うずまきナルトが幻想入り~Story of light and darkness~   作:ガジャピン

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友達~Only one of the important presence~

「それにしてもどういう風の吹き回しだよ。ナルトのこと、外に出したがってただろ? そんなお前が私たちに手を貸してくれるなんて」

 

 不思議そうに訊いてくる魔理沙に、霊夢はため息をついた。

 

「あのねぇ……もうアイツん中に封印してたモノが幻想郷に出てるじゃない。こんな状態でアイツを外に出しても意味ないでしょ。今は再封印とやらを成功させるのが重要なのよ」

 

 アレを封印できるのがナルトしかいない以上、今ナルトを幻想郷から弾き出すわけにはいかない。

 それに、霊夢は元々天狗からナルトを守るために来た。外に出すつもりでこの場には来ていない。

 

「れ、霊夢、魔理沙、お喋りはその辺で止めといた方がいいわよ」

 

 咲夜が焦った様子で正面を見ている。

 魔理沙と霊夢もそれにつられ、一時話を中断して咲夜が見ている方に顔を向けた。

 そして、咲夜が見ているモノが何かを知った時、汗が一筋二人の頬を(つた)って流れた。

 

「……おいおい、豪華すぎる来客だな。言っとくが、お前を満足させれるモンは置いてないぞ」

 

 左手に盃を持って、ゆっくりと歩いてくる額に角の生えた女性は、魔理沙の言葉を聞いて楽し気に微笑んだ。

 

「何を言ってんだい? あるじゃないか、あの中に」

 

 角のある女性が右手で紅魔館を指差した。

 魔理沙ら三人が同時にスペルカードを指に挟む。

 

「こうして館の外にいても、ビリビリ伝わってくんのさ。私が手に入れた力と同じモンが」

 

「紅魔館は今、立ち入り禁止よ。邪魔するってんなら、鬼だろうが力ずくで止める」

 

 幻想郷において、鬼という妖怪は強大な力を持つ種族で、幻想郷のパワーバランスを担っている天狗が従っていることからも、鬼がどれ程強大な力を持っているか分かる。

 その中で、『山の四天王』と呼ばれる鬼の中でもより強い力を持った鬼がいる。

 今、霊夢たちの前に立っているのは、その四天王に数えられている鬼、通称『力の勇儀』。

 金髪のロングヘアを風に遊ばせ、額に星マークが入った赤い角。瞳の色は赤く、上半身は体操服のような白色の服を着て、下はロングスカートを着用。両手首には手枷が、両足首には足枷が付いている。左手には『星熊盃』と呼ばれる盃を持っていて、その盃には酒が注いである。

 彼女の名は星熊勇儀。力だけなら、幻想郷の中でも最強候補。

 そんな存在を、霊夢たち三人はこれから足留めしなくてはならない。

 

「はっはっはっはっ! いいねえ、あんたらのその闘気! 楽しめそうだ!」

 

 勇儀はぐっと地面を踏みしめ、一歩で霊夢たちの眼前まで接近。霊夢目掛けて右拳を降り下ろす。

 霊夢は後方に跳躍して回避。そのまま、空に急上昇。

 勇儀の拳は地面に直撃し、地面を抉って周囲に砕けた地面の欠片をばらまく。

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

 星形の光弾が、魔理沙に迫りくる大小様々な大きさの石にぶつかり、砕いていく。

 咲夜は能力で時間を止め、飛んでくる石より前に移動。勇儀のすぐ左にきた咲夜は、時間を動かすのと同時に跳躍しながらスペルカードを発動。

 

「傷魂『ソウルスカルプチュア』!」

 

 咲夜自身の時を加速させ、凄まじい速さでのナイフの斬撃をくりだす。

 

「ははっ! いい殺気だ、ゾクゾクするよ!」

 

 その高速の斬撃を紙一重で避けながら、勇儀は笑みを浮かべる。

 

「霊符『夢想封印』!」

 

 勇儀の頭上から、色とりどりの光弾が降り注ぐ。

 

「魔符『ミルキーウェイ』!」

 

 勇儀の背後から、魔理沙のスペルカードによる星形の光弾が渦を巻きながら周囲に放たれる。

 逃げ場のない全方位攻撃。それに怯むことなく、勇儀は不敵な笑みで、スペルカードを取り出した。

 

「力業『大江山嵐』!」

 

 勇儀の周囲に青く輝く大きめの球体が多数現れ、全方位に放たれた。

 それらは霊夢と魔理沙の弾幕を相殺し、眼前の咲夜に襲いかかる。咲夜は後方に跳躍し距離をとって、ナイフで飛んできた勇儀の光弾を全て弾いた。

 勇儀は咲夜との距離を瞬く間に詰め、その勢いを殺さず、飛び蹴りに近い前蹴りを放つ。咲夜がそれを両腕でガードしつつ、後ろに自分から跳んで蹴りの衝撃を殺す。

 咲夜が地面を転がりながら、遥か後方まで吹き飛ばされた。

 勇儀は頭上を見、再び霊夢の『夢想封印』が空を埋め尽くして勇儀に牙を剥く様を視界に捉えた。

 勇儀は跳躍し、自らその弾幕に突っ込む。

 

「光鬼『金剛螺旋』!」

 

 勇儀から大型の弾が螺旋状に放たれ、正面の霊夢の弾幕に当たって爆発した。

 爆煙が霊夢の視界を遮り、その爆煙を突き抜けて勇儀が霊夢に肉薄し、右腕で殴りかかる。

 

「……ッ! 『夢想天生』!」

 

 霊夢はスペルカードを発動させ、勇儀の右腕が霊夢をすり抜けた。

 更に霊夢は零距離の勇儀に多数の光弾を浴びせ、勇儀を地面に光弾の爆発で叩きつけた。

 その間に魔理沙は箒に乗り、勇儀が落ちた場所に高速で移動。起き上がろうと頭を上げた勇儀の目の前でスペルカードを発動させる。

 

「星符『エスケープベロシティ』!」

 

 魔理沙が箒を上に持ち上げ、眼前に大量の星形の光弾を撒き散らしながらそのまま上昇。撒き散らした光弾全てが勇儀に直撃したのを、魔理沙の目は捉えていた。

 勇儀の姿が、直撃による爆発の影響で生まれた爆煙に包まれる。

 霊夢の隣で、魔理沙は爆煙の方に顔を向けた。

 

「やったむぐっ!」

 

 霊夢が魔理沙の口を左手で塞いで、魔理沙の言葉を遮った。

 

「言わせないわよ」

 

「……ぷはっ! 何でだぜ!?」

 

 霊夢の左手を引き剥がし、魔理沙は霊夢に問うような視線を送る。

 

「そのセリフがお約束だからよ!」

 

 霊夢と魔理沙が言い争っている間、爆煙の中から音が聞こえた。ごくごくと喉を鳴らしているような、そんな音だ。

 

「……んくっ、んくっ、んくっ! ……はぁ~!

あーっ、美味い! 戦闘を肴に飲む酒は格別だねぇ!」

 

 左手に持っていた盃に注がれていた酒を飲み干し、勇儀は口を右腕で拭った。魔理沙の弾幕が零距離で直撃したにも関わらず、勇儀の身体には傷一つついていない。

 

「何ともないのか!? 私は手加減してないぞ!」

 

「何ともないことはなかったさ。少し身体が爆発で痺れた。

だから、酒を飲み干したんだよ。酒がこぼれるのを気にして、三人を相手にするのはちょっと厳しいと思ったからね。

安心しなよ、盃は手放さないから、左手は使わない。ただ、今までよりも少しだけ動きが良くなるだけさ」

 

 勇儀が霊夢の方に視線をやり、何かを探るように霊夢をじっと眺める。

 

「霊夢、あんたどっか調子でも悪いのかい?」

 

 霊夢は勇儀の言葉に表面上は表情を変えず、勇儀を見下ろす。

 

「別に普通よ。何で?」

 

「いやね~、あんたは攻めるように闘うタイプだと前に『弾幕ごっこ』した時に感じたんでね。今のあんたからは攻めるって意思を感じない。

それに、あんな簡単に『夢想天生(切り札)』を使ったのには、理由があると思ってね」

 

「ただの気まぐれよ。理由なんてないわ」

 

「そうかい。まぁ、どうでもいいさ。

あんたら、本気で私を止めにおいで。じゃないと、飽きて紅魔館に行っちゃうよ?」

 

 勇儀は三人を同時に相手取るこの闘いに楽しさを感じていた。勇儀が本気を出せば、紅魔館に行くことなど簡単にできるが、滅多にない本気で止めにくる三人の容赦ないスペルカードの多用。

 こんな闘いも普段ではなかなか味わう事のできない魅力があり、別にこのまま三人と闘っていてもいいかと考えたからだ。

 勇儀は両足に力を入れ、魔理沙と霊夢目掛けて跳躍。凄まじい速さで瞬く間に二人に近付き、霊夢の左足を右手で掴んで地面に叩きつけるように投げる。

 

「きゃあああああ!」

 

「霊夢!」

 

 悲鳴を上げて霊夢が地面へと高速で落下していく。

 魔理沙は落ちていく霊夢に意識が一瞬いき、勇儀が霊夢を投げた遠心力で身体を回転させて放った、右足上段からの蹴りへの対応が遅れた。

 

「加減はするから、心配いらないよ」

 

 勇儀の右足の軌道は斜めを描き、魔理沙の横腹を捉えて、魔理沙も蹴りで地面に飛ばされた。

 霊夢は地面にぶつかる直前、自身の全霊力を投げられた力の相殺に使い、なんとか地面すれすれで勢いを殺すことに成功した。

 魔理沙も箒を巧みに使い、飛ばされた力を上手く殺しながら、地面を滑空して勇儀を睨んだ。

 

「っの! 肉弾戦じゃなく弾幕戦をしろよ! 魔符『スターダストレヴァリエ』!」

 

 大量の星形の光弾が勇儀に襲いかかる。勇儀は自身に向かってきたそれを、自分に当たる光弾だけ全て右手で払い落として、魔理沙の眼前に着地。

 

「なっ、そんなのありかよ!」

 

 勇儀が魔理沙の箒の柄の部分を掴み、霊夢の方に槍投げのようなフォームで投げる。

 霊夢はそれを避け、魔理沙の箒は地面へと突き刺さった。魔理沙は慣性の法則により、前に転がる。

 魔理沙は服についた土を両手で払い落として、地面に突き刺さっている箒を抜き、背負う。その目には、自分の箒を無下に扱われたことによる怒りの輝きがあった。

 

「勇儀……てめーは私を怒らせた」

 

「そんなに怒んなよ。壊れないように投げてやったんだから。別にヒビとかも入ってなかったろ?」

 

「そういう問題じゃない! 恋符『マスタースパーク』!」

 

 青い閃光の柱が、勇儀に迫る。勇儀は右手を翳して正面から受け止めた。

 魔理沙から供給される魔力が勇儀の掌で止まり、柱だったマスタースパークはいつの間にか球体状になった。

 そして、魔理沙の魔力供給が終わったと悟った勇儀は、右手を握りしめて裏拳でその球体を斜め方向に弾き飛ばした。

 

「わ、私の……『マスタースパーク』が……そんな」

 

 今まで『マスタースパーク』をかわされた事は多々あれど、当てたうえで弾き飛ばされた事など一度としてなかった。

 だからこそ、魔理沙が受けたショックは並ではない。

 

「くぅ~! 痺れるねぇ!」

 

 勇儀が『マスタースパーク』を弾いて震えている右手を見ながら、嬉しそうな笑みを浮かべている。

 

「奇術『エターナルミーク』!」

 

 青い丸形の光弾が凄まじい速さで勇儀に放たれ続ける。勇儀はそれを回避しながら前進。咲夜に鋭い廻し蹴りを浴びせようとしたが、咄嗟にバックステップ。

 勇儀の正面を横から来た色とりどりの光弾が通っていき、それらの光弾は勇儀を少し通り過ぎると、勇儀に吸い込まれるように軌道を変えた。

 

「光鬼『金剛螺旋』!」

 

 勇儀は向かって来た光弾を同じく光弾で相殺。そして、一つ頷く。

 

「うん、もう十分堪能した。そろそろ本命といこうかね」

 

 勇儀は三人との『弾幕ごっこ』はもう終わりにして、この場所に来た理由、即ち九尾との戦闘に移ろうと決めた。

 この三人とは正直いつでも闘おうと思えば闘えるが、九尾に関しては今この瞬間しか闘うチャンスがないと本能的に感じていたからだ。

 勇儀は正面に生まれた爆煙を煙幕代わりに利用し、咲夜を無視して、紅魔館へと走り出す。

 それを邪魔するように魔理沙が勇儀の前に立ち塞がった。口には兵糧丸を含み、手にはミニ八卦炉を握りしめて勇儀に向けて構える。

 そして、魔理沙が口に含んでいた兵糧丸を噛む。と同時にスペルカード発動。

 

「私の『マスタースパーク』は、誰にも止められちゃダメなんだ。誰にも……たとえ鬼でも!

恋符『マスタースパ──」

 

 魔力がミニ八卦炉に収束し、青い閃光が勇儀に向けて放たれる瞬間、魔理沙の前を走っていた勇儀が消えた。勇儀はさらにスピードを上げ、刹那の時間で魔理沙の隣に移動したのが、魔理沙には消えたように見えた。

 

「なかなかの威力っぽいね。あの門壊すのに使わせてもらうよ」

 

 勇儀はミニ八卦炉に収束された魔力がさっきとは段違いであることに気付いた。

 だから、それを紅魔館の門にぶつけて、門を開ける手間を省こうと考えた。

 勇儀は魔理沙に足払いをして、魔理沙を転倒させる。

 正面に構えられていたミニ八卦炉は転倒により、後方の紅魔館に向けられた。

 

(ナルト……私は知ってたぜ)

 

 魔理沙の身体は宙返りのような体勢になり、魔理沙の視界が紅魔館を逆さまに捉える。

 

(お前の心に深い傷があることを)

 

 魔理沙はナルトが意識を失っていた二日間、ずっと看病していた。

 その時に知ったのだ。ナルトの右腕が義手だということに。

 さらに、ナルトは寝ている間、ずっとうなされていた。誰かに赦しを請うように、うわ言で謝っていた。

 魔理沙は知っていた。ナルトがずっと己を責め続けていることを。

 だから、看病が終わってそのままナルトとお別れなんてしなかった。

 会って間もないのに友だちだと言って、ナルトの傍にいようと思った。

 ナルトの傍で、ナルトが何で心に深い傷を負ったのか、知りたいと思った。

 

 ──それで……私が少しでもその傷を癒せたらって、そんな柄でもないことを決めたんだ。

 

 その想いは、ナルトと一緒にいる時間が長くなる程大きくなっていた。

 最初は強引に友だちだと言ったが、少し時間を共にしただけで、昔から付き合っているような感じで親しみを覚えた。

 魔理沙は紅魔館を睨む。

 もしここで紅魔館の門を破壊したら、結界に穴が開く。そうなれば、九尾の力は一気にその穴に流れ込むだろう。今まで必死に守っていたことが無駄になる。

 ナルトはその時己を責めるだろう。何でもっと早く封印できなかったんだって。

 今回のことだって、ナルトはかなり責任を感じていたように見えた。

 フランや他の誰かのせいにせず、自分が力不足だったからと全て一人で抱え込んでいた。

 

(ナルト、お前はもう自分を責めちゃ駄目なんだ!)

 

 私は知ってるぞ、ナルト!

 お前は誰よりも優しい奴だって!

 たとえ幻想郷中の奴らがお前を否定しても、私はお前を否定しない!

 ナルトは私にとって、大切な友だちだから!

 だから私は──ナルトが己を責める原因をつくるのを許さない!

 

「当たるなああああ!!」

 

 すでにミニ八卦炉に魔力は収束していて、『マスタースパーク』を中断できなかった。

 宙返りの体勢のまま、紅魔館に向けられていたミニ八卦炉を持つ手を無理やりずらして、紅魔館の空へと軌道修正する。

 その瞬間、一際太く青いレーザーがミニ八卦炉から放たれ、紅魔館の空に青い道を創った。まるで天へと誘う(しるべ)のような、力強くまっすぐな一本道。

 『マスタースパーク』を放ちながら、魔理沙は思い出していたことがあった。

 

 ──この光が見えたら、必ずお前のとこに行く。

 

 ナルトとの約束。

 あれは私にとって、ナルトの心がぎりぎりで壊れないようにするために言った約束だ。

 だってそうだろう? ここは幻想郷で私の庭みたいなもの。命の危険なんて事態になる前に、私はそれを回避できる自信がある。

 卑怯なやり方だけど、私の命をナルトに背負わせた。

 誰でもない、ナルトにしかできない役目があれば、ナルトは私との約束を考えて、一人で勝手に潰れるようなことはできなくなる。

 あの約束はいわば、私とナルトを繋ぐためだけにした約束。

 普通に考えれば、約束を護るのは無理だ。今のナルトは通常の状態ではなく、身動きのできない状態なのだから。

 だけど、私の傍に来てほしいと思ってしまっているのも事実。

 私の命を、私との約束をナルトに護ってほしいと勝手な事を願っている。

 

(あっ……そういえば私、宙に浮いてるんだっけ)

 

 このまま私は地面にぶつかる。

 そう思った。でも、ぶつかる直前、力強い両腕が私を支えるのを感じた。

 勇儀が突然の来訪者に目を見開く。

 私は私を支えてくれた両腕の主であるナルトの青い瞳を見て、あまりの嬉しさに満面の笑みを浮かべた。

 

「封印……成功したんだな」

 

「ああ、魔理沙のお陰だ!」

 

 ナルトは笑顔でそう言い、勇儀の方に顔を向けて睨む。

 勇儀は紅魔館を見て、今まで感じていた強大な力が消えているのに気付き、残念そうに息をついた。

 

「ああ、時間切れか。勿体ないことしたねぇ。

でも、楽しめそうな相手がまた一人増えたから、これはこれでいいかな」

 

 勇儀はナルトから感じる闘気に、口の端を吊り上げる。

 ナルトは魔理沙を地面に立たせ、魔理沙と勇儀の間に割って入った。

 

「ナルト、お前勇儀と闘う気か!? いくら何でも無茶だぜ! 勇儀はスゴく強いからな!」

 

「そんなことはどうでもいいんだ。魔理沙……お前はオレを救ってくれた」

 

 ナルトが思い出すのは、フランの攻撃で傷付いた自分を看病したと言った魔理沙の姿。

 

「あの時も──」

 

 ──今日はナルトと友達になった日だ。

 

 誰一人として自分に心を開いてくれる人がいない中、魔理沙は心を開いてくれた。それがどんなに嬉しかったか。

 

「あの時も──」

 

 ──友達が困ってるなら、力を貸す。

 

 霊夢との『弾幕ごっこ』に負けた時、オレはこの先どうなるか不安だった。

 けど、魔理沙はそんなオレの味方をしてくれた。それがどんなに心強かったか。

 それに、大切な事を思い出した気がしたんだ。

 

「そして、今も──」

 

 力強くまっすぐな青い閃光。それがオレに大切な友だち(モノ)を思い出させた。

 幻想郷にも、オレが心の底から護りたいものがあったんだって気付かせてくれた。

 だから、最後の最後で気力を振り絞れた。九喇嘛を封印することができた。

 

「お前はオレを救ってくれた。ホントにありがとな。だから今度は、オレにお前を救わせてくれねェか」

 

「ナルト……気にしなくていいんだぜ。私とナルトは友だちだからな。それに、別に命の危険があったわけじゃないんだ」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

 ナルトは早とちりをしていたことに気付き、恥ずかしさのあまり少し顔を赤くした。

 が、すぐさま鋭い目つきになり、向かってきた勇儀の拳を受け止め、後方に投げ飛ばす。

 

「おおっ!? いい! いいねぇ、兄ちゃん!」

 

 空中で一回転して着地した勇儀は目を輝かす。

 

「どうもあのネェちゃんはやる気になってるみてェだな」

 

 ナルトは勇儀の正面に立ち、右手の親指で自分を差した。

 

「オレの名前はうずまきナルトだ! 最初に言っとく。オレはめちゃくちゃつえェ!」

 

「そうかい! そいつは楽しみだ!」

 

「はい! そこまで!」

 

 ナルトと勇儀が闘おうとした刹那、勇儀の右腕を掴んだ者がいた。

 勇儀は自分の右腕を掴んだ相手を見て、げっと声を漏らす。

 

「鬼たちに勇儀がいなくなったと言われて捜してみれば、こんなとこで油売ってたのかい」

 

「今いいとこなんだよ~、少し待っておくれよ萃香」

 

 萃香と呼ばれた人物はとても幼い容姿をしていた。

 髪型は薄い茶色のロングヘアーを先っぽのほうで一つにまとめている。瞳は真紅の瞳で、頭の左右から身長と不釣り合いに長くねじれた角が二本生えている。

 服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、頭に赤の大きなリボンをつけ、左の角にも青のリボンを巻いている。

 

「その外来人に今度旧都まで来てもらいなよ。今ここで勇儀に暴れられると私が困るんだ」

 

「どういう意味だい?」

 

「霊夢から話を聞いてね、どうやら幻想郷に起こった何かの力が混じった今回の異変は、一応解決したらしい。

異変が解決したら、やる事は一つだろう?」

 

 ニマッと笑う萃香の意図を勇儀は察し、勇儀も同じように笑みを浮かべた。

 

「今から二時間後に紅魔館で宴会するよ!」

 

「……え、宴会?」

 

 話についていけないナルトは、ポカンとした表情で萃香と勇儀を見ていた。




Q.紅魔館に向かった幽香はどうしたの?

A.幽香「紅魔館の周りがごちゃごちゃしてたから、気が変わったの。やっぱり私は1対1の方が好きだから」

という理由で幽香さんは出てきませんでした。
今の幽香さんは、紅魔館から離れた場所でレミリアや霊夢の闘いを眺めています。

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