行ってやろうか?』
ドクン、と心臓が鷲掴みされたような痛みが走る。
だけどその痛みは一瞬で、残っているのは、何かの囁きだった。
声は、男だろうか。しかし、姿も見えない。私は、幻聴を聞いているのだろうか。
また、囁きが聞こえる。
『お前が望む世界に、連れて行ってやろうか?』
悪魔のような囁きに聞こえる。
だけど、私にはそれは、神様の御言葉にしか聞こえなかった。
それは本当なの?
私を、この世界に連れて行ってくれるの?
なら、好都合ではないか。
この世界に、私という人間がいるということを、思い知らせることができる。
何が主人公だ。そんなの、口から出るでまかせにすぎない。
どうせ放送が終わった今では、私のような人間を邪険に扱ってるに決まってる。
正義ぶってるのは、どうせ消えるんだ。
なら私がやればいい。
彼が行えなかったことを、私がやればいい。
そうすれば、私の望む世界になる。
私の望む、狂った世界に。
幸福なんていらない。
幸せなんて、どうせただのまやかし。
「……あなたがどんな存在なのかは知らない」
私は語りかける。
『悪魔』に。
「でも、もしその世界に行けるのなら、私を連れて行って欲しい」
その答えを聞いた悪魔は、高らかに笑った。
『クハハハハ!!いい、いいぞ女!さすが俺が見込んだ人間!いいだろう。お前を、その世界に送り込んでやる。ただし』
悪魔は一息置いて、こう私に告げた。
『お前の全てを、俺に委ねろ。そうすれば、お前に新たなる力を、強大なる力を、与えてやる』
私は、その条件を飲み、そして。
堕ちた。
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この世界に来て、13年の時が経った。
私の再スタートは赤ん坊からだった。私はとても優しそうな親に恵まれ、ここまで育てられた。
今でもそれは変わらない。だけど、私はやっぱり嫌だった。
前世は邪険に扱われた私なのに、今世では私は大切なもののように扱われている。
それが気持ち悪くて、吐きたくなるような日もあった。
だけど私は必死に耐え、皆にも気を配る完璧美少女として君臨した。
誰もが羨む、完璧美少女。そのレッテルを貼られた私の気持ちを、四文字で言いなさい。
答えは簡単。
吐きたい
前世では何度も言うが、私は親以外にも邪険に扱われていたのだ。そんな私が、こんな甘やかされる生活なんて、温度差が激しすぎて耐えられるはずがない。
ついに耐え切れなくて吐くこともあった。だけど私は、それを気づかれずに今でも過ごしている。
親は単身赴任で全然家にいないが、逆に言えば、私はそれが心地よかった。
もうこんなほんわかした空間は、うんざりだ。
そんな私は今、ハートランド学園に通っている。
そこで私は、ある男を待っている。
憎き主人公、九十九遊馬を。
私が二年になったことで、恐らく数週間すれば噂が流れるであろう。
『一年が札付きの神代凌牙を倒したらしい』
という噂が。
その噂が始まった時、その時は私の試練となる。
まずは絆とかいう糞を深めなければならない。
その前に、私は九十九遊馬と…凄い嫌だが、近づかなければならない。
だがそんな簡単なこと、もう思いついている。
簡単だ、ちょっと考えればいいだけのこと。
その方法とはーーー。
「九十九遊馬さん、でしょうか?」
私は下校途中の九十九遊馬に呼びかけた。
私の声に反応した九十九遊馬は振り返る。どうやら、今日は一人のようだ。
……『一人ではない』が。
九十九遊馬の横には、あのアストラルがはっきりと見える。これも、あの悪魔の仕業なのだろうか。出来れば見たくなかった。
おっといけない。集中集中…。
「私、中等部二年の
ちなみに私はデュエルができないという設定になっている。
あくまで設定だ。私はデュエルは出来る。だが、このままやらない設定にすれば、何かと事が進むと思ったからだ。
完璧美少女とはいえ、何でも出来ると思ったら大間違い。
九十九遊馬は「お、おう」と言いながら笑う。その笑顔、憎むくらい嫌。
でも、これで私とこいつとの間に「知り合い」というレッテルが貼られた。
後は……。
「それにしても、凄いですね。あの神代凌牙さんに勝つなんて」
「へ?へへ、そうかな…」
「ええ!素晴らしいことです!神代凌牙さんは、優勝候補と言われていた実力。その方に勝つなんて!」
もっと。もっとだ。
…よし、ここだ。
「え、えへへへへ…」
「良ければ、私にデュエルを教えてくれないでしょうか?」
「へ!?」
私の突然の要求に、九十九遊馬は驚く。
思わず微笑みたくなったが、それは抑えた。ベクターも、こんな気持ちだったのだろうかーー初期は。
私はもっと九十九遊馬に要求する。
「私、デュエルは全然できなくて…。デッキはあるんですが、ルールややり方が全然…」
「そうだったのか…。よし!じゃあ俺が教え…てやりたいけど、実は俺、明日から暫く補習があるんだよな…」
………忘れてた。こいつ、根っからの馬鹿だった。
クソッ、誤算だった。ここでデュエルを教えてもらうフリをして、もっと仲を深める作戦だったのに…!
…まぁ、今こうやって話せただけでも良しとしよう。これで、私とこいつは少なからずも関係は持てた。
ここから真月みたいにしつこく…はダメだな。今の私の設定は「優雅でお淑やかで誰にでも手を差し伸べる女神的存在」と、なんかひっどい事になってるけど、それを守らなければ。
となれば、ここは設定に応じで引くしかない。
「そうですか…では、時間がある時にお願いします」
「おう!ぜってーデュエルしような!」
「はい、では。九十九遊馬さん」
私は優雅にあいつの元を去る。
………気持ち悪かった。本当にあいつの周りが光に包まれてるみたいで目眩がしそうだった。いや、吐きはしない。さすがに吐いたらいくら私でも失礼だ。
ここは耐え、ベクターが現れるまで良好な関係を保っていかなくては。
……ここから数ヶ月か。
『貴様がどれだけ耐えれるかな?あの希望に』
「……耐える?」
壊すの間違いでしょう?
希望は存在しないの。希望は、人が持っても意味のないものなの。
希望なんてもっていたら、私のようになってしまう。
私はそれを阻止しようとしてるだけよ。
だから、主人公が憎いのよ。
私の何もかも奪っていく、主人公が。
さぁ、九十九遊馬。
ここから、あなたの幸福にして、不幸の人生が訪れる。
いっぱいいっぱいキズナを深めて、そして。
「裏切ってあげる」
それが私の、せめてもの慈悲よ。
こんな感じの話を書きたかっただけ!
大幅に飛ばしたりもする。そして書きたいとこを書くだけ。
それでもお気に入り登録してくれたらもう昇天しそう。