緑に覆われた天の空、さざめく葉の隙間から陽の光が溢れ、露に濡れ、煌めく。鳥が唄い、風が木々を通り抜け、葉鳴りの音が耳に心地いい。薄暗くも明るく、静寂に包まれながらも、音が楽しい。そんな森に、コンコンと水が湧く泉がある。流れる水は水晶のように透き通り、せせらぎの音は耳に心地いい。
その美しい泉の中心から泡が上がる。三数える間も無く水飛沫も。跳ねる水と共に泉から現れたのは男だった。若い。歳は二十を超えたかどうかというくらいだろう。背中近くまで伸ばした白髪は艶やかに煌めき、濡れた翡翠色の瞳は緑柱石のように美しい。鍛え抜かれた鋼の肉体には大小無数の傷が刻まれており、歴戦の戦士だと見て取れる。
「………ふぅ、やはりここの水は良いな」
若者の名はリヴィエール・グローリア。剣の達人にして、魔法の名手。最強の魔法剣士としてオラリオはおろか、近隣都市にまで名を轟かせた冒険者。そして無類の風呂好きとしても一部では有名だ。この森に来た最大の目的は別にあるのだが、この泉に浸かるのも大きな楽しみの一つだった。
───本当はこんな事してる場合じゃないんだけどな
しかしオラリオからほぼ休みなく走り続け、漸く辿り着いたのだ。汗を流すくらいはさせてもらいたい。沐浴に一時間近くかけるのは長すぎだと思うが。
「……行くか」
必要最低限の衣服を身に纏う。軽く髪をまとめると泉の奥にある巨石で象られたドルメンへと足を進めた。
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「お前が教えてやれよ」
白髪の美男子が軽く言い放ったその言葉に誰もが驚愕する。言った本人すら少し驚いていた。ほとんど脳を経由せずに出た言葉だった。
「えぇえええ!?何言ってるのリヴィ君!ヴァレンシュタイン氏はロキ・ファミリアなのよ!」
「都市ならガキでも知ってることをわざわざ口に出すな。無論知っている」
「私の……というか私達の戦闘技術はフィンやガレス……リヴェリアに教わった物。それはつまり【ロキ・ファミリア】の財産」
「それを勝手に教える事はタブー。ファミリアで守られている暗黙の了解。だがそんな物今更だろう。アイツら俺にノウハウ教えちゃってんだし。文句は言えないし言わないだろ」
「私の前でよくいけしゃあしゃあと言えるな」
呆れたように隣に立つ緑髪の美女が息を吐く。
「間違ってるか?」
「けれども、だ」
「でも……リヴェリア以外にバレたら」
「なーに、そうなった時は全部俺が悪いってことにすりゃいい。俺からのクエストと言えばお前に咎はかからない」
「そうじゃなくて……」
「それに、これはお前のためにもきっとなる」
「え…」
「改めて誰かにモノを教えるってのは結構自分の技術に反映されるんだよ」
コーチ経験のあるものならわかるだろう。出来ることと理解していることは全く別物だ。理解していても実際にできないなんてよくある事だし、また逆に出来てもなんとなくしか理解できていない事も感覚派にはままある。
今まで感覚で出来ていた事を教えるためには考える必要がある。リヴィエールもアイズも感覚派だ。体捌きや立ち回りなど、『なんとなく』でやっていることも多い。センスや勘でやっている『なんとなく』を言語化しなければならない。これは意外と難しい。が、それが成れば『なんとなく』を理屈で説明できるようになる。理屈は自信となり、動きからは迷いが消える。身体能力やセンスが向上するわけではないが、戦闘中の一瞬が変わる。
冒険者は刹那を生きる。刹那で戦い、刹那に死ぬ。一瞬が変われば化けるには充分。
「師は弟子を育て、弟子は師を育てる。剣の真髄の一つだ。特にお前は手加減ド下手だからな。伸び代は俺がお前を教えた時よりあるだろう」
「ホント?」
「本当だとも。
アイズの目の色が変わる。強くなる事を誰よりも求めてる少女だ。そしてコイツも冒険者にとって刹那がどれほど重要かよく知っている。
「…………でも何を教えればいいの?」
「特別な事は何もしなくていい。適当に戦って適当に転ばせてやれ。お前の時と一緒だ」
アイズにも技術指導は多少したが、訓練では殆ど剣を合わせていただけだ。手取り足取りで身につけたモノは実戦で役に立たない。自分で見て、受けて、感じ、発見し、理解する。そこまで出来てようやく半人前だ。
「んでボコにしながら悪い所を指摘してやれ。改善しなかったら改善するまでボコる。そんでいい。それならできるだろ?」
「…………」
「なんだ、まだ不満そうだな」
無表情の中に抵抗が見える。リヴィエールの説明は強くなるための一環として非常に説得力があるモノだった。しかしそれ以上に魅力的な実力上昇方法が目の前にある。よく知らない駆け出し冒険者への指導より、リヴィエールが取り組む修行の方が遥かに魅力的だ。
「よし、なら条件をつける。コイツに5日指導すれば、そのあとは俺の修行について来る事を許す。修行場所はリヴェリアに聞け」
「わかった、やる」
即答だった。
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こうして絡まれてしまったアイズをなんとか置いて来る事には成功した。エイナにもこの場所を教え、ロキ・ファミリアから何か言伝があれば使い魔をこちらに送るように頼んだ。
「リーア。豊穣の女主人にコレを渡しておいてくれ」
二週間ほど出かけると書き留めた手紙を姉に預ける。アイシャとリューに宛てた物だ。直接会えばあいつらも着いてくると言いだしかねない。なら会わずにこの足で発つ方が面倒がない。
正直に言ってしまえば言伝もしたくないのだが、流石にそこまで邪険に扱うのは心苦しい。人によっては違うと言われるだろうが、リヴィエールの根はやはり善人だった。
諸々の準備と手回しを済ませたリヴィエールはすぐにネヴェドの森へと飛んだ。本来なら馬を使わなければいけない距離だが、白髪の剣士ならば自分の足で駆けた方が早い。【剣聖】の本気の走りは翔ぶが如く。ほぼ飛翔に近い速度で昼夜問わず駆けたリヴィエールはなんと一両日という驚異的な時間で目的地に到着した。
「あら、さっきぶりね」
「いや四年ぶりだろ」
「四年はさっきよ。私達にとってはね」
巨石塚の中に入り、呪文を口にしたリヴィエールは人魚達の歓待を受けていた。上半身肌色のみのマーメイドが白髪の青年の身体に絡みつく。ペタペタと来訪者の身体を触ってくるのは四年前と変わらなかった。
「それで?今回は偶然じゃないみたいだけど、何しに来たの?神巫様?ここに住む気になったなら歓迎するわよ」
「悪くない話だが、それはもうすこしテメエの人生を過ごしてからにさせてもらおう」
「じゃあどうして?」
神巫の血を継ぐ男は竦めた肩を直し、一度目を瞑る。目を開いたとき、その翡翠色の瞳は戦意の炎で燃えていた。
「武具の調達と、修行」
その瞳を見た時、人魚メイヴの胸に寂寥感が湧き上がる。彼女にとってはつい昨日のこと、とまでは言えないが、比較的新しい記憶とあまりに重なった。
───歴史は繰り返されるって、ホントね。
『エルフの修行だけじゃ限界があるのよ。私をもっと強くして』
【
▼
ロキ・ファミリア主催。深層遠征当日の早朝。まだ日も登らない時刻。オラリオのはずれにある小高い丘に一人の男が訪れていた。暗闇の中で白い影がぼんやりと輝きを見せている。闇に目が慣れるとウイスキーのボトルと真新しい花束が石標に備えられているのがわかるだろう。その前に男が座り、スキットルを傾けている。
男の名はリヴィエール・グローリア。絹のような白髪を背中まで伸ばし、砂色のローブを羽織っている。オラリオでも屈指の剣士であり、魔導士でもある。スキットルを持つ手は深い火傷の痕があり、ボロボロになっていた。
───思ったより早かったな
使い魔の伝書鳩によって知らされた遠征日は5日後。
欲を言えばあと5日は欲しかった。結局アイズも来なかったし。要因は色々あるのだろうが、物理的に間に合わなかったというのが最大の理由だろう。
「ま。済んだことを考えてもしょうがない、か。最低限はこなした。後は実戦でなんとかするさ」
登り始めた太陽に向かって苦笑を向ける。スキットルの中身を全て飲み干した。
「ようやく、一つの答えが見つけられるような気がするよ。ルグ」
目標到達階層、59層。そこに求める答えの鍵がある。そんな期待を消す事はできなかった。
「勘か?」
「勘だよ」
唐突に背後からかかった声に驚きはなかった。特に気配を消してもいなかったし、今のリヴィエールの感覚は凄まじく鋭敏になっている。
「ったく、なんでこの場所知ってるんだよ。リュー、アイシャ」
「リヴェリア様に教えていただいたのです。貴方が立ち寄る場所の心当たりはないか、と」
「そしたら多分此処だろうってさ」
軽く一つ嘆息する。軽々に人に言うなとは言ったのに。まあアイツなりに選んで話しているんだろうが。
「ここは、お墓ですか?どなたの?」
「違うよ。俺が勝手に置いてるだけだ。ココが一番太陽がよく見える場所だから」
その一言で二人ともこの場所の意味がわかる。瞑目し、黙祷を捧げた。
「で?何しに来た?黙って出てった俺に文句でも言いに来たか?」
「そんな事で一々怒ったりしないよ。私達、アンタの放浪癖はとっくに慣れっこだから」
「一応リヴェリア様に言伝を頼んでくれましたしね」
「じゃあなんだ」
「今日の遠征、私たちも付いていくわ」
流石に目の色が変わる。本気かと視線で語った。二人とも目を逸らさず、真っ直ぐにこちらに挑んで来ている。
「…………死ぬぞ」
「かもしれませんね」
「生きて帰れるか、俺すらわからん。やめるなら今だ」
「ごめんな。アンタが逃げないなら私も逃げない。逃げられないんだよ。アンタに『魅了』されちまってる私達はさ」
勝手に居なくなるのはいい。無事でさえいてくれるなら。待つのは慣れている。だが知らないところで死なれるのだけは我慢できない。戦うなら共に戦いたい。逃げるなら一緒に逃げたい。そして死ぬなら…
「アンタより後に死にたくない。それが戦いの中だって言うなら、特に」
ほら、私アマゾネスだし、と笑って付け足す。彼女達は戦いの中で死ぬことを誇りに思う人種だ。死ぬなら孫に囲まれてなどではなく、戦場か、ベッドの上。それがアマゾネスの誇りなのだから。
「貴方さえ生きて帰れないかもしれないというのならなおの事、私たちは黙って待っている事など出来ないんです」
「…………馬鹿め」
説得は無理だと悟る。俺が止めてもこいつらは付いてくるだろう。ならせめて俺の目の届く範囲に置いておく方がまだマシだ。
「カバーしてやれるかはわからないからな。自分の命は自分で守れ」
「わかってる。なーに、だいじょーぶさ。私こないだLv.4にランクアップしたんだ。足手纏いにはならないさ」
「貴方が死ななければ私も死にませんよ。私が死ぬとしたら、貴方の次です」
憤然と鼻を鳴らす。全く根拠になっていない。が、根拠のない自信というのは中々侮りがたいことをリヴィエールは知っている。
───本来、両手両足斬り落としてでも止めるべきなんだろうが…
「冒険者の冒険を止める権利は、俺にはないか」
立ち上がり、手に持ったボトルをひっくり返す。建てられた墓標が
───そうか、お前もそう思うか、ルグ
「俺の間合いから離れるなよ。手の届く範囲なら守ってやる」
「Yes, my lord」
「了解、ご主人様」
太陽に背を向け、歩き始め、その背中に頭の後ろで手を組む黒髪のアマゾネスとフードをかぶり直したエルフが続く。青年の腰に掛かった二振りの剣が揺れた。
▼
遠征当日、正午バベル前中央広場に集結した冒険者達は二つの部隊に分かれ、ダンジョンへと進行していた。先遣隊としてフィンとリヴェリアが一班を、ガレスが二班を指揮する形だ。まず第一班が大人数を通るための道を作る。その為、遠征に集まった手練れ揃いの中でも選りすぐりの精鋭が一班に割り振られる。
故にその中にアイズ・ヴァレンシュタインがいるのは必然だった。大きなトラブルもなく部隊は進んでいたのだが、彼女の表情は優れない。理由は主に二つ。一つは想像以上に遠征の決定が早く、リヴィエールの修行に同行できなかったためだ。この五日間、自分は結局あの白兎とレフィーヤの相手しかしていない。もちろんそのことに関して後悔はしていない。5日という約束を了承したのは自分だし、あの子との訓練した時間はそれなりに大変だったが、楽しくもあった。
オラリオの城壁で同じように二人で特訓していた日々を思い出す。剣を合わせて、打ちのめされて、悪い所を教わって、直していく。人を育てるという難しさと快感を僅かではあるが感じられた。
───リヴィも、こんな気持ちだったのかな?
不出来な弟子であると自覚しているアイズはこの五日間でますます彼への尊敬と敬愛を深めていた。だからこそ、この場に彼がいない事が不満で仕方なかった。
「いつまでむくれている」
7階層にまで到達した時、遂にリヴェリアが口を開いた。無表情が常のアイズの不機嫌に気づいた者はほとんどいなかったが、この姉に隠せるはずもない。
「定刻に来なかったんだ。仕方ないだろう」
「…………少しくらい待っても良かったはず」
「遠征隊がロキ・ファミリアのみの構成なら待ってやったがな。今回はヘファイストス・ファミリアも巻き込んでいる。彼らの許可なしに勝手な延長はできん」
リヴェリアの言い分は完璧な正論だ。椿にリヴィエールを待ちたいと言っていればあっさり許可は下りただろうが、それは別の話だ。魔導士であるリヴェリアが、オラリオ最強の剣士と世界最高の鍛治職人が親友を越えた関係だと知っているはずもない。
「ああ、そういえばさっきそんな事言ってたね。ハイ・スミス、それも【ヘファイストス・ファミリア】が同行なんて凄いじゃん!」
「ほー、なら間違っても足手まといにゃならねえな。安心した」
もう一人の不機嫌が話に入ってきた。ベート・ローガ。【凶狼】の二つ名を持つ実力者なのだが、少々高慢で人を見下す癖がある。ファミリア内でも彼を嫌っている人間は少なくない。この一匹狼に気安く接している者はそれこそリヴィエールくらいのものだろう。本人は蛇蝎のごとく、あの白髪の剣士を憎んでいるが、リヴィエールは周りほど彼に悪印象は抱いていない。この口振りも自身のコンプレックスの裏返しと分かっていれば可愛いモノだ、とは本人談である。
「ベートのそういうとこキラーい」
「けっ、雑魚に雑魚と言って何が悪い。身の程を知れってんだ」
「フン、リヴィエールを雑魚呼ばわりし、挑み続ける貴様の方が余程身の程を弁えていないと思うが?」
「うるせえぞババアっ!喧嘩ってのはてめえが負けを認めなきゃ負けじゃねえんだ!」
「…………敗北を認められないことこそを身の程知らずって言うんじゃないですか」
不機嫌なアイズから漏れた言葉の槍が狼の心臓を的確に射抜く。他の者が言ったなら躍起になって言い返す、もしくは力に訴えかけたかもしれないほどの発言だったが、アイズが相手では何もできない。クラクラとふらつきながら膝を折った。
「どうしたのよ、ティオナの石頭でも食らったような顔して」
「ティオネ酷くない!?」
その場にいた人間ほぼ全員がベートに『ザマァ』と心の中で罵声を浴びせたその時…
「四人、かな」
慌てた様子で奥から冒険者達が走ってくる。基本的に他ファミリアのパーティには不干渉、というのがダンジョンのルールなのだが、興味あるモノにはなんでも首を突っ込むティオナがその四人に話しかけてしまう。慌てた様子で告げられた内容はアイズの心をかき乱すのに十分な内容だった。
「ミノタウロスが出たんだって!あの化け物がこの上層で現れて、白髪のガキが9階層襲われてたんだ!」
その一言を聞いたアイズの心臓が一つ大きく跳ね、全身から冷たい汗が噴き出した。動揺と混乱、危機感が彼女の足を無理やり動かす。隊列が乱れるのも気にせず、気がついたら走り出していた。
───あの子が襲われてる!
たった5日だが共に打ち合い、眠り、修行をした少年。しかも彼はリヴィの仲間だ。放置することなど出来るはずもない。仲間を失うことをあの白髪の剣士は何よりも恐れていることをアイズは嫌という程知っていた。
───私は子供の頃リヴィに助けられた。今度は私の番だ!
正規ルートを駆け抜ける途中、小人族の少女が自分に助けを求めてくる。その説明で事態を完全に把握した蜂蜜色の髪の剣士は教え子を救うべく、全力で駆ける。この速度を止める事ができるものなど、オラリオには片手の指で数えるほどしかいまい。
だが、その五本の指の一人が、大剣を着き、広間に厳然と佇んでいた。
「【
あのリヴィエールをもってして勝てるとは言い切れないと言わしめた、名実ともにオラリオ最強の冒険者。都市唯一のLv.7が、殺気をむき出しに自分に向かい合っている。それの意味するところはこの場での自分との戦闘。
「手合わせ願おう、【剣姫】」
「どいてください」
「かつて【剣聖】が言っていた。強さとは自分の意思を折らず、曲げず、貫き通すための力だと」
金眼の剣士の目尻が一瞬動く。アイズの琴線がどこか、良く知っている。
「貫き通してみろ。あの男が育てた剣士だというのなら」
「どいてっ!」
【猛獣の王】に【剣聖の姫】が打ちかかった。
▼
戦いは熾烈を極めた。
Lv.6に進化したアイズの目にも留まらぬ無数の剣閃をオッタルが弾く。一つでも入れば致命必至の斬撃を剛力と技巧で全て撃墜する。まさに頂天と呼ぶに相応しい激闘だ。アイズも充分最強の領域に足を踏み入れている。しかし、そのアイズをもってしても
ねじ伏せるのが最強の王に君臨する男の力だった。
「どこまで強くなる、お前達二人は」
完璧な防御を見せる男から漏れたセリフはアイズの耳には届かない。剣戟の音と焦燥が視野を狭めている。
「【
対人戦では封印していた枷を解き放つ。エアリエルの風がオッタルを襲う。しかし、巌となり立ちはだかるこの男は、風の斬撃程度では崩れない。
───その程度じゃ驚かない!
たしかに強い。コレが【猛者】か、と思わせるほどの武人だ。しかし…
「私はあなたより強い剣士を知っている!」
【リル・ラファーガ】
風の閃光が矢となり、真っ直ぐに王へと放たれる。己に迫る大風の閃光に対し、オッタルは大上段に振りかぶった。
「オォオオオオオオオオっ!!!」
力と力。剛の一撃が一本の筋となり、風の矢が穿刺となって衝突する。衝撃波が広間に響き、気流が暴れ、地面が陥没する──
より早く
「よぉし、そこまでだお前ら。剣を引け」
風の矢よりも素早い純白の閃きがするりと王と姫の間に割り込む。両手に握られた二振りの剣がそれぞれの一撃を受けていた。オッタルの大剣は真っ二つに切り裂かれており、デスペレートの剣尖は相手の腕をも気遣うように柔らかく流されている。対処の仕方に如実な差があった。
「いやはや流石だな。技の完成度、威力、練度、何よりも一撃に込める魂。双方素晴らしい一撃だった。しかしこんな力がぶつかり合えばどうなってしまうか、分からん男でもないだろうに」
「リヴィ!」
「やあアイズ。待たせたな。息災かい?」
「待ってた!会いたかった!」
乱入者の名はリヴィエール・グローリアと言った。
後書きです。社会人って忙しい!他の小説も書きたいのに全然書けないorz。でもダンまちは二期が始まる前に何とか更新したかった。待っている方などごく僅かだとは思いますが、他の小説も気長にお待ちください。それでは励みになりますので感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂けたら幸いです。