幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
「どこだ・・・どこにいる・・・、オリアナァ!!」
上条は綺麗な装飾品のような眼を限界まで開いて辺りを見回す。
かなりの速さで走っているため、人混みで多くの人とぶつかってしまう。
「きゃっ! ちょっと前見て走りなさいよ!」
「うるせぇ! 男とイチャついてろ! 派手な下着身につけやがって!!」
「なっ!?」
怒声には怒声で返しながら上条は走る。
「どこだ・・・どこだ・・・」
ビルや人や動物までも透けて、遠くの方まで上条の眼には見えている。
「くっ。こっちの『眼』は限界か・・・・・・。仕方ない」
上条はそう言うと、人混みから飛び出し、少し離れた歩道で止まる。
「・・・『目を凝らす』」
上条は青い眼を閉じると、赤い瞳となった眼を開く。その眼はまるで、猫や蛇のように瞳孔が縦に長かった。
そしてそのまま辺りを見回し、何かを見つけたのか、上条はもう一度駆けだそうとして。
「・・・・・・とうま、こんな所で何してるの?」
上条はギクリとした。
慌てて振り返ると、そこにはチア衣装を着たインデックスが立っていた。
彼女は首を傾げている。
傾げながら、しかしその眉は、怒ったように寄せられていた。
(マズい・・・・・・ッ! ウチの学校、次はこの辺の競技場で試合すんのか!?)
上条は一瞬慌てたが、少しして気持ちを整えると、ゆっくりとインデックスから目を離して、
「・・・『目を隠す』」
そう呟いた。
「あ、あれ? とうま? とうま!?」
(悪いな。インデックス)
「とうま!」
(バレて・・・ないよな?)
予防線を張っておこうという考えで上条は眼を開く。
だがそれが仇となる。
「とうまっ! 逃げようとしても無駄だよ!」
「うげっ」
上条は慌てて振り返る。流石に念を入れすぎたらしい。
「きょうぎじょうにクラスの皆が向かってるのに、とうまはどこへ行こうとしてるのかな?」
上条は頭の中で高速演算を開始する。
(馬鹿正直に答えるとインデックスが危険な目に遭う。いや、それは別にいいんだ。十分痛い目に遭って、反省したところで助ければいいんだから)
そう、上条自身は、インデックスが事件の中心に向かってくることに反対はしていない。問題は、“禁書目録”という重要物をイギリス清教に持ち帰られる可能性があること。管理者である
と、上条は考える。
「あー。えーとだな。心配するな。お前が思うような事件は起きてないから。ただ、暇そうにしているところを、運営委員に見つかって手伝いを任されたんだ。だから安心して、競技場で待ってろ」
「とうま、とうま。次は『くみたいそう』だって言ってたよ。ちゃんと来れる?」
「・・・・・・、」
上条は一拍置いて、
「行くよ。出来るだけ早く、手伝い終わらせてさ。ちゃんと行く。だから待っててくれるか、インデックス」
叶えられる自信があまり沸かない約束を告げる。
「うん」
「ありがとな」
上条は背を向けて走り出すと同時、ポケットからもの凄い勢いで一台の携帯電話を取りだした。
『ん。どうしたのだね?』
「馬鹿なことやってんな! 姫神は? 無事ならこっちに合流しろ!」
『んもう。相変わらずユーモアがなくて人使いの荒いご主人様ですね。待っててください。今行きますから』
上条はため息をつくと、その場から高速で離脱した。その直後、光速に近い速度で一人の少女が通りに突っ込んでくる。
「ご主人っ!」
「おう。何か報告はあるか?」
「秋沙さんのほうはご主人自身あまり心配してなさそうなので、特筆することはありません。ですが、イギリス清教が掴んだ情報なら、なんとなく分かりました」
「マジか?」
「ええ。どうやら十字架さんは好きな時に好きな場所で使えるような物ではありませんが、天文台さえあれば使えるようです」
「研究所とかの天文台じゃあなさそうだな」
「えぇ。魔術を発動させるための、星座の位置関係を大切にする天文台ですよ」
「・・・で? どこなんだよそれ」
「・・・・・・第二十三学区。航空・宇宙開発分野専用学区です」
「・・・・・・いつも通り理事長権限で突破しますか」
貴音の返事を聞いて、上条達は音速を超える速度で飛び出した。
携帯を左手に、右手を力一杯握りしめて。
カゲロウデイズの十匹の蛇。名付けてカゲロウアイズ!
な~んちゃって~!