よろしくお願いします。
その男は、”神”と呼ばれていた。
「私は……還るんだ……”神”の……在るべき場所に……」
まさしく”神”に相応しい強大な力をもっていた。
それは誰もが戦うことを諦めた、自然現象そのものを統べる能力だった。
「私の視界を妨げるものなど……この空にあってはならない……」
その力に惹きつけられ、多くの部下をもっていた。
もっとも、その男自身は自分の目的に使える駒程度の認識だったが。
「ヤハハハ……もはや邪魔は入らん……」
そして、元”神”を下し、その座に君臨し土地を奪った。
そこに住む人々は恐怖で縛りつけ、使える者は奴隷として使った、
自身の目的の為だけに、奴隷の如く人々を使い潰した。
そして、”神”に相応しき巨大な船を作り上げた。
「誰にも渡さん……あれは私にこそふさわしいものだ……」
順調だった。何の問題も起こらなかった。全て思い通りに進んだ筈だった。
もう少しで、望み焦がれたものが、手に入る筈だった。
「忌々しい青海人が……」
だが、たった一人の男によって、全ての計算が狂った。
その男には、”神”の力が通じなかった。島一つ落とす力すら打ち砕いた。
視界から幾度となく蹴落としても、何度も何度も立ち上がってきた。
そして一時的とはいえ、私をこの空から叩き落した。この偉大なる”神”をだ。
未だに、何故あの男に敗れたのか。聞いたこともない物質”ゴム”とはなんなのか。
どうして恐れずに私に向かってきたのか、疑問は尽きなかった。
少しだけあの男に興味があった。そしてあの男が来たと思われる場所にもだった。
”青海”と私達が呼ぶ、大地を生み出す世界はどんな場所なのか。
「まぁいい……今は……」
だが、今はそんなことに構ってはいられなかった。
その男との戦闘により、損傷が激しいこの船は飛ぶことのみで限界だった。
全てはあの場所に着いてから考えればいい。まずはそこからだ。
「さぁいこう”マクシム”」
本来、この時点で邪魔は入らないはずだった。
それもそのはず、ここは上空数万メートルの超高空。
何者も立ち入ることも出来ないまさしく神の領域なのだから。
「夜に目映く浮かぶ、あの神の世界……夢の様な果てしない大地……」
だが
「”
その男は
「あ~、ちょっと待ってくんない?」
神の領域に、突如として現れた。
こうして2人の男は巡りあった。空を統べる男と、雷を統べる男。
その姿を、”神”が目指した大地だけが、静かに見つめていた……
あの世界において、飛行船は絶大な価値があると思います。
偉大なる航路はともかく凪の帯なら楽に越えられそうですよね。
次回もよろしくお願いします。