うずまきナルトが幻想入り~Story of light and darkness~ 作:ガジャピン
前兆~Warning~の後書きでナルトは尾獣チャクラを借りれば『陰』以外の状態変化は出来るって書いたんですが、全ての状態変化が出来るに変更させてもらいます。
理由はカカシ先生の左目を元に戻した時、陽遁だけじゃ戻せない事に気付いたからです。
陽遁だけじゃ左目の創造はできませんからね。
「っかし~な~、いつもは門の横で昼寝してる門番がいるんだが」
魔理沙は門の周りを見渡しながら呟いた。
それ、門番の意味あんのかよと言いたい気持ちをグッと抑え、ナルトは門に右手を置く。
「門開けてすぐんとこにいんだろ多分。門の向こうに九尾のチャクラを感じんだ」
今まで注意深く探らなければ分からなかった九尾のチャクラが、ハッキリと感じとれる。
それはつまり、門の向こうにいる相手が今までの相手と違い、九尾のチャクラをかなり使いこなしている証拠。
軽口を言って気を緩めていい場面ではない。
「おーっす! 霧雨魔理沙様が来たぞーッ!」
ナルトは紅魔館の門を開け、魔理沙が門をくぐった。
二人の目に入ったのは、九尾の衣に覆われた美鈴と、その尻尾らしきものを引っ張っている咲夜の姿。
「はぁぁぁああああ!?」
ナルトの絶叫が紅魔館中に響いた。
「いや、それってば九尾の衣……なんで使えんだ!?」
以前ナルトは九尾のチャクラを多数の忍に与え、与えた忍全員を九尾の衣で強化した事がある。
あの時はナルトの意思で九尾のチャクラをコントロールしていたため、そういう芸当ができた。
しかし、漏れている九尾のチャクラに関しては自分の意思を伝えることができず、九尾の衣にできない。
つまり、美鈴は自力で九尾の衣を手に入れたことになり、ナルトが驚くのも仕方ないだろう。
「へ~、九尾の衣っていうんですか~。なんでと言われても、気付いたらなってたんですけど」
美鈴の目がすっと鋭くなる。
「成る程、あなたがこの力を幻想郷に流していたのですか。
それで、何の用です? 返答次第では侵入者とみなし、即排除します。そろそろ門番らしいことしないとクビにされちゃうかもしれないので」
「自覚はあったのね。私は嬉しいわ、これからサボってたら手加減しなくていいことが分かって」
咲夜が表面上は笑顔になる。しかし、その内に今までの美鈴のサボりっぷりに対して怒りを感じているのは明らかだった。
美鈴の顔に冷や汗が浮かぶ。
「や、やだな~咲夜さん、これからは心を入れ替えて仕事に精進しますよ~」
「そうであることを願うわ」
氷のように冷たい視線を送ってくる咲夜から逃れるため、美鈴はナルトたちに視線を戻し、人指し指を突き付ける。
「そ、それで! ここに来た理由はなんです!? まだ聞いてませんよ!」
ナルトと魔理沙は顔を見合わせた。
魔理沙はふぅっと息をつく。
「さっきお前が言ったように、ナルトの中に封印してある力が幻想郷に漏れている。どうやら封印がおかしくなったのは、フランとの『弾幕ごっこ』が原因らしい。
だから、この異変を解決するために協力してもらおうと思ってな。別にいいだろ、お前らにも落ち度があるんだから」
咲夜と美鈴はナルトとフランの『弾幕ごっこ』を思い出す。
確かにあの時のナルトの身体からは、力が漏れていなかった。
「もしかしてその封印ってお腹にあります?」
「ああ、そうだ」
咲夜と美鈴は互いに視線を交わし頷く。
「ご用件は承りました。主のレミリアに伝えてきましょう」
咲夜はナルトたちの目の前から刹那の間に消え、美鈴だけが残された。
「消えた!?」
ナルトは咲夜がいた辺りを凝視している。
「あいつは時間を操る程度の能力をもってるからな。今のは時間を止めて移動したんだろう。だから、一瞬で消えたように見えたんだ」
魔理沙が咲夜について説明し、ナルトはめんくらった。
「時間を止める!? ものすげェ事ができんだな。勝てる気が全くしねェ」
時間を止められるうえに、それをしている間自由に動けるとしたら、これ程脅威的なものはない。
単純に刃物で止まっている人物の首を斬れば、それだけで殺すことができるのだから。
そんなナルトの思考を読んだのか、魔理沙はナルトの背中を軽く叩く。
「心配しなくていいぜ。時間が動いてなきゃ斬れないから、時間を止めている間は人に直接攻撃する意味がないんだ」
「へぇ~、無敵の力ってわけじゃねェんだな」
ナルトは納得したように一つ頷いた。
魔理沙が美鈴に視線を移す。
「ところで美鈴、私は気になっていることがある。
なんでフランがナルトと『弾幕ごっこ』したんだ?
お前らもフランの不安定さは知ってる筈だ。普通に考えれば、お前か咲夜のどっちかが止めに入らなきゃおかしい」
魔理沙の指摘に、美鈴は右頬を指で軽く掻いた。
「いや~、お恥ずかしい限りで……ホントはケガする前に止めるつもりだったんですが、妹様の動きが速すぎて止める間がありませんでした」
それを聞いて、魔理沙の顔が不機嫌そうな顔になった。
「それは『弾幕ごっこ』をしてる時の話だろ? 私はそんな事聞いてないぜ。
私はなんで『弾幕ごっこ』する前に止めなかったかを聞いてるんだ」
「あ、とりあえず中へどうぞ。今日はお客さんのようなので、いつまでも外で待たせるわけにはいきません」
美鈴の強引な話の逸らし方に、魔理沙は更に眉間にシワを寄せた。
しかし外より中の方が良いのは事実のため、渋々と美鈴に従い、ナルトとともに紅魔館に入る。
ナルトは紅魔館に入った瞬間に術式のような陣を視界に捉えた。
その陣自体が光り輝き、くるくると床で回っている。
ナルトがそれに気を取られている間に、魔理沙は再び美鈴を見た。
「で、なんでだ?」
魔理沙が再度問いただしても、美鈴は困ったような笑みを浮かべるだけだ。
美鈴の内では話すべきか黙っているべきか決めかねているのだろう。
魔理沙は帽子を被り直す仕草で自分を落ち着かせ、紅魔館の地下の方に歩きだす。
「美鈴、もういい。その反応でだいたい誰のせいでこうなったか予想はついた。
私とナルトは暇だから地下の図書館に行ってるぜ。レミリアから返答があったら図書館まで来てくれ。
ナルト、私に付いてこい。凄いモノを見せてやるぜ」
迷いなくまっすぐ進む魔理沙と違い、ナルトは物珍しそうに周りを見ながら魔理沙の後ろを付いていく。
まさか外だけではなく、中まで赤色に統一されているとは思わなかった。
それになんとなく外観と内部の大きさが一致していない気がする。あくまで自分の感覚のため、断言はできないが。
それからもう一つ、館にある窓が異様に少ない。本当に最低限の窓の数しかないのだ。
まるで日光を嫌っているようにナルトは感じた。
紅魔館の地下に行く階段を下り、かび臭い廊下にナルトは微かに眉根を寄せる。
魔理沙はこの臭いも慣れっこのようで、気にする素振りすら一切なく進んでいく。
そうして暫く進むと、大きな扉がある部屋に着いた。
「ここが大図書館だ。きっと中に入ったら驚くぜ」
魔理沙は扉を開け、中に入る。ナルトも続いて中に入り、中の光景に口を大きく開けた。
見渡す限り、膨大な書物の数。どこに視線を向けてもあるのは無数の本。図書館というより、本をただ保管している倉庫のようだ。
「霧雨魔理沙! ここで会ったが百年目!」
赤髪で頭に小さく、背中に大きな黒い羽根の生えた少女が魔理沙に向けて光弾を放つ。
魔理沙にとってはこれも日常らしく、涼しい顔で避けた。
「何したんだ? あの子、もの凄ェ怒ってるぞ」
「あ~多分、本を何十冊か借りてるからかな。いつか返すって言ってるのにコレだ」
魔理沙はやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
その仕草が更に赤髪の少女を怒らせた。
「あんたって人はぁーッ!」
少女の気持ちを表すように光弾が更に勢いを増す。それは僅かにナルトの方にも飛び火し、ナルトはその場から後方に跳躍。扉の上にある壁に足だけで張り付いた。
「魔符『スターダストレヴァリエ』!」
魔理沙の周囲にちりばめられた星形の光弾が、少女の光弾とぶつかり相殺していく。少女の光弾を全て相殺した後、魔理沙は少女の方を見た。
「来る度に手厚く歓迎しやがって……ホントいい加減にしろよ、こあ」
こあと呼ばれた少女は
「お前がッ! おーまーえーがッ!」
おそらくこあはお前が言うなと言いたいのだろうが、あまりの怒りに上手く話せない。
「──騒々しいわね、大体予想付くけど」
「パチュリー様!」
こあは目を輝かす。
奥にある本棚の影から、一人の少女が現れた。
紫色の長髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまのゆったりとした服を着用。さらにその上から薄紫の服を着ている。頭には三日月の飾りが付いたドアキャップのような帽子。
この大図書館の主、パチュリー・ノーレッジである。
ナルトは壁から離れて床に着地した。
見たことない人物に、パチュリーは少し興味深そうに目を細める。
「ケホ、外来人もいるのね。私はパチュリー・ノーレッジ、パチュリーでいいわ」
「オレはうずまきナルト、ナルトでいいってばよ。
パチュリーはどっかわりぃのか? なんか苦しそうだけど」
「パチュリー様は喘息なんです! そのせいで激しい運動とかできないんですよ!」
ナルトの疑問に、こあが勢いよく答えた。
「喘息ってェと気管がわりぃのか。パチュリー、ちょっと背中向けてくれるか?」
「えっ、ええ、いいけど……」
パチュリーは戸惑いながらもナルトに背を向ける。
ナルトはその背の首の下辺りをトンと左手で軽く叩いた。
そのまま数秒間、辺りは静寂に包まれた。
「どうだ?」
ナルトの問いに、パチュリーの紫色の瞳が驚きの色に染まった。
「苦しく……なくなった? え、何、どういうこと? 全然分からないわ、ナルト」
「オレも……今、なんで……首絞めら……れてん……のか分か……らねェ」
ナルトにそう言われて、パチュリーはハッとした様子でナルトの首から手を離した。
「ごめんなさい……ちょっと気が動転してつい──」
「ゲホッ……気が動転してなんで首絞めんだよ!? どういう流れ!?」
ナルトが咳き込みながら、パチュリーに困惑した視線を向けた。
「書物に情報を吐かせる時はこうした方が良いって書いてあったから、反射的に──」
「パチュリー様、喘息が治ったのですか!?」
「ええ……どうやらナルトのおかげでね。身体に付いてたオモリが無くなったみたい。身体が凄く軽いわ」
「っ! ……ナルトさ~ん!」
こあがナルトの身体に抱きついた。
「パチュリー様を治してくれて、ありがとうございました! 霧雨魔理沙は別ですが、ナルトさんならいつでも大図書館に来てください! 面白い本を色々紹介しますよ!」
「ははッ、サンキューな! じゃあまた今度時間がある時に見せてもらうぜ!」
ナルトは抱きついたこあの頭を左手で撫で、こあは気持ち良さそうに目を細めた。
そんな明るいやり取りをしている一方で、魔理沙の顔は青くなっていた。
「パチュリーを治してくれたのは良い。けど、私にとっては複雑だぜ。
ナルト、パチュリーに何をしたんだ!? これから本を借りづらくなっちゃったぞ」
「何って言われてもなぁ……簡単に言えば、オレが陽にしたチャクラをパチュリーに流して、パチュリーの身体を自然な流れに戻したって感じかぁ?
う~ん、この陽遁って説明し辛いぜ」
ナルトは難しそうな顔で頭をひねった。
ナルトは通常の状態でも簡単な陽遁は使える。
陽遁は生命を司る身体エネルギーをもとに、生命を吹き込んだりといった生命に関わることに長けている力である。
ただ身体の歪みを矯正する程度であれば、今のナルトにかかれば朝飯前だ。
「お待たせしました」
大図書館の扉の前に、咲夜が現れる。
全員が咲夜の方に注目した。
「紅魔館の主、レミリア・スカーレットがお二人に会うと言いました。これより十六夜咲夜が主の部屋まで案内させて頂きます」
咲夜が一礼してレミリアの部屋に向けて歩き始め、ナルトたちがその後ろを付いていく。
「私も行くわ。何の用かは知らないけど、ナルトには恩がある。レミィに口添えくらいは私もできるから」
「別にいいけど身体は大丈夫なの?」
咲夜が心配そうな目でパチュリーを見る。
「喘息ならナルトに治してもらった」
素っ気なく答えたパチュリーを、咲夜は信じられないといった表情で凝視した。
「あ、忘れるところだった。魔理沙~ちょっと~」
パチュリーが爽やかな顔で魔理沙がいる方に視線をやる。
ナルトの身体に上手く隠れていた魔理沙がビクリと反応した。
「パチュリー、何かな。初めに言っとくが私は借りただけで盗っては──」
「大図書館は貸し出しを一切やってない」
「ち、違った! 借りたんじゃなくて汚れてたから綺麗にしようと思って持ち帰ったんだぜ! 私の行動は善意だ!」
「大図書館の全ての本にはありとあらゆる防壁魔法が施されていて、埃が被る程度しか汚れない」
「……」
ちーんという音が聞こえそうな程、魔理沙の身体が力なくうなだれた。
助けを求めるように魔理沙はナルトの方を見る。
ナルトは軽く右頬を指で掻いた。
「……やっぱし、ルールは守んねェとな。けど、今回は魔理沙のこと勘弁してくれ。オレからも魔理沙に本を返すよう言っとくから」
「ナルトが言うなら……まぁこの場は許してあげる」
パチュリーはいつの間にか手に持っていたスペルカードをしまった。
魔理沙の目に光が宿り、満面の笑みを浮かべる。
「だから私はナルトが好きだぜ!」
「パチュリー、次からは容赦しねェでいいからな」
「ナルトォ!?」
魔理沙はナルトの言葉に衝撃を受け、声が裏返った。
そんな魔理沙を見て、魔理沙以外の全員が吹き出して笑った。
最後は魔理沙も声を出して笑い、紅魔館の廊下は明るい声に埋めつくされた。
今後に備えパチュリーさん強化&仲間入り。
そして美鈴大幅強化。
美鈴にはこの物語の中盤である重大な役目をさせるつもりです。
モチベーションがそれまで続くか分かりませんが、のんびり待ってもらえると私も助かります。