遊戯王GX―とあるデュエリストたちの日々―   作:masamune

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間章 〝最強〟への道標 前篇

 

 憤怒――その言葉の意味を、嫌というほど理解した日だった。どうしようもなく苛々し、同時に腹立たしい。

 悪意を向けられることは別にこれが初めてではない。だが、あれは。

 あんな風に悪意を向けられるのは……初めてだった。

 

「チッ……」

 

 舌打ちが零れてしまう。このまま寮に戻っても気分は悪いままだ。大分遅い時間になってきた以上、下手をすれば警察官に声をかけられる可能性もあるが……その時はその時だ。

 いずれにせよ、もう少し気分が落ち着かなければ帰っても寝れないままだ。折角目指していた学校に入学したというのに、初日から寝坊するのは頂けない。

 

「おっと」

「……ッ、悪ぃ」

 

 不意に誰かとぶつかってしまい、軽く謝罪する。そこまで強く接触したわけではないので、問題はないはずだ。

 だが――

 

「少し、待ってはくれないか?」

 

 呼び止められ、足を止めた。何か因縁でもつける気か――そう思いながら振り返る。まだ中等部に上がりたての子供とはいえ、体は同年代の者に比べて大きい。睨み付けると大抵が逃げていく。

 だが、振り返った視線の先にいた相手――自分よりもわずかに年上と思われる女――はこちらの視線に臆することなく、むしろ笑みを濃くした。

 

「ほう。もしやと思ったが、当たりか」

「……何だよ」

「濁り始めた目。くっく、なぁ、坊や。――どんな悪意をぶつけられた?」

 

 ざわり、と。全身の毛が逆立つような感覚が体を包んだ。

 相手が何かをしたわけではない。しかし、こちらを射抜くように見つめる視線に、体が震えた。

 何も言葉を返せず、黙り込む。それをどう受け取ったのか、相手は小首を傾げた。

 

「どうした? そんな顔をして。まるでバケモノでも見てしまったかのような顔だぞ」

「…………」

「だんまりか。一方的に言葉を紡ぐのは好きではないのだがな。キャッチボールが理想だが、残念ながら人にはそう器用なことはできない。精々が卓球か。いや、距離で言うならテニスの方が正しいのかもしれん」

 

 どうでもいいが、と女性は肩を竦める。そのまま、ふむ、と一つ頷いた。

 

「なりかけ、というところか。……なあ、坊や。時間はあるか?」

「……予定はねぇな」

「ほう。ようやく言葉を返してくれたな。嬉しいよ。……時間があるのならば、私とデュエルをしないか?」

「デュエル?」

「その鞄から見えているのはデュエルディスクだろう? 私も嗜む程度だがDMをやっている。交流としては悪くないと思うが」

 

 くっく、と笑みを零しながら言う女性。正直かなり怪しい上に今日はもうデュエルをするような気分ではなかったが……何故か、体は先に反応していた。

 

「ああ、いいぜ」

「それでこそデュエリストだ。……場所を移そうか。ここは人通りが多く、邪魔になる」

 

 その提案に頷き、女性の後をついていく。妙な女性だ。年の頃は自分よりも二、三歳上程度だろうが、纏う雰囲気があまりにも落ち着いている。

 いや、落ち着いているというのは少し違う。そう思いたいだけだ。

 得体の知れない、底の知れない霧のような感覚。それが、どうにも嫌なイメージを抱かせる。

 

「ああ、そうだ。先に言っておくことがあった」

 

 前を歩きながら、思い出すように女性が言った。眉をひそめる。相手はこちらの反応などお構いなしに、歩きながら言葉を続けた。

 

「私と出会ったことが幸運であるか否か。そんなことはどうでもいい。私にとってはな。キミにとってはどうかは知らんが……まあ、私には関係ない」

 

 いきなり何を言い出すのか――首を傾げてしまう。しかし、女性の言葉は止まらない。

 

「ただ、一つだけ。もしかしたら〝同類〟かもしれない相手だ。この言葉を送らせてもらおう」

 

 そこで、女性は僅かにこちらへと振り返った。

 こちらを射抜く、右の瞳。底の見えない漆黒の色を宿す、しかし、純粋ではなく濁ったそれが。

 

「――壊れてくれるなよ?」

 

 心を刺し貫くように――突き刺さった。

 

「いい天気だ」

 

 女性が空を見上げ、そんなことを呟く。

 ――ポツリと、鼻先に冷たい滴が触れた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 ゆっくりと目を開けると、思わず表情をしかめてしまう異臭が鼻を貫いた。随分慣れたと思っていたが、やはりふとした時に日本との差異を思い知らされる。

 別に恵まれた人生を送ってきたとは思っていない。だがそれでも、『日本』という国自体に産まれたのが恵まれていたのだろう。

 

(……まあ、どうでもいいけどな)

 

 自分が不幸であるか、幸福であるか――そんなことを考えても意味はない。過去も未来も大切だが、結局は『今』がどうであるか。それを考えることが大切であり、それ以外に意識を向ける余裕はない。

 

(さて、最近は最初の頃に比べて勝てるようになってきた。今日はどうすっかな……)

 

 眠気を覚ますために背伸びをしながら、少年――如月宗達は人通りの少ない朝の大通りを歩いていく。賭けデュエルの勝率は、現在どうにか二割程度。最初の頃に比べると随分マシになってきた。

 まあ、その原因ははっきりしている。要は、拘り過ぎたのだ。

 強くなるためにここへ来た。手段を選んでいられる余裕などないはずで、手段を選ばず勝ちに行くのが当たり前だったはずなのだ。

 しかし、ここへ来た当初の宗達はそうしなかった。

 相手のデッキがわかっていても、自信が今まで信じてきたデッキの構成を変えることをせず、ただ正面からぶつかり合い、そして、負けていた。

 

(相手の方が強ぇことはわかってたってのに、アホだな俺も)

 

 サイバー流のことを笑えない。メタカードの使用――そんなものはここで格下である自分が生き残る上で必須だったというのに。

 まあ、とはいえ初見ではメタを張ることは不可能であるし、相変わらず黒星の方が多いのだが。

 

「……強くなれてんのかねー……」

 

 思わず、呟いてしまう。強くなるためにここへきて、冗談ではない命懸けの修羅場も何度か経験してきた。だが、強くなれているという実感があまり感じられない。

 勝率は上がった。負けた相手に勝つ、ということを繰り返してきた。

 しかし、それでも〝最強〟は遥か遠くにある。

 

「……まあ、死ぬ気でやるしかねーわけだが」

 

 結局、結論はそれだ。足掻くしかなく、それ以外の選択肢は存在しない。

 強くあること。そして、勝利し続けること。

 如月宗達という存在を証明する手段は、それしかないのだから。

 

 

「――すまない。少し良いかな?」

 

 

 どこでデュエルをするか――そんなことを考えながら歩いていると、不意に背後から声をかけられた。振り返ると、紺色のスーツを身に纏い、スーツと同じ色の帽子を被った紳士が立っている。

 

「んー?」

「道を聞きたいんだが、時間はあるかね?」

「別に大丈夫だけど?」

 

 特に害意は感じないので、頷きを返す。紳士はありがとう、と言葉を紡いだ。

 

「キミは日本人だろう? 海外で同郷の人間を見ると安心するよ」

「その割には英語上手いな、おっさん。……で、行きたい場所ってのは?」

「ああ、このホテルなんだが……」

 

 紳士がホテルの名前が書かれたメモを見せてくる。知らない場所であるならどうにもならなかったが、幸いにも名前を知っている場所だった。

 

「ああ、ここなら近いぞ。このままこの通りを北に上がって、三つ目の門で右に曲がればすぐだ。隣にでかいスーパーがあるからわかると思う」

「そうか、助かったよ。何度かラスベガスには来ているが、どうにも慣れなくてね」

「ふーん。観光か?」

「いや、ビジネスだ。……では、ありがとう。助かったよ」

 

 言い切ると、紳士はそのままこちらへ一度頭を下げて立ち去って行った。その後ろ姿を見送りながら、んー、と宗達は首を傾げる。

 

「なーんか、どっかで見た気がするんだが……気のせいか?」

 

 あのぐらいの年齢の知り合いなどほとんどいないので、気のせいだとは思う。そもそも、アメリカに知り合いはいてもラスベガスには日本人の知り合いなどいないのだ。

 まあいいや――そう呟き、紳士とは逆方向に歩き出す宗達。その視界に、見覚えのある人影が映った。こちらに気付いた相手も眉をしかめる。

 

「おー、十字架野郎か」

「……ふん、こんなところで何をしている日本人」

 

 そこにいたのは、おそらく部下なのであろう取巻きを従えたマフィアの男だった。確か、フェイトといったか。額に十字架の入れ墨をいれた、先日宗達と一つ揉め事を起こした人物である。

 

「今日の賭けデュエルの場所探しだけど?」

「ふん。噂は聞いている。相変わらず負け続きだそうだな」

「まーな。で、そっちは? 悪巧みか?」

「貴様に話すようなことはない」

「ごもっとも」

 

 肩を竦める。正直、互いに関わり合いにならないのが一番だとは思っているのだが、宗達は曲がりなりにも用心棒としても活動しているフェイトに勝っており、その際の揉め事のせいでマフィアたちから意識を向けられている。マフィアたちを無視しようにもできないのだ。

 フェイトもフェイトでファミリーの面子があり、宗達のことを放置はできないらしい。今のところ、互いに付かず離れずの距離をとっている。

 それに宗達としては恩人であるレイカという女性と彼女が匿っている子供たちの安全を結果的にフェイトたちのファミリーが守っていることもあり、特に嫌悪感などはない。

 まあ、それでもマフィアなどというものと関わり合いになるべきではないと思っているが……彼らの主導で賭けデュエルは行われているので、そうもいかない。

 全く、面倒臭いことである。

 

「あ、じゃあ都合いいな。なぁ、賭けデュエルやってるとこ教えてくれよ。いちいち表の興業から下に潜ってくのが面倒でよ」

「ふん、生憎と今日より数日は賭けデュエルは行われない。残念だったな」

「はぁ? 何でだよ」

「……FBIが、極秘裏にラスベガスに入り込んでいる」

 

 周囲に一度視線を送りつつ、フェイトは声を潜めてそう言った。宗達も眉をひそめる。

 

「極秘裏?」

「ああ。何かを探しているという話だが……詳しいことはわからん。基本的にラスベガスは治外法権の地域なんだがな。どうも、日本から大物が入ってきているという情報もある」

「大物ねぇ……。で、とりあえず大人しくしようってことか?」

「そういうことだ。しばらくは興業としての大会が開かれるだけになる。それに、近いうちに九大大会の一つも開かれるんだ。しばらくは波風を立てないように立ち回るという協定が成されている」

 

 行くぞ――部下たちにそう言葉を紡ぎ、フェイトが立ち去っていく。宗達は、面倒な、と呟いた。

 

「しっかし、どうもキナ臭いねぇ……」

 

 ラスベガスはマフィアが根付き、非合法なことも平気で行っている場所だ。だが、それを見逃す代わりに警察組織や政府にも金が流れており、それによって黙認されている。

 そうでなくても世界最大規模の娯楽都市であり、四年に一度行われる世界大会でもここが会場になる事も多いほどの場所だ。結果的にマフィアたちが牽制し合うことで水面下はともかく表面上はトラブルが少なく、それ故に上手く回っている。

 だが、そんなラスベガスへFBIが極秘裏に入り込んでいるという。一体、何が目的か。

 

「厄介なことにならなきゃいいけどな」

 

 ここ数日、どうにも機嫌の悪い空を見上げ。

 宗達は、呟いた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 子供たちの笑い声が聞こえてくる。レイカはそれに微笑を浮かべながら、皆、と言葉を紡いだ。

 

「ご飯の準備ができたから手伝って」

「「「はーい!」」」

 

 声をかけると、子供たちが動き出す。その動きに迷いはない。

 テーブルに鍋を乗せる。今日の夕食はシチューだ。

 

「はい、皆手を合わせて。祈りよ」

 

 そう促すと、子供たちは一斉に手を合わせる。

 感謝の意を捧げる時間。気持ちだけのものではあるが、大切な時間だ。

 そして始まる食事の時間。この時間はいつも戦争だ。

 

「あー! 俺のとったー!」

「早いもん勝ちだろー!」

「美味しいー!」

「喧嘩しない」

 

 苦笑しながらそう窘めつつ、レイカもシチューを口にする。……今日は美味く作れたようだ。

 

(宗達さんにも、食べて欲しかったな……)

 

 偶然出会っただけの自分たちを助けてくれた、日本人の少年。少しでも恩返しがしたかったのだが。

 宗達はたまにここへ来るが、基本的には行方が把握できない。無事ではあると思うのだが……。

 

「レイカ姉ちゃん、元気ないねー」

「恋煩いだよ、恋煩い」

「宗達兄ちゃん格好いいもんなー」

「……そんなんじゃありません」

 

 ぴしゃりと切り捨てる。そもそも、宗達には恋人がいると聞いている。そんな人を好きになるわけにはいかない。

 

「でも、宗達兄ちゃん来て欲しいなー。デュエル教えて欲しい」

「お兄ちゃん強いもんね」

「俺もデュエル強くなりたいなー」

 

 口々にそんなことを言い出す子供たち。確かに、とレイカは思った。

 宗達は強い。自分の中で最も強い人物は大恩ある叔父だが、宗達もまた確かな強者だ。

 

「宗達さん……」

 

 彼のことだ。どうせまた無茶をしているのだろうと思う。

 どうして、あそこまで――

 

「レイカお姉ちゃん、お客さんだよー?」

 

 不意にそんな声が聞こえてきた。見れば、確かに来客が来ている。

 

「はい?」

 

 席を立ち、扉の所に向かう。ゆっくりと扉を開けると、一人の紳士が視界に入った。

 紺色のスーツを身に纏い、同じ色の帽子を被った人物。その人物の姿に、思わずレイカは表情を驚愕に変えた。

 

「叔父様!?」

「よぉ、レイカ。少し見ないうちに美人になったなぁ」

 

 予想外の人物の登場に驚くレイカと、快活に笑う紳士。子供たちがそんなレイカの様子を見て首を傾げた。

 

「お姉ちゃん、その人誰ー?」

「え、ああ、えっと……私の叔父よ」

「じゃあお姉ちゃんが使ってるデッキを作った人!?」

 

 子供たちが目を輝かせる。紳士は快活な笑みを零した。

 

「元気のいいガキ共だ。オメェが言ってた子供連中ってのはこいつらか?」

「はい。皆いい子です」

「見りゃわかる。……二人が死んで、それでもラスベガスに残るってオメェが言った時は大丈夫かと心配したが、元気にやってるみたいで何よりだ」

 

 頷きながら、紳士はそう微笑んだ。はい、とレイカは頷く。次いで、しかし、と言葉を紡いだ。

 

「どうされたのですか? 突然こちらへ来られるなんて……」

「ん、ああ。オメェにゃ悪いが、こっちに来たのが仕事だ。……オメェ、最近なんか変わったことはなかったか?」

 

 一瞬、どこか剣呑な雰囲気を漂わせながら紳士がそう問いかけてくる。レイカは、いえ、と首を左右に振った。

 

「特に変わったことはありませんが……」

「……いや、それならいいんだ。すまねぇな、いきなり」

 

 笑みを零し、レイカの頭を軽く撫でる紳士。そのまま彼は右手に持っていたモノをレイカに渡した。包みから察するに、ケーキだろう。

 

「とりあえず、土産だ。そんなに高くねぇもんだが」

「あ、ありがとうございます」

「気にすんな。……晩飯の時だってのに、邪魔して悪かったな」

 

 それじゃあな――そう言って出て行こうとする紳士。それをレイカが呼び止めようとすると同時に、扉が開いた。紳士はまだ扉に触れてはいない。

 誰か――そう思うと同時に、その人物が視界に入る。

 ――そこにいたのは、大恩ある日本人の少年。

 

「悪い、一日――って、あん?」

 

 その少年は紳士を見ると、怪訝そうな表情を向けた。ほう、と紳士も驚いた表情をする。

 

「あんた、昼間の……」

「あの時はありがとう。助かったよ」

「いや、役に立てたなら何よりなんだが……何だ、レイカの知り合いだったのか?」

 

 こちらへと視線を向けてくる宗達。レイカははい、と頷いた。

 

「私の叔父です。以前話した……」

「ああ、あれか。ふーん」

 

 納得する宗達。紳士は、何だ、と宗達に向かって言葉を紡いだ。

 

「レイカの知り合いか?」

「んー、まあ、色々あって」

「成程。……丁度いい。ちょっと話そうか」

 

 笑いながら宗達の肩を叩く紳士。何やら誤解しているらしい。レイカはそれを止めようとするが、宗達がその前に動きを見せた。

 

「いいぜー、別に。『聖刻龍』……あのカテゴリををあそこまで回転させる構築をするあんたにゃ興味もあるからな」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 結論から言うと、問題が起こることはなかった。むしろ宗達の話を聞いた紳士は、宗達へ感謝の意を伝え、深々と頭を下げたくらいだ。

 レイカの身に降りかかろうとしていた火の粉を振り払い、見ず知らずの相手を助けてくれた――そのことに、紳士は心の底から感謝の意を見せている。

 とはいえ、宗達にしてみれば感謝されるようなことでもない。あれには半分くらい『意地』という私怨が入っていたし、感謝されようとしてしたことでもないのだ。

 

「最近のガキは根性なしばかりだと思ってたが……考えを改める必要がありそうだな。身一つでラスベガスに入ってくるだぁ? いい根性じゃねぇか」

「強くなるにゃそれが一番だと思ったんだよ。命懸けてやってみなきゃ、見えねぇもんもある」

 

 何かを懸け、それでようやく見える景色。

 日本という場所ではきっと、永遠に見ることのできないモノがある。

 

「〝鬼にならねば、見えぬ地平がある〟――か」

「んー?」

「いや、何でもないやな。しかし、ここのマフィア相手に勝つなんざやるじゃねぇか。ラスベガスじゃトラブルが起こった際に銃撃戦で無駄な犠牲を出すのを嫌い、揉め事はデュエルで決めるってな暗黙のルールがある。用心棒はそれなりの奴が多いはずなんだがな」

「賭けデュエルじゃ基本負け越しだよ。あの時だってメタ張ってどうにか勝てただけだ」

「メタカードは立派な戦術だ。批判する馬鹿がいるが、そんな戯言に耳を貸す必要はねぇ。強いことが絶対であり、勝利が正義だ。敗者の言葉なんぞ戯言以下の家畜の囀りに過ぎん」

 

 酒を煽りながら言い放つ紳士。同意だ、と宗達は頷いた。

 

「勝てなきゃ意味はねぇ。全てにおいてな。……つーか、あんた昼の時と雰囲気違い過ぎねー?」

「赤の他人にまでこんな態度をとるわけがねぇだろう」

「ふーん。大人って面倒臭いんだな」

「オメェも大人になりゃわかる。まあ、俺なんざ楽な方だ。勝ち続けりゃいいだけで、実際それを続けてるわけだからな」

 

 笑いながら言う紳士。へぇ、と宗達も笑みを零した。

 

「言うなおっさん。そんなに強いのかよ?」

「オメェ如きなら秒殺できるぐらいにはな」

 

 あっさりと言い切る紳士。面白ぇ、と宗達は立ち上がった。

 

「――だったら俺に、世間の厳しさを教えてくれよ」

 

 見下ろしながらそう言い切る。離れた場所でレイカと共に自分たちを見守っていた子供たちが、一斉にこちらを見た。

 対し、紳士はどこかつまらなさそうにこちらを見上げ、言う。

 

「後悔するぞ、オメェ」

「させてみろよ」

 

 即座に切り返す。いいだろ、と紳士は立ち上がった。

 

「相手してやる。……レイカ、オメェに渡したデッキを貸してくれ」

「えっ、あ、はい!」

「おう、すまねぇな」

 

 レイカが差し出してきたデッキを受け取り、笑みを零す紳士。デュエルディスクを用意しながら、宗達は言葉を紡いだ。

 

「自分のデッキは使わないのか?」

「別にそれでもいいが、レイカの恩人をぶっ壊すわけにはいかねぇからな」

「……上等だクソジジイ。ぶっ潰してやる」

 

 低い声。普段宗達に懐いている子供たちも、流石に今の宗達には近寄れないらしい。遠目に見守っている。

 ラスベガスに来る前から、宗達は多くの野次や罵声に晒されてきた。故に、相手の長髪について激昂することはほとんどない。

 だが、流石にここまでナメられては黙ってはいられない。

 ……そもそも、激昂しないだけで仕返しはきっちりするというのが如月宗達という人間なのだから。

 

「ああ、そうだ。まだ名乗ってなかったな」

 

 デュエルディスクを構え、紳士がどこか獰猛な笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。

 

「――俺は、皇〝弐武〟清心。頼むから、そう簡単に壊れてくれるなよ?」

 

 日本が誇る『三強』が一角。

 世界ランキング三位にして、世界タイトルも手にしたことがあるほどの実力者。

 ――皇、清心(すめらぎ、せいしん)。

 正真正銘の〝最強〟が、その理不尽が如き力を振り翳す。

 

「決闘だ」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 日本におけるタイトル取得の方法は、主に二つ。

 一つは、年に二度行われる五つのタイトルトーナメントに出場し、優勝。その後、現タイトルホルダーと最大で一週間にもわたる最大十五試合のマッチ戦で勝利するという方法だ。

 このトーナメントとその後のタイトル戦は大イベントであり、〝タイトルカーニバル〟として取り上げられる。

 そしてもう一つは、全日本ランキング10位以内の者が現タイトル保有者に挑戦を行い、それをタイトル保持者が受けた場合。これも十五試合のマッチ戦を行い、勝利すればタイトル奪取という形になる。

 とはいえ、後者の場合は結構長くの挑戦料が必要となる上、敗北した場合にバッシングが待ち受けているためにあまり選ばれない。よって多くは〝タイトルカーニバル〟による交代となるのだが……ここ数年、タイトル保持者の顔ぶれは変わっていない。

 現在三つのタイトルを保有する、全日本ランキング十年連続一位の〝怪物〟――DD。

 ライセンス取得とほぼ同時に本来ありえないタイトルトーナメントの最下予選から勝ち上がり、見事〝祿王〟のタイトルを手にした〝幻の王〟――烏丸澪。

 そして、常に世界の最前線で戦い続け、彼の〝決闘王〟や数多の〝伝説〟との対戦経験を持ち、現在は〝弐武〟のタイトルを預かる〝神兵〟――皇清心。

 この三人は、基本的に挑戦を拒むことはない。特に澪はタイトル取得後一年間でカーニバルを合わせて十回近くの挑戦を受けたこともある。

 しかし、負けない。

 澪だけではなく、DDも、清心も。それがさも当然であるかのように勝ち続ける。

 ――故に、〝最強〟。

 そう、即ち。

 目の前にいる男こそが、如月宗達の目指す領域に立つ者。

 

 

(……見覚えがあると思ったら、日本のタイトルホルダーか。そりゃ知ってるはずだ)

 

 日本の誇る怪物の一人だ。知っているのが当たり前である。とはいえ、流石に直接対面したことがなかったので気付かなかったわけだが。

 

(だが、好都合だ。俺と〝最強〟との距離を、ここで見極める)

 

 目指す領域に佇む怪物がこうして目の前に現れてくれたのだ。その力の差を知るいい機会である。

 ――そして、もう一つ。

 

 

〝鬼ならねば、見えぬ地平がある〟

 

 

 聞き覚えのある言葉だ。その言葉の意味と、真意。

 そして何より、〝強さ〟の理由を……ここで知らなければならない。

 

「先行は俺だな。ドロー!」

 

 先行は清心だ。デッキはわかっている。『聖刻龍』――型にはまってしまえば恐ろしい破壊力と爆発力を発揮するデッキである。

 今清心が使っているデッキを普段使用しているのはレイカだ。そして、そのデッキとのデュエルにおける勝率は宗達の方が圧倒的に良い。

 しかし、それはレイカのタクティクスの問題が大きい。故に、宗達も知らないのだ。

 聖なる刻印を持つ龍――その恐ろしさを。

 

「俺は手札から魔法カード『アームズ・ホール』を発動。デッキトップからカードを一枚墓地へ送って発動し、デッキ・墓地から装備魔法を一枚手札に加える。俺は『スーペルヴィス』を手札に加える」

 

 落ちたカード→聖刻龍―ドラゴンゲイヴ

 

 サーチカードというのは総じて強力なものが多い。実際、アームズ・ホールも『装備魔法』を手札に加える効果は強力だ。現在は禁止カードに指定されている『早過ぎた埋葬』という蘇生カードさえもサーチで切ることからその強力さはよくわかる。

 

「ただし、『アームズ・ホール』を使用したターン俺は通常召喚ができん。……カードを二枚セットし、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 

 手札を見る。相変わらず、手札は悪い。

 

(……チッ、相変わらずだな。十代の奴が羨ましいぜ)

 

 手札が悪いのはいつものことだが、こうして続けられると来るものがある。

 

「…………」

「あん?」

 

 不意に、こちらを見つめる清心と目が合った。その表情はどことなく暗く、寂しげでさえある。

 

「……なんだ」

「いや。何でもねぇ。……オメェさんのターンだぞ」

「ん、ああ」

 

 頷きを返す。妙な感じだ。あの時の表情と視線――そこには敵意が含まれていなかった。別に敵対しているわけではないが、デュエルをしていれば相手の敵意とは常に向き合うことになる。だからこその『決闘』だ。

 しかし、清心からはそれを感じない。ナメられているのもあるだろう。だが――……

 

「俺は手札から速攻魔法『サイクロン』を発動! 右の伏せカードを破壊だ!」

「リバースカードオープン、永続罠『復活の聖刻印』。相手のターンに一度、デッキから『聖刻』と名のついたモンスターを一体、墓地へ送ることができる。俺はデッキから『龍王の聖刻印』を墓地へ。……そして、表側表示の『復活の聖刻印』が破壊されたことにより、墓地から『聖刻』と名のついたモンスターを蘇生する。――『龍王の聖刻印』を守備表示で蘇生する」

 

 龍王の聖刻印☆6光ATK/DEF0/0

 

 現れるのは、聖なる刻印が刻まれた球体だ。宗達は舌打ちを零しつつ、更に手を進める。

 

「俺は手札より、『真六武衆―シナイ』を召喚」

 

 真六武衆―シナイ☆3水ATK/DEF1500/1500

 

 現れるのは、蒼い鎧で身に包んだ二つの棍棒を持つ侍。宗達は、バトル、と宣言した。

 

「シナイで攻撃!」

「リバースカード、オープン。罠カード『和睦の使者』。このターン俺のモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージも0になる」

「……俺はカードを二枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 やはりというべきか、防がれた。だが、こちらの伏せカードは『デモンズ・チェーン』と『次元幽閉』である。そう容易く突破されるとは思えないが――

 

「俺のターン、ドロー。……俺は手札から魔法カード『ナイト・ショット』を発動だ。相手の魔法・罠ゾーンにある伏せカードを一枚破壊する。このカードに対し、指定されたカードは発動できねぇ。右のカードだ」

「……『デモンズ・チェーン』が破壊される」

 

 破壊される、ある意味で万能とも言える効果封じの永続罠。だが、チェーン発動さえ許されずに破壊された。

 

「ふん……まあ、こんなもんか。俺は装備魔法『スーペルヴィス』を発動。デュアルモンスターにのみ装備でき、装備モンスターをデュアル状態にする。『龍王の聖刻印』はデュアルモンスターだ。そしてその効果は、このカードを生贄に捧げることで手札・デッキ・墓地から『龍王の聖刻印』以外の聖刻と名のついたモンスターを特殊召喚できるもんだ。――俺はデッキから『聖刻龍―アセトドラゴン』を特殊召喚する。そして墓地に送られた『スーペルヴィス』の効果により、墓地で通常モンスターとなっている『龍王の聖刻印』を蘇生」

 

 聖刻龍―アセトドラゴン☆5光1900/1200

 龍王の聖刻印☆6光ATK/DEF0/0

 

 二体のモンスターが展開される。清心は更に、と言葉を紡いだ。

 

「召喚権を使い、『龍王の聖刻印』を再度召喚。そして効果を発動。生贄に捧げ、『聖刻龍―シユウドラゴン』を特殊召喚」

 

 聖刻龍―アセトドラゴン☆5光ATK/DEF1900/1200

 聖刻龍―シユウドラゴン☆6光ATK/DEF2200/1000

 

 並ぶ二体のドラゴン。宗達は苦虫を噛み潰したような表情になった。

 何故なら――

 

「シユウドラゴンの効果だ。一ターンに一度、『聖刻』と名のついたモンスターを生贄に捧げ、相手の魔法・罠を破壊する」

「……『次元幽閉』だ」

「そして生贄となったアセトドラゴンの効果。このカードが生贄に捧げられたことにより、デッキからドラゴン族の通常モンスターを一体攻守を0にして特殊召喚する。――『神龍の聖刻印』を特殊召喚」

 

 聖刻龍―シユウドラゴン☆5光ATK/DEF1900/1200

 神龍の聖刻印☆8光ATK/DEF0/0

 

「更に魔法カード、『ドラゴニック・タクティクス』を発動だ。ドラゴン族モンスターを二体生贄に捧げ、デッキからレベル8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。――『聖刻龍-セテクドラゴン』を特殊召喚し、生贄になったシユウドラゴンの効果で攻守を0にして『エレキテルドラゴン』を守備表示で特殊召喚」

 

 聖刻龍―セテクドラゴン☆8光ATK/DEF2800/2000

 エレキテルドラゴン☆6ATK/DEF2500/1000→0/0

 

 連続の特殊召喚。それを終えると、バトル、と清心は宣言した。

 

「セテクドラゴンでシナイに攻撃!」

「ぐっ……!」

 

 宗達LP4000→2700

 

 宗達のLPが削り取られる。しかも、清心はこれで終わらない。

 

「カードを一枚伏せ、『超再生能力』を発動。このターン手札から捨てるか生贄に捧げられたドラゴン族モンスターの数だけエンドフェイズにドローする。このターン生贄に捧げたドラゴンの数は五体。故に、五枚ドローする」

 

 そして、ターンが宗達に譲られる。

 正直なことを言えば、何が起こっているかわからなかった。

 

(おい……ふざけんなよ。こっちはドローフェイズのドローを合わせても手札が三枚。なのに、相手は手札を五枚も抱えて、フィールド上に最上級モンスターだと……?)

 

 理不尽な展開など何度でも見てきたし、その度にどうにかしてきた。そうしなければ敗北してきたのであり、それは当然だ。

 だが、これは。

 アドバンテージの概念を破壊するかのような、この戦術は。

 

(何だよ、おい。これが、〝世界〟? これが、〝最強〟? ふざけんな……何だよ、何だよこの差は!)

 

 少しでも見えると思った、その頂は。

 見えるどころか、むしろ何もわからないほどの高みにあった。

 

「〝もしかしたら〟ってのは、俺たちに挑む連中が必ず思う幻想だ」

 

 懐から煙草を取り出し、火を点けずに咥えながら。

 清心は、静かに告げる。

 

「今回は、今回だけは〝もしかしたら〟勝てるかもしれない――そんな風に思うんだそうだ。馬鹿馬鹿しい。そんなわけがねぇだろう。自分のデッキじゃない? 時の運? そんなもんは二流が気にすることだ。俺たちは俺たちだからこそ勝つんだよ、小童」

 

 勝負、という概念ではない。

 そもそもから、〝勝者が決まった〟戦いであったということ。

 

「妙なもんに憑かれてるみてぇだが、そんなもんは言い訳だ。――さあ、足掻いてみな」

「――――ッ、俺のターン! ドロー!!」

 

 カードを引く。そうだ、まだ終わっていない。

 ここで逆転のドローで引っ繰り返せれば。

 そう、自分を友と呼んでくれた、十代のように――!!

 

 

(……何でだよ、ちくしょう)

 

 

 引いたカードは、永続魔法『紫炎の道場』。

 残る二枚の手札は、『六武衆―ザンジ』と『六武衆の荒行』。

 

(何で、引けねぇんだ……!)

 

 自分にドロー運がないことはわかっていた。ずっとそうだったのだ。今更、それを否定することはできない。

 だが、それでもどうにか戦ってきた。戦術で、戦略で。

 ……だが、それでは勝てない相手がいる。

 どれだけ戦略と戦術を磨こうと、届かない〝才能〟というものがある。

 

(勝てなきゃ……勝ち続けなければ! 俺は! 俺自身を証明できないのに!)

 

 目指し続ける〝最強〟は、あまりに遠く。

 その途方もない距離に……心が、軋む。

 

「くそっ……! 俺は永続魔法『紫煙の道場』を発動! 六武衆と名のついたモンスターが召喚・特殊召喚される度にカウンターが乗り、カウンターが乗ったこのカードを墓地に送ることでそのカウンターの数以下の『六武衆』と名のついたモンスターをデッキから特殊召喚できる! 更に俺は手札より『六武衆―ザンジ』を召喚! カウンターが乗る!」

 

 六武衆―ザンジ☆4光ATK/DEF1800/1300

 紫炎の道場 0→1

 

 現れる、光の薙刀を持つ侍。宗達は、更に続けた。

 

「更に俺は速攻魔法『六武衆の荒行』を発動! 自分フィールド上に表側表示で存在する六武衆を選択して発動し、選択したモンスターと同じ攻撃力を持つ同名以外の六武衆を特殊召喚する! ザンジを選択し、『真六武衆―キザン』を特殊召喚! そして選択したモンスターはエンドフェイズに破壊される!」

 

 真六武衆―キザン☆4地ATK/DEF1800/500

 紫炎の道場 1→2

 

(打てる手はこれで全部だ! 無様だろうが……意地ぐらいは見せてやる!)

 

 バトルだ、と宗達は宣言する。へぇ、と清心が笑った。

 

「破れかぶれの特攻か、小僧」

「一矢報いず……終われるか! ザンジでセテクドラゴンを攻撃! 他に六武衆がいる時に攻撃した時、ザンジが攻撃したモンスターはダメージステップ時に破壊される!」

「――リバースカード、オープン」

 

 せめて、という意味を込めた一撃は。

 いとも容易く、防がれる。

 

「罠カード、『聖なるバリア―ミラーフォース―』。相手の攻撃宣言時に発動でき、相手フィールド上の攻撃表示モンスターを全て破壊する」

「…………ッ!?」

 

 二体の侍が、聖なる光に包まれて消滅する。

〝最強〟は、その身に触れることさえ許さない。

 

「………………ターン……エンド……」

 

 呆然と、宗達は呟く。

 何もできなかった。真の意味で、何も。

 まるで、あの時のように――

 

「俺のターン、ドロー。……終わりだ、小童」

 

 聖なる龍の咆哮が、響き渡り。

 デュエルは、ここで終わりを迎えた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

〝どうやら外れだったようだな。壊れなかったのは素晴らしいが、それだけか〟

〝…………う、嘘……だろ……?〟

〝現実だよ、坊や。キミは弱い。キミは、何もできなかった〟

〝う、ああ……〟

〝無様なものだな。……覚悟なき者の戦いなど、所詮はそんなものだ〟

〝……かく、ご……?〟

〝私は捨てたぞ。何もかもをな。――キミに、その覚悟はあるか?〟

〝捨てる……〟

〝代価を支払わねば、何かを手にすることなどできはしない。――鬼にならねば、見えぬ地平がある〟

 

 

 何故、忘れていたのか。

 無様な敗北。何もできない無力感。打ちひしがれる絶望。

 そんなものは、あの雨の日にとっくに経験していたというのに。

 

「教えてくれ」

 

 多くの戦いの中で。

 勝つことが増えて、負けることが減って。

 

「強くなりたいんだ。どうしても。強くならなければ、いけないんだ」

 

 忘れていた。忘れ去ろうとしていた。

 ――如月宗達は、こんなにも弱いということを。

 

「俺は、どうすればいい……!?」

 

 目の前の男は、微かに笑った。

 笑って。こちらを一度、見下ろして。

 

「教えてやるのは構いやしねぇ。だが、その前にオメェがその器かどうかを見極める」

 

 ついて来い、と男は言った。

 その背を、無言で追いかける。

 

「先に言っておく。俺はオメェがぶっ壊れようと興味はねぇ。モノになるかどうかはオメェ次第だ」

「…………」

「良い目をしてやがるなぁ。面白ぇ。――壊されるなよ?」

 

 肯定も、否定も返さない。

 ただ……その後をついていく。

 

(――鬼にならねば、見えぬ地平がある)

 

 きっと、彼らはその〝鬼〟なのだ。

 ならば、その彼らと渡り合うにはどうすればいい?

 どうやって、その領域にまで行けばいい?

 

 決まっている。

 答えなど、一つしかない。

 

 

 ――――――俺も、鬼になる。






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