【完結】IS-Destiny-運命の翼を持つ少年   作:バイル77

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PHASE31 タッグ結成

放課後 第3アリーナ

 

 

アリーナの上空に舞うのは白きIS【白式】

搭乗者は当然一夏である。

 

両手で雪片二型を構えつつ、スラスターを噴かして迫りくるビームの雨を避けていく。

だがまだ機体制御が甘いためか、何発かは貰ってしまっているが、以前から比べれば見違えるような機動だ。

 

ビームをばら撒いているのは【ドレッドノートH】

カナードはビームサブマシンガンで特に狙いもつけずに弾幕を張っている状態である。

一夏の動きを確認した後、弾幕を張るのを止めチャンネルを繋げる。

 

同時に一夏も機動を停止して、少し離れた箇所で浮遊している。

 

 

『ここ数日で機体制御についてはマシになったな』

 

『……お蔭様でな。いきなりビームサーベルで斬りかかられた時はマジで死ぬかと思ったぜ』

 

 

顔を顰めつつカナードに答える。

真が簪とデートをした日から数日。

 

一夏や他の代表候補生達、加えて真はカナードやラキーナと模擬戦や訓練を続けていた。

 

その中で一夏はIS戦の基礎である戦闘機動。

機体制御や加速技術について徹底的にしごかれていたのだ。

 

 

『お前は身体で覚えるタイプだと真から聞いている。だから模擬戦形式でやっていくのがあっている、違うか?』

 

『うっ、確かにそうだけど。しーんー、ちょっと恨むぞぉ……!』

 

『……次は【零落白夜】についてだ。織斑一夏、今から弾幕だけは回避しバスターモードのビームだけは零落白夜で受け止めろ、いいな』

 

『ちょっ、難易度が高すぎじゃねっ!?』

 

『安心しろ、出力は下げている。絶対防御が発動するかも知れないがな。行くぞ』

 

『げぇっ!?』

 

 

そんな声を上げつつ一夏は即座にスラスターに火を入れ、回避を行う。

先程まで浮遊していた場所をビームの雨が通り過ぎ、その雨はさらに勢いを増して自身に迫ってくる。

 

 

『うおぁぁっ!?』

 

 

叫び声をあげつつ追いつかれてしまった弾幕を必死で回避していく。

が、やはり避けきれず数発貰ってしまい、シールドエネルギーが減っていく。

 

 

『被弾は極力抑えるよう努力しろっ!』

 

 

背部のイータユニットがバスターモードへの移行を完了。

砲塔をビームの雨を必死で避けている一夏に向ける。

 

そして即座にトリガーを引く。

美しい緑色の高出力ビームが砲口から放たれ一夏に向かう。

 

 

『うおおおおおおっ!!』

 

 

間一髪で零落白夜の発動が間に合い、雪片を盾にするかのように構えてビームの威力に耐える。

零落白夜の光によってまるで弾かれるかのようにドレッドノートのビームは拡散されていく。

 

 

『あっぶねぇっ!? 間に合ったっ!?』

 

『零落白夜は白式の最大の武器であり生命線だ。いかなる状況でも適切に使用できるよう感覚を掴むんだ』

 

 

一夏はこの数日、戦闘機動とは別に【零落白夜】についても教えられていた。

その理由としては、白式の戦闘力の殆どが【零落白夜】に依存しているからである。

雪片での一撃も強力であるし、白式の機動力は並の高機動機体を凌駕しているが、どちらも一撃で相手のエネルギーを危険域まで減らすことができる零落白夜の使用を前提においている仕様なのだ。

極論だが、白式は零落白夜を当てさえすれば勝ててしまう機体と言える。

 

 

『発動のタイミングを調整することで斬撃の瞬間だけ発動し、エネルギーの消費量を抑えることが可能なはずだ。さらに言えば零落白夜の発生率を自在に操れるようになれば、適切な出力で【盾】の様にも使え、より無駄なく戦えるようになるだろうな』

 

『なっ、なるほどー……』

 

 

汗をぬぐいつつ、一度深呼吸を行う一夏であった。

 

――――――――――――――――――――

2時間後――生徒指導室

 

 

一夏との訓練を終えたカナードが生徒指導室の中に入る。

中には束にラキーナにクロエ、千冬に真が待っていた。

 

 

「すまん、少し遅れた」

 

「お疲れ様です、カナード様」

 

「クロエ、何故ここに?」

 

「束様と千冬様に召集いただきましたので」

 

 

ちなみにクロエの事情についてもラキーナから真や千冬には伝えられており、ブレイク号はミラージュコロイドを発動して停泊中である。

 

 

「集まってもらった理由だが、学年別トーナメントが近づいている。そこでお前達に意見を貰いたい」

 

「……千冬さん、この面子って事は」

 

「ああ、お前達の敵……いや私達の敵【ラクス・クライン】についてだ。で、どうだ、学年別トーナメントという大きなイベントだ。奴らは何か行動を起こすと思うか?」

 

 

千冬が隣にいた真に視線を移す。

真は少し考えてから口を開く。

 

 

「……可能性はかなり高いと思ってます。最悪あの【無人機】が量産されている可能性もあると思います」

 

「だろうな、俺も同意見だ」

 

「だろうね」

 

「私も同じ意見です、千冬様」

 

 

4人の回答を聞いて、千冬はため息をつく。

 

 

「やはりそうなのか……」

 

「奴の目的は不明だ。しかし学年別トーナメントという外部の人間が多く招かれるイベントだ、100%と見ていいだろうな」

 

 

カナードの言うとおり、学年別トーナメントはIS学園でもかなりのビッグイベントである。

一般生徒のみならず参加する代表候補生達の祖国の人間や、真のような企業所属の生徒の場合は関係者が多数招かれる。

 

 

「となると警備の増強が必要か……手を貸してくれるか?」

 

「奴等を止めることが依頼だ、当然だ」

 

「ええ、もちろんです千冬さん」

 

 

カナードがぶっきらぼうに返し、ラキーナが微笑みつつ千冬に返答する。

 

 

「そうだ、ラキちゃん後で追加したい装備があるから、【ストライク】貸してくれる?」

 

「えっ、もしかして……できたんですか?」

 

「うん、【インパルス】からちょいちょいとデータを拝借……ゲフンゲフン、参考にさせてもらって【例のアレ】が完成したのさ!」

 

「ちょっとインパルスからデータを拝借って聞こえたんですが、どういう事ですか、束さん?」

 

 

あははーと笑って誤魔化し、ラキーナが首につけていたストライクガンダムの待機形態である【黒のチョーカー】を外して束に渡す。

少しため息をついて真が口を開く。

 

 

「千冬さん、トーナメントの日なんですが、俺は普通に参加する形式なんですか?」

 

「ああ、お前は他の生徒と共に参加してくれ。有事の際は生徒達の避難を最優先してくれ」

 

「……分かりました」

 

 

奴らとの因縁に決着をつけたい気持ちもあるが、友人達や無関係な人達も大勢いる。

IS学園の警備も増強されるとの事なので納得して頷く。

 

 

「……優菜さん達にも警備について伝えておきます。利香さんの【ガイアガンダム】なら充分戦力になってもらえます」

 

「すまんな、真」

 

 

日出の優菜と利香、ジェーンについても千冬には事情を――前世であるC.E.を知っている存在であるということは伝えている。

 

 

「後、警備の件なんだけどくーちゃんの【IS】ならある程度は手数をカバーできると思うよ。イギリスから【ビット兵器】の情報をばれない様に拝借……ゲフンゲフン、提供してもらったからね」

 

「……色々とツッコみたいところがあるがそれは事態を収拾してからだ。それと束、後で個人的にお前に頼みたいことがある」

 

「おっけーおっけー、束さんはちーちゃんの頼みだったら何でも答えてあげるよん!」

 

 

束の様子に思わずはあ、と深いため息をついてしまった。

 

 

その後、細かい警備計画について5人で話し合い、後日再び調整を行うこととなり本日は解散となった。

 

――――――――――――――――――――

学生寮 大浴場

 

 

「はぁあ~……疲れがしみでるぅ……!」

 

「おっさんかよ……まあ、相手が相手だからな、お疲れさん」

 

 

風呂場のため2人の声が反響するが、現在大浴場は男子貸切となっているため問題はない。

先週まで学生寮の大浴場はボイラー等の調整のため使用することができなかったが、ようやく調整が完了したため使用可能となったのだ。

 

そして試運転もかねて男子である真と一夏に使用してもらっているのだ。

その為女子は使用できず、残念ながらまだ男子と言われているシャルロットも使えないのだが彼女もそれには納得していた。

 

 

「……あー、最近シャワーばっかりだったからなぁ。やっぱり日本人は湯船につかるのが一番だ」

 

「確かにな、シャワーばっかりだと違いがよく分かってたまんねえな……極楽ってやつだなぁ」

 

 

しばらく男二人して湯船につかりつつ気の抜けたような声を出していたが、一夏が話を切り出してきた。

 

 

「そういえばさ、真、簪さんとはどうなんだよ?」

 

「ん、簪とか?」

 

「ああ、この前デート行ったんだろ? どうだったんだ?」

 

「……どうだったって、楽しかったけど」

 

 

流石に自室でした行為については教えられないが、デートの内容については伝えることにした。

 

 

「……デートかー、楽しそうだよなぁ。興味はあるんだけどさ、よく分からないんだ」

 

「分からないって……ああ、【恋人】と【友達】の違いとかか?」

 

「そう、そんな感じ。簪さんがいて真はどう感じてるんだ?」

 

 

一夏の疑問について少し考え、真が口を開く。

 

 

「……そうだな。彼女といるとどんな些細なことでも楽しく感じるようになってさ。特に笑ってる彼女を見ると本当に幸せな気持ちになる。だから彼女の笑顔を守るために頑張るって気持ちが溢れてくるんだ」

 

「楽しくて幸せか。あー、よくわかんねえ……」

 

 

そんな様子を見て真は笑みを浮かべていた。

普段から鈍感が服を着て歩いている一夏がまさか恋愛について自分に聞いてきて真剣に悩んでいるのを見て微笑ましかったのだ。

だがこういう感情は自分で行動して気づかなければ意味がない。

 

自分がそうであったように。

 

 

「なんだよ、真面目に聞いてるのにさ」

 

「悪い悪い、まあ、一夏はもっと周りを見たほうがいいと思う。そうすればきっと変わると思うよ」

 

「……なんか凄く余裕を感じるんだが?」

 

「……まあ彼女いるし?」

 

「ぐぬぬ……このやろっ!」

 

 

一夏が笑みを浮かべつつ、バシャッと真にお湯を飛ばす。

モロに顔面に命中してお湯が口の中に入ってむせる。

 

 

「ごっほ、げほっ!? 一夏、おま、このっ!」

 

 

湯船からお湯を連続で飛ばして、一夏にお湯をかけ続ける。

 

 

「げほっ、真っ、ちょっ、連続攻撃は卑怯っ!?」

 

 

この後、湯船のお湯が目に見えて少なくなるまで2人の合戦は続いてしまった。

 

 

――――――――――――――――――――

自室

 

 

『行くぞ、インパルス! 今の俺にはみんなを守る力があるんだ!』

 

 

自室で簪が先日購入した【IS EXVSFB】をプレイしている。

使用キャラは【インパルス】つまりは【シン・アスカ】であり、専用のアーケードコントローラーを使用してガチャガチャとプレイを続けている。

 

 

(……俺、あんな台詞インパルスに乗ったときに喋ったかなぁ?)

 

 

彼女である簪が自分をモチーフにしたかつての名を持つキャラを操作するのは少し複雑であった。

そんなことを考えていると画面の中でインパルスがデスティニーシルエットに換装して、相手であるイタリアが開発した格闘用IS【テンペスタⅡ】をエクスカリバーで戦闘不能にして決着をつけた。

 

 

「……ふう、やっぱりインパルスは使いやすいね。CPUレベルMAXのテンペスタⅡを簡単に落とせるのは凄いよ」

 

 

ゲームを止めて、集中していたのか一息ついて簪が真に振り返る。

 

 

「お疲れさん、今日はここまで?」

 

「うん、あんまり連続してやるのもよくないから……それに話があるって言ってたから」

 

「ああ」

 

 

簪のゲームプレイを眺めていた真はロード時間に少し話があると伝えていたのだ。

 

 

「ほら、もうすぐ学年別トーナメントがあるだろ?タッグ戦だから簪とタッグが組みたいんだ」

 

「……うん、私は大丈夫だよ。むしろ真じゃなきゃ……やだ」

 

 

頬を赤らめて簪が答え、その返答に真も少し頬を赤らめて答える。

 

 

「ありがとう」

 

「うん、頑張ろうね、真」

 

「ああ」

 

 

簪の笑顔に真も笑顔で答える。

 

 

(……たとえ奴等が何か行動を起こそうとも……彼女の笑顔を守ってみせる、今度こそ絶対に……!)

 

 

簪の笑顔を見て真は心に決めたのだった。

 

 





次回予告

暗雲立ち込める学年別タッグトーナメント。

そしてついに真はこの世界での因縁の再会を果たす。

「襲来、歌姫の騎士団」

戦乱の騎士団がこの世界でも剣を掲げる。

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