遊戯王GX―とあるデュエリストたちの日々―   作:masamune

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第十九話 開幕、ルーキーズ杯!!

 海馬ランド内に存在している大型のドーム会場――海馬ドーム。

 普段から様々なイベントが開催されている場所であるために人の出入りは基本的に多いのだが……今日のそれは、普段のそれを遥かに上回っていた。

 

『みんなぁ~!! 元気~!?』

『『『いぇーッ!!』』』

『今日は集まってくれてありがとう~!! 早速新曲、歌わせてもらいます!! 聞いてください!!』

『『『美咲ちゃーん!!』』』

 

 画面の中から聞こえてくる歌声と声援。現在、ドームの中心にいる少女――桐生美咲のステージはあくまで前座なのだが、最早それがメインであるかのような様相を呈してきている。流石に昨年末に行われたプロデュエリスト人気投票で二年連続首位を飾っただけのことはある。

 

「相変わらずのようだな、美咲くんは」

 

 その光景を控室で眺め、烏丸〝祿王〟澪は苦笑を零した。今日の彼女はスーツを着込んで眼鏡をかけており、キャリアウーマンのような恰好をしている。

 

「烏丸プロ、そろそろ時間ですので……」

「ん、ああ、ありがとう宝生さん。では、行きましょうか」

「はい」

 

 そんな澪に声をかけたのは、宝生アナウンサーだ。若いながらもフリーで活躍する優秀なアナウンサーで、特にその真面目な性格が幸いしてか災いしてか、現在会場で歌っている桐生美咲と番組で組まされることが多い。

『初心者のためのデュエル講座』における司会であり、インターハイや国民決闘大会でも美咲と共に実況を担当しているので知名度は高い。今回の〝ルーキーズ杯〟でも、澪と共に実況・解説を行うために呼ばれている。

 二人で並んで歩いていく。関係者用の通路だが、スタッフが慌ただしく駆け回っているせいで実に賑やかだ。

 しばらく歩くと、『第二会議室』とプレートの下げられた部屋に着いた。軽くノックをし、二人は部屋に入る。

 

「さて、待たせてしまったなら申し訳ない。ルーキーズ杯出場者の諸君」

 

 部屋の視線が一斉にこちらを向く。すでに十人以上の選手が集まっており、澪は一度全員の顔を見回すと、満足そうに頷いた。

 

「ふむ、流石に誰も彼も良い表情をしている。これは期待できそうだな。……さて、まずは自己紹介といこう。明日より三日かけて行われるルーキーズ杯の解説を務めさせてもらう、烏丸澪だ」

「実況を務めさせていただきます、宝生紗友莉です」

 

 二人で軽く一礼する。すると、ええっ、という声が上がった。

 

「烏丸って……タイトル持ちの烏丸プロかよ!?」

「うむ。キミは――遊城十代くんか。ほう、一年生で抜擢されるとは素晴らしい。期待しているよ」

「は、はいっ!」

 

 流石に〝祿王〟というタイトルは重いものがあるらしい。十代は緊張した面持ちで頷くと、頭を下げてきた。そんな彼に座るようにと促し、澪は言葉を続ける。

 

「さて、彼が言ったように私は〝祿王〟のタイトルを預かっている身だ。とはいえ、委縮する必要はない。この大会において私は解説者でしかなく、主役は諸君らだ。私も一人のデュエリストとして諸君らのデュエルを楽しみにしている。頑張ってくれ」

 

 微笑を零し、激励の言葉を送る澪。それを引き継ぐように、宝生が言葉を紡いだ。

 

「それでは、説明に移らせていただきます。事前にお配りした資料にありますように、当日――即ち、明日に組み合わせが決定されます。一日目は一回戦、二日目は二回戦と準決勝、三日目に決勝戦を行うという日程です。試合そのものは午後からであり、詳しい時間については資料の方をご確認ください。……何か質問はございますか?」

「一つ、よろしいでしょうか?」

 

 声を上げたのは背の高い青年だった。丸藤亮――資料に目を落とし、その青年の名を澪は確認する。

 

「この場に全員揃っていないようですが」

「うむ。一人は諸君らも知ってのとおりステージで熱唱中だ。そして、二人は今現在一般参加枠の予選を行っている。そして残る一人だが……少々トラブルがあったらしく、到着が遅れている。もっとも、今日中には着くようだが。以上で構わないかな?」

「いえ、ありがとうございます」

 

 亮が着席する。それを見て、宝生が言葉を紡いだ。

 

「質問等があれば、挙手でお願いします。……そして、午後からの試合とは別に、午前中――十時からのプログラムですが、強制参加ではありません。一般の方々との触れ合いイベントは、基本的に自由参加とさせていただきます」

「試合前に無理を強いるほどこちらも大人げなくはない、ということだ。まあ、そちらについては主に私が担当させてもらうから余裕があれば参加してくれる程度の認識でいい」

「続いて、控室ですが……この後ご案内させていただきますので、基本的にそちらでお過ごしください。観客席に入って頂いても構いませんが、その際はこちらからの連絡が必ず届くようにお願いします」

「何せ第一回の大会だ。どんな不測の事態が発生するかもわからないのでな」

 

 澪が苦笑しながらそう言葉を紡ぐ。それに全員が頷くのを確認すると、では、と宝生が言葉を紡いだ。

 

「何かご質問はありますか?」

「はい、質問よろしかとですか?」

 

 手を挙げたのは一人の少年だ。アカデミア・サウス校の猪熊義孝――澪は資料を見つつ名前を確認する。

 

「猪熊選手、どうぞ」

「ええと、十時からのプログラムはうちらは何をしたらよかとですか?」

「はい。まず、プロデュエリストの皆さんはペガサス会長との対談やデュエル教室などといったもののサポートをしていただきます。アカデミアの皆さんは専用のブースを設けておりますので、そちらでアシスタントをしていただければ」

「成程、了解です」

「では、他にはございますか?」

 

 宝生が問いかけるが、特に声は挙がらなかった。それを受け、では、と宝生は言葉を紡ぐ。

 

「私と烏丸プロは第一控室か、もしくは会場におりますので……何か御座いましたらお声かけをお願いします」

「では、以上だ。――健闘を祈る」

 

 澪がそう締め、その場は解散となる。プロメンバーは会場に向かう準備を始め――オープニングで美咲が歌っているが、この後にも色々とイベントがあるのだ――他の者たちはどうしようか相談を始めている。

 その光景に微笑を一つ零し、そうそう、と思い出したように澪は言葉を紡いだ。

 

「プログラム中でデュエルをするのは自由だが、参加者同士のデュエルは禁止だ。まあ、普通だがな。……以上」

 

 部屋を出る澪。その澪に、宝生が手元の資料を見つつ言葉を紡いだ。

 

「烏丸プロにはこの後、ペガサス会長との対談がありますが」

「私と会長の対談など需要があるのか?」

「勿論ですよ! 最年少のタイトルホルダーとDMの生みの親の対談です! みんな興味があるに決まっているじゃないですか!」

 

 どこか興奮気味に語る宝生。その姿を見、澪は苦笑を零す。

 

「そう言ってもらえると嬉しいがな。……さて、そういえば予選の方はどうなっている?」

「半分ぐらいは終了したと連絡は来ていますが、出場者はまだ決まっていないようですね」

「誰が出てくるのか、実に楽しみだ」

 

 微笑を浮かべ。

 澪は、肩で風を切りながら歩き出した。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 第二会議室。参加者が集まっているその部屋では、様々な会話が飛び交っていた。

 プロ同士の会話や、そのプロに挨拶をするアカデミアの生徒やジュニアチャンプ及び準優勝者。中には面識がある者もおり、様々な会話が行われている。

 特に――

 

「お久し振りです、紅葉さん!」

「久し振りだね、十代。名前を見た時は驚いたよ」

「へへっ」

 

 紅葉の言葉に、十代は照れ臭そうに笑みを浮かべる。〝ヒーロー・マスター〟響紅葉。かつての全日本チャンプでもある彼は、十代にとっては憧れのデュエリストの一人だ。

 

「アカデミアにいることは姉さんから聞いていたが……本当に驚いた」

「へへっ、この大会では紅葉さんに勝たせてもらうぜ」

「それは楽しみだ」

 

 笑みを浮かべる紅葉。だが、その表情は『負ける気はない』と語っていた。そんな紅葉の様子に、ますますテンションを上げる十代。すると、不意に紅葉の肩を一人の女性が叩いた。

 

「響プロ、お知り合いですか?」

 

 そう問いかけてきたのは、年若い女性――神崎アヤメだ。昨年のプロリーグ新人王であり、大学リーグ出身でこそあるがアカデミア本校の卒業生でもある。

 紅葉は頷くと、前に話したことがあっただろう、とアヤメに言葉を紡いだ。

 

「遊城十代。長期療養で入院してた時に知り合った子だよ」

「成程、あの話の。……神崎アヤメです。よろしくお願いします」

「遊城十代です!」

 

 アヤメと握手を交わす十代。その笑顔はまさに純粋な子供そのものだ。

 

「遊城さんはアカデミア本校の出身ですか。後輩ですね」

「えっ、そうなの……ですか?」

「相変わらず敬語は苦手か、十代」

 

 十代の言葉に苦笑を零す紅葉。アヤメも微笑みつつ、ええ、と頷いた。

 

「私はアカデミア本校出身ですから。所属寮はラーイエローでしたが」

「そうなんですか? 俺はレッド寮です」

「レッド寮?……成程、珍しいですね。あなた以外の本校からの出場選手はどなたですか?」

「ああ、それなら……カイザー!」

「どうした、十代」

 

 別の場所でサウス校の生徒やサウス校出身である本郷イリアと話していたカイザー――丸藤亮が十代の声に反応してこちらへと歩いてくる。カイザーは紅葉とアヤメに気付くと、礼儀正しく頭を下げた。

 

「響プロ、神崎プロ。お会いできて光栄です。アカデミア本校三年、丸藤亮と申します」

「丸藤くん……聞いたことがあるね」

「ジュニア大会の優勝経験者ですよ、響プロ」

 

 紅葉の言葉にアヤメがそう冷静に言葉を紡ぐ。亮はいえ、と首を左右に振った。

 

「過去の話です。……今回は胸をお借りさせていただきます」

「目はそう言っていないね。楽しみにしている」

「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 紅葉が微笑み、アヤメは一礼する。そして、では、とアヤメは言葉を紡いだ。

 

「私は会場の方へ向かいます。チームの方から宣伝をしておけと言われていますので。……それと、これをお二人に」

 

 そう言ってアヤメが差し出したのは名刺だった。十代と亮は差し出されたそれを反射的に受け取と、亮がアヤメへと問いかけた。

 

「これは?」

「遊城さんは一年生ということなので先の話ですが、丸藤さんは三年生なので。有望なドラフト候補がいれば声をかけておけ、という監督命令です」

「えっ、じゃあこれスカウトかよ!?」

「先の話ですし、とりあえずはといった形ですが。……丸藤さんについてはすでに話が行っているかもしれませんね」

「いえ、光栄です。ありがとうございます」

「こちらこそ。……では、他のアカデミア生にも名刺を渡しておきましょう。それでは、また後で」

 

 そう言って立ち去っていくアヤメ。その背を見送りながら、紅葉は苦笑を零した。

 

「相変わらず真面目だな、神崎プロは。仕事人、というか」

「ですが、プロである以上はあのような人格の方が好まれるのでは?」

 

 紅葉の言葉に、亮が問いかける。紅葉はまあ、と曖昧に微笑んだ。

 

「それはチームやスポンサー次第だよ。適当というわけではないし、不真面目というわけでもないけど……美咲さんのようなプロもいるわけだから」

「成程……」

「プロというのはエンターテイメントを求められている職業だ。強いに越したことはないけど、強ければいいというものでもない。……丸藤くんはプロになる気かい?」

「そのつもりです」

「なら、覚えておくことだ。プロには多くの形がある。一つのことに囚われていては、後悔するだけだよ」

「……留めておきます」

「うん。プロになった時、どのチームに入るのかはわからないけど……楽しみにしているよ」

 

 微笑む紅葉。次いで紅葉は十代の方へと視線を向けた。

 

「十代もだ。時間があるんだから、色々なことを知り、体験し、決めればいい」

「んー、でも難しいな……紅葉さんと同じチームでもやってみたいし」

「僕自身、十代が卒業する頃に横浜にいるかどうかはわからないからね。トレードもFAもある。個人プロになっている可能性だってあるんだ。まあ、今は未来の事よりも目先のこと。楽しみにしてる」

「おう! あれから強くなったところを見せてやるぜ!」

 

 十代が笑みで応じる。紅葉もそれに頷き、彼もまた会場の方へと向かって行った。

 かつて、どうしようもないくらいに遠く見えた……その背中は。

 少しだけ、近くなったように――感じた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

〝ルーキーズ杯〟予選会。

 二百人近くが参加しているその予選会で勝ち上がり、本選に進むには6、7回の勝利を得なければならない。これだけを聞くとできそうな気がするが、実際にやってみるとこの難しさがわかるだろう。

 ルール上、敗北はそのまま敗退である。つまり、7連勝を飾らなければ本選には進めないのだ。

 これがマッチ戦を採用しているのなら話は別だが、残念ながらこれは出会い頭の一発勝負だ。それこそ手札事故の一つで敗退するという、運も絡んでくる予選となる。

 まあ、『運も実力のうち』という考え方でいくならばむしろ妥当なのかもしれないが。

 

「とりあえず、これで四勝したけれど……」

 

 その予選の会場で、藤原雪乃は一度息を吐いた。新しいデッキの試運転の意味も含めて参加したが、ここまでは順調にいっている。

 明日香や三沢などといったアカデミアのメンバーも何人か参加しているが、姿が見えない。負けたか、それともここからは窺えない場所にいるのか。

 

(まぁ、他のアカデミアからも結構な数が参加しているようだし)

 

 実力はまちまちだが、強い者は本当に強い。雪乃も先程のデュエルはかなり危なかった。これは本選に出るのは骨が折れそうである。

 

「3番と57番の選手は、Dテーブルへ!」

 

 息を吐いている間に、番号を呼ばれた。雪乃の番号は57番。指定されたテーブルにつき、デッキを置く。すでに相手が待っていた。

 

「よろしくお願いします」

「ええ、よろしく――」

 

 相手の言葉に応じるように、顔を上げ。

 雪乃は、驚きの表情を浮かべた。

 

「……ボウヤ……」

 

 そこにいたのは、〝伝説〟に敗北したことを理由にデュエル・アカデミア本校を退学させられた少年。

 ――夢神祇園。

 

「お久し振りです、雪乃さん」

 

 その少年は苦笑を零しながら、雪乃のデッキをシャッフルする。雪乃も祇園のデッキをシャッフルしながら、ええ、と頷いた。

 

「驚いたわ……この大会に参加していたのね、ボウヤ」

「はい。本当はウエスト校の先輩の応援なんですが……少し、慾が出て」

「成程。……アカデミアを退学になってから、苦労はしなかった?」

 

 気になっていたことを問いかける。宗達に聞いてもはぐらかされるだけだったので、実は結構気になっていたのだ。

 

「はい。運よく、いい人たちに出会えて……どうにか、やっていけています」

「そう……ならいいわ。ボウヤには一度負けているのもあるから、今日は勝たせてもらうわよ」

「全力でお相手させていただきます」

 

 祇園が放ったその言葉に、雪乃は小さな驚きを隠せなかった。祇園は自分の実力に自信を持てないでいたデュエリストだ。この手のことを言えば、大抵が苦笑しながら自身の強さの否定が返ってきていたのだが――

 

(……自信がついたのか、それとも別の理由か……楽しめそうね)

 

 おそらくは後者。自分は妹が本選に出ていることやデッキの試運転の意味があって参加しているだけだが、祇園にはきっと別の理由があるのだろう。

 強い言葉など吐けなかった少年が、これだけ強い瞳をするだけの理由が。

 

(……ちょっと、キちゃうわねぇ……まあ、折角の機会。楽しませてもらおうかしら)

 

 頷く雪乃。そして二人は一度視線を合わせ――

 

「「――決闘(デュエル)」」

 

 静かに、宣言をした。

 

「先行は私ね……ドロー」

 

 ダイス目の結果、先行は雪乃だった。正直、これはありがたい。手札にもよるが、妨害なしで動けることはこのデッキにとって大きなアドバンテージだ。

 

「私は手札より、『リチュア・アビス』を召喚するわ」

 

 リチュア・アビス☆2水ATK/DEF800/500

 

 サメの頭を持つ、異形の人間が現れる。ステータスこそ低いが、この手の低ステータスモンスターは総じて何らかの効果を持っている。リチュア・アビスもその例に漏れることはない。

 

「リチュア・アビスの効果発動。このモンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから守備力1000以下のリチュア・アビス以外の『リチュア』と名のついたモンスターを手札に加えることができる。……私はデッキから、『シャドウ・リチュア』を手札に加えるわ」

 

 召喚成功からのサーチ効果。正直、この手の能力はかなり便利だ。

 

「更に私はカードを二枚伏せ、ターンエンドよ」

「僕のターン、ドロー。……二枚のカードと、『リチュア』……知らないカテゴリーだなぁ……」

 

 祇園が小さく呟く。だが、それも当然といえば当然だ。勉強熱心な祇園であっても、流石に海外で先行販売されてそう時間も経っていないカテゴリまでは把握していないだろう。

 

「とりあえず、伏せカードが怖いけど……僕は手札から『フォトン・スラッシャー』を特殊召喚します」

 

 フォトン・スラッシャー☆4光ATK/DEF2100/0

 

 動く鎧、という表現が似合いそうな青と白を中心とした色合いのモンスターが現れる。攻撃力2100――その数字に、雪乃はへぇ、と感嘆の吐息を漏らした。

 

「『サイバー・ドラゴン』と同系統の効果かしら?」

「えっと、フォトン・スラッシャーは自分フィールド上にモンスターがいない時に特殊召喚できるモンスターです。ただ、自分フィールド上にフォトン・スラッシャー以外のモンスターがいると攻撃できず、またこのモンスターは通常召喚することもできません」

「成程、相手の場に依存しない代わりに制約がある……と。いいわ、来なさい」

「はい。――フォトン・スラッシャーでリチュア・アビスへ攻撃」

 

 攻撃力2100のモンスターが襲い掛かってくる。雪乃は伏せカードへと手をかけた。

 

「リバースカード、オープン。罠カード『強制脱出装置』。フィールド上のモンスターを一体、手札に戻す。ちょっともったいないけれど……フォトン・スラッシャーを手札に戻してちょうだい」

「はい。……バトルフェイズが終了しちゃったか……じゃあ、メインフェイズ2。改めてフォトン・スラッシャーを特殊召喚。そして、『ライトロード・マジシャン ライラ』を召喚します」

 

 フォトン・スラッシャー☆4光ATK/DEF2100/0

 ライトロード・マジシャン ライラ☆4ATK/DEF1700/200

 

 再び現れるフォトン・スラッシャー。雪乃が『勿体ない』と言ったのはこれが理由だ。あのモンスターにはターン内の回数制限がなく、ただ戻しただけでは無意味に終わる。『強制脱出装置』は大型モンスターや召喚権を使用して出したモンスターに対して一番効果を持っているのだ。

 そして、ライラ。祇園が使う姿は何度も見てきたモンスターだが、やはり面倒なのには変わりない。

 

「ライラの効果発動。守備表示にすることで、伏せカードを破壊します」

「チェーン発動よ、罠カード『水霊術―「葵」』。リチュア・アビスを生贄に捧げ、あなたの手札を確認して一枚捨ててもらうわ」

「う……どうぞ」

 

 コストは重いが、ピーピングハンデス――相手の手札を確認した上で捨てさせるという効果は強力だ。手札一枚はLP1000以上の価値がある――そんなことを言ったのはどのプロデュエリストだったか。実際、手札がなければ何もできないのがDMであり、そういう意味でハンデスは強力な戦術である。

 まあ、コストが重かったりハンデスだけでは勝てないという理由からあまり使われない戦術ではあるのだが。

 

 祇園の手札→真紅眼の黒竜、ライトロード・ハンター ライコウ、死者蘇生、ダーク・アームド・ドラゴン

 

 祇園の手札を確認する雪乃。そして、彼女は渋い表情を浮かべた。

 厄介なカードが二枚……どちらを落とすべきか一瞬迷うが、やはりカードパワーの高い方を選択した。

 

「『死者蘇生』を墓地に送りなさい」

「はい。……では、エンドフェイズにデッキトップからカードを三枚墓地へ」

 

 落ちたカード→アックス・ドラゴニュート、サイクロン、手札抹殺

 

 闇属性モンスターが一体墓地へと送られたが、まだ許容範囲だ。『ダーク・アームド・ドラゴン』を特殊召喚され、効果まで使われるとそのままゲームエンドへ持っていかれる可能性がある。

 ……ならば、出てくる前にどうにかするしかない。

 

「私のターン、ドロー」

 

 雪乃は、ゆっくりとデッキトップからカードを引いた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 正直、状況は厳しいと言わざるを得ない。

 ピーピングハンデス――強力だが条件が厳しいためにあまり採用されることのない戦術だが、見たところ雪乃の『リチュア』にはこれが無理なく入るようだ。

 死者蘇生が落とされたのは正直辛い。更に雪乃は前のターンでサーチを行っていた。おそらく、ここで動いてくる――

 

「私のターン、ドロー。……私は手札から、『リチュア・チェイン』を召喚するわ」

 

 リチュア・チェイン☆4水ATK/DEF1800/1000

 

 チェイン、という名に相応しい鎖の先端に刃が付けられた武器を装備した魚人が召喚される。雪乃は更に手を進めた。

 

「チェインの効果発動。召喚成功時にデッキトップのカードを三枚確認し、その中に『リチュア』と名のついた儀式モンスターか儀式魔法が存在していた場合、相手に見せて手札に加えることができる。その後、確認したカードは好きな順番でデッキトップに戻すわ。……フフッ、運がいいわ。二枚目の『リチュアの儀水鏡』を相手に見せ、手札に加える」

 

 リチュアの儀水鏡――表記を見る限り、儀式魔法だ。雪乃は残る二枚をデッキトップに戻すと、それじゃあ、と言葉を紡いだ。

 

「早速『リチュアの儀水鏡』の効果を発動。手札のリチュアと名のついた儀式モンスターと同じレベルになるように手札と自分フィールドからモンスターを生贄に捧げることで儀式召喚を行うわ。そして、手札の『シャドウ・リチュア』は水属性の儀式召喚を行う時、このカード一枚で儀式召喚の生贄として使用できる。――『イビリチュア・ソウルオーガ』を儀式召喚」

 

 イビリチュア・ソウルオーガ☆8水ATK/DEF2800/2800

 

 現れたのは、チェインよりも遥かに大きく、同時に力強い体躯をした一体の魚人だった。攻撃力2800――祇園の持つ切り札、『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』と並ぶ数値である。

 

「バトルフェイズ。ソウルオーガでフォトン・スラッシャーへ。チェインでライラへ攻撃」

「……ッ」

 

 祇園LP4000→3300

 

 ダメージこそ微々たるものだが、場を空にされたのは辛い。雪乃はそのまま、ターンエンドよ、と言葉を紡ぐ。

 

「僕のターンです、ドロー」

 

 手札を確認する。このままではソウルオーガを突破することはできない。そうなると――

 

「僕は手札から魔法カード『闇の誘惑』を発動します。カードを二枚ドローし、手札から闇属性モンスターを除外……『真紅眼の黒竜』を除外します」

 

 一枚で数十万円もするほどのレアカードだが、この状況では事故要因だ。『黒竜の雛』でも来てくれれば使いようはあったのだが……。

 

「……モンスターをセット。ターンエンドです」

「私のターン、ドロー」

 

 雪乃がカードをドローする。正直、手札はかなり厳しい。伏せモンスターが『ライコウ』であることも、彼女はわかっているはずだ。

 手札を確認し、一つ頷く雪乃。そのまま、彼女はバトルフェイズ、と言葉を紡いだ。

 

「ソウルオーガでセットモンスターへ攻撃」

「セットモンスターは『ライトロード・ハンター ライコウ』です。ソウルオーガを破壊し、デッキトップから三枚を墓地へ」

 

 落ちたカード→大嵐、バイス・ドラゴン、ライトパルサー・ドラゴン

 

 落ちは悪くない。むしろいい。だが……これでは足りない。

 

「まあ、わかっていても回避できなかったことだものね。……チェインでダイレクトアタック」

「『バトル・フェーダー』です。ダイレクトアタックを無効にし、バトルフェイズを強制終了させます」

 

 バトル・フェーダー☆1闇ATK/DEF0/0

 

 鐘を模した悪魔により、攻撃が止まる。雪乃は微笑んだ。

 

「あら、残念ね。……メインフェイズ2。墓地の『リチュアの儀水鏡』の効果を発動。このカードをデッキに戻すことで、墓地からリチュアと名のついた儀式モンスターを手札に加えることができる。ソウルオーガを手札に」

「そんな効果まで……!」

「扱い辛いとされてきた儀式というカテゴリに変革をもたらすためにペガサス会長が考えたらしいわ。フフッ、儀式使いとしては本当に嬉しいわね。……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

 雪乃がターンエンドを宣言する。祇園はデッキトップに指をかけた。

 

「僕のターン、ドロー。では――」

「そのスタンバイフェイズ、トラップカード発動。『マインドクラッシュ』。カード名を一枚宣言して発動。相手の手札を確認し、宣言したカードが存在していた場合、墓地に送る。無かった場合、私の手札をランダムに一枚、墓地へ送る。……宣言するのは『ダーク・アームド・ドラゴン』よ」

「う……はい」

 

 祇園の手札→ダーク・アームド・ドラゴン、ストロング・ウインド・ドラゴン、レベル・スティーラー、D・D・R

 

 雪乃が宣言した『ダーク・アームド・ドラゴン』は手札にある。当然だろう。先程確認していたのだから。

 そして当の雪乃は祇園の手札を見ると、表情を変えた。

 

「怖いボウヤねぇ、本当に。レベル・スティーラーをコストにレッドアイズを特殊召喚し、ダーク・アームド・ドラゴンを出す……それだけでワンショット・キル。本当に怖いわ」

「…………」

「けれど、残念ながらそれは失敗ね」

 

 微笑む雪乃。まさしく彼女が言った通りの方法を使おうとしていたのだが……当てが外れた。

 だが、この手札ではできることなど限られている。

 

「僕は手札から装備魔法『D・D・R』を発動。手札の『レベル・スティーラー』をコストに、除外されている『真紅眼の黒竜』を特殊召喚。そして、レベル・スティーラーの効果でレッドアイズのレベルを一つ下げ、レベル・スティーラーを……攻撃表示で特殊召喚」

「……攻撃表示、ねぇ?」

 

 真紅眼の黒竜☆7→6闇ATK/DEF2400/2000

 レベル・スティーラー☆1闇ATK/DEF600/0

 

 攻撃表示で現れたそのモンスターに、雪乃は笑みを浮かべた。僅かでも削りにいく――その覚悟を以て、祇園は宣言する。

 

「バトルです。レッドアイズでチェインに。レベル・スティーラーでダイレクトアタック」

 

 雪乃LP4000→2800

 

 これでLPとフィールドは逆転したが……祇園の手札が一枚なのに対し、雪乃の手札は四枚ある。次のドローで五枚だ。儀式モンスターを回収しているし、一気に回転させてくる可能性が高い。

 しかもこちらの手札は☆6の上級ドラゴン……厳しいことこの上ない。

 

「フフッ、やっぱりボウヤは強いわね……♪ 本当に楽しいわ。――私のターン、ドロー」

 

 雪乃がカードを引く。そして、そのまま笑みを浮かべた。

 

「私は手札の『ヴィジョン・リチュア』の効果を発動。このカードを墓地に送ることで、デッキから『リチュア』と名のついた儀式モンスターを一体手札に加える。私は二枚目の『イビリチュア・ソウルオーガ』を手札に。そして、魔法カード『死者蘇生』を発動。私の墓地の『リチュア・アビス』を守備表示で蘇生し、効果発動。デッキから『シャドウ・リチュア』を手札へ」

 

 リチュア・アビス☆2水ATK/DEF800/500

 

 再び現れる、サメ頭の魚人。『E・HERO エアーマン』や『ガジェット』もそうだが、召喚時だけでなく特殊召喚時にも効果を発動するカードはやはり強力だ。

 

「そして『シャドウ・リチュア』の効果発動。このカードを捨てることで、デッキから『リチュア』と名のついた儀式魔法を一枚、手札に加えることができる。そして『リチュアの儀水鏡』の効果を発動。手札のソウルオーガを生贄に、イビリチュア・ソウルオーガを儀式召喚」

 

 イビリチュア・ソウルオーガ☆8ATK/DEF2800/2800

 

 同名モンスターであるなら、レベルが合うのも当たり前である。雪乃の手札は残り二枚だが、すぐにまた一枚増える。

 

「墓地の『リチュアの儀水鏡』の効果を発動。このカードをデッキに戻し、ソウルオーガを手札に回収。そして、ソウルオーガの効果を発動。一ターンに一度、手札から『リチュア』と名のついたモンスターを捨てることで相手フィールド上に表側表示で存在するカードを一枚、デッキに戻す」

「デッキに!?」

「フフッ、そうよ? レッドアイズにはデッキに戻ってもらうわ」

 

 レッドアイズがデッキへとバウンスされる。数あるバウンスも、そのほとんどが『手札へ戻す』ものだ。デッキに戻す――それは、最強のバウンスといっても過言ではない。

 手札や墓地から特殊召喚する手段は数あれど、デッキから特殊召喚する方法は本当に僅かなのだから。

 それに、儀水鏡の効果。あれと組み合わせれば、コストはすぐに補充できる。本当に凶悪な儀式カテゴリだ。『強化』というのも嘘ではない。

 

「バトルフェイズ。――ソウルオーガでレベル・スティーラーへ攻撃」

「うっ……!」

 

 祇園LP3300→1100

 

 LPが大きく削り取られる。これで祇園のフィールドにはバトル・フェーダーが残るのみだ。

 

「ボウヤの手札は一枚。しかもそれは上級モンスター。……どうするつもり?」

「……やれることを、やるだけです」

「そう。期待しているわ。――ターンエンド」

 

 雪乃のエンド宣言。それを受け、祇園はデッキトップに指をかける。

 相手の場、自分の手札、状況。その全てを計算し――

 

「僕のターン、ドロー……ッ!」

 

 ――手にした、カードは。

 

「僕はバトル・フェーダーを生贄に捧げ――『ストロング・ウインド・ドラゴン』を召喚!」

 

 ストロング・ウインド・ドラゴン☆6風ATK/DEF2400/1000

 

 現れたのは、疾風を纏ったドラゴンだ。その身に纏う威圧感は凄まじく、その体躯は正に竜と呼ぶに相応しい。

 

「ストロング・ウインド・ドラゴンは生贄にしたドラゴン族モンスターの攻撃力の半分を得る効果を持っていますが……この場合、バトル・フェーダーは悪魔族なので該当しません」

「攻撃力2400。それでは届かないわよ?」

「はい、なのでこれを使います。――速攻魔法『収縮』。これにより、ソウルオーガの元々の攻撃力を半分に!」

「……ッ!?」

 

 イビリチュア・ソウルオーガ☆8ATK/DEF2800/2800→1400/2800

 

 ソウルオーガの攻撃力が減少する。そのまま、バトル、と祇園は宣言した。

 

「ソウルオーガへ攻撃!」

「くっ……!」

 

 雪乃LP2800→1800

 

 雪乃のLPが減る。祇園がターンエンドを宣言すると、雪乃は、ドロー、と力を込めるように宣言した。

 

「…………ッ、私はターンエンドよ」

「僕のターン、ドロー。――リチュア・アビスへ攻撃! ストロング・ウインド・ドラゴンは貫通効果を持っています!」

「私の負け、ね」

 

 雪乃LP1800→-100

 

 雪乃のLPが潰える。雪乃は最後に持っていた三枚の手札を机の上に公開した。

 

 三枚の手札→強欲なウツボ、トレード・イン、サイクロン

 

「プレイングミス、ね。微妙なところだったけれど……アビスでバトル・フェーダーを攻撃していれば変わったかもしれないわ」

「でも、それをすると攻撃力800のアビスが棒立ちになっていましたし……」

「ストロング・ウインド・ドラゴンの効果を考えると、バイス・ドラゴンでも引かれたら逆転だと思って……ソウルオーガなら大丈夫と思ったけど、収縮を引かれちゃうなんて……」

 

 雪乃にしては珍しく、苦笑を零している。そして彼女はデッキを片付けると、まあいいわ、と呟いた。

 

「このデッキの弱点も見えてきたし、収穫は上々ということにしておきましょうか。……ねぇ、ボウヤ。一つだけ聞いてもいいかしら?」

「はい?」

「デュエルは、楽しい?」

 

 かつて、彼女の想い人は別の人間から同じ問いを投げかけられ、頷かなかった。

 忘れてしまった――それが、彼の答え。

 無論、祇園はそんなことは知らない。だが、彼と同じように辛い想いをした身である彼なら――

 

「楽しいですよ」

「……あなたはデュエルで敗北して、退学になったのに?」

「それは、その……僕が未熟だったからです。辛い時もありましたし、大変なことも多かったですけど……それでも、デュエルは好きですから」

 

 多くの失敗があったし、涙したことも一度や二度ではない。

 それでもこうしているのは、好きだから。大切だから。

 ただ……それだけだ。

 

「……そう」

 

 そう答える祇園に、雪乃は満足げに笑みを零し。

 

「本選には私の妹も出ているわ。気が向いたら、相手してあげて頂戴」

 

 予選の敗退者として、部屋を出て行く。

 その背を見送り、祇園は。

 

「ありがとう、ございました」

 

 静かに、頭を下げた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 海馬ドーム会場。そこの中央では、DMの生みの親たるペガサス・J・クロフォードと史上最年少タイトル保持者烏丸〝祿王〟澪の対談が行われていた。

 澪は当初、この対談に需要があるのか疑問に思っていたが、現実は大きく違う。記者や周囲の参加者からの質問を中心としてペガサスと言葉を交わしているうちに、凄まじい人だかりができていた。あまりのことにスクリーンに映像が映っているくらいだ。

 

「では、次の質問は何かありまセンか?」

『ペガサス会長、DMの新システムとは何ですか!?』

 

 ペガサスが問いかけると、記者の一人がそう声を上げた。それを受け、ペガサスはゆっくりと頷く。

 

「ここにいる澪ガールも参加してくれている一大プロジェクトのことデース。詳しくはこの大会が終わってからしか話せまセンが、多くの人々の常識を変えることになると思っていマース」

「『どんなカードにも可能性が存在する』。かつて、『決闘王』はそう言葉を遺しました。だが、現実は? ステータス至上主義が横行し、所謂低ステータスのカードは使われないのが現実です。新たな新システムは、その常識を全て覆すことになるでしょう」

「イエス、デスが全ては言い過ぎですよ澪ガール。私たちはより多くの人にDMを楽しんでもらいたいのデース」

「ちなみにその新システムの発表については事前に告知しているように丁度一週間後、この海馬ドームで行う予定です。その際、中心になるのはこの大会の優勝者と準優勝者の二人。同時に、新パックの発売も行います」

 

 その言葉に会場が大きく湧いた。新しいシステム、新パック――デュエリストの中に、これらのことを聞いて盛り上がらない者はいない。

 

「では、次に行きましょうか。何か質問は……ふむ、そこの少女」

 

 ビシッ、と何故か手に持っている扇子で手を挙げている小さな子供を示す澪。その少女は驚いた様子を見せると、立ち上がって言葉を紡いだ。

 

「あの、その……お二人が、大会で注目してる人は誰ですか……?」

 

 緊張からだろう。顔を真っ赤にしてそう言葉を紡ぐ少女。澪は微笑を零し、そうだな、と頷いた。

 

「ペガサス会長は如何ですか?」

「やはり私が注目するのは美咲ガールデース。普段の彼女は応募されたデッキばかりを使っていマスが、今回の大会は自分の全力を出すと言っていまシタ。美咲ガールの強さは私もよく知っていマース」

 

 ペガサスの言葉に、会場から声が上がる。成程、と澪は頷いた。

 

「私はその対抗馬として、響プロと本郷プロを推しておきましょう。共に若手では最強クラスのデュエリストです。残る二人、神崎プロと松山プロも弱くはありませんが……前者二人に比べると、僅かに劣る印象がありますので」

「成程、流石は澪ガールデース。では、アマチュアの方はどうデスか?」

「アカデミア本校の丸藤亮選手はダークホースの可能性があるかと。丸藤選手はアカデミア本校でトップの成績を持ち、ジュニア大会でも二度の優勝経験がありますので。他には二か月前の全日本ジュニアチャンプ、久・バーランド選手なども期待はしています」

「アカデミアの生徒はどうデスか?」

「これは身内贔屓になりますが、二条紅里選手と菅原雄太選手には頑張って欲しいですね。特に三年生は国民決闘大会も近いので、その前にできる貴重な真剣勝負の場ですから」

「オゥ、楽しみデース」

「ペガサス会長はどうなんですか? 一人、推薦枠で出ている選手がいますが」

「それは明日のお楽しみデース。ただ、一つだけ。ミラクル・ガールは面白いものを見せてくれるはずデース」

「期待しておきます。……おや、予選が終了したようですね。一般枠が決まったようです」

「誰が勝ちあがってきまシタか?」

「この二人ですね」

 

 スタッフから渡された資料を、澪はペガサスにも見せる。そうしながら、皆さん、と澪は言葉を紡いだ。

 

「一般参加枠の二つが埋まりました。予選通過者の二人を発表します」

 

 記者たちが一斉に動き始める。おそらく、名前を聞いたらすぐに取材に行けるようにするためだろう。

 

「まず、一人目。――新井智紀。関東大学リーグの前年度覇者である晴嵐大学のエースですね。今年のドラフト目玉の一人です。順当といえば順当でしょうか」

 

 一斉に記者たちがどこかへ連絡を取り始める。おそらく、取材の準備だ。

 忙しいことだ――微笑を零しながら内心でそんなことを呟き、澪は言葉を続ける。

 

「そして、もう一人。――夢神祇園。アカデミア・ウエスト校所属の一年生です。嬉しいことに、後輩が本選に出場してくれたようです」

 

 ざわめきが広がった。アカデミアの生徒――それが弱いわけがないことは誰もが知っている。だが、一年生で勝ち上がってくるのは想定外だったのだろう。実際、本選に出ているアカデミア生は遊城十代を除けば全員が三年生なのだ。

 あの桐生美咲でさえも『まず突破は無理』とまで言った予選。それを突破したのがどんな人物なのか――視線が澪へと集まる。

 澪は微笑むと、前言の訂正です、と言葉を紡いだ。

 

「先程挙げた注目選手ですが。そこへもう一人追加しましょう。

 ――夢神祇園。おそらく、今大会の台風の目になるはずです」












祇園くん、本選出場決定!!
わ~パチパチ

開幕とか言いつつ予選なのは突っ込んだら駄目です
ちなみに現時点の名前ありキャラクターとデッキは、

夢神祇園→カオスドラゴン
桐生美咲→?
遊城十代→融合HERO
丸藤亮→表サイバー
本郷イリア→?
神崎アヤメ→?
二条紅里→植物デュアル
菅原雄太→純ライロ

こんな感じですね

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