うずまきナルトが幻想入り~Story of light and darkness~   作:ガジャピン

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幻想郷のモブ妖怪の見た目がどれだけ調べても分かりませんでしたので、適当に捏造しました。



前兆~Warning~

 ナルトと魔理沙は森の中を歩いていた。

 

「へぇ~、この森って魔法の森っていうのか」

 

 魔理沙が言うには、この森は湿度がとても高く、化け物茸と呼ばれる茸の胞子が宙を舞い、瘴気を放っているらしい。

 さらに、その茸の近くにいるだけで幻覚を見せられ、瘴気を吸い込めば普通の人間は体調を壊してしまう。

 人間はおろか、妖怪すら居心地が悪く滅多に足を踏み入れない森──それが魔法の森だった。

 

「そう。だからナルトの判断は正しいぜ」

 

 ナルトは家を造る時、とりあえず周辺の木々を全て切り倒し、茸も吹き飛ばして周りを何もない状態にした。

 これをしたのには理由があった。

 

 ──仙人モードになれなかったから、やったんだけどな。

 

 ナルトは影分身に情報収集させている間、色々術を試していた。

 そして、仙人モードになってみようとその場で自然エネルギーを得ようとしたら、自然エネルギーの中に不純物というべきものが大量に入っていたのだ。

 それを取り込んで仙人モードになったら、どういう影響が出るか分からない。

 だから不純物を取り除こうと思った。

 この森の木々や茸には、自分を妨害するための術がかかっているんじゃないかと当時のナルトは考えた。

 故にナルトは木々を切り倒し、太陽の光を届くようにして、再び仙人モードになろうとした。

 その結果、自然エネルギーに含まれていた不純物の量が減ったのだ。

 ナルトは自分の仮説が正しいと考え、木々や茸を自分の周辺から術を使って消した。

 

「──オレってば二つ、魔理沙に聞きてェことがあるんだ」

 

「なんだぜ?」

 

「魔理沙はこの森に住んでるのか?」

 

 ナルトの問いに、魔理沙は頷いた。

 

「ああ。この森に生えてる茸の幻覚作用は、魔法使いの能力を高めるんだ。私はこの森で霧雨魔法店っていう名前の店をやってる。

で、二つ目の質問はなんだぜ?」

 

「ああ──」

 

 ナルトの目が鋭くなり、臨戦態勢になる。

 

「さっきからオレらをつけまわしてる連中は、魔理沙のお得意さんか?」

 

「──自慢じゃないが、私の店にお得意さんはいないぜ。多分、私のファンだな。私のことが好き過ぎて、スキンシップをとろうとする奴が大勢いるんだ」

 

 魔理沙はその手にスペルカードを握る。

 

「すっげェ殺気だけど?」

 

「最近流行りのヤンデレってやつだぜ」

 

 そんな会話の最中、木々の影から次々に何かが飛び出した。

 ナルトは出てきたものを見て、思わず後ずさりする。 

 それらは様々な姿をしていた。 

 数メートルはある大百足や蛇。

 人間ほどの大きさがあり、黒い斑がある黄色い目をした蜘蛛。

 特にナルトの目を引いたのはこれらの妖怪で、他にも多数の妖怪がいたが、ナルトの目には入らなかった。

 

「ナルト……今度は私から質問だ。こいつら倒せそうか?」

 

 魔理沙は顔に冷や汗を浮かべている。

 

「この森を滅茶苦茶にしていいってんなら、一瞬で倒せると思うけどよぉ」

 

 ナルトは顔を引きつらせていた。

 控えめに言って気持ち悪い。

 大蛇は慣れているが、大百足や大蜘蛛には全く耐性がない。

 魔理沙は大蛇も駄目なようで、スペルカードを持つ手が震えていた。

 

「さっきの『マスタースパーク』が、こいつらを呼び寄せた。こいつらの食料は人間なんだ。私たちをつけて、襲いかかる機会を窺ってたんだぜ。別にこいつらは退治しても問題ない。だから倒せるなら早く倒してくれ! さっきから鳥肌が立って仕方ないんだぜ!」

 

 人間を食料にする化け物が平気な顔してのさばり、はびこる。

 これも『幻想郷』らしさだというのだろうか。

 ナルトは息を大きく吸い込む。

 その後、妖怪たち目掛けて勢いよく息を吐き出した。

 その息は台風のような強風となって妖怪たちに襲いかかり、周囲の木ごと妖怪たちを天高く吹き飛ばした。

 風遁・大突破──かつて大蛇丸が使っていた、口から吐く息をチャクラで増幅し、風圧を強くする印を使わない術である。

 すかさずナルトは印を結びながら、足だけで近くの木を木登りして木の頂上に行き、上に跳躍。

 その更に上にいる妖怪たちに狙いを定める。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 ナルトが口から火を吹き、その火が巨大な火の玉を形作る。

 妖怪たちはその火に呑まれて、全てを燃やし尽くされ灰になった。

 幻想郷の空の一部分を赤く染めあげた火球は徐々に小さくなり、ナルトが再び木の頂上に着地する頃には消えていた。

 ナルトは第四次忍界大戦後も修行を怠らず、基本的な風遁の忍術や火遁の性質変化をマスターし、尾獣たちのチャクラを借りなくても、それら二つの属性の忍術を扱えた。

 飛雷神の術と螺旋丸を併用した一撃必殺技に加え、風遁や火遁といった広範囲殲滅忍術も扱える。

 更に影分身で数の暴力。そのうえ、仙人モードや九喇嘛モードといったパワーアップ技。

 第四次忍界大戦後から修行を続けたナルトの強さは止まることを知らず、どんどん高みにのぼっていった。敵からすれば、もう笑うしかない反則的な強さになっている。

 ナルトは軽やかに木の頂上から飛び降りた。

 

「へへっ、身体が軽いったらねェぜ」

 

 身体中のチャクラ穴からチャクラが溢れ、身体中を満たしている感覚。それがとても心地良い。

 それに二日間半寝てた影響か、ナルトの身体から疲労感はさっぱり抜けていた。

 地面に着地したナルトに、魔理沙が勢いよく詰め寄る。

 

「ナルト! お前今、口から火ぃ吹いたぜ!? 一体どういう身体構造してるんだ! ちょっとだけ解剖させてくれないか!?」

 

 魔理沙の目は好奇心に満ち溢れてキラキラしている。

 

「さすがにそれは──ッ!? 魔理沙、危ねェ!」

 

 ナルトは魔理沙を抱えて横に跳んだ。

 その一瞬後、ナルトたちのいた場所を鋭利な爪が切り裂いた。

 鋭利な爪を持った妖怪は憎々しげに舌打ちする。

 

「魔理沙! 博麗神社の方角は!?」

 

「……あ……あっち……」

 

 魔理沙が赤面しながら弱々しく指を差した方に、ナルトは全力疾走する。

 ナルトが後方を振り返ると、森を埋め尽くす程の多数の妖怪たちがナルトを追ってきていた。

 

「一体どうなってんだよ魔理沙! この森は妖怪も滅多に足を踏み入れねェ森じゃなかったのか!?」

 

「分からない! 私だってこんなの初めて見たぜ!? 多分、魔法の森にいる妖怪全てが集まってるんだ!」

 

 魔理沙はあまりの迫力に青ざめた顔をしていた。

 

(けど、なんで私たちのことを協力して襲ってくるんだ!? この森の妖怪たちは手を組むほど仲が良かったか!? こんなの異常だぜ!?)

 

 ナルトは魔理沙を抱えたまま妖怪たちを撒き、魔法の森を抜けた。

 

「はぁ……はぁ……なんとか……抜けたな」

 

「そうだな……ところでナルト。最期に言い残しておきたい言葉はあるか」

 

「……へ?」

 

 そう言われて、初めてナルトは気がついた。

 自分が魔理沙の胸に、思いっきり腕を押し付けて抱えていたことを。

 

「ああ、そうか。悪かったな、無我夢中だったからよ」

 

 ナルトは平然とした顔で、魔理沙から手を離して地面に降ろした。

 対する魔理沙は驚愕の表情をしていた。

 

「あ……あり得ないぜ……この魔理沙様の胸を腕で押し潰しておきながら、何の反応もしないなんて……」

 

「いや、オレってば子供をそういう目で見れねぇ──」

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

「あぶなっ!?」

 

 いきなりの『マスタースパーク』をナルトは紙一重でかわした。

 魔理沙の手にはミニ八卦炉が握られ、顔からは表情と呼べるものが消えていた。

 

「私を子供だと……? 私はレディだ。レディの胸を触っておきながら、何の反応も示さないのはレディに失礼だぜ」

 

「反応って言われても、狙って触ったわけじゃねぇからな。正直、何も覚えてねぇってば──わっ!」

 

 今度は無言で『マスタースパーク』を放った。

 ナルトはそれもなんとかかわす。

 

「あんまりだぜ。確かに私は男口調で、性格も女らしくないかもしれないけど、私だって女なんだ。そういう反応されたら、傷付くに決まってるじゃないか」

 

 魔理沙が悲しそうな顔をした。

 ナルトはそれを見て焦り始める。

 

「じゃ、じゃあ! 嬉しそうにすれば良かったのか!?」

 

「そういう反応したら、ボコボコにした」

 

「それなら、悲しそうにしたら──!」

 

「万死に値する」

 

 ナルトの言葉を次々に叩き斬っていく魔理沙。

 ナルトは頭を抱える。

 

(もうどうしたらいいんだよ!女心なんてわかんねぇぞ!?)

 

 ナルトは心を落ち着かせるように大きく息を吐く。

 必死に魔理沙をかわそうとするから、どつぼにはまる。

 思ったことを、そのまま言えばいい。

 偶然とはいえ結果的に悪いことをしてしまったのは事実なのだから、はっきり言って魔理沙を怒らせたとしても、その怒りは全て受け入れよう。

 そう思って、ナルトは覚悟を決めた。魔理沙に何をされても受け入れる覚悟を。

 

「魔理沙、オレはお前に興奮しねェ。魔理沙が何て言おうと、オレから見りゃあ子供に見える」

 

「なっ──」

 

「けどさ、可愛い女の子だって思う。あと数年後には、誰もが振り返るような美人に間違いなくなってるぜ」

 

 ナルトはニカッと笑ってそれだけ言うと、魔理沙の反応を窺った。

 最初の言葉を聞いて、魔理沙は怒りで顔を真っ赤にしたが、その次の言葉で黙り込み、うつむいてしまった。

 

(やっべェ、やっぱ駄目だったか。けど、仕方ねェ。ここは大人しく魔理沙の制裁を受け──)

 

 ナルトは身構えるが、いつまで経ってもその制裁が来ない。

 

「……魔理沙?」

 

「ホントか」

 

 うつむいたまま、魔理沙が尋ねる。

 

「え?」

 

「ホントに私は、数年後に美人になってると思うか」

 

「なってる。オレが保証する!」

 

 この言葉に嘘はない。

 暗闇の中でも光を放っていると錯覚する程に輝く金髪。

 勝気な性格を象徴するかのように自信に満ち溢れる金色の瞳。

 それ以外にも、バランスの良い整った鼻と口。

 ナルトは自分の美的感性が狂っているとは思っていない。

 誰もが美人だという女性を美人と思える自信がある。

 

「そうか」

 

 魔理沙は帽子を右手で深く被り直す仕草で目を隠したが、見えている口元が微かに吊り上がっている。

 そして数秒後には帽子を上げ、いつも通りの勝気な笑みを浮かべた魔理沙がいた。

 

「ならッ! ナルトを興奮させることができたら、私はレディになったっていう何よりの証になるわけだな!

見てろよナルト! 絶対に私がレディだと思いしらせてやるからな!」

 

 パシャ!

 魔理沙がそう言った瞬間、フラッシュがたかれた。

 ナルトと魔理沙がフラッシュの方を見ると、二人の傍に近寄ってカメラを向けている十代後半くらいの女性がいた。

 彼女の容姿は、髪型が黒髪のボブ、頭には山伏風の頭巾、瞳は燃えるような赤色の瞳。服装は上が白い半袖のシャツ、下にフリルのついた黒いミニスカートを着ている。

 彼女の名前は射命丸文。

 妖怪の山に住んでいる鴉天狗で、幻想郷で起きた様々な出来事の記事を書いている『文文。新聞』という新聞を書いている新聞記者である。

 

「あ、私のことはどうぞお気になさらずに。ささ、続きをどうぞ」

 

「こんな風に邪魔されて、続きもなにもないぜ! ──まさか、私が抱えられてたところも撮ったのか!?」

 

「いや~、なかなかいい写真が撮れました!」

 

 射命丸は額を右腕で拭うような仕草をしながら、満足気な表情をしていた。

 

「絶対記事にするなよ! いいか!? 絶対だからな!」

 

「それは記事にしろってことですね、分かります。

それはそうと魔理沙さん。とんでもない方をお連れになってますね」

 

 射命丸から笑みが消え、どこかピリッとした空気を纏わせる。

 

「ナルトのことか? 確かにとんでもないぜ! なんせ口から火や風を吹くからな」

 

「ほうほう。では、先ほどの火や突風は彼がやったのですか」

 

「ああ」

 

「なるほどなるほど。なかなか良い記事が書けそうですよ!

では、これまでのネタの提供のお礼として、一つだけ忠告しておきます」

 

 射命丸の顔から新聞記者の面が剥がされ、彼女は天狗の顔になる。

 

「その外来人と妖怪の山に来ないで下さい。もし来たら、たとえ魔理沙さんでも命の保証はできない」

 

 射命丸から発せられる殺気が二人を襲う。

 魔理沙とナルトは身体を強張らせた。

 

「そこの人、お名前を伺っても……?」

 

「オレの名前はうずまきナルトだ」

 

「私は射命丸 文。以後お見知りおきを。それでは、用事ができましたので失礼します」

 

 射命丸の身体がふわりと浮かび、瞬く間に彼女は空を飛んでどこかへ行ってしまった。

 

「あーっ! カメラ取り上げるの忘れてた!」

 

 魔理沙は両手と両膝をつく。

 その顔は、世界の終わりに直面したような絶望感漂う顔だ。

 

「絶対、面白おかしく大げさに記事を書く気だぜ!」

 

「……なんかよく分かんねェけど、元気だせよ。オレがいつでも力になってやるからさぁ」

 

 魔理沙の肩を、ナルトが軽く叩く。

 魔理沙は顔を上げ、ナルトの顔を見つめた。

 

「ん? オレの顔になんか付いてっか?」

 

(なんか懐かしいぜ、こういう感じ。それに、ナルトなら悪くないかもな)

 

「別に何も付いてないぜ! それよりナルト、そろそろ博麗神社を目指そう」

 

 魔理沙は立ち上がり、上機嫌に歩き出した。

 それを見て、ナルトは頭を掻く。

 

「落ち込んだり、いきなり元気になったり……やっぱ女心は分かんねェ」

 

 

 この時の二人は気付けなかった。

 すでに異変が始まっていたことを──。




アリス「私の……家が……」

・使うかどうか分からない裏設定。

ナルトの風遁・大突破でアリスの家の屋根が吹き飛んでいる。

今回の話で、ナルトは火遁を使用します。
これは、原作のナルトと決定的に違う点です。
こうなった要因として、ナルトは忍界大戦後から積極的に術の会得に励んでいるというオリジナル設定があり、原作のナルトと違って上忍になっているということが挙げられます。
で、カカシ先生が、上忍は基本的に2つ以上の性質変化を持ってると言っていました。
なら、上忍になったナルトが1つだけしか性質変化を使えないのは考えにくいという発想になり、もう1つ風以外の性質変化を会得させようと思いました。
私のイメージとして、まず水と土は真っ先に除外しました。なんていうか、土遁と水遁を使っているナルトを想像出来なかったんです。
ということで、火と雷の2択に絞られたわけですが、火は広範囲に影響を及ぼす術が多く、雷は一撃の威力を高める術や移動速度を上げる術などが多いと感じました。
すでに原作のナルトは、移動速度や一撃の威力は十分すぎるものを持っていますので、広範囲に影響を及ぼす術が多い火遁に魅力を感じるんじゃないかと結論しまして、火の性質変化になりました。
まぁ、全ての尾獣のチャクラを借りれば、全ての性質変化を使えるんですけどね。

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