幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
宇宙エレベーター
上条と貴音は、インデックスを連れて街を歩いていた。
「あれから三年か・・・・・・」
「長いもんですね」
「ほほぅ・・・・・・宇宙エレベーター・・・・・・」
インデックスは、街を飛ぶ飛行船や電光掲示板に表示された単語に興味を持つ。
『いよいよ完成が間近に迫った宇宙エレベーター「エンデュミオン」! 記念式典は九月に開催される予定です。今回はエンデュミオン完成までの軌跡を・・・・・・』
「ねーねーとうま、たかね。エンデュミオンってなむぐっ」
立ち止まった貴音の背中にインデックスが突っ込む。
「たかね!? 急に立ち止まったら危ないんだよ!?」
「そんな事よりインデックスさん? あなた、完全記憶能力あるのに何言ってるんですか?」
「? 何が?」
貴音はビシィッ、ととある方向を指した、そこには天へと貫く高い塔がそびえ立っている。
「あれですよ。あれ! あれが宇宙エレベーターですっ!!」
「あれあれあれー!? あんなのあった~!?」
「ありましたよっ! 科学が絡むと本当に駄目ですね! 風斬の時も、ローマ正教の時も、堂々とあったでしょうがーッ!!」
「ほえ~っちんぷんかんぷんだよ~」
「まぁ、発表は最近なんだけどな。学園都市じゃなきゃ実現不可能とまで言われててだな」
「うんうん。で、つまり宇宙エレベーターって何?」
「ロケットとかシャトルとか使わないで、直接宇宙まで上がれるようにしたものですね」
「おおお・・・・・・! 科学サイドはバベルの塔まで現実の物にしようというんだね・・・・・・!」
「んじゃあ最後には引っこ抜かれるのか?」
上条が冗談交じりに返したが、インデックスの意識はもう違う場所へ移っていた。上条の後方に出来た人混みから聞こえる歌声に。
「・・・・・・?」
「・・・行ってみるか」
「ですね」
「わ――っ。見えないよー!」
「はいはい。ちょっとすみませんね」
「ほら、インデックス、こっちから見えるぞ」
「・・・・・・・・・!!」
人混みの向こうでは少女がキーボードを弾きながら歌っていた。地面に置かれた看板から名前は「ARISA」である事が分かる。
その歌声に、インデックスは目を輝かせていた。
―――ところは変わってファミレス。
「・・・・・・八八の奇蹟? ああ、あったねそんなの」
「三年前です! オリオン号の事故でスペースプレーン計画は凍結されて、宇宙エレベーターの建設が始まったんですって」
ドリンクバーのコーナーで話しているのは常盤台の超電磁砲こと御坂美琴と、白井黒子と同じ風紀委員で頭に付けた花の紙飾りが特徴的な初春飾利。初春の方が嬉しそうに宇宙エレベーターの事を語っている。
「世界初の宇宙エレベーター! この学園都市に建設するのは赤道直下の何十倍も困難なんです。それをものともせず遂に完成が迫ったエンデュミオン! ステキですよね~」
「そ、そうね・・・・・・」
自分達の席に戻った美琴もその勢いに押されていた。この場に後輩である白井黒子はいない。先日の怪我で入院しているからだったりする。
「佐天さん。それ、何聞いてるの?」
「これは“ARISA”っていうネットとか路上ライブとかで活動しているアーティストで、今すっごい人気なんですよ!」
「“ARISA”っていえば以前ネット沸かせた伝説の“ENE”と師弟だ。とか姉妹だとか色々ウワサされていますね」
「あー。“ENE”は私も好きだったなー。こっちまで元気になるぐらい元気な人だったからねー。会った事ないけど」
「・・・・・・まぁ、その“ARISA”ですけど、試しにダウンロードしてみたら良い曲ばっかりでハマっちゃって・・・」
「へぇ・・・・・・」
「この人ですね」
初春がパソコンの画面に少女を映して、美琴がイヤホンで歌を聞いて、少女は気付く。
「あれっ、この子・・・・・・。やっぱりあの子だ。そんなに有名なんだ?」
「え!」
「「あの子」って!? 知ってるんですか御坂さん!?」
「わっ」
「いや~ちょっと色々あったというか・・・・・・」
「色々ってなんですか!?」
美琴に詰め寄る佐天をほほえましく見ていた初春だったが、その顔がだんだん曇る。その原因は、ファミレスの窓に張り付いた少女。黒子だったりする。
「こんなところでなぁああにをなさっているんですのっ!? お姉様っ!!!」
「げっ」
車椅子ごと空間移動した黒子は、机の上に現れる。
「白井さん・・・・・・、入院してるハズじゃ・・・・・・」
「このような事があるからおちおち入院もしてられませんのよっ!! 半日早く許可出たので皆様を驚かせようと思ったら・・・・・・まさかこっちが驚かされる方だとは思ってもみませんでしたの!! かくなるうえは~・・・・・・。私もお姉様と急・接・近!!」
再度空間移動した黒子は美琴と佐天の間に現れると美琴にすり寄り始めた。
「お姉様~!!」
「だぁああ! 来るな~!!」
最後にそのファミレスから電撃が迸ったのは余談だろう。
再度、ところは戻って路上。
演奏が終わった少女は立ち上がり、お礼を言った。そこらから歓声が上がる。
パラパラと人が散っていく中。インデックスは拍手を止める事がない。
「すごいすごいすごーい! とーっても素敵だったんだよー!」
「えへへ。ありがとう・・・・・・あれ?」
「よっ。“久しぶり”になるのか。この時空では」
「六九万八二七二年、四か月と十五日三時間四分五十秒ぶりですねぇ」
「当麻くん! エネさん!」
「し、知り合いなの?」
「ああ。三年前くらいにな。俺じゃなくて最初に会ったのは貴音だっけ。な? “閃光の舞姫”」
「うあぁぁぁあああ! その、そのトラウマネームを出すなァァアアアアア」
ゴロゴロ。とものすごいスピードで地面を転がる貴音。『ああ、これはベッドで悶え苦しむフラグだな』などと思いながら上条は、ARISAに顔を向けて、
「インデックス、彼女は鳴護アリサ。今はシンガーソングライターでもやってるのか?」
「うん。そうだよ」
「よろしくね! アリサ!」
「うん。よろしく!」
「ご主人・・・・・・。本気で怒りますよ・・・・・・?」
「あれー? 『ゲームでアンタが勝ったら、アンタの事ご主人って呼んで何でも言う事聞いてあげるわよっ!』って言ったのはどこの誰だったかなー? そうだったよな~? “閃光の舞姫エネ”さん?」
「うっがぁぁああああ!! やめてぇぇえ! 心の傷を抉らないでぇぇぇ!!」
「たかね。大丈夫?」
「エネさん! 大丈夫ですか!?」
「見ないで。恥ずかしい」
「パンツ見えてるぞ」
「見せてます」
「誰に」
「ご主人に」
「あっそ」
うずくまってブツブツ言う貴音を放って話は始まった。
「そもそもたかねとアリサはどこで出会ったのかな?」
「えっとね。エネさんが元々有名人だった事は知ってるかな?」
「知らないんだよ」
「貴音はな。この間まで、と言っても今年の冬まで“ENE”って
「うん。ビデオカメラを持って街を歩いてたから声をかけたの。当たってすごく嬉しかったの覚えてるなぁ~」
「こっちとしては素の自分を知られるの嫌でしたけどね」
「クカカ。随分イタイ娘演じてたもんな。そりゃ身元特定とかマジ勘弁だろ?」
クツクツと笑う上条を貴音がポカポカと殴る。
「コホンッ。まあとにかく。凄いってのが伝わる歌でしたね」
「どうすごいのか表現してやれよ」
「何でそんなに腹立つ言い回しなんですかァ!!」
ケラケラと笑って彼は受け流す。周りの視線を全くと言っていいほど気にしないそのやりとりは、少女の頬を緩ませるのに時間はかけなかった。
「ふふふ。あはは。全く変わってないね。二人とも」
「「え? いや、貴音(ご主人)と違って俺(私)はしっかり成長してるぞ?(してますし)」」
全く同じタイミングで口を開く二人に、インデックスまでもが笑いだす。上条と貴音は顔を見合わせて首を傾げた。
「あはは。・・・・・・二人はもう、レベルは上がったの?」
「いんや、相変わらずの無能力者」
「それでも毎日楽しいですけどね」
「二人は本当にすごいよ・・・・・・。私なんて、力がないから・・・・・・」
「だったらつければいい。能力を。
「簡単に言わないで。私に唯一できたのが歌う事なの。何もできない私に」
「おっぱいついてるかー!」
「きゃぁ!?」
貴音が、アリサの胸を両手でわしづかみにしてモミ倒す。
「な、ななな!」
「ちっぽけな事で悩んでんですねェ。せっかく宇宙エレベーターができたんです。宇宙に行ってみたらどうですか。自分の悩みなんか世界の広さに比べたらちっぽけですよー」
「で、でも」
「でももイモもなーい! 良いですか!? 人間諦めたらそこで楽しい人生終了なんです! 何かにチャレンジし続ける限り、確かに人間は輝きます。ですが、辛い現実から目を背けてるだけじゃ、本物のスターにはなれないですよ!?」
「アホか、馬鹿」
「なんと! 二度も悪口!」
「まあ俺も貴音の意見を否定する気はねーよ。人間に限界はないって知ってる俺は、勝手に自分に限界をつけて、諦めてる奴が大嫌いだからな」
「・・・・・・本当に、妙に説得力があるね。当麻くんとエネさんの言葉は」
「そのエネさん呼びやめてくれない?」
「じゃあ貴音ちゃんで」
「うっ・・・・・・。ご主人」
「嬉しいんだろ? 喜んどけよ」
「うっしゃぁ! どりゃぁ!」
「? とうま、私おなかすいたかも」
「平和な思考してんなー。ほんじゃ、さっきの事は忘れて、一日遊ぶか」
「あいさー!」
「ふふっ。わーい」
「・・・・・・え? それでいいんですか?」
と、その時。携帯のバイブが鳴る。上条が自分のかと思って、貴音に目を向けるが貴音は首を横に振るだけ。その時アリサが、
「で、出ても良いかな?」
「「どうぞどうぞ」」
「どうそ!」
「はい鳴護です! ・・・・・・はい! ・・・・・・はい! 本当ですか!? ありがとうございます!! ・・・・・・はい! はい! わかりました!」
通話を切ったアリサは安堵するような溜息をつく。その様子に、上条、貴音、インデックスの三人は首を傾げる。が、次の言葉で答えは出てきた。
「・・・・・・わたし! オーディション受かっちゃった! デビュー・・・・・・できちゃうんだって!」
「ん? え? お? それってあれか。アイドルとかそういうデビューか!? タレントとかそういうのか!?」
「テレビに出るんですか!? 何チャンですか!」
「テレビ? アリサ、カナミンと同じになるの!? 凄いよ!」
「いや、カナミンはなんか違うだろ」
「実在しませんしね」
「これは絶対お祝いしなきゃだよ! とうま! たかね! お昼まだだよね!? アリサも一緒に食べに行こう!」
「えっ! で、でもそんな悪いよ!」
「いいよね? とうま?」
いいの? と言った風に上条の方を見てくるアリサに、上条はニコリと笑って、
「構わないぜ。今さら何人増えたところで変わらないだろうし」
―――暫くして、上条達はファミレスにいた。
「ん? オーディションってあのエンデュミオンに関係したやつなのか?」
「うん! キャンペーンに使うイメージソングにわたしの歌が選ばれたの!」
「へー! 知ってるよ! 宇宙エレベーターだよね!」
箸を置き、口の中の物を飲み込んでから話すインデックス。礼儀作法がしっかりしているのは、貴音が叩きこんだからである。
「教えたの私達ですけどね」
「・・・・・・。・・・ってことはアリサは宇宙に行くんだね?」
「うーん・・・まだわかんないけど、オープニングセレモニーでライブしたりするから、もしかしたら行っちゃうかも!」
「すごーい! アリサの思いが神様に届いたんだよきっと!」
「うん!」
「は、はは。神様、ねぇ・・・・・・」
上条と貴音。二人とも溜息をつく。
「わたしね、なんかわりと運がいいみたいなの。こんなチャンスめったにないなって・・・・・・恵まれてる方だなって思う・・・・・・」
「それは、違うんじゃないか?」
「え?」
「チャンスだとか成功とかいうのはっ、怖がらずに場所に立って! やりたいって願って! めいいっぱい努力をした奴にしかっ!」
ところは移動してバッティングセンターのバッターボックスでフルスイングする上条。そのバットは華麗に球を打ち返した。
「訪れないんだからなッ!!」
「ナイスホームラン!」
「説得力はないかな?」
「なにゆえ! ま、俺は筋金入りの不幸だからな。おまえは実力で選ばれたんだ。それは誇って良いトコだと思うぜ」
「当麻くん・・・・・・。あ、次来るよ!」
「なぬっ!」
―――――――――
――――――
―――
「あーっ! こんなに楽しかったのって久しぶりかな! ほんとありがとう付き合ってくれて・・・・・・」
「ううん!」
「良いんだよ。感謝されるような事は何もしてないから」
「荷物持ちっていう男子の仕事もキッチリやってますしね」
「そもそも軽いし」
「そう言えば歌詞がない曲が一個あったよな。あれはまだ作りかけなのか?」
「うん。まだ途中」
「当麻くん。貴音ちゃん。インデックスちゃん。今日は本当にありがとう! デビューライブ決まったら必ず知らせるね!」
「ああ」
「ええ!」
「楽しみにしてるよ!」
「うん!」
その時、近くにあった噴水から少女が出てくるが、三人とも気付かない。
「ウンディーネ。杯の象徴。万物より抽出されしものよ」
「・・・・・・ッ!」
「ん?」
「あ」
「え?」
彼らが気付いた時には、背後に巨大な水柱ができていた。それは渦巻くようにして天に昇っていて、まるで竜巻を見ているような気さえする。
「おっ」
「魔術・・・・・・」
「な、何!?」
「いつの間に人払いが・・・・・・?」
そんな上条達の元へ、しなる鞭のような動きで渦を巻いた水が横薙ぎに振るわれる。が、上条は右手を振るうだけで、そこから先をただの水に戻した。戻された水は地面に落ちる。
「気をつけてとうま! 水のエレメントを使役する術式だよ!」
「知ってるよ。一度触れた
水。地。風。三人の少女がそれぞれ出てくる。
「誰だよ、テメェらは」
「マリーベート! 足止めして!」
「下がってろよ。二人とも!」
水の魔術師が、水で針を作り。それを飛ばしてくる。
ある程度かわした上条だったが、地の魔術師が上条の片足をがれきで加えこむ。
が、上条は笑って、
「固定してくれてありがとよ」
先程かわした水の針が風の魔術師によって、風に乗って戻ってくる。
それは全て、オレンジ炎によってかき消える。
「コンタクトは必要ねーな。X BURNER!!」
放たれた剛炎は、水の魔術師を飲み込んで遠くのビルに穴をあける。
本来、バランスがしっかりとれていないと後方に飛ばされる危険な技だが、今回は片足が地面に固定されていたので、その心配はなかった。
「さて、何者だてめェら」
右手を使わず純粋な力技だけで足を抜きとる上条。その目の前に炎が吹く。
「! この術式!」
「ステイル=マグヌス!!」
「―――なぜ勝手に動いた? 僕の命令を待てと言ったハズだ」
「し、ししょー」
「おい、ステイル。何だこれは!」
「・・・・・・・・・〝Fortis931″!!」
「魔法名!? 本気か!」
上条の方へステイルの炎が向かう。それは全て上条に直撃した。
「何を呆けている・・・アレを確保しろ!」
「「「!」」」
三魔術師が何かに気付いたようにアリサとインデックスの元へ向かう。その時、ステイルの体を急な脱力感が襲う。
「・・・・・・? !! 忘れていた!」
「・・・・・・死ぬ気の零地点突破 改」
ノッキングするような炎は、そのサイン。ステイルの炎を魔術を、吸収し己の力に変える上条。
「エネ!」
「任せてください! ご主人!」
「くっ!
「ふっ。行くぞ!」
上条は無造作にイノケンティウス手を伸ばす。ステイルも疑問に思う。吸われる!? と勘繰って勢いよくイノケンティウスが襲い掛かってくるが、上条は依然変わらない変わっている点として、上条の両手のグローブの甲留め具が変化し、ローマ数字の一に変わっていた。
ブワッ、とその場に水蒸気が立ち込める。まるで水が蒸発したような、そんな雰囲気だった。
「・・・・・・吸われていないのか・・・? イノケンティウス!」
・・・反応はない。炎の巨人の代わりにそこにあったのは、氷の塊だった。
「なっああ!?」
「死ぬ気の零地点突破
氷の向こうで笑う上条の両手からは、冷気が出ていた。
「超圧縮エネルギー“死ぬ気の炎”を発生源ごと凍らせる事ができる。死ぬ気の境地。『死ぬ気の零地点突破 初代エディション』それを溶かせるのは死ぬ気の炎だけですね」
「中にイノケンティウスは閉じ込めてある。もうその魔術は使えないぞ」
「・・・・・・ふっ。油断したな」
「あ? なっ!?」
上条が左右を見渡して気付いたのは、上条がいた石の屋根を支える柱に炎が灯った事。そして、それが石の柱を落としてきた事だった。
「君の
「・・・・・・考えたな。だけど、赤点だ」
上条はそのまま地面を踏みしめると、アッパーカットの要領で右手を突き上げる。故意に寸止めされたように見えたそれは、空気を叩き潰し大質量の拳圧を生み出した。まともに直撃した石の柱は砂レベルまで粉砕された。
「さてと、お客さんだぜ? ステイル」
「!?」
上条がそういうと、ステイルの後ろの石の柱に六本足の乗り物が出現する。その機体からワイヤーが伸び、ステイル付近の地面を破壊する。
「くっ。・・・・・・なんだ・・・・・・?」
その後も、周囲のビルの壁を走り、数台同じような機体が現れる。
「他にもいるぞ!」
その機体は到着と同時に、円盤状の何かを射出しばら撒く。そして、メインの機体(最初に現れたもの)がワイヤーを射出する。
「!!! かわせっ!!」
そのワイヤーは、円盤に突き刺さると同時、起爆し爆発を起こした。
「うっはー。過激ですねェ」
感心する貴音の横で上条は呆れる。そして、拡声器でも通したような声で、
『・・・我々は学園都市統括理事会に認可を得た民事解決用緩衝部隊である。これより特別介入を開始する』
そこから戦闘が始まったが、関係ないと思い込んでいる上条達は気楽そうだった。
「どうする?」
「正直帰りたいです」
「だよな~」
それでも頭部の死ぬ気の炎が消えていないのは、上条が何かを感じ取っているからだろうか。
と、通りに逃げだしたステイルに向かったワイヤーが、ブツリと切られる。理由は至極簡単。近くのビルの上にいたもう一人の魔術師、神裂火織の『七閃』だった。
「・・・・・・!! 神裂!」
「ステイル! これ以上騒ぎが大きくなると面倒です。撤収を!!」
それを見つけた六本足が、神埼の元へ跳ぶ。ワイヤー同士の戦いが始まったが、どちらも無傷だった。
「・・・・・・やりますね」
神裂はそういうと、ビルから飛び降りる。ほとんど音なく着地して、ステイルを呼ぶ。
「メアリエ、ジェーン、マリーベート。行くぞ!」
「はい!」
「なぁ、ステイル。なんで魔術の連中がアリサを狙うんだ?」
「・・・・・・その娘は不和を招く黄金の林檎だ。いずれ僕達魔術サイドと科学サイドの間で戦争を引き起こしかねないってことさ。もちろん、
「戦争。ねぇ」
ステイルが走り去った方を見ながらにやりと笑う上条。その背後に六本足が下りてくる。
「お?」
「なんです?」
その操縦席らしき部分が開かれ、黒髪の少女が出てくる。
「あんた等、統括理事会に認可を得たっつったよな。俺、そんな話聞いた事ないんだけど?」
「・・・・・・我々は学園都市内の秩序を維持すべく、特殊活動に従事している」
「だんまりか」
「・・・・・・・・・。・・・・・・警告する。
「・・・・・・あいにく、
エネちゃん人気者