遊戯王GX―とあるデュエリストたちの日々―   作:masamune

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第六十話 言葉にせずとも

 

 

 雨は降り止まず、窓を叩く音は少しずつ強くなっていた。

 すでに時間は深夜だ。本来なら学校の灯りは消えているべきなのだが、今はたった一部屋だけ灯りが点いた部屋がある。

 保健室――その部屋にあるパイプ椅子に腰掛けた女性、烏丸澪は腕を組んで瞑目していた。彼女の後ろには上半身を起こした夢神祇園の姿があり、正面には頭を下げる一人の少年とそれを見守る者たちの姿がある。

 

「――言いたいことは、それだけか?」

 

 しばらくの沈黙が流れた後、ため息と共に澪はそう言葉を紡いだ。ゆっくりと目を開くと、眼前で涙を一杯に溜めた状態の少年――丸藤翔が視界に入る。

 

「は、はい。お兄さんを――」

「――悪いが、その求めには応えられない。他を当たれ」

 

 言葉を遮り、言い放つ。えっ、と翔が声を上げた。

 

「ど、どうしてッスか!?」

「キミの論理がわからないわけではない。確かにカミューラとやらに私が勝つことは可能だろう。カムル、といったか。あの男を見て七星の力についておおよその予測はついた」

 

 それは自惚れでも何でもなく、ただの厳然たる事実だ。彼女が勝てると思ったならば、それはまず間違いない。伊達に〝祿王〟などとは呼ばれていない。

 

「だが、それはあくまでデュエル単体で考えた場合だ。これは試合でもゲームでも遊びでもない。殺し合いなんだよ、坊や。ならば、私は戦えない」

「どうしてだよ!? 澪さんならカミューラに勝てるんだろ!?」

「私が勝利したとしてキミたちの目的は達成できるのか、十代くん? キミたちの目的は丸藤くんとクロノス教諭の救出のはずだ。私が勝ったとして、それで二人が戻ってくる保証はない」

 

 その場の全員が表情を変える。ただ、背後の祇園だけは僅かに反応が違った。おそらく、彼は今渋い表情をしているだろう。

 この中では一番物事を現実的に捉え、常に最悪の事態を想定できるのが夢神祇園という少年だ。だからこそ、彼は気付いている。

 

「……最悪の場合、二人は戻って来ないかもしれない」

 

 ポツリと祇園が呟く。待て、と万丈目が声を上げた。

 

「大徳寺が言っていたはずだ。闇のゲームに勝てばクロノスを元に戻せると」

「その可能性は今回のデュエルで潰えたと言っていい。――そうですね、大徳寺教諭?」

 

 澪が一番奥で成り行きを見守っていた大徳寺へと言葉を紡ぐ。大徳寺は重々しく頷いた。

 

「……カミューラは丸藤くんを人質に取ったにゃ……。次のデュエルでは、その二人を元に戻すことを取引の可能性に使ってくる可能性が高いのですにゃ……」

「そんな……!」

「カミューラを倒しても二人が戻らない。だから、彼女を倒せない――私はそんな論理は無視する。戻らぬと知りつつ、二人には犠牲になって貰う選択肢を選ぶぞ。そこは迷わない」

 

 言い放つと、翔が更に泣きそうな顔になった。そこへ追い打ちをかけるように澪は言葉を紡いでいく。

 

「言ったはずだ。〝相応の覚悟をしていくべきだ〟、と。少年が死ななかったから自分も大丈夫? 十代くんが勝利したから大丈夫? 物事がそう何度も上手くいけば苦労はしない。第一、クロノス教諭がそうなった姿を見ているだろう? その上で彼は戦った。ならば、その覚悟を私は『死の覚悟』と受け止める」

 

 それが現実だ。そしてだからこそ、烏丸澪は戦わない。

 この戦いにおいて彼女が傍観者を選んだ理由は、まさしくこれなのだから。

 

「そして、今回のようにキミが戦いの最中人質に取られたとしても私は迷わない。キミの犠牲の下に敵を討つ。だがそれを、キミたちは許すかな?」

 

 無理だよ、と澪は微笑んだ。

 若き少年たちを、諭すように。

 

「キミたちが私を見る目は変わるだろう。大衆にどう思われようが構わんが、私が名を知るキミたちに避けられるのは私でも少々堪える」

 

 特に、後ろの少年にそう思われるのは辛い。あの日のような思いは、もうしたくないのだ。

 

「私では彼らを救えない。だから、戦えない。……期待に応えられず、すまないな」

「…………ッ!」

「おい、翔!!」

 

 背を向け、逃げるように保健室を出て行く翔。その背を十代たちが追おうとするが、それを大徳寺が言葉で止めた。

 

「追ってどうするのですか?」

 

 その問いは静かなもので、しかし、全員が足を止めるには十分な力があった。

 

「でも先生!」

「十代くん、キミが戦いますか? 人質をとられたら、その人質を見捨てることはできますか?」

「…………ッ」

 

 目を逸らしていたその現実に、十代が押し黙る。彼だけではない。その場の全員が同じようにその場に立ち尽くしていた。

 

「キミたちは優しいです。ですが、その優しさが殺し合いにおいては足枷となってしまいますにゃ」

「周りだけではなく、自分自身の命が人質に取られたとして。――それでもキミたちは、引き金を引けるか?」

 

 その問いには、誰も答えない。

 ただ、それでも。

 

「……わかんねぇ。わかんねぇよそんなこと」

 

 でも、と十代は言った。

 

「それでも、何もしないなんてできねぇ!」

「おい待て十代!」

「十代!」

 

 走り出した十代を追い、万丈目と三沢、隼人が保健室を出て行く。明日香もその背を追おうとしたが、自身の兄の姿を見て足を止めた。

 

「……キミも行け」

 

 そんな彼女に、澪は静かに告げる。振り返った明日香に対し、澪は更に続けた。

 

「キミの兄のことは私が看ているよ。少年もいる。……キミは行くべきだ。この戦いは本来、鍵を持つキミたちが背負うべきモノなのだからな」

「……天上院さん」

 

 背後から、どこか申し訳なさそうに祇園が彼女の名を呼ぶ。明日香は数瞬だけ迷いを見せた後、軽く頭を下げてきた。

 

「すみません」

 

 そして、彼女も駆け出していく。それを見送り、それでは、と大徳寺は言葉を紡いだ。

 

「私は退散しますにゃ」

 

 空気を読んだのか、そうではないのか。大徳寺も部屋を出て行った。

 残されたのは、未だ眠り続ける天上院吹雪と自分、そして祇園だ。雨の音が響く中、背後の少年の方へと振り返る。

 

「……幻滅しただろう?」

 

 自嘲するように笑って見せる。別に間違ったことは言っていないつもりだが、それでも思う部分はある。

 だが、祇園は首を左右に振った。……振って、くれた。

 

「澪さんの言うことは、正しいと思います。……僕は、覚悟が足りなかった」

 

 僕たちは、と言わないところは彼が彼たる所以か。まあ、どちらでもいい。

 問題は、彼の想いだ。

 

「実際、私もキミを人質に取られたら迷うよ。そして、迷いの果てに決断するだろう」

「はい。それが正しいと思います」

「だが、キミはきっと私を恨む。キミだけではなく、他の者たちもな。そうなるとわかっていて私は戦う気はないよ」

 

 合理的であるということは、イコールで誰もが納得するということではない。今回の亮についても、もし弟を見捨てていれば間違いなくそう思われていたはずだ。

『己の家族さえも勝利のために見捨てる帝王』――そんな風に。

 いつだってままならず、どうにもできない。だからこそ人というのは厄介なのだから。

 

「情けない話だ。弱いんだよ、私は。キミに嫌われたくないと思ってしまう」

「嫌うなんて、そんなこと」

「信じたいさ。だが、私は一度失っている。力ではどうにもならないことというのもまた、知っているんだ」

 

 こんな風に不安定なのは、何故なのだろうか。

 ……きっと、思い出してしまうからだ。

 己の世界が反転した、あの日を。

 己が〝バケモノ〟なのだと気付いた、あの日を。

 

 雨はまだ、止まない。

 まるで、彼らの心を現すように……振り続ける。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 鬱陶しい雨だ、と如月宗達思った。それどころかどうにも空気が辛気臭い。まあ、〝帝王〟が敗北したのだから当然かもしれないが。

 

(だが、ヤリザと雪乃によればデュエル自体はカイザーの勝ちだったって話だ。そう悲観することでも無いとは思うが)

 

 カイザーがデュエルにおいて完璧に敗北したというなら話は別だ。丸藤亮というデュエリストは、このアカデミア本校において間違いなく最強のデュエリスト。それが実力で敗北したとなると、一気にこちらの旗色が悪くなる。

 しかし、デュエル自体は相手を圧倒していたという。つまり、勝てるということだ。無論、容易くはないだろうが絶望的というわけでもない。

 

「何をそんなに悩むことがあるのやら」

 

 くあっ、と欠伸を漏らしながら宗達は呟く。雪乃と自分はあの後、祇園を保健室に運び込む手伝いをしてから出て来た。当事者でない以上、深入りはすべきではない。そもそもから雪乃を巻き込まないために宗達はここにいるのでもあるのだし。

 

『そう容易くは割り切れぬモノなのでござろう。……宗達殿も、奥方が人質に取られれば』

「そんなことにならねぇようにこうして傍観してんだよ」

 

 音もなく現れたヤリザの言葉に、欠伸を噛み殺しつつそう返答を返す。こうなることは予測できていた。だからこそ宗達は鍵を受け取らなかったのだ。

 

『彼らは学徒の身。宗達殿ほど物事を潔くは捉えられぬのござろう』

「だったらそれは本人の見通しの甘さだ。自己責任だよ」

『……戦士でないのであれば、そう容易く覚悟など決められぬでござる。民草が刃を持つ時は、国が滅びる時。古今東西ありとあらゆる国がそうして終わり、再生を繰り返してきたでござる』

「そもそも『戦士』がいないからなー。どうにもならん」

 

 結局はそういうことであり、それ以上の結論はない。

 ――戦いと、試合は違う。

 ただ、それだけだ。

 

「まあ、十代たちがどうにかするだろ。祇園は流石にしばらくリタイアだろうが、他は元気なわけだしな」

 

 忠告は散々した。それを聞かなかったのは本人たちの責任だ。こちらがどれだけその命を守ろうとしても、自ら銃弾の前に飛び出すような者は絶対に守れない。

 

『時々、宗達殿は〝こちら側〟のような目をするでござる』

 

 部屋に戻るか――そう思って立ち上がった宗達に、ヤリザがそんなことを告げた。宗達は僅かに苦笑を零す。

 

「まあ、何度か死にかけてるしな。祇園のことも他人事じゃねぇんだよ。俺にはこれしかねぇ。〝力〟で証明するしか、他人を黙らせるしか方法を知らねぇんだ」

 

 楽に生きる方法など知らない。これ以外のやり方など知らない。

 己が欲するモノは、こうでもしなければ手に入らないのだ。

 

『哀しい、生き方でござる』

「だろうな。……ん?」

 

 ヤリザの言葉に苦笑で頷くと、不意に食堂の扉が開いた。レッド生たちはとっくに寝ている時間だし、宗達は一応十代たちが戻ってくるのを待っていたわけだが――

 

「翔?」

 

 そこにいたのは、ずぶ濡れの翔だった。何してんだよ、と食堂の入り口で俯いている翔へと言葉を紡ぐ。

 

「風邪引くぞ。あと晩飯は一応置いてあるから、適当に温めて食え」

 

 以前は祇園が一人で作っていた寮の食事も、最近になって祇園以外の生徒も手伝うようになっている。この三日間は四苦八苦しつつ祇園が置いてくれているレシピ帳を利用していた。

 だというのに、どうも祇園のモノに比べて味が劣るのがどうにも不思議なわけだが。

 

(面倒臭そうだな)

 

 正直、先程から嫌な予感ばかりがするので宗達としてはさっさと立ち去りたい。ヤリザも気配を消しているし。……というかどこに行った。

 

 

「……………………宗達、くん」

 

 

 まるで幽霊のような――見たこともないし連中が喋れるのかどうかも知らないが――今にも消え入りそうな声だった。なんだよ、と息を吐きつつ問いかける。変わらず、翔は俯いたままだ。

 

「お兄さんを、助けて」

 

 床へと滴り落ちる滴は、果たして雨の滴なのか。

 強く、それこそ文字通り血が滲むほどに強く翔は己の拳を握りしめている。

 普通なら、ここで頷くのだろう。情にほだされるというのはそういうことだ。十代ならばすぐにでも飛び出すのだろうし、祇園でも迷いながら腹を括って共に戦うことを選ぶだろう。

 ――だが、ここにいるのは彼らではない。『如月宗達』である。

 

「他当たれ。俺は鍵の守護者じゃねぇ」

 

 安請け合いは決してしない。自分にできることを宗達は理解している。救える保障などありはしない状況で、リスクが大き過ぎる。そもそも、今回のことについて積極的に関わる気はないのだ。

 翔の横を通り過ぎようと歩を進める。だが、宗達の腕を引き留めるように翔が掴んだ。

 ……存外、力が強い。

 

「で、でも! 宗達くんなら……!」

「……オマエが俺のことをどう評価してるかなんざ知らねぇが、俺にできんのはカミューラとかいうババアをぶち殺すことぐらいだ。で、その結果としてカイザーを助け出せる保証は存在しねぇ」

 

 むしろ、助け出せる可能性は低い。翔がこちらの腕を掴む力が僅かに増した。

 宗達はそれを振り払い、食堂の壁に背を預ける。そのまま、第一、と静かに告げた。

 

「俺はリスクを負う気はねぇ。どう考えてもハイリスクローリターンな状況だろうが。最悪雪乃、時点で俺自身の命を人質に取られるんだぞ? オマエ、俺にそうしろっつってんのか?」

「……そ、それ、は……」

「こういう状況になることは予想できたはずだ。忠告もした。だが、カイザーはああなった。オマエの命を人質に取られて、最悪の選択をしやがった」

 

 翔は俯いたまま、何も言わない。宗達はそんな翔を見据え、尚も厳しい言葉を吐いていく。

 

「オマエを見捨てれば、オマエとクロノス、最悪二人の犠牲で済んだ。運が良ければ犠牲はなし、あるいは一人は助かっただろうな。だが、この状況じゃあ最悪で三人以上の犠牲が確定してる」

 

 カミューラを倒したとしても、それはおそらく人質の命と引き換えだ。そして、亮が自身を捨てたことにより、問題は更に重くなった。

 

「実質勝ってようが結果で負けてりゃ世話ねぇよ。俺はそんな甘さが生んだ結果の後始末をするために命を懸けるつもりはねぇ。優しさと甘さは違うんだ」

 

 翔は何も言わない。押し黙り、俯いている。

 その姿が、どうしようもなく苛立って。

 

「……ふざけんなよ、オイ」

 

 ――気が付いた時には、その胸倉を掴み上げていた。

 

「テメェふざけてんのか!? 俺はテメェの兄貴を馬鹿にしてんだぞ!? 言い返せよ――俺に掴みかかるぐらいのことしてみろよ!」

「――――ッ」

 

 翔の目がこちらを向く。だが、その瞳は変わらず……ただ、涙を称えるだけ。

 それが、余計に宗達の神経を逆撫でする。

 

「テメェのためにカイザーは命を諦めたんだぞ!? 後は任せた、ってそう言ったんだろ!? 頑張れとテメェに言ったんだろ!? 俯いてんじゃねぇよ!!」

 

 同時、食堂の扉が開く。ずぶ濡れの姿で入って来たのは、十代たちだった。

 

「そ、宗達!? 何してるんだよ!」

「落ち着け! 何があった!?」

「一旦離れろ!」

 

 万丈目と隼人の手によって宗達は翔から遠ざけられ、三沢と十代、明日香が座り込んだ翔の側に駆け寄る。どうしたの、と明日香がこちらを睨んだ。

 

「一体、何があったの?」

「気に入らねぇんだよ。カイザーが守った弟がここまで無様なんてな。……カイザーが報われねぇ」

 

 万丈目と隼人の腕を振り解き、吐き捨てるように言う宗達。だって、と翔が呟いた。

 

「どうしようも、ないじゃないか……僕なんかが、お兄さんを助けることなんてできないんだから……!」

「なら他人に頼るのか? ふざけんな。テメェは逃げてるだけだろうが。オマエ、俺に何て言ってんのか理解してるか? 『自分は安全なところから見ているから、人質を見捨ててでもカミューラを倒してね』――そう言ってんだぞ? そんなふざけた要求、誰が呑むかよ」

「ぼ、僕はそんなこと言ってない!」

「だったらテメェは現状の把握さえできてねぇド阿呆だってことだな。テメェが俺に言ってんのはそういうことなんだよ。他人に命懸けさせる要求しておいて、甘いことほざくんじゃねぇ」

 

 吐き捨てる宗達。言い過ぎだぞ、と三沢が言葉を紡いだ。

 

「兄があんな目に遭ったばかりだというのに……」

「知るかよ。敵討ちにも向かわず、俺に代わりに戦えなんて言えるぐらい余裕なんだ。気遣いなんて無駄だろうが」

 

 肩を竦める。翔は一度こちらを睨んだ後、背を向けて走り出した。

 

「翔!!」

 

 十代がその背を追おうとする。それを、宗達が腕を掴んで止めた。

 

「オマエが戦うのか、十代?」

「宗達……!」

「感情で物事は解決しねぇんだよ。カミューラを倒せば二人を救えるかもしれない。だが、救えないかもしれない。そして、人質をとられるかもしれない。勝つためには人質を見捨てるしかない。オマエ、腹括れんのか?」

 

 真っ直ぐに十代を見据える。宗達は手を離すと、できないなら、と言葉を紡いだ。

 

「追うんじゃねぇよ。半端な覚悟なんざ、邪魔なだけだ」

 

 そして、宗達は食堂を出る。雨の音が、強くなった。

 

「………………鬱陶しい」

 

 闇夜の雨を見つめながら。

 ポツリと、呟いた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「雨は好きか、少年?」

 

 どうでしょうか、と曖昧に微笑んだ。上手く笑えているかどうかは、わからなかったが。

 

「私は好きだよ。雨の中、誰かと並んで歩いている者は少ない。そんな時には、自分が一人でもいいと錯覚できる」

 

 少しわかるかもしれない、と思った。雨の中を仲良く歩く人は少ない。多くの人が足早に傘を差して歩いていく。

 そんな場所なら、一人で歩くことは『普通』のことだ。

 

「〝自由とは、雨の中で一人傘を差さずに踊ることだ〟――誰が言ったのかは知らんが、いい言葉だよ。だが、雨の中で踊っていたらそれは奇異の目で見られることになるのも当然だ。だから、多くの人間は『自由』というものを蔑ろにし、他と同じになろうとする」

 

 そうして出来上がるのが社会なのだろう。そしてだからこそ、人と違うということは社会において異端となる。

 

「昔の私はそれを理解していなかった。今も理解しているとは思えんし、今更のことではあるが……私にとっての〝普通〟は、他人にとっての――彼女たちにとっての〝異常〟だったのだろうと思う」

 

 それ以上のことを、彼女は語らなかった。きっと、踏み込んではいけない領域なのだろう。

 だから、無言で頷いた。それ以上のことは、できなかった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 激しい雨が、服の上から体を叩く。傘は差していない。どうにもそんな気分にならないのだ。

 

『雨に打たれるのは感心できぬでござるよ』

 

 別について来いと言ったわけではない。だが、当然のようにこの侍は自分の背を追ってきた。

 ありがたいと思う反面、心の隅で鬱陶しく思う自分もいる。……結局、如月宗達というのはそういう人間なのだ。

 一人でしか戦えず。

 誰かと共になど、戦えない。

 

「いいんだよ。こうやって腹括ろうとしてんだから。傘を差す、なんて義務はねぇ。雨の中、道の真ん中で踊ったっていい。それが『自由』だ」

『実際にそれを目にすれば、多くの者は目を逸らすのでござろうな』

「自由なんてのはそういうもんだ。手に入れるために人が死ぬんだぞ? 直視できるようなもんじゃねぇし、綺麗なもんでもないだろ」

 

 雨に濡れた髪が張り付き、少し鬱陶しい。それを掻き上げつつ、宗達は歩いていく。

 森の中を迷うことなく歩んでいき、そして目にした人物に宗達は大きくため息を吐いた。

 

「遅かったわね? 遅刻はいつものことだけれど」

「……何でオマエがここにいるんだよ、雪乃」

 

 藤原雪乃。宗達にとっては一番大切な人であり、今回の戦いから退いた理由だ。雪乃はその手に持った傘を軽く持ち上げ、背後の城を振り返る。

 

「待っていることを望まれているとはわかっているわ。けれど、私もそこまで物分りはよくないの」

 

 妖艶に笑う雪乃。正直15、6の女がする表情ではないと思うが、今更言っても仕方がない。

 

「どうなっても知らねぇぞ?」

「守ってくれるんでしょう?」

「一緒に死んでやるよ」

 

 そんな言葉を交わしつつ、当然のように二人は並んで歩き出す。その途中で、雪乃がふと宗達に思い出したように言葉を紡いだ。

 

「ああ、忘れるところだったわ。これ、渡しておくわね?」

「あん?……鍵なんてどこで」

「〝祿王〟から渡されたのよ。必要だろう、って言われてね」

「……オマエら妙に波長合うよな」

 

 差し出されたのは七星門の鍵だった。誰のモノかは何となく想像がつくが、まあどうでもいい。

 湖の上にある城は、雨の中でも一際不気味だ。自然に扉が開くところなど、徹底しているように思う。

 

「…………」

 

 そこからは、互いに無言。靴の音と、外の雨の音だけが響き渡る。

 奥へと歩を進める。そして、見たモノは。

 

 

「……………………宗達くん」

 

 

 泣きそうな表情でこちらを見る、一人の少年と。

 薄ら笑いを浮かべる、吸血鬼。

 

「…………」

 

 宗達は何も言わない。ただ、目を逸らさずにその光景を受け入れた。

 柔らかいモノが、床に落ちた音が響く。

 

「あら、またお客様かしら?」

 

 吸血鬼が微笑み、優雅に一礼する。宗達の側に転がる人形にはもう興味もないようだ。

 

「…………」

 

 優しく、その人形を拾い上げる雪乃。宗達は一度息を吐くと、雪乃、と背中越しに呼び掛けた。

 

「下がっててくれ」

「……ええ」

 

 雪乃が頷く気配が伝わってくる。それを確認し、宗達は一歩前へと歩み出た。

 へぇ、と変わらず薄ら笑いを浮かべるカミューラ。宗達は一度息を吐くと、正面から吸血鬼を見据えた。

 

「決闘の口上でも口にした方がいいのか?」

「中世の騎士ならそうかもしれませんわ」

「なら、別にいいか。お上品な試合をするわけでもねぇ」

 

 やろうぜ、と宗達は言葉を紡いだ。デュエルディスクを取り出し、構える。カミューラは肩を竦めた。

 

「中々いい男……けれど、鍵の守護者以外に用は――」

「鍵ならあるさ」

 

 雪乃より受け取った鍵を取り出し、宣言する。カミューラの表情が変わった。

 

「さっきのボウヤとは違う、と。……なら、始めましょう」

「ああ」

「あなたも人形にして差し上げますわ」

 

 そんなことを言うカミューラに、はっ、と宗達は吐き捨てるように言う。

 

「やってみろよ」

 

 そして、戦いが始まる。静かで、しかし、どこか寒々しい戦いが。

 

「「決闘!!」」

 

 戦いが始まる。先行は――カミューラ。

 

「私のターン、ドロー! 私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 立ち上がりは静かだ。宗達もまた、デッキトップに指を置く。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 手札を確認。相変わらずというべきか、手札は良くない。いつも通り、ちまちまとやっていくしかないのだろう。幸い、切り札は出せそうではあるが……。

 

「それにしても、敵討ちとは。人は時代が変わっても変わらないようですわねぇ?」

「……勘違いしてるようだが、俺は敵討ちに来たわけじゃねぇぞ」

 

 言葉と共に、宗達は魔法カードをデュエルディスクに差し込む。永続魔法『六武衆の結束』。『六武衆』の召喚・特殊召喚毎に最大二つの武士道カウンターが乗り、墓地に送ることでその数だけドロー出来るカードだ。

 

「手札より『真六武衆―カゲキ』を召喚。効果により、『六武衆の影武者』を特殊召喚する」

 

 真六武衆―カゲキ☆3風ATK/DEF200/2000→1700/2000

 六武衆の影武者☆2地・チューナーATK/DEF400/1800

 六武衆の結束 0→2

 

 二体のモンスターが並び立つ。へぇ、とカミューラが薄笑いを浮かべた。

 

「東洋の侍かしら?」

「バケモノを倒すのは、いつだって人間なんだよ。結束を墓地に送り、二枚ドロー。――悲しき乱世が、世界を統べる魔王を生んだ。シンクロ召喚!! 『真六武衆―シエン』!!」

 

 戦乱によって荒れ果てた世界を、その絶対的な力で統べた『魔王』とまで呼ばれた一人の侍。

 天下布武を夢見たかつての英雄は、今の世を見て何を想うか。

 

 真六武衆―シエン☆5闇ATK/DEF2500/1400

 

 血に染まり、いつしか紅蓮へとその色を変えた甲冑。

 魔王が――降臨する。

 

「バトルだ、セットモンスターへ攻撃!」

「セットモンスターは『ピラミッド・タートル』。戦闘で破壊されたことにより、『ヴァンパイア・グレイス』を守備表示で特殊召喚!!」

 

 ピラミッド・タートル☆4地ATK/DEF1200/1400

 ヴァンパイア・グレイス☆6闇ATK/DEF2000/0

 

 現れるのはヴァンパイアの女王。アンデット族限定とはいえ、守備力2000以下ならばレベルも関係なく呼び出せるその力は凶悪だ。

 

「俺はカードを二枚伏せ、ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!……さあ、闇のゲームの始まりよ!」

 

 カミューラの口が裂けたかのように広がり、同時、闇が溢れる。

 

「宗達!」

 

 雪乃の叫び。カミューラより放たれたどす黒い闇が、宗達の身体を包み込もうとして――

 

『――させぬでござるよ』

 

 一閃。銀色の閃光が迸る。

 闇を切り裂き、宗達の前に彼を守るように佇むは――蒼き侍。

 

「精霊……成程、さっきの坊やとは違うみたいね」

『恩人には指一本触れさせぬでござる。……故に宗達殿、決して早まってはならぬでござるよ』

「…………」

 

 言われ、宗達は手札へと視線を落とす。そこにある一枚のカード。

 どす黒い闇を放つそのカードを一瞥し、宗達はカミューラへと視線を移す。

 

「どうした? 来いよバケモノ。――ぶち殺してやるから」

「口の減らない餓鬼だこと……。けれど、忘れてはいないかしら? 人を喰らうのも、いつだってバケモノの所業。人の恐怖がバケモノを生み――夜の帝国を生み出したということを!!」

 

 哄笑。それと共に、カミューラが一枚のカードをデュエルディスクに差し込む。

 

「ヴァンパイア・グレイスを生贄に捧げ、『シャドウ・ヴァンパイア』を召喚!! 効果により、デッキから『ヴァンパイア・ロード』を特殊召喚!! 更にヴァンパイアの効果によってモンスターの特殊召喚に成功したため、2000ポイントのLPを支払うことで墓地から『ヴァンパイア・グレイス』を蘇生!!」

 

 シャドウ・ヴァンパイア☆5闇ATK/DEF2000/0

 ヴァンパイア・ロード☆5闇ATK/DEF2000/1500

 ヴァンパイア・グレイス☆6闇ATK/DEF2000/0

 カミューラLP4000→2000

 

 並び立つ、三体のヴァンパイア。更に、とカミューラは言葉を紡いだ。

 

「リバースカード・オープン! 罠カード『ヴァンパイア・シフト』! 自分フィールド上にアンデット族モンスターのみが存在し、フィールド魔法が存在しない時、デッキから『ヴァンパイア帝国』を発動できる!」

「――チッ。シエンの効果を発動! 一ターンに一度、相手の発動した魔法・罠を無効にできる!」

 

 シエンがその刀を振り抜き、それによってカミューラのヴァンパイア・シフトが無効化される。『ヴァンパイア帝国』はグレイスと相性が良く、発動されると面倒なカードだ。この場合は仕方がない。

 

「あら、残念ねぇ。けれど、ここからよ。――魔法カード、『幻魔の扉』発動!!」

 

 重々しい音が響き渡り、同時にカミューラの背後に巨大な扉が現れる。

 幻魔との契約者にのみ許される、禁断のカード。

 

「幻魔の扉は相手モンスターを全て破壊し、更に墓地のモンスターを一体蘇生できる効果を持っているわ」

『何でござるかその効果は!?』

「勿論、その代償もある。このカードを使った者は敗北した時、その魂を幻魔に捧げられる――んだけれど、丁度いい生贄もいることだし、私がリスクを負う必要はないわねぇ?」

 

 カミューラの視線が、宗達から離れる。同時、鈍い音が響いた。

 

『奥方!!』

 

 ヤリザの悲鳴のような声。雪乃は膝を降り、壁に背を預けて座り込んでいた。その隣には、まるで分身したかのように佇むもう一人のカミューラの姿がある。

 

「シエンは頂きますわ」

 

 風が吹き荒れ、吹き飛ぶシエン。そのまま、魔王はカミューラのフィールド上に移動した。

 

「…………」

 

 宗達は、ただ無言。睨み付けるようにしてカミューラを見据えている。

 そんな宗達の態度をどう思ったのか。カミューラは笑みを崩さずに宣言する。

 

「バトルフェイズ。――ヴァンパイア・ロードでダイレクトアタック!!」

「――――ッ!!」

 

 宗達LP4000→2000

 

 全身を衝撃が駆け巡り、激痛で意識が一瞬揺れた。正直体調は万全ではないのだ。

 

「私はターンエンド。……あなたも人形にしてあげるわ」

 

 酷薄に笑うカミューラ。宗達は一度大きく息を吐いた。

 

(さて、どうするか)

 

 横目で雪乃へと視線を送る。今すぐどうこうというわけではないだろうが、立てる状態ではないようだ。

 だが、ここでカミューラを倒せば彼女は――

 

(……勝算も、正直五分以下だしな)

 

 一応、対策自体は考えている。だが、上手くいく保証はない。むしろ上手くいかない可能性の方が高い。

 だから雪乃には来て欲しくなかった。一人で決着をつけるつもりだったのだ。

 ……けれど、それでも。

 見ていてくれることを嬉しく思うのは、贅沢なのだろうか。

 

「俺のターン、ドロー。――リバースカードオープン。罠カード『諸刃の活人剣術』。墓地より『六武衆』を二体蘇生する!」

「あなたのモンスターの効果を忘れたのかしら? シエンの効果により無効よ!」

 

 掻き消される蘇生カードの効果。宗達はもう一度手札を確認する。

 そして、ふう、と息を吐いた。

 

(腹、括るか)

 

 腹の奥に、何か重いモノが落ちたような感覚。

 どんなモノであれ、覚悟というのはどうしようもなく……重い。

 

「悪いな、雪乃。先に逝っててくれ。俺もすぐに逝く」

 

 視線を交わす必要はない。今更、そんなことが必要な間柄ではないのだ。

 

「……仕方ないわねぇ。いいわ、待っててあげる」

 

 返答は、苦笑と共に告げられる。

 本当に、自分には勿体ないほどのいい女だ。

 

「俺は手札より、永続魔法『六武の門』を発動。六武衆の召喚、特殊召喚時にカウンターが二つ乗り、数に応じた効果を発揮できる。俺は魔法カード『戦士の生還』を発動。墓地より『真六武衆―カゲキ』を手札に。そしてカゲキを召喚し、効果により『六武衆―ヤリザ』を特殊召喚。――出番だ、ヤリザ!!」

『――承知』

 

 真六武衆―カゲキ☆3風ATK/DEF200/2000→1700/2000

 六武衆―ヤリザ☆3地ATK/DEF1000/500

 六武の門0→4

 

 呼びかけに応じるように、青き侍が戦場に降臨する。

 その手に持った槍を誇り、恩人を守るという義を通すために。

 

『六武衆が一番槍、ヤリザ。――推して参る』

 

 その穂先をカミューラへと向け、ヤリザが言い放つ。カミューラが笑った。

 

「攻撃力1000のモンスターに何ができるのかしら?」

「六武の門はカウンターを二つ取り除くことで六武衆一体の攻撃力を500ポイントアップさせることができる。そしてヤリザは他に六武衆がいる時、直接攻撃の能力を持つ」

「何ですって!?」

「――終わらせろ、ヤリザ」

『御意』

 

 六武衆―ヤリザ☆3地ATK/DEF1000/500→2000/500

 

 その手に持った槍へと力が収束し、蒼き侍が地面を蹴る。

 正に神速。ヴァンパイアたちに反応を許さず、己の主君さえも置き去りに、ただただ敵の大将の下へと馳せ参じる。

 

『――覚悟』

 

 一閃。槍の一撃が、現代の吸血鬼を討ち抜いた。

 

「バケモノを倒すのは、いつだって人間だ」

 

 その言葉を切っ掛けとしてか、ソリッドヴィジョンが消えていく。だが、カミューラの背後にある扉は消えていない。

 

「ふ、ふふ、ふふふ……、けれど、勝負は私の勝ち……私の魂は無事よ!!」

 

 重い音を立て、扉が開いていく。雪乃、と宗達は叫んだ。

 座り込む雪乃の側へと走り寄る宗達。その彼の背を追うように、扉から無数の手が現れ――

 

「さあ、幻魔の生贄となりなさい!! ニンゲン!!」

 

 その叫びを背に、宗達は雪乃の身体を抱き締める。

 ヤリザの声が聞こえた気がしたが、彼は応えなかった。

 

「雪乃。……俺を、信じてくれるか?」

「今更、聞くようなコト?」

 

 彼女の言葉に、そうだな、と頷く。

 覚悟なんて、とっくに決まっていたのに。

 

「手を貸しやがれ――〝邪神〟!!」

『宗達殿ッ!!』

 

 制止の声も、最早遠く。

 混じり合うように、いくつもの闇が駆け抜ける。

 

 

 湖の上に浮かぶ吸血鬼の城。

 闇に彩られたその城が、崩れていく――

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 十代が目にしたのは、崩壊していく湖上の城だった。まるで引き摺り込まれていくように崩壊する城を呆然と眺める十代たち。

 

「一体何が……?」

 

 呆然と三沢が呟く。それとほぼ同時に、万丈目が悲鳴に近い声を上げた。

 

「く、クロノス?」

「……ナノーネ?」

 

 万丈目の腰に抱きつくような体勢で姿を現すクロノス。ええい、と万丈目がその体を引き離した。

 

「離れろ!」

「ひ、酷いノーネ!?」

「クロノス先生!」

「先生が元に戻ったんだな!」

 

 クロノスの下へ駆け寄る十代たち。クロノスは状況がわからず困惑しているようだが、特におかしな部分はない。

 良かった、という安堵の吐息が漏れる。そんな中、亮は、と明日香が声を上げた。

 

「亮の人形はカミューラが持っているはずよ!」

「そうだ、翔はどこだ!?」

 

 明日香の言葉に十代も声を上げる。城はもう完全に崩壊し、湖に沈み込んでしまっていた。

 まさか――最悪の想像に全員が顔を青くする。

 

「まさか湖に!?」

「何でこんな――」

「――大丈夫だ」

 

 湖の側に走り寄ろうとする十代たち。それを制止するように、一つの人影が現れた。

 ――丸藤亮。どこか険しい表情で、彼はそこに立っている。

 

「カイザー!!」

「心配をかけてすまない。……翔も無事だ」

 

 振り返った彼の視線の先。木の幹に背を預けて眠る翔の姿がある。顔色を見る限り、大丈夫そうだ。

 

「よ、良かった」

 

 十代がホッと息を吐く。しかし、亮の表情は険しいままだ。

 どうしたの、と明日香が亮に問いかける。亮は無言で、別の場所へと視線を向けた。

 そこにいたのは、ただ黙して湖を見つめ続ける一人の女性。

 ――藤原雪乃。

 

「雪乃……?」

「……俺と翔を救ってくれたのは如月だ。だが、その如月の姿はない」

「どういうことだよ!?」

「如月が……?」

 

 亮の言葉に十代と万丈目が声を上げる。亮は首を左右に振った。

 

「俺にも詳しいことはわからない。だが、そうなのだと説明を受け、納得させられるだけのモノを見た」

 

 亮自身もわかっていないことが多いのだろう。故に、本来なら全てを見ていたのであろう雪乃に話を聞くべきである。

 しかし、それはできない。

 完全に城が沈み、少しずつ静かになっていく湖を見つめ続ける彼女に声をかけることは、できなかった。

 

「――――」

 

 ポツリと、吐息のように彼女が呟いた言葉は。

 誰も、聞き取ることはできなかった。

 

 

 奪われた鍵の数――0。

 未だ、戦いは終わらず。

 

 

 









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