幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
2065年10月26日午後1時18分
三度の破裂音と共に、DMCー12が出現する。そこに高速道路はちゃんとあった。
・・・のだが、崩れ落ちかけていた。
「ちょっ!」
ブレーキを踏み込みハンドルを切る上条。数十センチ横スライドして、DMCー12は停止した。
「・・・・・・貴音」
「何ですか」
「ドクは成功してたよな」
「ええ」
「だったらここは未来だってのか?」
「恐らく」
「未来の学園都市はこんなになってんのかよ・・・・・・」
上条達の目に映るのは一昔前の怪獣映画やSF映画で見た事ある、崩壊した街だ。
一番被害が大きく見えるのがエンデュミオンだ。途中から折れ、地面に落ち学園都市の被害、大部分の原因になっている。
統括理事会のある『窓のないビル』でさえも
「一体・・・何が起きたって言うんだよ・・・・・・」
「さ、さぁ・・・・・・」
「ほ、本当にいた・・・・・・」
そんな声が上条達の耳に届いた。
振り返るとそこには、少しボロボロの制服を着て、二の腕に腕章を付けた少女がいた。
「
「あ・・・、これですか? これはこの街で拾って着けてるんです。ご紹介が遅れました。私小鳥優香と言います」
「小鳥・・・さん? どうしてあなたはこんな街に」
そう貴音が尋ねると、少女。優香は説明を始めた。
「ここに学園都市という街があったのは今から四十年前になります。今はもう誰も寄りつかないいわく付きの街になっています。それでもこうやって近づく人はいますけど、それは観光目的であったり、撮影目的であったり。絶対に、研究目的で訪れる人はいません。何故ならここが潰されたのが龍の怒りをかったからだと言われているからです。
―――学園都市の最暗部から全てを見通すと言われた黒皇龍。その龍が愛したという少女が実験に使用され息絶えました。怒り狂った黒皇龍は最暗部からその猛威を振るい。全てを壊し、全てを喰らい尽くしました。その瞳に悲しみと怒りをためて、その腕に少女の亡骸を抱いて。
学園都市は滅びました。龍の怒りをかった事で、中から喰い殺されました。それは無残に喰い殺されました。そして黒皇龍は戻っていきました。学園都市の最暗部に。少女の亡骸と共に―――
これが、外の世界にまで伝わっている四十年前の出来事です。そしてそんな事があったこの街跡地の今日、この時間。貴方達が来る事が予言されていました。上条・・・当麻さんですよね?」
「お、おう」
「二十年前、二十年後の今日。ここに上条当麻と榎本貴音という男女がいる。その彼らに渡してくれ。と言う事で手紙を預かっているんです。はい」
「あ、ど、どうも」
「サインもらえますか?」
「あ、はいはい」
「いやー。努めて五年ですけどびっくりしましたよ。賭けには負けちゃいましたけど」
「来ない方にかけてたのか」
「・・・で? 中身は? どんな文が書いてあるんですか?」
「えーっと・・・宛先上条当麻・・・差出人・・・・・・幻想喰い?」
「それなんて名前なんでしょうね」
「いや、これは・・・・・・」
上条はその手紙を乱暴に開封し、中を読む。
『親愛なる上条当麻。お前の力を貸して欲しい。俺の持論からして、このとある世界にはパラレルワールドは存在しない。いくつも分岐した世界なんか存在しない。だから、この残酷な未来を変えてくれ。それがお前への願いだ。「俺」と“俺”が会おうがタイムパラドックスは起きない。だが、来ない方が良い。朽ちる事無く腐る事無く、俺の腕の中で死に絶える“彼女”の姿はお前も見たくはないだろう? だから、今すぐその街に隠し置いたプルトニウムを使って2020年に行ってくれ。そこで、あいつ等を・・・やってくれ。あの研究所を潰せ。俺の・・・いや、俺達の貴音が死なないように。殺してくれ・・・頼む』
「・・・・・・・・・」
「・・・ご主人?」
「・・・貴音。お前は、この地図の場所に行ってプルトニウムを取ってきてくれ」
「あ、あるんですか!?」
「あるらしい。行ってくれ」
「は、はいな!」
「・・・届けてくれてありがとうな。俺はこのクソッタレた世界を変える」
「過去は変えられないんですよ?」
「そうだな。だが、未来は変えられる。この車はそれが出来る!」
貴音が跳びだしたと同時。上条も別の場所へ飛び出した。
「行っちゃった・・・。ま、任務完了ってトコでしょう。
窓のないビル跡地。地下。
「・・・ここがお前の・・・
「・・・・・・何で来た・・・」
上条が話しかけた先にいたのは、“上条当麻”だった。だが、眼は腐ったように黒く濁り、髪は生気を失って白く脱色し、手足は動いていないかのように細くなっていた。
だがその右手だけは今もなお、決して動く事のない少女の頭をなで続けていた。
「どうしても、分からなくてな。何で会わせたくないのに、会って見ろよ。なんて聞こえる挑発的な書き方をしたのか知りたくてな。・・・・・・なるほど。これは酷いな。こんなに綺麗なのに、死んでるのかよ・・・・・・。エネ」
「・・・ああ。もう、話す事も、ふざける事も、出来ない・・・。あの笑顔を見る事すら出来ないんだ・・・。なぁ、お前ならどうする。これをお前は防ぐ力を持ってる。過去を変えるのが悪い事って言うんだったら未来を変えてくれ。この、ふざけた
「任せろよ。ここはカゲロウの操る世界じゃねぇ。変えてみせるさ。生かせてみせるさ。エネをな」
「・・・ああ」
「―――私が、どうかしたんですかー?」
「「?!」」
その場に響いた声に上条は振り返り、“上条”は跳ね上がるように顔を上げた。
「よっ、エネ」
「なんでエネ呼びなんですか、ご主人。何かあったんですか?」
「たかね・・・貴音だ・・・・・・」
「おわっ! 何ですかこの人!」
「俺だ」
「ご主人? ・・・未来の? って私-!? ご主人大変です! タイムハラドッグズがタイムパラパラ―――」
「「くっ、あははははは!!」」
「何が面白いんですか!!」
「いや、言えてないのが」
「貴音だ・・・。何もかも皆懐かしい・・・」
「ヤマトですね。もしかして・・・四十年前死んだのはやっぱり私だったんですね・・・ご主人はどうするんですか?」
聞かれた上条は引き裂けるほど口角を釣り上げて。
「潰すさ。俺の・・・いや“俺達”の貴音をこうしておいて俺が黙ってる理由はねェ。危ない芽は摘んで置くに限ンだろ」
「ですね!」
「もう行くんだろ?」
「ああ」
「だったら、貴音。お願いがある」
「・・・何ですか? “ご主人”」
「ッ・・・。抱きしめて、頭をなでてくれないか・・・・・・」
「・・・良いですよ」
貴音は“上条”の膝から“貴音”を上条に渡し、その体を抱きしめ、頭をなでた。
「よく頑張りました。もう、この未来はおしまいです」
「・・・最後だ。よーく覚えとけ。俺はこの世界を高校生で去る! お前が出来なかった事をやってやる。記憶だって取り戻してみせるさ」
「・・・・・・やれるモノならな。俺が無理だったんだぞ」
「お前が無理でも俺は出来るさ。俺には貴音がいるんだぜ?」
「いたんだよなぁ。俺にも」
「・・・さ、貴音。行こうぜ」
「了解です。ではサラダバー!」
「じゃな」
上条と貴音はDMCー12に乗り込む。
「行き先は2020年10月26日午後1時18分!」
「目的は
「行くぜ!」
十分加速したDMCー12は時空を超え過去の学園都市へと飛んだ。
PERTⅡの手紙の要素が入っています。
それとエメットも救わなきゃならんのか・・・。やっべ。考えてなかった。
過去へ飛んで誰かを救うって言うのはPERTⅢ要素ですね。