幻想殺しと電脳少女の学園都市生活   作:軍曹(K-6)

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アドリア海の女王 La_Regina_del_Mar_Adriatico.

上条と貴音はアドリア海の女王の中で二手に分かれていた。アニェーゼを助ける役(貴音)ラスボスを倒す役(上条)といった具合に。

 

さて、そんな役割を承った上条は、つい先程上から崩れてきた天井を右手で破壊したところだった。

 

上条の前には一人の男が立っていた。豪奢な法衣に身を包んだ、四十代の白人だった。

上条はその男、ビアージオ=ブゾーニを見据える。

 

「・・・・・・、その右手」

 

放たれたのは、以外にも日本語だった。全ての装備を外して、右手の指輪も外していた上条は、その右手をビアージオに向けて広げると

 

「この右手がどうかした? うらやましいのか?」

 

そう言った。ビアージオは顔の表面に皺を生んだ。音もなく表現されたのは、うっすらとした嫌悪と苛立ちだ。

 

「承服できないな。主の恵みを拒絶するその性質もさる事ながら、それを武器として振り回すというのが何よりも。一度でも御言葉を耳にしたのなら、即座に腕を引き千切ってでも恵みを得ようと努力するのが筋だというのに」

「生憎、切っても生えてくるんでね」

「・・・・・・、所詮は異境の猿に、人の言葉は通じないか。せっかくそちらの言語に合わせたのに、返ってきた台詞がその程度の品性とはな。ならばこのビアージオ=ブゾーニが主の敵に引導を渡そう。猿が人のフリをするのは、見るに耐えないんでね」

 

ビアージオと名乗った男の両腕が左右へ交差する。

キン、と小さな金属音が聞こえた。

それぞれの掌には、首にあった十字架が一つずつ握られていた。

ひゅん、とそれらは上条の腹の前へ軽く放り投げられる。

 

「――――――十字架は悪性の拒絶を示す」

 

ゴッ!! と二つの十字架が膨張した。

膨張速度は砲弾に等しい。一瞬で長さ三メートル、太さ四十センチまでに巨大化した十字架が襲いかかる。まるで金属で構成された、鉄骨の暴風だ。

 

「おっと!」

 

上条は右手で壁と化した十字架を殴り飛ばす。しかし()()で潰せたのは片方だけだった。もう片方の十字架を()()で殴り飛ばす上条。その単純な破壊力で十字架はバラバラに壊れたが、同様に上条の左腕が、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「げっ!」

 

即座に再生させる上条だったが、それを見たビアージオは彼を見る目を変えた。

 

「十字架によって体が溶け・・・、そしてその再生能力・・・。貴様、吸血鬼か!」

「・・・・・・さて、どうだろうね」

 

上条はニタリと笑う。その口の端、犬歯に当たる部分には人ではありえない鋭さと長さを持った、牙が生えていた。

 

「断じて認めん。我が眼前にアンデッドが存在し、聖職者の祈りを妨げ、神の奇跡を破壊する。我らが主の定めし唯一の理法を外れた者を、私は断じて認める訳にはいかん」

「そんな事言われてもなー」

「貴様は異教徒でも、猿でもない! もはやバチカン、いや十字教の敵だ! 今ここで、このビアージオ=ブゾーニが直々に地獄へ送ってやる」

「そりゃそりゃ光栄だ。だがな、俺はお前らの言う吸血鬼(アンデット)は違うんだよ」

 

上条はそう言うと、両手の親指と人差し指で四角を作る。だがその手は、数字の三を表すときのように、中指も立っていた。ビアージオの方へ向いた左手の甲には、魔法陣が刻まれている。

 

「拘束制御術式第三号・第二号・第一号、開放。状況A『クロムウェル』発動による承認認識。目前の敵完全沈黙までの間、能力使用。限定解除開始。――――――

 

上条がそう言うと、彼の手の甲の魔方陣が赤く輝く。

 

 

 

 

――――――では教育してやろう。“本当の吸血鬼”の闘争というものを・・・・・・」

 

その言葉と共に、アドリア海の女王の中に、吸血鬼(ノスフェラトゥ)()(キング)が解き放たれた。

 

 

 

それはアドリア海の女王だけでなく、全世界で()()は観測された。数十年前、滅んだとされる吸血鬼と同じだけの魔力量が確認されたのだ。

その発生源である上条当麻はユラリと動き出す。

 

「―――ならば、その悪性は我が十字架が拒絶する」

 

ゴッ!! と七つの十字架がそれぞれ爆発的に膨張する。

人間の感覚的にはクロス方向に咲き乱れる金属製の爆炎が縦横無尽に舞う。上条はそれをかわそうともせず、そのまま身で受け続けた。

 

ボロボロになり、既にオーバーキルになったであろうその体は、もう一度再生される。

 

「・・・吸血鬼ってのは、吸った人間の命を自分の命に変換する。つまり、今まで吸った人間の数プラス俺の命を削らないと俺は死なない。まぁ最も、今も今までも一度もこの命が削られた事はないけどな」

 

上条は愉しそうに笑う。だが、その眼はだんだんと正気を失いつつあった。

 

(マズいな・・・。ここ最近、輸血の血ばかり飲んでいたから、それに加え怒涛の回復・・・。くっそ、これでインデックスさえいなければ・・・。っていうか今この辺りにはシスター(処女)がいっぱいいるんじゃね? やめろ、ダメだ。考えるな!)

 

上条が慌てて理性を取り戻そうとすると、その半身を十字架が吹き飛ばす。

 

(あー。もういいや。全世界から敵と認められてもいいから、コイツぶっ倒した後、血を飲もう。もう誰のでもいいからこの渇きを潤してもらおう。うん、そうしよう)

 

上条はそう思うと、その眼を真っ赤に染め上げた。吸血鬼の象徴でもある、真っ赤な瞳に。

 

そこからは一方的な蹂躙だった。

まず始めに、上条の影から現れた大型の三つ首の犬が、ビアージオを喰らおうとするが、十字架の攻撃によって甲板まで吹き飛ばされる。

上条は好都合だと言わんばかりに笑って、艦隊の破壊を使い魔達に命ずる。それにテンション上げ上げな使い魔達は、一斉に上条の影から飛び出していった。

そして、上条は十字架の攻撃を物ともせずにビアージオまで近づくと、半身を影の狗に変えてこう言った。

 

「死なない程度に喰い殺せ」

 

一瞬で、ビアージオの体はボロボロになっていた。正気を八割方失っていた上条は、ビアージオの背後にあった両開きの扉に手をかける。その先にいる、アニェーゼを新たな目標として。




上条さんは吸血鬼でした! イェーイ!

気づいている人も多かったでしょうがね。
ネタ割れするならこの回の、この十字架のシーンでって決めてたので、いやー。かけましたよ。

俺が書きたいシーンその十五ぐらいがかけましたよ!

それでは皆さんご一緒に?





エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!

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