うずまきナルトが幻想入り~Story of light and darkness~   作:ガジャピン

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第1章 九尾異変~Go berserk monster~
決裂~Mind passing each other~


 博麗神社の境内で、霊夢はスペルカードを握りながらナルトに敵意を向けている。

 

「待て霊夢! ナルトから漏れてる力のことを聞いてからでも遅くないぜ!」

 

「……答えてくれる?」

 

「もちろん! オレに答えられることなら何でも答えるぜ!」

 

 ナルトは笑みを浮かべた。

 しかし表面上は笑顔でも、その内は焦燥に駆られている。

 

「なら質問。あんたから漏れてる力は何?」

 

「う~ん……分かりやすく言うと、オレの身体の中には九尾っていうものすげェ力を持った奴が封印されてる。その封印が少し壊れたせいで、そいつの力が外に漏れちまってるんだ。

ほら、オレの腹んとこになんか書いてあるだろ? これが封印になってて、今はちょっと白くなってる。この封印は真っ黒じゃねェとおかしいんだ」

 

 信憑性を高めるため、ナルトは自分の服を捲り上げ、霊夢たちに封印を見せた。

 

「ふーん。──で、その封印とやらを元に戻すあてはあるの?」

 

「ちょっと待ってくれ。今聞いてみるから」

 

 霊夢が胡乱(うろん)げな視線をナルトに送る。

 ナルトはそれに構わず、自分の内側に意識を集中させた。

 

『九喇嘛、話は聞いてたな。この八卦封印を元に戻すあては何かあるか』

 

《あてならあるぜ。八卦封印のやり方なら、ワシがよく知っとる。だから、ワシの言う通りやりゃあ封印し直すことができる》

 

『な~んだ、意外と簡単にできそうじゃん!』

 

 ナルトが笑って、両手を頭の後ろに持っていく。

 

《だが、問題がいくつかある》

 

 そう九喇嘛が口にした瞬間、ナルトから笑みが消え、真剣な表情になる。

 

《ナルト、ペインと闘った時を覚えとるか? あの時、八卦封印は解けそうになったが、チャクラ体のミナトが八卦封印をし直した》

 

『しっかり覚えてるさ。あの時父ちゃんが来てくれたから、オレは最後の最後で踏み留まることができたんだ』

 

 ナルトは目を細めた。

 本当に四代目は抜け目なかった。

 助けてほしい時、いつも助けてくれた。

 あんな風になりたいと、今も思ってる。

 

《あれは使えん》

 

『なんでだ?』

 

《あの時は時間が経つにつれて弱くなった八卦封印を、チャクラを流すことで元の強さに戻した。今回のケースは違う。ワシを封じ込めてる檻をよく見てみろ》

 

 ナルトは檻を注意深く見る。

 檻にはうっすらと亀裂が入っていた。

 

《分かったか。八卦封印が弱ってんじゃねぇ。八卦封印が壊れかかってんだよ。ミナトのあれでなんとかできるレベルじゃねぇ》

 

『マジかよ……ってことはまさか──』

 

《八卦封印は封印する対象がいねぇとできねぇ。つまり、ワシを一旦外に出して封印することになる》

 

 ナルトは身体を震わした。

 人柱力から尾獣を抜くことが何を意味するのか、ナルトにはよく分かってる。

 尾獣が抜かれた人柱力の末路は死。

 

《お前の母のクシナは、弱っていても少しもった。尾獣が解放されても、お前なら間違いなく少しの間はもつ》

 

『けどよぉ! オレに封印するなら誰が八卦封印するんだよ!』

 

 八卦封印の場合は、術者と封印の対象者を一緒にはできないのだ。

 

《そこは影分身に封印してもらえりゃあ解決だ。お前が八卦封印を使えるようにならねぇといけねぇがな》

 

 ナルトはぐっと下唇を噛んだ。

 封印術に関しては、今まで一切手をつけていない。

 当然八卦封印も使えない。

 

《不安がる必要はねぇ。今のお前はミナトよりチャクラコントロールが上手くなってる。

ワシの言う通りやりゃあ、一発でできるぜ》

 

『九喇嘛……まさかオレを元気付けようとしてんのか!?』

 

 九喇嘛はナルトが驚きで目を見開いているのを一瞥(いちべつ)すると、不愉快そうにそっぽを向いた。

 

《……ワシがそんなことするわきゃねぇだろ。くだらねぇこと言うじゃねぇ。ったく、話を進めるぞ。

第二の問題点として、この幻想郷とかいう場所だ。何故かは分からんが、ワシの力がよく馴染む。ワシらが言われるまで気付けなかった原因はそれだ。

そんな空間でワシを解放すりゃ、一気にワシの力は幻想郷に広がるぞ。今までとは比べもんにならん濃度でな》

 

 もしそうなれば幻想郷にどういう影響がでるのか、ナルトにも分からない。

 だが、悪いことにしかならないのは確かだ。

 

《第三に──》

 

『まだあんのかよ!?』

 

《次の問題が一番重要だぜ、ナルト。八卦封印は繊細な作業だ。そこをさっきみてぇに妖怪どもに襲われたら、正直封印が成功する可能性は低い。ちなみに、影分身で守らせるって選択はねぇ』

 

 影分身は力を均等に分けて分身する。

 つまり分身の数が多ければ多いほど、一体あたりの質が低くなる。

 八卦封印を確実に成功させたいなら、影分身を最小限に抑えて質の高い分身で封印するべきだと、九喇嘛は言外に言っているのだ。

 

《……とまぁ、今のところワシが思いつく問題点はこんだけだ。だが、この三つの問題点全てを解決する方法が一つある》

 

『八雲紫って奴に木の葉の里に帰してもらう──だろ?』

 

 九喇嘛はにやりと口の端を吊り上げた。

 

《その通りだ》

 

 これらの問題点は、幻想郷だから起きることだ。

 木の葉の里に帰れば、八卦封印できる忍がいるだろうし、九尾のチャクラが空気中に混じることもないし、結界も創れるし、封印中の護衛に困ることもない。

 これが一番確実で楽な解決方法だという結論を、ナルトと九喇嘛はだした。

 

『じゃあ、魔理沙たちに話してみる』

 

《しっかり全てを伝えろよ》

 

 この会話を最後に、ナルトは精神世界から現実へと戻った。

 

「待たせた──へぶっ!」

 

 ナルトの右頬を霊夢がひっぱたいた。

 ナルトの身体は弧を描いて吹っ飛ぶ。

 

「あ、ようやく反応したわ。ったく、急に黙らないでよ。どれだけ私が話しかけても上の空なんだから」

 

「いや、確かに反応しなかったオレも悪いけどよぉ、身体が飛ぶくれェ強くすることねェだろ」

 

 ナルトはぶたれた頬をさする。

 

「はいはい、悪かったわ。で、その封印とやらの解決方法は何?」

 

 霊夢は悪いと思っているような素振りは一切見せず、話を進めた。

 

「オレ自身が再封印することだけど、いくつか問題がある」

 

 ナルトは九喇嘛の言った三つの問題点を、霊夢と魔理沙に話した。

 

「──じょうっっっだんじゃないわ!! あんたの中の奴を幻想郷に出すなんて!」

 

 霊夢が額に青筋を立てている。

 

「他に何か方法はないのか……?」

 

 魔理沙は不安気に染まった瞳でナルトを見る。

 ナルトが安心させるように笑った。

 

「心配すんな! 今言った問題はここだから起きるんだ。だから、オレが自分の世界に帰れば大丈夫! 幻想郷に迷惑をかけない」

 

「「あっ」」

 

 霊夢と魔理沙は同時に声を出した。

 二人とも、幻想郷で解決しなければならないと思いこんでいたのだ。

 霊夢は何度も頷いた。

 

「うんうん、それが一番確実だわ。私も楽だし。そうと決まれば……出てきなさい、紫!」

 

 霊夢は何もない空間を睨む。

 霊夢が声を出してから数秒後、霊夢の睨んでいる辺りが割れ、無数の目がある空間が現れる。

 そして、アフロの少女が顔を出した。

 

「……紫、一つ聞かせて。なんでアフロなの?」

 

「え~と……これには海よりもふか~い理由があるのよ」

 

 紫の視線が魔理沙の方を捉えた。

 魔理沙は腹を抱えて笑っている。

 

「あっはっはっはっ!! なんだよ紫! ミュージシャンを目指すなら言ってくれよ、寂しいじゃないか!」

 

「さぁ魔理沙──あなたの罪を数えなさい。今謝るなら、四分の三殺しで許してあげるわ」

 

「いやいや、先に喧嘩を売ったのはそっちだ。いわば、自業自得だぜ。それにしても不思議だな、私は腕に『起爆札』を付けたのに」

 

「この私があなたに遅れをとるわけないじゃない」

 

 紫は、魔理沙が何の策もなく腕を掴みに来る筈ないと考え、腕に貼られた『起爆札』に気付いた。

 紫は急いで札を剥がし、スキマを使って外に捨てようとしたが、捨てようと手から離した瞬間に爆発し、頭がその時近くにあったため、爆発の影響でアフロになってしまったと、そういうことらしい。

 

「いや~その頭で言われても……な」

 

 魔理沙が笑うのを必死に堪えていた。

 紫の額に血管が浮かびあがる。

 

「魔理沙、一つ教えてあげるわ。何が正しいかというのは、勝者が決めるの。つまり、これからあなたの方が悪になるのよ」

 

「へっ、やれるもんならやってみな。そのアフロ、もっとオシャレにしてやるぜ」

 

 二人の視線がぶつかり合い、火花が散る。

 その二人の頭を霊夢が同時に拳骨した。

 二人とも頭を両手で押さえるようにして、その場にしゃがみこむ。

 

「止めなさい。私はそんな事させるために呼んだんじゃないわ。紫、あなた気付いてるでしょ? 外来人の影響で、幻想郷に変な力が流れていること」

 

「ええ、私だって妖怪だから」

 

 紫はゆっくり立ち上がり、口元に薄く微笑を滲ませた。

 

「じゃあ、この外来人を今すぐ元の世界に帰しなさい。そうすれば異変は解決。幻想郷も元通りよ」

 

「ホントにそうかしら?」

 

 霊夢を嘲るように、紫の声が響いた。

 霊夢の目に刀剣に似た鋭さが宿る。

 

「私の言ってること、なんかおかしい?」

 

「いえ、霊夢の言う通り、彼を帰せばこれ以上彼の力が流れることは無くなるわね。

でも、これまで流された力で幻想郷の妖怪たちは強くなっている。彼を帰しても、その力が消えるわけじゃないわ」

 

「じゃあどうするのよ? 幻想郷の妖怪全てを退治すれば解決? それをした後の幻想郷は、幻想郷と言えるの?」

 

 幻想郷は、妖怪たちもいるからこそ幻想郷なのだ。

 妖怪たちを退治すれば異変を解決できるが、それでは意味がない。

 

「言えないわね。ただ、妖怪たちを排除せずにこの異変を解決しようと思ったら、その力の元である彼が絶対に必要になると私は考えてる。

……ナルトくんだったわね。あなたのその封印は幻想郷でもできるのでしょう?」

 

「できなくはねェけど、幻想郷に迷惑をかけることになっちまう」

 

 ナルトが顔を俯ける。

 紫は目を細めて仄かな笑みを浮かべた。

 

「幻想郷は全てを受け入れる。あなたはここに住む者たちの助けを遠慮なく借りていいのよ」

 

「ふざけないで!!」

 

 そんな二人を射ぬくように、霊夢から氷の冷たさを感じさせる気配が放たれる。

 

「紫、あんたはいつもそう。そうやって、私をイラつかせる。今まであんたのせいで何回異変が起こったの?

外来人を次から次に幻想郷に入れて、それで終わり。その後の事は全部幻想郷のみんなに任せっぱなし。そのうえ、飽きたらとっとと外来人を元の世界に帰す。

誰があんたの尻拭いをしてやってると思ってんの!?

好き放題して幻想郷を荒らすあんたには、私も限界なのよ!」

 

「幻想郷に住む者以外は排除すべきだって言ってるの?」

 

 紫は静かに霊夢に問いかける。

 

「幻想郷は全てを受け入れる──この事に関して、私から異論はないわ。

ただ、それを盾にやり過ぎだって言ってるの! 何事にも限度があるのよ!」

 

「でも、そうしないと何も変わらないわ」

 

「変わることが正しいことなの!? 私は今の幻想郷を気に入ってる。それを壊そうとするなら、全力で叩き潰す」

 

 霊夢の視線がナルトに移る。

 

「紫はあんたを帰す気はないみたい。だから私が外に出してあげる。あんたの世界じゃないかもしれないけど、そうなってもきっと紫があんたの世界に帰してくれるわ」

 

「霊夢、いくらなんでもそれは酷いだろ!? ナルトの言った問題をクリアできれば、別に幻想郷でも大丈夫の筈だぜ!

それに紫が言ってた、妖怪たちが取り込んだナルトの力はどうするんだ!?」

 

 霊夢は水面の静けさに似た双眸(そうぼう)で、魔理沙を見た。

 

「私が全て奪う」

 

 霊夢の周囲に、赤色のオーラがまとわりつく。

 

「霊夢、お前まさか……ナルトの力を使えるのか!?」

 

 魔理沙の驚愕の瞳を、霊夢は静かに見据える。

 

「要は力を同調させればいいのよ。妖力に近いから、妖怪たちが力を同調させやすいだけ。さてと……じゃあ、あんたを外に出してあげる」

 

 霊夢の周囲の赤いオーラが、更に勢いを増した。




霊夢は紫さんに前から不満を感じてて、今回のことでその不満が爆発したって感じですね。
この二人の関係はこの作品の1つのテーマにもなっているので、しっかり書いていきたいと思います。

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