どうやら世界は、マッ缶のように甘くは出来ていないらしい   作:さめのひと

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皆様こんにちわ。
1日でUAが1000突破しててびっくりしているさめのひとです。

なんか変にテンション上がっちゃって徹夜で書き上げてしまった第二話です。

タイトルを閲覧された方は分かると思いますが、TIPSではなくSide Storyとして色々追加していますが、これはちょっとしたルールに則っています。

今のところはこの二人だけですが、後に幾つかの条件を満たしたキャラのTIPSが
Side Storyとして形を変えていくのは確定していますので、どうぞお楽しみに!

では、本編です。


第2話+Side Story

【第2話】

 

 忍田本部長へ報告書を提出しに行ったマイシスターこと小町と合流し、俺達はそそくさと帰る

ことにした。仕事が終われば即帰る。合理的じゃね?

 

 「それで、お兄ちゃん。歌歩さんと何の話してたの?ってかなんで一緒になったの?」

 

 ふと、小町がそんなことを聞いてくる。しかも若干ニヤついてる。

絶対変な勘繰りしてやがるなコイツ。俺はともかく三上が俺にそういう感情を向けるわけないだろ。

 

 「とりあえずそのニヤつくのやめろ。まぁ、三上が防衛任務上がりの俺に気ぃ遣ってマッ缶

買ってきてくれてな。ちょっと気になったことがあったから話してたんだ。」

 「気を遣ってって…それで、気になったことって?」

 

 小町が何か言いたげな顔をしていたが、話を進めるよう促されたので、そのまま話す。

 

 「小町もなんとなく分かると思うが、三上って人から頼られまくってるのに自分は誰かを頼ろう

としないだろ、あいつ。だからもっと人を頼ってもいいんだってあいつに言ってやっただけだ。」

 「なるほどね。まぁ、小町以外をほぼ頼らないお兄ちゃんが言って説得力があったかどうかって

のはさておくとして」

 「おい。ってか俺小町以外にも頼りまくってだだ甘えだからね?」

 

 基本楽したいし。

 

 「何言ってるんだか。だいたい一人で抱え込んじゃう癖に。」

 「うぐ…」

 

 …小町は俺が過去にしてきたことの殆どを知っているため、こういう風に言われると図星過ぎて

何も言い返せなくなる。

 

 「ま、まぁ話を戻すと三上には風間さんたちみたいに頼れる人がいるんだからもっと頼れって

話をしてただけだ。あいつにも弟や妹がいるから、俺の二の舞にはなってほしくないしな。」

 

 そこまで言い切って小町を見ると、優しさと寂しさが6:4くらいでブレンドされた

なんともいえない笑顔を浮かべて俺を見ていた。

 

 「そうだね。一人でずっとがんばられるってのも周りからすると辛いものがあるしね。

そんなに私は頼りにならないのかぁ~っ!とか考えちゃうから…」

 

 俺は、過去に小町を放置して、一人で突っ走って小町を泣かせてしまったことがある。

 生活が安定してなかった、という言い分も俺にはあるが、それ以前に唯一の家族である小町を

放っておいていいわけがないということにそのとき初めて気づかされた。

 小町の家族、といえばもう俺しかいない。

 親は、というと過去にあった第一次大規模侵攻というネイバーの大規模な戦闘に巻き込まれて

既に死別している。

 

 そして、小町と俺は今、二人で暮らしている。

 今ではそれなりに生活も安定しているため無茶する必要もなければ、小町に悲しい思いを

させることなく、それなりの暮らしは出来ている。

 

 「だからといって、最近のごみぃちゃんはだらけすぎだけどね…」

 

 と、半笑い+ジト目で俺を睨んでくる小町。

 

 「すまんすまん、次からはまじめにやるから。」

 「まぁ、いいんだけどね。無茶されるよりかは全然マシだもん。」

 

 …今日三上と話した所為からか、少し罪悪感に駆られる。

 

 「分かった分かった。今日の晩飯当番代わってやるからもう許してくれ。」

 

 苦笑いしながら俺は返す。

 

 …こうして当たり前のように小町と会話する。

 そんな日常の幸せは、今の俺にとって何よりも替え難いものになっていたのだ。

 

 

 

 

【Side Story:岡崎朋也①】

 

 少し夜も遅くなったので俺は宮沢を家まで送っていっていた。

 

 「それにしても、ウチの隊長はマジでニート気質だよなぁ」

 「でも、いざとなればキチンと動いてくれるじゃないですか」

 

 宮沢は苦笑いしながら俺に返してくる。

 

 「まぁな。でなけりゃとっくに隊を抜けてる」

 「ある意味小町ちゃんに甘えたいだけなのかもしれないですけどね~」

 

 相変わらずぽわぽわした笑顔を向けながら宮沢は会話に応じる。

 

 「まぁ、あいつらはそうだろ。ってか比企谷が小町以外に甘えたり頼ったりするところって

あんまり見ないよなそういえば」

 「言われてみればそうですね~」

 

 まぁ、そういうところも含めて兄妹なのだろう。俺は一人っ子だからよくわからんが。

 そんなことを考えながら適当に会話してると

 

 「よう、ゆき姉ぇ、岡崎も。」

 「須藤か」

 「須藤さん、こんばんわ~」

 

 目の前に、須藤という宮沢の”お友達”の一人が現れた。

 宮沢は相変わらずぽわぽわした笑顔を保ちながら目の前のイカツイ男に挨拶した。

 

 「二人ともお疲れさん。」

 「さんきゅ」

 「とりあえず岡崎、今日もすまねぇな」

 「こんな時間に宮沢を一人で帰すのもねぇだろ」

 「確かに」

 

 須藤は苦笑しながら返してきた。

 

 元々、この須藤は今は亡き宮沢の兄の率いる不良グループの一人だったのだが

人の縁というのは分からないもので宮沢を通じて俺も知り合い程度にはなっている。

 

 俺が宮沢と須藤と知り合ったきっかけだが、この須藤が率いるグループに俺が絡まれていた

ところを宮沢が鶴の一声で一喝したことから俺と宮沢や須藤とは知り合いになった。

 まぁ、宮沢は今となってはチームメイトなわけだが。

 …てか、よくよく考えたら須藤みたいな不良たちを纏め上げてる宮沢ってすげぇな。

 今更思うが、何者だよ宮沢。すげぇ。

 

 そんなことを思いながら宮沢と須藤と並び歩きながら、適当に会話しつつ宮沢を家まで送った。

 

 そして、俺も適当に帰ろうとすると

 

 「岡崎」

 

 不意に呼び止められた。

 

 「あ?」

 「比企谷の野郎は今どうしてる」

 

 須藤率いる(実際はほぼ宮沢が率いてる)グループは比企谷を目の敵にしてた時期がある。

 というのも、比企谷が宮沢に手ェ出してるって須藤達が勘違いしていたからだ。

 今ではその誤解も解け、比企谷もコイツらとは知り合い程度にはなってるみたいだが。

 

 「ウチの隊長さんは妹と一緒に後処理やってくれてるよ。今頃二人で帰ってるんじゃね?」

 「そうか。まぁあいつにもよろしくな」

 「おう。」

 

 じゃぁな、と須藤に背を向けたまま手を振り、俺も帰路につく。

 

 …もし須藤達の目の敵の対象が俺に向いたら面倒だな、とは思うが須藤や蛭子がいれば

まぁまずそんなこともおきないだろう。

 

 ってか、宮沢は実際比企谷のことをどう思っているのだろうか。

 俺と同じで、比企谷に助けられたことがあるって話だから宮沢が比企谷に惚れていても何ら

おかしくない、という事実に気づく。

 

 宮沢がそういう感じでないってのは、見ていてなんとなく分かるけど…

 比企谷に惚れてるヤツって結構いるから、見てればなんとなく分かるようになってしまったのだ。

 

 「比企谷も幸せモノだよな。がんばればあいつ、ハーレムくらい作れそうなもんだが。」

 

 くっだらないことを呟いていたら、我が家が見えてきた。

 たった一人の、寂しい我が家へ。

 

 

 「ただいま。」

 

 そう言って我が家へ着いたものの、特にすることもない。

 なんだかんだ言って一人じゃメシを食う気にもなれないしな。

 

 「しかし、ウチの隊長さんは相変わらずすげえな…」

 

 俺は、今日の戦闘を反芻しながら思う。

 

 たぶん今日ダラけてたのだって、ただダラけてたわけじゃなくて例の劣化風刃の仕込みでも

していたのだろう。びっくりするほど抜け目のない隊長である。

 

 とりあえずベッドに腰掛ける。一人なのもあり、色々と思い出してしまう。

 

 俺が一人なのは、大規模侵攻の折に唯一の家族だった親父を亡くしてるからだ。

 

 元々母親は事故かなんかで俺がまだチビだったころに亡くなってるらしい。

 随分昔に聞いたことだから詳しく覚えてない。

 

 俺は、中3の頃、思春期ということもあり、元々親父との仲はそこまで良くなかった。

 

 けど、夢で見たあの光景。

 

 親父と喧嘩すら出来ない、ただ他人のように振舞われる辛さ。

 

 その夢の中では俺は高3だったっけ。

 

 その夢の中じゃ右肩がなんかの理由で上がらなくなっちまってて、バスケも辞めて

ただひたすら惰性に毎日を生きていたのだった。

 

 唯一の家族である親父から他人のように扱われ、それに理不尽さや憤りを覚えながらも。

 

 その夢を見てから俺は、親父と真剣に話し合った。

 

 俺を養っていくために仕事人間になっていた親父と、養われている俺とじゃ話せることに随分

差があったようにも思えたが、それでも親父は真剣に俺の話を聞いてくれた。

 

 当時拗れつつあった俺と親父の仲はその話し合いをもって、ある程度落ち着きを見せた。

 

 だが、そんな個人の事情を無視して、ネイバーは俺の親父を、唯一の家族を奪っていった。

 そのときに右肩をぶつけ、あの夢と同じように右肩が上がらなくなっちまっていた。

 

 「…やっぱ一人だとナイーブになっちまうな。らしくねぇ」

 

 そっと、俺は呟く。

 

 普段は悪友というか弄り相手の春原の部屋に行ったり、あいつが俺の家に来るなどして極力

一人の時間を作らないようにしてはいるのだが、アイツは春休みということもあり帰省している。

 

 長期休暇の一部の時期は、どうしても一人の時間が増える。

 

 そういえば、俺の夢、あの高3の夢はサイドエフェクトってやつだったっけ。

 

 確か、 夢の中で別位相の世界、つまりはIFの世界を覗き見ることが出来るって能力だ。

 ボーダーに入ったときに、そういう能力なんだ、と説明されはしたが…

 多次元世界線論理だとかアトラクタフィールド理論とか超弦理論とか小難しいことを言われたが

俺は学者向けの頭じゃないから仮説を示されてそこから論証を組み立てたりとかはさっぱりだ。

 公立の進学校に入学できたレベルだからそこまで頭は悪くない(と思う)が、別に頭がいい

わけでもない。いきなり理屈で来られてもよくわからんってのが正直なところだ。

 

 春原?あいつはスポ薦だから知らん。

 

 俺のサイドエフェクトって、戦闘には一切役に立たないんだよなそういえば…

 比企谷のヤツみたいに少しでも戦闘に役立つサイドエフェクトのほうが良かった気がするが

コイツのおかげで親父が死ぬ前に拗れた仲を修復できたのだからそう悪いことばかりでもない。

 

 そう思うと、俺の心は落ち着きを取り戻し、次第に眠気が襲ってくるのだった。

 

 

 

【Side Story:宮沢有紀寧①】

 

 朋也さんに家まで送ってもらい、家でゆっくりと過ごす。

 最近はそんなパターンが割りと多く、それが私の日常になっていました。

 

 今は春休みですし、こんなものなのかもしれません。

 

 「ただいま。」

 

 そう言って我が家に帰ったものの、誰もいません。

 私は母と二人暮らしですが、母の仕事の関係でこういうことは多々あります。

 

 昔は父と兄がいましたが、ネイバーによる大規模侵攻で還らぬ人となってしまいました。

 

 本音を言えば、少し寂しいです。

 けれど、母の邪魔をするわけにもいかないので、我侭は言えません。

 

 どうしても耐えられなくなったときは、朋也さんか、小町ちゃんや比企谷君とLINEしたり、

電話したりして耐え難い寂しさを紛らわしています。

 

 どうしても直接会って誰かとお話したいときは、ソンブレロという、兄の知り合いがやっている店に

足を運んだりします。

 

 まぁ、行った所で須藤さん達に追い返されるというか、家まで送られるのがオチなのですが。

 それでも、人と人との会話が欲しくなってしまったときの私にとっては十分です。

 

 今日は朋也さんが送ってくれたおかげか、そんなに寂しい気分にならずに済んでいるようです。

 

 ただ、また明日がやってきて、明日もまた一人きりなのかもしれないと思うと少しだけ

寂しくなります。少しだけですが。

 

 強がりなんかじゃありません。ただ、私が弱くちゃいけないんです。

 

 独断専行で無茶ばかりする比企谷君に私の弱みを見せたら、それまで背負おうとして絶対に

無茶するでしょうし、朋也さんにしてもそうでしょう。

 小町ちゃんは年下なので、私が甘えるわけにはいきません。

 

 紛らわし難い寂しさは、私をそっと取り巻いて、一人の時間を蝕んでいきます。

 

 「兄さん…」

 

 私はそっと呟き、今は心の中にしかいない兄さんに縋ることで、一人の時間を費やしていく。

 

 そう、これでいい。

 

 もし耐えられなくなって、一人で寂しさを紛らわせなくなったら、それを見せずに誰かと話して

自分の中で消化していく。

 

 誰にも心配をかけることなく、みんなの力になるために私は生きているんです。

 

 それが私の代わりに亡くなった兄と、その後私を助けてくれた比企谷さんの二人に顔向け出来る

唯一の道だからこそ、受け入れて、その道を歩んでいくだけです。

 

 その道が例え、孤独であったとしても。




如何でしたか?

シュタゲネタをちょっと入れてみましたが、本編にシュタゲが関わることはないです(苦笑)

簡単なルール分けでSide storyが付くのであれば、1話の小町が該当していないと
おかしいことになることから、既に「比企谷隊のTIPSはSide Storyである」という
ルールで書いているわけではないということはご理解いただけると思います。

その辺を色々考察しながら読んでいただけるような作品にできるよう、
私もがんばっていきたいと思います!

今回のSide Storyのテーマは「孤独」です。

そして春原の存在をSide Story内で示唆しました。後々普通に出てきます。


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