その二つ名で呼ばないで!   作:フクブチョー

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Myth18 面倒くさいと言わないで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんでそんな元気ないのさ」

 

いっぱいのグラスをチビチビと口に運びながら、暗い表情を浮かべる彼の事を心配と呆れの両方の色を込める。

 

「…………ちょっと自己嫌悪でな」

 

この短期間で2度目の自己嫌悪。後悔しない道を歩いているつもりだったが、最近は後悔ばかりしている。酒場であった一件はアイシャも彼から聞いた。聞いたところ、下衆を叩きのめした武勇伝にしか聞こえなかった。コレは身内の贔屓目ではなく、客観的な意見だと断言できる。しかし彼にとってはそうでもないらしい。

 

リヴィエールの脳裏を占めているのは、アイズに対して取ったそっけない態度。あの子はあの時、自分に何かを言おうとしていたのに、彼はそれを待たなかった。あの場から離れる事を第一に行動した。

それともう一つ。

あの時、ベートにした説教の言葉。

 

『酒に酔う男は酔い方しだいで絵にもなるが……酒と女と自分に酔ってる男は観れたもんじゃねえなぁ』

 

どの口でそんな事を言うのか。今の俺とベートにどれほどの違いがあるというのだろう。

こうして色街に身を隠し、酒に酔い、自身の不幸を盾に、身勝手な行動ばかり取っている、俺と。

自分の事を棚に上げて、ベートにそんな事を言い、挙げ句の果てにボコボコにした。全く呆れる。そして自己嫌悪に陥る事自体気に入らなかった。自己を嫌悪するという事は、自分の価値を高く持っているという事だ。

それは実力ある戦士として持つべき自負ではある。それでも……

 

「私はいいと思うけどなぁ」

 

隣でそんな言葉が聞こえてくる。慰めるような口調ではない。単純に自身が思う感想だった。

 

「人が歩いていればアリを踏み潰す事だってあるだろ?強い無理ならたとえ間違っていようと、道理は吹き飛ばされる。強さってのはそういうものさ」

 

実にアマゾネスらしい意見だ。強さこそが絶対の正義であり、その他の全てが無価値。たとえ理不尽が襲いかかろうと、それを跳ね除けられない弱さが悪い。そういう感覚。乱暴ではある。しかし明快で真実だ。

 

「ウルスには価値がある。自身の意思を貫き通す強さと覚悟がある。有象無象を無視し、踏みにじっても、それでも余りある価値がさ」

「確かに、オラリオは強さがあれば大概の無理は通るが…」

 

そんな生き方はしたくない。俺だって最初から強かったわけじゃない。理不尽に押しつぶされた事だって何度もあった。弱者の気持ちは少なからずわかっているつもりだ。それはルグが最も嫌った生き方だったはずだ。

 

「ルグ様に縛られ過ぎなんじゃないかい?アンタは」

 

ドキリと一つ心臓が鳴る。その自覚はあった。彼の行動原理は良くも悪くもルグだ。

 

「アンタってルグ様の事に関してはホント面倒くさいよね。他は水臭いけど、面倒くさくはないのにさ」

 

痛いところを的確に突かれる。その自覚は自分でもあった。

 

「もっと自由に生きなよ。アンタはまず自分の幸せを求めるべきだと思う」

「…………俺の幸せ、か」

 

そんなものに価値を感じなくなったのはいつだったか。何もかもを憎むようになった幼年期。そしてルグに救われた少年期。そして今。求めているのは自分の存在価値だった。

 

「ワガママの何が悪いのさ。そのワガママこそが世界を進化させてきたんだから」

 

乱暴な言い分ではあるが、それも一つの真実だ。自分勝手とは即ち人の欲。欲は多過ぎれば身を滅ぼすが、その欲がなければ、人の進化はありえない。

 

「ワガママの何が悪い、か。お前らしい。実にな」

「なんか文句あるかい?」

「ないよ。好きだぜ、お前のそういうトコロ」

「でしょ?」

 

肩に重みを感じる。目を閉じ、男の体温を全身で感じるように、アイシャは身体を預けてきた。

 

ーーーーありがとう、アイシャ

 

自己嫌悪が消えたわけではないけれど、それでも少し、軽くなった。引きずり過ぎて、すり減ったのかもしれない。

 

「…………ワガママで思い出したが、イシュタルの方は最近どうなんだ。もう充分に成功を収めているじゃないか。フレイヤへの敵愾心が薄れてもいい頃だと思うが」

「神の欲に際限はないさ。知ってるだろ?」

「女神の嫉妬のメンドくささもな……しばらく様子見の必要はあるか」

 

今度子飼いの情報屋にあの石の動向について少し調べさせるか。

 

グラスの中の液体を空にすると、持っていた荷物を置いて立ち上がった。

 

「さて、少し出る。お前は寝てろ」

「ええ!?ヤンないどころか泊まっていきもしないのかい?!イロのところに来て酒まで飲んだらやる事はもうひとつしかないじゃない!」

 

一か月ぶりの逢瀬でこちとら完全にヤル気スイッチが入ってしまっている。確かにシャワーとか少し浴びたかったが、そんな事は二の次だ。もういつでもウェルカムの状態でいたというのに。

 

「悪いな、表で少し気掛かりな事があって。埋め合わせは必ずするから」

 

酒場から逃げ出した白兎の事が引っかかっていた。あの後、彼は恐らくダンジョンに向かったのだろう。ことのあらましをアイシャに告げる。

 

「…………そいつも駆け出しとはいえ冒険者なんだろう?なら生きるも死ぬもそいつ次第じゃないか。お前が出張る必要ないだろう」

「俺もあまり手出しをする気はないんだが、一応無事の確認くらいはしておこうと思ってな。あれで死なれたらさすがに寝覚めが悪い」

 

此処に備蓄している薬品を数種類取り出し、腰に剣を差す。今、此処に立ち寄ったのはこの薬品を取りに来たからだった。

こうなってはもう彼を止める事はできない。腕ずくというのも考えたが、白兵戦でこの男にかなうものなどオラリオにはいないだろう。ハンガーに掛けていたローブを外し、彼に着せる。

 

「確認したら帰って来てよ」

「当分は此処で寝泊まりするつもりだ。心配するな」

 

頬に軽く口付ける。男のバカになんだかんだで理解をしてくれるアイシャはいい女だと言えた。

 

「行ってくる」

「あんたの事だから大丈夫だとは思うけど、気をつけなよ。あと、埋め合わせ、期待してるから」

 

最後にもう一度口付ける。人工的な甘い匂いではない、彼女自身の香りが鼻腔を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……」

 

ダンジョンから地上へと出る。オラリオにはもう眩い朝日が差し込んでいる所だった。背負った重みを背負い直す。彼の背中にはボロボロの白兎が担がれていた。

 

ダンジョンの上層を中心に探していたら、6層近辺で倒れている姿を発見した。見つけた時は流石に驚き、そばに駆け寄ったが、気絶しているだけであり、とりあえず胸を撫で下ろした。

そこから周囲を見てみると、多くのモンスターの死骸が彼の周辺に横たわっていた。リヴィなら朝飯前に倒せる程度の数だったが、レベル1の駆け出し冒険者にしては中々の成果と言える。

 

ーーー強くなりたい、か。

 

薄れゆく意識の中で俺の姿が見えたのか、彼が紡いだか細い一言。冒険者として当然の願いと言える。強さを求めない冒険者などほとんど存在しないだろう。それを求める事が悪いとは言わない。

 

ーーーただ、少し、この子の想いは純粋(しろ)過ぎる。

 

限界を越えて戦い続けたであろう彼の姿を見て、思った。冒険者になったばかりのアイズを思い出す。真っ直ぐすぎて、いつか折れるとゴブニュが評した彼女の姿とこの白兎が重なった。

 

ーーー【憧憬一途】……限界を越えてまで叶えたい一途な憧れ、か。

 

一途というのは一つの才能だ。この都市で、この年までそのままでいられたことは素晴らしい。けど駆け上がる内に彼に襲いかかる悪意はより強く、そして濃くなるだろう。その時、純粋(しろ)いままでは……危うい。

 

そうこうしている内に、ホームであるうらぶれた教会に辿り着いた。リヴィは、そのまま地下部屋へと向かう。ドアを開けると、部屋の中でオロオロと歩き回っている女神がいた。

 

「リヴィエール君!!ベル君!!」

 

恐らく寝ていないのだろう。憔悴した様子のヘスティアが、部屋に入ってきた人物達を見て、表情を明るくする。

だが、すぐに満身創痍のベルを見て青ざめた。

 

「ベ、ベル君!? ど、どうしたんだい、その怪我は!?まさか誰かに襲われたんじゃあ!?」

「まあ、間違っちゃいないな。自分から襲われに行ったというのが普通と違う所だ」

「リヴィエール君、どういうことだい?」

「詳しい話は後だ。治療する。ヘスティアは湯を沸かして、清潔なタオルを用意してくれ」

「わかった!」

 

懐から持ってきた薬品を傷に塗り込んでいく。職業柄、怪我には慣れているからか、その手際は流石に流麗で淀みがない。

ヘスティアが持ってきたタオルを湯につけ、体に着いた泥や血を拭う。ある程度綺麗になった所で、包帯を巻いて、手当てを施した。

 

「いっ……」

 

薬が傷に沁みたのか、呻き声を上げ、目を覚ます。深紅の瞳が頼りなく揺れ、リヴィエールを捉えた。

 

「リヴィエール……さん」

「よう、起きたか」

「…………此処は?」

「ホームだ。安心しろ」

 

ダンジョンにいたはずの自分がホームに帰って来ている。それが何を意味するか、ベルはすぐに察した。眉を下げる。

 

「すみません……」

「何だ?謝らなきゃいけないようなことしたのか?」

「僕、ダンジョンで気を失って……酒場では僕のせいでリヴィエールさんまでバカにされて……迷惑かけて……本当にすみません」

 

ーーーそうか、この子は自分よりも誰かの為に強くなれるタイプか。

 

かつての主神を思い出す。そんな強さがある事をあの人に教えてもらったから。

 

「昨日からおまえは謝ってばっかだな」

「ーーーっ!?」

「謝罪ってのは口にすればするほど価値が軽くなる。本当に済まないと思ってるならあまり簡単に口にするな」

「す、すみませ……」

「脳みそ入ってんのか、この真っ白な頭には」

 

包帯を巻き終え、パンと一度平手でたたく。取り敢えずの治療は終わった。

 

「神様も……ごめんなさい。心配かけてしまったみたいで」

「本当だよ、君のそんな姿を見せられた時は心臓が潰れるかと思ったよ?君に死なれちゃったら僕は悲しいぜ?気をつけてくれよ」

「は、はい」

 

薬のビンを数本、テーブルに置くとリヴィエールはローブを羽織り、立ち上がる。気掛かりだった事は片付いた。もう此処にいる意味もない。

 

「リヴィエールさん!」

 

名前を呼ばれた。その声音があまりに一途な色がこもっていた為、足が止まる。

 

「僕……強くなりたいです」

 

夢現に紡がれた言葉とは違う。彼の憧憬の一人であるリヴィエールに対して放たれた挑戦状。フッと口元が綻ぶ。

 

『まず貴方が優しくなってください』

 

下手に夢を見せないため、なにも言わずに出て行こうとした時、彼の中でこの言葉が響いた。

 

ーーー……そうだったな、ルグ。

 

1年前の朝日に約束した事を思い出す。あの太陽の神から貰った恩を、また他の誰かに返す。そしてまたその誰かがその恩を誰かに渡していく。そうする事で、ルグが望んだ優しい世界の一助となれると思うから。

 

「なれよ、強く」

 

扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めた。誰かが部屋に入ってくる気配と衣擦れの音で。眠りが浅かったのかもしれない。

 

ふと外を見ると、まだ日が昇ったばかりという時間帯だった。明け方、野暮用があるとこの部屋から出ていった男が帰ってきている。

 

「おかえり……」

「おっと、起こしたか。悪いな」

 

上着を脱ぎ、ラフな格好へと着替えている。薄っすらと汗をかいているようだ。恐らく外で鍛錬を終えたばかりなのだろう。シャワーを浴びる用意をしていた。

娼婦にとって身を清める事は仕事の一つだ。歓楽街なだけあって、防音と入浴設備はどの長屋もしっかりとしている。リヴィエールがこの区域を隠れ家に選んだ理由の一つである。

 

「なんか作ろうか?」

「いーよ、お前普段寝てる時間だろ?無理しないで寝てろって」

 

歓楽街の人間は夜が活動時間だ。日の入りと共に仕事を始め、日の出と共に眠る。通常の生活とは完全に逆転のサイクルを送っている。自警団たる彼女もその例に漏れない。リヴィエールがいなければ、この時間帯、彼女は間違いなく眠っている。

 

「アンタも寝てないんだろ?少し眠ったら?」

「1日2日の徹夜でどうにかなる鍛え方はしていない」

 

水音が室内に響く。熱い湯が彼の身体を洗い流していく。

 

「おい…」

 

鏡ごしに背後を睨む。狭いシャワールームの中に一糸まとわずアイシャが入ってきた。腕が回る。柔らかい感触が背中に押し付けられた。

 

「もう散々お預けくらったんだ。イイじゃないのさ」

「良くない。悪いがそんな気分じゃないんだよ」

「リヴィは何もしなくてイイよ。私に全部まかせてくれよ」

「おい、マジでやめろって。シャワー浴びた意味なくなるだろうが」

「また浴びればイイだろ……それとも私じゃ満足出来ないってのかい」

「そういう問題じゃなくて……あ、おい」

 

女性らしいほっそりとした褐色の指が下腹部へと這っていく。撫で方は完全に愛撫のそれで。

 

「顔見りゃわかるさ。疲れてるんだろ?眠らせてあげるよ、極上の心地で」

「…………」

 

いつの間にか正面に回り込まれていた。首の後ろに両腕を回し、背伸びする。目を閉じたアイシャの顔が目の前に迫る。艶やかな唇が、かすかな呼吸さえも感じ取れる距離にある。

数瞬後、動かない男に痺れを切らしたのか、女が唇を貪った。

 

「んんっ……はぁ、リヴィ……リヴィ」

 

熱に浮かされたように、彼の名前を呼びながら唇を啄む。少しずつキスは深度を増していく。

 

リヴィエールもそれに応えるようにアイシャの華奢な腰に手を回す。鍛えられたリヴィエールの太ももにアイシャが跨り、足を絡める。抱き合い、唇を重ねる。これ以上なく2人の体は密着している。ヘスティアに勝るとも劣らない豊かな胸は彼の胸板の上でいやらしく潰れている。まさに完全に身体を一つに重ねていた。

 

「リヴィ…リヴィエール」

 

慣れた滑らかな舌使いで、彼の首を、頬を、口内を蹂躙する。こちらを悦ばせる巧みなテクニックを誇るかのように、貴方のために磨き上げた技を褒めて欲しいと言わんばかりに、口内に舌をねじ込み、強烈なキスをする。

お互いの舌全体が重なり、絡み合い、粘膜が擦れ合う。ドロリと大量の唾液がアイシャから流れ込んできた。

 

「はぁむ…………ちゅる……んくっ」

 

飲んでくれと言わんばかりの彼女からの官能的な貢物。私はお前のものだというアイシャの主張さえ聞こえてくる。

 

「はぁっ………リヴィエール、お願い、もう」

 

さっきから跨がれた大腿部が尋常でないほど熱くなっている。シャワーの湯とは違う液体で濡らされている事も気づいていた。壁により、アイシャの左足を上げて抱きかかえる。

 

「行くぞ」

 

体ごと持ち上げ、沈める。何かが持ち上がった感覚と共に嬌声が浴室に響き渡る。アイシャの肢体が弓なりになった。

 

 

 

 

 

「ったく……」

 

結局シャワー浴び直すハメになった。ベタついた汗や唾を洗い流し、服を着る。もう外は完全に日が上がっていた。アイシャは生まれたままの姿で、幸せそうに眠っている。

 

ーーーー落書きしてやろうか

 

本気で考えたが、やめる。イヤガラセにしても子供っぽすぎる。そんな事をする意味もあまりない。

いつもの様に顔を隠し、部屋を出た。皆が寝ているこの時間帯なら、完全に顔を隠しても問題ない。

陽射しが目にしみる。眠った時間は一刻といったところのようだ。外は明るいというのに豪奢な街はまるでゴーストタウンのような静けさに包まれている。色街の眠る時間は日が昇ってからだという事は知っているが、これ程の建造物や文明が栄えている街が人間の活動する時間で静かなことが少しおかしかった。

 

ーーーまるで世界で一人だけになったみたいだなぁ

 

小さく零した。そんな小説を読んだ事がある。ある日唐突に世界でパンデミックが起こり、一人きりになってしまった人間。究極の孤独の中、愛犬と二人で生き、自身の命を犠牲にしながらも病に打ち勝ち、世界を救った男の物語。

 

凄いな

 

物語を読みながら、心底そう思った事を憶えている。ルグと出会うまで、リヴィエールもずっと孤独と戦っていた。それがどれほど強敵か、誰より知っているつもりだ。

 

ーーーーアンタなら出来るのかな……ルグ。

 

自分などより遥かに強く、偉大だった神を思う。彼女ならきっと出来る……いや、事実出来ていた。自身を俺に斬らせる事で、あの神は世界を救ったのだ。

 

ーーーー俺には無理だな

 

孤独に耐える事も、世界の為なんかに自身を犠牲にする事も、もう出来ない。彼が戦う事ができるのは、彼の剣が届く範囲のみだ。

 

『貴方が優しくなってください』

 

眩しい太陽を見上げた時、彼の中で輝く黄金の教えが木霊する。

 

『確信があります。私は貴方と出会う為に下界に降りてきました。今の私は貴方の為に存在します。そして私がそうであるように、貴方もまた、誰かの為に存在しています。そしてその誰かもきっとまた違う誰かの為に……そうやって世界は長い時をかけて紡がれてきたのです』

 

まだ出会って間もない頃、ルグが言っていた事だ。憶えている。あの時は綺麗事と鼻で笑った。

それは今でも思っている。けれどもうバカにするような事は思わない。

 

『だって、何事であっても、綺麗な方がいいに決まっているじゃないですか。貴方はとても綺麗ですよ、リヴィ。貴方にはいつまでもそのままでいて欲しい』

 

ーーーーわかってる、わかってるさ、ルグ

 

復讐を諦めた訳ではない。いつか必ず落とし前はつける。だがそれは修羅になる事なく、ルグの眷属としての誇りを持った、あの人が綺麗だと思ってくれる俺のままで成し遂げなければならない。

その時まではアンタから貰った恩をアンタが愛したこの世界に返していく。それが今の俺にできる唯一の恩返し。復讐よりも果たさなければならない、あの朝日と交わした約束をあの真っ新な白兎に思い出させてもらった。

 

止まっていた足を動かす。まだ吹っ切るには足りないけれど、自分のなすべき事は見えてきた。俺の復讐はとりあえず後回しだ。もう生きてる事はバレたんだ。俺を狙っているならきっと奴らから何か仕掛けてくる。俺の復讐に関してはそれからでいい。できるだけ周りを巻き込まないよう配慮はするが、もう不必要に人と距離はとらない。

まずはヘスティアとベルの為に動いてやろう。あまり過保護にはならないように、だが必要最低限の窓口くらいは作ってやろう。

その次は怪物祭について調べよう。あの時感じたイヤな予感はきっと大切な何かに繋がっているはずだから。

アイズ達のことは……とりあえず保留で。

 

無関係ではいられない相手だが、苦手なのもまた事実だ。アイズとリヴェリアは彼の唯一の弱点と言える。リヴィエールは意外とイヤな事は後でタイプなのである。

 

静かな街並みの中、一人分の足跡だけが通りに残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後書きです。今回はR15のギリギリに挑戦してみました。いかがだったでしょうか?ブレてるブレてると言われてきたリヴィエール君、ようやく落ち着いてきました。あまり嫌ってあげないで。女も面倒くさいですが、男も大概面倒くさい生き物なのです。それでは励みになりますので、感想、評価よろしくお願いします。面白かったの一言でも頂ければ幸いです。

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