空人と雷人   作:シャインベルク

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第4話 水の都”ウォーターセブン”

 

「にーちゃんたち海賊?あの船なに?どうしてとんでるの?

あっ、あたしチムニー。こっちがゴンベと、ココロばーちゃん‼」

 

 

 「ニヤーニャー⁉」

 

 

 もの凄い勢いで質問攻めにしてくる少女と構ってくるウサギっぽい生物。

 

 

 「俺はソラ。こっちはエネル。海賊……じゃないか。まだ」

 

 

 いまだお宝探しも略奪もやってないから、ただの旅人か?

あ、でも船は強奪扱いだからやっぱり海賊か?

 

 

 「ふむ……青海には奇妙な生物がいるものだ」

 

 

 当の被害者は、謎生物の耳を引っ張ったり持ち上げたりと忙しそうだ。

ウサギっぽい生物も、嫌がってはなさそうなので放っておこう。

 

 

 「いや~、あたしも長生きしてるけど、空飛ぶ船は初めてらねェ

一瞬お迎えが来たのかと思ったよ。んがががが‼」

 

 

 ココロばーさんは随分ビックリしたようで、ベロベロに酔っていたのが覚めたようだ。

ちゃんと話を聞いてもらえるようでよかった。

 

 

 「ばーさん、ウォーターセブンってとこに行きたいんだが。

確か造船で栄えた町だったよな?」

 

 

 「おう、よく知ってるね。あそこの船は世界政府御用達ってほどらからねぇ。

優秀な船大工もいっぱいいるれよ。ここから北らがそこに行くのかい?」

 

 

 「ああ。この船、飛ぶのはいいんだが海に浮かばねーのよ。

改造とはいかなくても、なんか知恵をもらえたらな~と」

 

 

 「んがががが‼そりゃおめェ面白い‼」

 

 

 「え⁉あの船浮かばないの⁉」

 

 

 チムニーがビックリしている。そりゃあ空飛べるのに沈む船なんておかしいよな。

しょうがないの、そういう設計だから。海での運用を想定してないから。

 

 

 

 

 

 ココロばーさんが「ちょっと待ってな」というので待機中。

その間に一本海列車が通過し、エネルが大層驚いていた。

 チムニーに解説してもらって、ふんふん頷いてた。

 そういえばこの世界、蒸気機関ってあまりみかけないな……。

 

 

 「おうお待たせ、コレ簡単な島の地図と紹介状ら。

コイツを”アイスバーグ”って奴に見せるといい」

 

 

 「おお、ありがとうばーさん」

 

 

 欲しかった紹介状をもらえてラッキーと思っていたが

よくよく考えると、あまり大人数にこの船を見せるのは危険か?

 この世界で飛行船なんてオーバースペック過ぎるかもしれん。

 

 

 まぁ、なんとかなんだろ。最悪アイスバーグさんにだけ見てもらおう。

 

 

 「エネル、そろそろ行くぞ」

 

 

 そういうとエネルは頷き、こっちに来る。なんか妙にゴンベに懐かれているな。

 

 

 「あたし達も近いうちにウォーターセブンに帰るから‼」

 

 

 「そんときゃなんか奢ってやるよ。んががが」

 

 

 「期待してますよ。それじゃ、色々ありがとうございます」

 

 

 「また会おう……」 

 

 

 エネルが何故かゴンベと言葉を交わしている……お前ホントどうした?

そう思いながら、マクシムに戻り船体を動かす。

 

 

 「気をつけてね~‼」「ニャー‼」

 

 

 

 

 

 「なぁエネル……」

 

 「なんだ?」

 

 「お前、あのウサギ?妙に気に入ってたな」

 

 「ああ、動物と話せるのは新鮮だった」

 

 「ふ~ん」

 

 

 

 

 

 ……て、ちょっと待て。

 

 

 

 

 

 「はぁ⁉おま、喋れんの⁉」

 

 

 「なんとなくだが、心綱で伝わってきたからな。空島ではわからなかったが」

 

 

 「覇気が強化されたせいか……?」

 

 

 覇気の強化に伴い、とんでもな副産物が生まれたようだ。

 

 

 「あのような生物にも、色々あるのだな……」

 

 

 やっべ~、神様やめてからの方が神様っぽいってどういうこと?

まぁ、無駄にはならなそうだからいいけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「見えたな」

 

 

 ようやっと島が見えたのでマクシムの高度を海面ギリギリまで下げる。

正面から行くわけにも行かないので、初めから裏町に回る。

 ちょうどよさそうな場所があったのでそこに停泊させる。

 

 

 「これが……青海の大地か……感慨深いものだ」

 

 

 先に船を降りたエネルがつぶやく。土を手に取り感触を確かめる。

 

 

 「神の島(アッパーヤード)とは、また違うようだ」

 

 

 「そりゃ島によって土も違うし、環境も、住んでいる人も違う」

 

 

 「成程な。これもまた”未知”か。それで?」

 

 

 「あん?」

 

 

 「これからどうするのだ?」

 

 

 「そうだな……とりあえず最初に行くべき場所は決まっている」

 

 

 あれがなけりゃなにも出来ないからな。黄金を持って、換金所に行こう。

 

 

 

 

 

 「あのサイズで50万ベリーとは……」

 

 

 俺は正直黄金を舐めていた。ある程度の金にはなると思っていたが……

 

 

 「ふむ、やはり黄金は青海で貴重品なのだな」

 

 

 エネルが雷治金(グローム・パドリング)で作った黄金のインゴット。

まさかあんなサイズでこんな金額になるとは……

 もしかしたらぼられた可能性もあるが、船にまだ黄金はあるしいいや。

 

 

 「ほい、とりあえず10万渡しとく」

 

 

 「……何故だ?」

 

 

 「色々見て回りたいだろ?その金は使い切ってもいいから楽しんでこい」

 

 

 換金所に来るまででも辺りをキョロキョロ見てたからな。

ガキじゃあるまいし、と思ったが目に映るもの全てが新鮮なのだろう。

 

 

 「ふむ、そういうことならありがたく頂こう。ソラはどうするのだ?」

 

 

 「俺は必要な物買ったら、アイスバーグさんを探すよ」

 

 

 もし改造するんなら、どの位時間がかかるかわからないし。

アクア・ラグナに捕まるのは御免だからな。

 

 

 「そうか。私も終わり次第、船に戻ることにする」

 

 

 そういってエネルは目につけていたと思われる店に入っていった。

あの様子だといくらかかるか、丸一日くらいはかかりそうだな。

 

 

 

 

 

 「とりあえずは、こんなもんか……」

 

 

 食料、水、薬など最低限必要なもの。あとは衣類やら生活用品。

 それから偉大なる航路で必ず必要になる記録指針(ログポーズ)

いや~、あってよかった。売ってなければ他の海賊から強奪しないといけないトコだ。

 

 

 「そしたら、人探しと行きますかね……あれ?」

 

 

 アイスバーグさんを探しに行こうとしたら、エネルが帰ってきた。

すんげぇ大量の荷物抱えてるけど……まさかあの金使い切ったのか?

 

 

 「早かったな、観光はもういいのか?」

 

 

 「ああ、それよりも気になる事ができたのでな」

 

 

  その背には大きな袋を背負っている。荷物の中身はほとんどが本だった。

ジャンルもバラバラで統一性が見られない。小説、手記、医学書、童話などなど。

 

 

 「空島ではこういった書物は貴重だったため、あまりの蔵書量に驚いたぞ。

本屋、とは素晴らしい店だ。全て買ってもよかったのだがな」

 

 

 それを差し引いても買い過ぎだって……500冊以上あんじゃね?

 

 

 「まぁいいけどさ……と、そうだ。ちょっと頼んでいいか?」

 

 

 適当に歩いて探すつもりだったが、いいタイミングで帰ってきてくれた。

 

 

 「なんだ?今から私は忙しいのだが……」

 

 

 露骨に嫌そうな顔をする。そんなに本が読みたいか…… 

 

 

 「すぐ終わるよ。この島で”ンマー”って言ってる奴はどこにいるかわかるか?」

 

 

 空島スカイピア全域の”声”を聴けていたなら、この島もいけるんじゃ?

そう思い、口癖からアイスバーグさんを探してもらうことにした。

 

 

 エネルが目を伏せ、心綱に集中している。上手くいけば儲けもん位の気持ちだったが、

 

 

 「ふむ、奇妙な場所にいるな」

 

 

 「あん?中心街じゃなくてか?」

 

 

 「誰かと話しているようだが……」

 

 

 「見つかっただけラッキーだ。方角だけ教えてくれ」

 

 

 「ああ。ここから……」

 

 

 方角を聞き、そちらに空を駆けていく。しばらくすると見えたのは

 

 

 「たしか……廃船島だったか……」

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ンマー、今日もしつこい連中だった。こんな所まで呼び出して……」

 

 

 「っと、あなたがアイスバーグさん?」

 

 

 そこにはウォーターセブン市長にしてガレーラカンパニー社長。

世界最高峰の造船技術を持つ男、アイスバーグが居た

 

 

 空から話しかけたら、すっげぇ面白い顔になってたけど。

 

 

 

 

 




ようやくウォーターセブンに到着しました。
飛行船を目の当たりにしたアイスバーグさんの反応はいかに?

次回もよろしくお願いします。
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