お久しぶりです。
だいぶ日が経ちましたが生きていますW
ついに7月です。末にはPS4版アイドルマスターが発売されますね!
その前にこの異常な暑さで倒れないか心配ですW
なかなか更新できずにいますがお気に入り登録をしてくださった方にはとても感謝しております!
それではどうぞ!
レッスンが終わり、そのまま事務所へと向かう俺。
特に仕事とかは残ってないが、確認したいことがあった。
「おつかれさまでーす」
外から明かりが点いているのが見えたので、とりあえずあいさつをしながら事務所の扉を開ける。
「あ、おつかれさまでーす」
するとデスクに向かって座っていたスーツを着た女の人、律子さんが事務所に残っていた。小鳥さんは……いない。もう帰ったようだ。
律子さんとは一度顔合わせして自己紹介も済ましているのだが、こうして2人きりで事務所に残るのは初めてだな。
「律子さん。今日は遅くまで仕事ですか?」
「いえ、もうすぐ帰ろうとしていた所です。あ、プロデューサー。
そーいや初めて話た時にそんなこと言ってたな。あれからしばらく話してなかったからすっかり忘れてた。
「悪い悪い。すっかり忘れてたよ」
律子の向かいに座り、小さく頭を下げる俺。一応、ここでは律子の方が先輩なのだが、そういうのにはこだわらないらしい。
「プロデューサーはどうして事務所に?」
「俺か? ちょっとここに所属している子達のことを調べようと思ってな」
美希との合同レッスンで俺が思ったのは、萩原さん以外の子をまだあまり知らないことだ。普段あまり関わらないので、ここに来て活動履歴とか見ればそれなりに情報を得ることができるしな。
「それなら私が教えますよ。あの子達がデビューする前から知っているので」
「おお、それは助かる。でもいいのか? そろそろ帰るんじゃあ?」
「大丈夫ですよ。プロデューサーに早く彼女たちのことを覚えてもらう方が大事なので」
「悪いな。じゃあさっそくだが美希のことを知りたい。活動歴とか、なんでもいいから」
「分かったわ。そうね、美希は……」
それから小1時間ほど、律子から情報収集をした。途中、顔と名前が一致しないことがあったのでプロフィールがある資料にも目を通しながら話を聞いた。
うん。これで名前を間違えることもないだろう。
『如月千早』か、今度どこかで会ったら間違えずに名前を呼ぼう。如月さん。かなり怒ってたからな。
「さて、ざっとこんなもんね。他になにか知りたいことがあったらいつでも聞いてくださいね。もちろん、雪歩のことでもいいですよ」
「ありがとうな律子。この礼はまたどこかで」
「礼なんて、大げさですよ。それより聞きましたよ。さっそく雪歩のお仕事、見つけてきたそうじゃないですか」
「まあ、小さな仕事だけどな」
「でもプロデュース始めてからまだ少ししか経ってないじゃないですか。さすが、伝説のプロデューサーですね」
うっ。なぜそのことを知っている……
「誰からその話を聞いたんだ?」
まあ、聞いといてなんだが、だいだい目星は付いてるけどな。
「社長ですよ。満足そうに語っていたので」
ほらみろ俺が思った通りだ。余計なことを話すなと言ってやりたいが、もう遅いよな。
「それにしても、私は今でも信じられないわ。目の前に
逆に言えば大賞以外のアイドルはトップアイドルとして認められない厳しい世界。だからノミネートされたからと言ってあまり誇れるものではない。
まあ、世の中にはどれだけ努力を積みかねてもノミネートすらされないアイドルなんてたくさんいるわけだが。
「そんなに珍しいか?」
「そういう訳じゃないけど、こうして一緒に仕事するとは思ってもみなかったから。ちょっとね」
なるほどな。まあ、強引にここに入社させられたからこうして一緒に仕事してるんだがな……
「IAの発表のときはどんな感じです? やっぱりプロデューサーも緊張とかするですか!?」
急に律子が身を乗り出して聞いてきた。メガネの奥にある瞳がキラキラと輝いている。やっぱ律子もプロデューサーだからか、強い憧れを持ってるんだな。
「そうだな…………いや、この話はやめよう」
と、言いかけたところで俺は話を止めることにした。俺はまだ3年前、IAで起こった出来事を思い出したくないからだ。
それがきっかけで一度はこの業界から抜け出したが、またこうしてプロデューサーをしている。いつかは向き合わないといけない時が来るとは思うが、今はまだ、その準備はできていない。
「あ、ごめんなさい。もしかして気に障るようなこと聞いちゃいました?」
「いや、大丈夫だ。俺、そろそろ帰るわ」
この微妙な空気から逃げ出したいので、さっさと準備を終えて扉へと向い、
「おつかれさまでした。また明日」
そうあいさつをして事務所を後にした。
レッスン2日目。
昨日と比べると合同レッスンはスムーズに進んでいた。
萩原さんの動きもだいぶ良くなって、そろそろ美希と合わしてみてもいいんじゃないかと考えていたら、
「プロデューサーさん。休憩が終わったら2人で合わしてみようかと思うのですが、よろしいでしょうか?」
と、トレーナーさんが聞いて来た。どうやら同じ考えだったようだ。
俺はもちろん賛成した。
「よし。休憩が終わったら2人で合わせるぞ。大丈夫だよな?」
休憩中の2人にそう聞くと、萩原さんと美希は力強く頷いた。
「まだちょっと自信がないけど……美希ちゃんにしっかり合わせられるよう頑張ってみます」
「ミキはいつでもおっけーだよ。雪歩と2人で頑張るの!」
美希はともかく、萩原さんはまた弱音を吐くかと思っていたが、どうやら心配ないようだ。
これならレッスンも期待できそうだな。
「その調子で頼むぞ。あ、これ差し入れな」
そう言って俺は袋からおにぎりを2つ取り出した。昨日、律子から美希の好物はおにぎり、とくにツナマヨが好きだと聞いたので小腹を満たすのにちょうどいいと思って買っておいたやつだ。
「おにぎり!? やったー!! ミキ、おにぎりだぁい好き! プロデューサー。ありがとうなのっ!」
「えへへ……プロデューサーの差し入れ、とても嬉しいです。ありがとうございますぅ」
2人は満足そうにおにぎりを受け取ってくれた。美希は今まで見たことない幸せそうな顔でツナマヨ味のおにぎりを頬張っていた。
早くも律子の情報が役に立ってくれたな。今度会ったらお礼言っておこう。
おにぎりを食べて少し胃休めをしたあと、2人合わせてレッスン開始。俺は壁に保たれながら様子を見る。
萩原さんにとってはここからが勝負だ。
1人でやっていたときみたいに上手くできるのだろうか? 子を見守る親のような気持ちだった。
「はいストップ。萩原さん。今のところもう一度」
うっ。いきなり止められたな。
しかしなんでここで止めたのだろうか? 俺の目では萩原さんが失敗したようには見えなかったのだが……
そんな疑問を持ちつつもレッスンを見守る。
その後も何度か萩原さんが止められたが、俺にはどこがどう悪いのか全然わからなかった。
昨日のレッスンでは、美希と合しているときに俺から見ても分かるようなミスをしていたが、今日はそのミスが見当たらない。
というより、1人でレッスンしていた時と変わらない感じがするんだが。
結局答えが分からないまま、今日のレッスンは終了した。
「ううっ……プロデューサぁ〜。今日も全然ダメダメでしたぁ〜」
そしてそれと同時に萩原さんが涙目になりながら俺の元へと駆け寄ってきた。
「そうか? 俺は全然良いと思ったけどな」
「ううっ……ぐすっ。でも、先生にいっぱい止められちゃいました……」
「確かにそうだったな。う〜ん、何が原因なんだ? なにか思い当たることはあるか?」
「そんなの、いっぱいありすぎてキリがないですよぉ〜」
おいおい。自覚しているのかよ。それじゃあ、やっぱり萩原さんが原因なのか? それにしては何か引っかるんだよな。自分でもよく分からないが……
「プロデューサー。今日もおつかれさまなの!」
「おう。美希はまだまだ行けそうな感じだな」
レッスンが終わったあとも美希は疲れを感じさせない様子だった。もしかしておにぎりの効果なのか?
「美希ちゃんごめんね。私のせいで全然レッスン進まなくて……」
「そんなの全然気にしてないよ。ミキ的には雪歩はどんどん上手くなってると思うの」
「そ、そんなことないよ! 今日もいっぱい止められちゃって……いっぱい迷惑かけちゃったし……」
「う〜ん。ミキにはどこが悪いのか全然分からないの。プロデューサーはどう思う?」
「いや。俺にもさっぱりわからないんだ。萩原さんはミスなくできてるし良いと思うんだけどな……」
萩原さんと合している美希にもわからないってことは、やっぱトレーナーさんに聞くしかないのか? まあ、2人と話している間にもう帰ったみたいだし、聞くのは明日になるが。
「とりあえず今日は帰るか。まだ時間があるし、ゆっくり考えるとしよう」
「はい……また明日、よろしくお願いします。プロデューサー」
「また明日なのプロデューサー。雪歩、一緒に帰ろ」
2人は俺にあいさつをし、レッスンスタジオを後にした。
残された俺は戸締まりをしながら、今日の萩原さんのレッスン内容を思い出し、今後の対策を練ることにした。
だが、はっきりとした対策が出ないまま3日目のレッスンを向かえ、今日はトレーナーさんに萩原さんの動きのどこが悪いのか聞いてみた。
返ってきた答えは、
「美希ちゃんと動きが合っていない」
だった。
確かにソロでやるのとは違い、2人で合わせないといけない。
少しでも動きが違うと違和感があるからな。
果たしてそれは萩原さんだけが原因なんだろうか?
はっきりとした答えが見つからないまま、3日目、4日目のレッスンも終わり、レッスンスタジオの戸締まりをしていた時だった。
「あの……プロデューサー」
「お、なんだまだいたのか。早く帰らないと暗くなるぞ?」
とっくに美希と一緒に帰ったと思ったが、もじもじと何か言いたそうな顔で萩原さんが声をかけてきた。
「……なにか用か? 俺にできることがあればいつでも相談にのるぞ」
「えっと……付き合ってほしいんです」
「……え?」