どうやら世界は、マッ缶のように甘くは出来ていないらしい   作:さめのひと

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大変お待たせいたしました。

2月頭に投稿するつもりが滑り込みアウトで…(泣)

本日よりぼちぼち更新再開していきます。


第12話

12

 

 

 本日は4月30日。

 俺は学校の授業を全て終えたので、防衛任務もないのでそのままスーパーへ向かおうとしていた。

 

 すると

 

「ヒッキー!」

 

 ふいに、呼び止められた。

 

 …てかヒッキーてあれか、お前は王子先輩の関係者か。

 などと思いながら振り返ると

 

「見たことある顔だな」

「同じクラスだしっ!」

 

 と思ったことを口に出すと即返事された。ってかマジか。

 

 …なんかこいつアホっぽいなぁ。

 ついでにビッチっぽい。

 まぁとりあえずそういうのはいいや。

 

「んで、お前、俺のことをそのあだ名で呼ぶってことは王子先輩の関係者か?」

「王子先輩って誰?とりあえずヒッキーはヒッキーだし!」

 

 …うん、これ言っても聞かないやつだ。

 なんとなく王子先輩と同じ種族の香りがする。

 

 ってか、ボーダー関係者じゃないのかよ。

 王子先輩の名前出したの確実に失敗だったなぁ…

 

「まぁいいや。あだ名については不本意ながらよしとする。で、要件は?」

「うぅ…えっと、そのぉ…」

 

 ん?なんか要領を得ないな。

 

「言いづらいことなら場所変えるか?サイゼとかみたいな落ち着いた場所でなら話しやすいだろうし」

 

 ここでサイゼを持ってくるあたり俺サイゼ愛しすぎだろ…

 いや、サイゼ愛してるけどさ。

 

「うー、でも…ん〜…」

 

 なんか顔を赤くしてふさぎこんでしまってる。

 

「顔赤いけど大丈夫か?体調悪いなら保健室行けよ」

「え?あっ…大丈夫だしっ!」

「お、おう」

 

 かなり強く反論されてしまった。

 

「ま、まぁ顔赤いのはホントだから、ほら。とりあえず大丈夫でも帰ったら体温とかちゃんと計っとけよ」

「ヒッキーなんかキモいよ?」

 

 …体調の心配されたらキモいって言われました、はい。

 まぁ、いきなり体温云々言い出したらキモいって言われるのも無理はないか。

 

「無遠慮だったか?すまん。でもまじで心配になるレベルで顔赤いから、マジで気をつけろよ?」

「う、うぅぅ…」

 

 …何をこいつはそんなに唸ってるんだ?

 

「ま、まぁとりあえず場所変えるか…駅前のサイゼでいいか?」

「うん、別に構わないけど…」

「じゃあ先行ってるな」

 

 といってそそくさと歩きだす。

 一緒に行かないの!?と後ろから聞こえるが無視だ無視。

 

 あんな容姿よくてチャラついてる容姿のいいスクールカースト如何にも上位ですって前面に押し出されてる奴と一緒に歩きたくないし、おそらくあいつも迷惑だろうからな。

 

 ってか俺も影でヒソヒソ言われたくないし。

 

 

 

 

 

 

 というわけでそれから30分後くらい。

 

 俺とその女子はサイゼにいた。

 

 俺はドリンクバーとミラノ風ドリア、女子はドリンクバーを頼んでいた。

 

「まぁ、駅前まで出たし、学校のやつもあんまいないだろうから話しもしやすいだろ。とりあえず名前と要件聞かせろ」

「名前も知らなかったの!?」

「基本的に俺、クラスに興味ないからなぁ…」

「それでもだいたい把握してるもんだしっ!ヒッキーキモい!」

 

 まじか、クラスメートの名前知らないだけでキモいのか。

 スクールカースト上位層こえぇな。

 まぁどうでもいいや。

 

「俺がキモいのは置いといて、とりあえず名前と要件。俺も家帰って飯つくったりしなきゃならんから暇じゃねぇんだ」

「ほえ〜。とりあえず、私は由比ヶ浜結衣。ちゃんと覚えてね?」

「お、おう。一回聞いたら流石に忘れないわ」

 

 ビッチっぽいし。

 

「んで、要件の方は?」

「うん、えっと…それなんだけどさ」

 

 相談事か?

 ぼっちに相談事だとしたら相当他人には話しづらい内容なのか?

 面倒ごとはゴメンなんだが…

 

「えっと、ヒッキー…入学式の日、覚えてる?」

「話し始めて即で悪いんだが、俺その日事故に合ったから入学式出てないぞ」

 

 うん、ビチヶ浜、じゃなかった、由比ヶ浜さんや、なんかごめん。

 

「その事故のときのことって…覚えてる?」

「覚えてるぞ。犬庇おうとして轢かれただけだしな。それがどうかしたか?」

 

 そこから先を紡ぐのに由比ヶ浜はまた口淀んだ。

 

「えっとね、怒らないでほしいんだけど…」

 

 なんか嫌な予感がする。

 が、話が進まないので先を促す。

 

「実は、その犬の飼い主…私なの」

 

 …

 

 ……

 

 ………

 

 …………

 

 ……………

 

「で?」

 

 俺からすればこの一言に尽きる。

 終わったことをグダグダ掘り返しても仕方ない。

 

 ってかなんか由比ヶ浜呆けてるな。

 

 はっきり言って俺も拍子抜けしたせいかしばらく呆けてからの返事になったが。

 

「俺からすりゃあれは終わったことだ。強いて言うなら、犬の手綱はちゃんと離さないように握りましょう。これだけだ」

 

 俺からすればそれだけの話である。

 

 死人も出てなきゃ犬も無事。

 それでいいじゃないか。

 

「でも、ヒッキーがそう思ってたとしても…ウチのサブレがヒッキーに助けられたのは事実だし。だから、お礼をちゃんと言いたくて…」

 

 それは分かった。

 確かにこりゃ学校じゃ言いづらいわな。

 

 ってか犬の名前サブレかよ…

 由比ヶ浜のネーミングセンスは天性のものとみた。

 

 それはさておき

 

「じゃあなんで今なんだ?」

 

 純粋に俺にとってはこれが疑問だ。

 

「別に今このタイミングでなくても、顔が分かってるなら1年前、復学してすぐ…とまでは行かなくとも顔は分かってただろうし、タイミングはあっただろ」

「そうなんだけど…怒られるんじゃないかって思って」

 

 あ、そういうやつか。

 妙な加害者意識みたいなのがあるみたいだな、こいつ。

 

「別に俺はなんとも思わないよ。んで、強いて言うならお礼に対してどういたしましてってところか」

 

 まぁ、礼は素直に受け取っておくか。

 

「うん、それでね?私、お礼にって思ってクッキー作ったんだ。奉仕部ってところでゆきのんに作り方教えてもらってさ」

 

 …奉仕部?

 

「あの糞アマのところか」

「え!?」

 

 …え?

 

「声に出てた?」

「思いっきり」

 

 …そりゃ驚嘆もされるわ。しかもちょっと怒った顔してるし。

 話の流れから察するに、恩人(俺)へのクッキーの作り方教えてもらった人間をそう言われて怒るのは当然か。

 人間立場が変わると見方も変わるものだ、としみじみ思った。

 

 とりあえず、いきなり無遠慮過ぎた俺も悪いし、ちょいとフォロー入れるか。

 ついでに話も逸らそう。

 

「まぁ、あそこのゆきのなんちゃらさんとはちょっといざこざがあったんだよ。で、クッキーか?折角だしありがたく頂くことにはするが…店の中だし後でいいか?」

 

 まぁ、お礼と言うなら素直にご伴侶に預かろう。

 だがしかし、俺も言ったとおりここは愛すべきsweetスポットことサイゼリヤである。

 店内で他の飲食物を出すのはご法度だろう。

 

「あ、うん。じゃああとで渡すね?」

「おう。まぁ話も終わったことだしそろそろ出るか」

 

 そういって俺は勘定を持ってカウンターへ向かう。

 

 こいつは多分優しい奴なんだろうな。

 それ故に罪悪感を何らかの形で払拭したかった。

 

 まぁ、だからこそ…これっきりだろう。

 

 そしてお礼には返礼だ。ここの勘定くらい持ってやろうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 そうして店外に出た後に、由比ヶ浜が俺に声をかける。

 

「ヒッキー、私も出すよ?」

「まぁクッキーへの返礼ってやつだ。素直に奢られとけ」

 

 そう言って俺は由比ヶ浜の主張を拒否する。

 

「あ、うん。ありがとね?」

「これぐらい構わねぇよ」

 

 実際ボーダーでこれぐらいは余裕で出せる稼ぎはしてるしな。言わねぇけど。

 

「じゃあ、はい。そのクッキー!」

「おう、さんきゅ」

 

 女子力はそれなりに高いらしくちゃんと綺麗にラッピングされていた。

 

「んじゃ、スーパーの特売あるからそろそろ行くわ」

「えっと、待って!」

 

 …呼び止められた。どうしてだ?

 

「どうした?」

「えっと、メアドとかライン交換しとかない?」

「…チェーンメールならお断りだぞ?」

「そんなことしないしっ!」

 

 …大変遺憾だったようだ。

 

「んじゃラインでいいか?QRこれで」

「う、うん。ありがとね?」

 

 …まぁ、由比ヶ浜からしたら俺は恩人だ。

 連絡先を知りたいと思っても不思議じゃないだろう。

 

 そうしてラインを交換して、俺と由比ヶ浜は別れた。

 

 なんか由比ヶ浜から厄介ごとの予感が少ししたが、多分気のせいだろう。

 

 え、ぼっちのお前ならスマホごと渡せばいいだろって?

 

 いやそりゃお前、俺ボーダーだってバレたくないですし。

 

 ラインとかボーダー隊員の連絡先ガンガン入ってるし、電話番号やアドレスについても同様だ。

 

 それがなけりゃスマホごと渡してただろうが…

 

 というわけでそのままクッキーを鞄に入れて、スーパーへと向かうことにした。

 

 …それが、後々ちょっとしたトラブルになることは、未来視のない俺が知る由もないのは、無理からぬことだろう。

 

 

 

 

 

 

 日は変わって5月2日、今は防衛任務の最中だ。

 

 ちなみにこの数日間で起こった出来事の一つにカゲさんこと影浦先輩が根付さんにアッパーかましてB級に降格になっていたことが挙げられる。ってかそれがインパクト強すぎた。

 なにやってるんだあの人は…

 

 仁礼あたりが「固定給なくなったー」ってぼやいてそうだな。あいつとはそんな関わりないが、インパクトは強いのでなんとなくイメージはできる。

 

 そんなことをぼんやり考えていると

 

『比企谷隊、こちら忍田。応答せよ』

 

 本部長直々に通信が来た。

 

『こちら比企谷。忍田さんが直接なんて珍しいですね』

『緊急事態だ、手短に話す。密航者を捕らえろ』

 

 …は?

 

『密航者、ですか?』

 

 隣でゆきちゃんが忍田さんに聞き返す。

 

『そうだ。二宮隊の鳩原隊員が民間人を引き連れて近界(ネイバーフット)に密航しようとしている』

 

 …ふむ、あの大人しそうな人がねぇ。

 ただ、裏切ったり敵対しようというのであれば此方も容赦できるかどうかは怪しい。

 

『命令は捕獲ですね。やむ終えない場合の殺害は?』

『不許可だ。ただ、トリオン体でなくてはゲートの直接通過は不可能だから静止のための一発ぐらいなら構わん』

『機動力の観点から比企谷、宮沢両隊員で指定位置に急行、岡崎隊員に単独でここを任せても?』

『それで構わない。防衛任務の増援には此方から隊員を一時的に出す。急ぎ指定位置に急行してくれ』

『宮沢了解』

『岡崎了解』

『比企谷了解』

 

 それぞれが返事をし、通信を終えた。

 

「ってわけで朋也さん、頼んます」

「おう」

 

 そうしてレーダーに映し出された位置へ俺とゆきちゃんがバックワームとグラスホッパーを使って急行する。

 

 グラスホッパーを使って移動しながら俺はゆきちゃんへ回線を開いた。

 

『ゆきちゃん、射程圏に入ったら誰でも良い、即頭飛ばしてくれ』

『え?でも…』

『もしトリオン体じゃなくても吹っ飛ぶだけで済む。密航は見過ごせないからな』

『わかりました』

 

 そう言って通信を終える。

 

 グラスホッパーとバックワームを纏って高速移動していた俺とゆきちゃん。

 

 そろそろゆきちゃんの狙撃の射程か。

 

『距離600、行けるか?』

 

 その一言を合図にゆきちゃんはグラスホッパーを解除、ライトニングを装備していないためイーグレットで狙撃をしようとした矢先に

 

『ターゲット、ロスト』

 

 そう呟いた。

 

 おそらく、間に合わなかったのだろう。

 

『了解。とりあえず手がかりがあるかもしれんし現場へ向かおう』

『ですね』

 

 そしてすかさず本部へチャンネルを開く。

 

『こちら比企谷。本部、応答願えますか?』

 

 命令からの報告なので、個人宛ではなく本部そのものへ通信を飛ばした。

 密航関係なんて本来なら機密任務モノだが、こういうのは、最初に要美式に従うのが常だ。

 

 ちなみにこれは、後のトラブルを避けるためにも必要なことなので、きちんと覚えておくように。

 あれ?俺誰に向かって説明してるんだ?

 

『こちら沢村。回線OKです。比企谷隊員、どうぞ』

 

 なんて考えてたら通信が帰ってきた。

 本部のオペレーターは沢村さんか。

 なら機密かもしれんが言っても大丈夫だろう。

 

 何より緊急事態だし。

 

『鳩原隊員以下四名、距離600前後でロスト。宮沢隊員が狙撃を距離600前後から試みるもほぼ同時にターゲットはゲート内へ入ったと思われます』

『本部、委細了解しました』

 

 何故かここで一旦通信が途切れる。

 

『比企谷隊員と宮沢隊員は別働隊の風間隊と共に現場付近の調査を。岡崎隊員は継続して米屋隊員と防衛任務に当たってください』

 

 回線開き直してたのかな?

 ってかよりによって風間隊と調査かよ…

 

 はっきり言って気まずいが、命令なら仕方あるまい。

 てか朋也さんと組んでるの槍バカかよ。

 ランク戦でもしてたのかな?

 とりあえず、オペレーターやってる小町にバカがうつらなきゃ良いが…

 

『比企谷了解』

『宮沢了解』

 

 と通信してるうちに現地に到着した。

 

『比企谷隊比企谷、宮沢両隊員現着。これより調査に入ります』

 

 と本部へ一言入れてから調査を開始した。

 

 すると1分も立たないうちに

 

『風間隊現着。比企谷、宮沢両隊員とともに調査に入ります』

 

 と通信が入った。

 

「風間さん、おひさしぶりです。歌川に菊地原もお疲れ」

 

 一応気まずいとは言えちゃんと挨拶はする。

 

 なんだかんだ言っても軍属だし、文句はいってられない。

 

「ども」

「比企谷先輩、お久しぶりです」

「久しいな、比企谷。現着したならこっちにも通信を入れてもいいだろうに」

 

 上から菊地原、歌川、風間さんである。

 ってか菊地原のやつ相変わらず可愛げ無いな…

 

「風間隊のみなさん、どうも。お疲れ様です」

 

 続いてゆきちゃんも挨拶する。

 

 各々がそれぞれに挨拶と今回の一件の情報の交換をする流れになり、一息ついたところで

 

「挨拶も情報交換もそこそこに、だ。調査を開始するぞ」

 

 と、風間さんから指示が飛んできた。

 

「「「「了解」」」」

 

 風間さんの指示に全員が口を揃えて返事をする。

 

 そして調査もそこそこに終了し(というか手がかりとはいっても足跡が4つあるだけだったし)各々持ち場に戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

 持ち場に戻った後、とりあえず小町のことを知って俺をからかってきた槍バカを後ほど処分することを告げて(その際の米屋の顔は真っ青だったと後に朋也さんに教えてもらった)あまり公言しないように釘を刺し、その後軽く駄弁ってると防衛任務は終了時間を迎えた。

 

 後続の鈴鳴第一に引き継ぎを行った後、ログや報告書をまとめるべく自隊の隊室へ向かった。

 

 ちなみに風間隊との合同調査の後に機密扱い並びに箝口令の指示が出たため、鳩原さん達の件については鈴鳴第一には引き継いではいない。

 

 そこまではいいのだが…

 

「えと、比企谷くん。この子はいったい…?」

 

 怒気と困惑を顔に浮かべたみかみかこと、風間隊の三上歌歩を含む風間隊の皆様、それに加えて我が隊のオペレーターで、呆けた表情を見せる小町に少し遅れてやってきたゆきちゃんと朋也さんに俺を加えた比企谷隊一行、更には鳩原さん以外の二宮隊の皆様という、今回の一件の関係者一同が比企谷隊室に会していた。

 

 …これから何が始まるんだよ!?




由比ヶ浜に関しては、ちゃんと言いたいことを言えるIFがあってもいいかな、と思い八幡に気を使わせてみました。

主に沢む、じゃなかった。
某Sさん等のボーダー上層部との付き合いを通して最低限の気の使い方はできる他、原作にもある通り「空気を読めすぎて空気になるまである」と自称する空気の読みっぷりもここで出してみました(笑)

ネーミングセンスに関しては
王子先輩≒由比ヶ浜
となります。

あと、さり気にこの段階でカゲさんが根付さんにアッパーかましてます。原作だとどのへんなのかなぁ…

はてさて、小町と初邂逅を果たしたみかみか。
やはりここで勘違いされるのは鉄板で…?(笑)


というわけでPC故障から長らくお待たせしまして、申し訳ありません。

これからもまったり更新していくので、気に入れば生暖かい目で見守ってください(笑)

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