「ニニャさん、後ろに下がっていて貰えますか。私が片付けますので」
「ぇ……、オーガですよ!?僕も魔法を―」
「いえ、ほんの…………そう、肩慣らしですから」
実際に魔法のダメージを実験してみようじゃないか。確か、第三位階が一流だったか。
空腹でへばってたり、情けないところを見られたからな。
ズバっと第三位階の魔法でも放って、少しは格好良いところを見せてみるか。
年下の子から格好悪い大人だと思われたままなのは辛いしなぁ……。
取りあえず《火球/ファイアーボール》でも撃って牽制してみるか。
腰から杖を取り出し、魔法を頭に描いた時―――――
心臓の鼓動が大きく響き、体の奥から踊るようなリズムが溢れ出す。
(あれ、体が………勝手に……!)
流れるように相手に半身を向け、左手で顔を覆い、右目だけを相手に向けたのだ。
厨二病で検索したら真っ先に出てくるであろうポーズ。
まさにキング・オブ・厨二あるあるポーズである。
(何だこれ……何だこれぇぇぇ!!)
そして右手に持った杖を相手に突き付け、口が勝手な言葉を紡ぎ出す。
「闇に抱かれろ―――――《火球/ファイアーボール!》」
(何だこの台詞はぁぁぁぁ!やめてぇぇぇぇぇぇ!)
モモンガの心の絶叫と共に火球が放たれ、オーガの全身が炎に包まれる。
カンストプレイヤーであるモモンガの放った火球はオーガを一瞬で炭化させ………
分子レベルで溶解したのか、後に残ったのは僅かな液体のみである。
火球と言うより、豪炎と呼ぶに相応しい威力はオーガどころか後ろにあった森の一部まで吹き飛ばし、プスプスと黒煙を上げさせていた。
これだけでも大変な惨事であると言うのに、この口はまだ勝手な台詞を紡ごうとしていた。
モモンガが必死に歯を食い縛り、口を閉じようとするが、
まるで「そうする事が自然である」と言わんばかりにスラリと言葉が出た。
―――――燃えたろ?
静寂が、世界を包む。
モモンガは余りの事態に、そして自分に何が起こったのか分からず呆然としていた。
斜め後ろに居たニニャも目を見開き、口を半開きにして自分を見ている。
ち、違うんです……これは、俺の意思じゃない……!
ヤバイ……ヤバ過ぎるだろ……!こんなの、どんだけ痛い人だって思われるか……!
「いい歳して厨二病ですか(笑)」とかって、笑われるじゃないかぁぁぁ!
俺の、後輩に慕われる先輩計画が………。
《銀河の鼓動Ⅴ/ギャラクシービート》
流星の王子様からの派生スキル。
適応されている魔法やスキルの使用に対し、入力したポーズと台詞をランダムで発動する。
攻撃時や、ダメージを負った時なども適用範囲内であり、バリエーションは実に豊か。
レベルと共に登録可能数が増加し、カンストになると7777の登録が可能となる。
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「ち、違うんです……ニニャさん、これは勝手に……」
「――――ヵ」
「……蚊?」
「格好良い!!!!」
「え゛っ」
気付くと、トテトテと走ってきたニニャさんが目の前に居た。
両手の指を組んで見上げるように自分を見つめてくる。
やめて……今の俺を見ないで!
「い、今のは……!その、自分の意思ではなく、ですね………」
「凄いですっ!こんなの凄すぎますよ!」
「いや、凄いというか……魔法じゃなくて、ポーズというか……」
ダメだ、頭が混乱してうまく言葉が出ない……!
どうすればいいんだ、こんなの……つか、ニニャさんが何か近い……近いよ……。
誰か俺にこの状況を説明してくれ………!
「モモンガさん………本当に格好良かったです!特に最後の台詞なんて、」
「もうやめてぇぇぇぇぇ!」
別の意味で大惨事となったモンスターとの初遭遇。
モモンガは思った。
もはや、魔法を使いたくない………と。
原作でバンドラにあれだけポーズや台詞・変身などを設定していましたからね。
今作では自分でやって貰う事にしました(無慈悲)