幻想殺しと電脳少女の学園都市生活 作:軍曹(K-6)
タイトル。
貴音の口調。
ストーリー。
―――九年前。
とある事件が起きた。学園年当時の最大火力が投入され、たった一人の能力者に向けられた事があったのだった・・・。
始まりはそれよりも前、ただ一人の少年が生まれた時(正確には物心ついた時)にはすでに薬漬けや実験漬けの日々。そして手にした能力が―――――
「―――
「・・・・・・」
無言でうなずく白髪の少年。真っ赤な瞳のその少年は、研究者のような男達と共に実・験・を繰り返していた。
能力の本質は『向きベクトル変換』 ありとあらゆるものの向きを自在に操る事が可能。しかし、彼はまだ自分の能力を完璧に使いこなせていない。
「いいか。絶対に一方通行に触るんじゃないぞ。奴は触れたものの向きを自在に操る」
「しかし、彼はまだ完璧に操りきれていないのでは?」
「だからこそだ。奴の皮膚の表面には反射膜がついている。触れただけで骨が折れる可能性も考慮しておけ!」
だからこそドタバタと実験が続いていた。そんなある日、一方通行に外出許可が出た。
「遊んでこい」
その一言で外へと出された一方通行は十三学区の小学生がよくいる公園に来ていた。
周りのみんながワイワイ遊ぶ中、一方通行は一人で砂場にいた。
「・・・・・・」
崩れる砂にイライラしながらも何とか形になった山にサッカーボールが激突する。
「・・・・・・あ」
「・・・悪ぃ悪ぃ! ちょーっと変な方向に蹴っちまってよ~」
「・・・・・・」
ボールが飛んできた方向から頭を下げながら走ってくる少年を赤い瞳で睨みつける。それだけで研究者達はビビっていたため、一種の脅しや威嚇として一方通行は使っていた。
が、その少年はにこやかに近づいてくる。
「・・・あれ? もしかして怒ってる? なら覇気がねェぞ。こうしなきゃ」
笑って細められていた目は鋭く細められ、黄金に輝く瞳が一方通行を貫いた。
「・・・うっ」
「! 悪い! そうだよな・・・普通の人間に耐えれるわけねェよな・・・」
「ったく・・・当麻は。もうちょっと人に気を利かせてやんなさいよ」
「うっさいぞ」
大丈夫か? と一方通行の肩を掴むその右手を、一方通行は凝視していた。
「・・・・・・」
いままで一度も、研究者達は触れてこなかったんだから。
「・・・そう言えばお前どこ小? 俺はそこの第三小。よろしくな」
「俺は・・・第一小・・・」(戸籍上は)
「おぉ! 近いじゃん。オレ上条当麻。良かったら一緒にやるか?」
「私は貴音。榎本貴音」
「白夜・・・。
長いの時間のなかで忘れかけていた自分の名前を口にする。
「そっか。よろしくな」
「・・・よろしく」
「やるか? 超次元サッカー」
「・・・・・・は?」
そして、後に白夜は語る。あの日は地獄だったと。
「―――いやー。楽しかったなー」
「疲れた・・・。なんでそんなに動けるんだよ・・・」
「人とは鍛え方が違うからな!」
ケラケラと笑う上条。その笑顔に白夜は思う。「もし自分が、学園都市第一位だと知ったら彼はどうするか」序列など気にせずに彼は接してくれるだろうか。彼はどうみても学園都市の裏の顔を知らない人間だ。まず一番に関わらせてはいけない。まあ最も今の一方通行にそんな早い思考回路が存在するわけもなく。上条当麻と友達になっていた。
いく月か時が経ち、一方通行の能力が定着するのも時間の問題だった。
「・・・そう言えば一方通行。最近お前表の子供と遊んでるらしいな。あんまり関わらせるんじゃねぇぞ。お前に友達などできるはずがない」
「・・・・・・おぅ」
そうは言ってもまだ小学生。特例で学校にも通う事を許してもらえて楽しい毎日を送っていた。
―――が、些細なことが原因だった。見た目か能力か、理由はなんだったかわからない。突っかかってきた同級生の腕の骨が折れた。『反射』してしまったのだ。一度暴走してしまってはもう止められなかった。止めに入った先生も怪我をし、そして最終的には学園都市最大主力に囲まれた。
(・・・どうしてこうなったんだろう)
全ての弾幕を反射しながら少年、白夜は思う。どうして自分はこんな力を手に入れたのだろう。この力があると誰かが傷ついてしまう。だが、今となってはこの力を失うことはできない。ならどうすればいい? 小学生の少年が必死に考えて、導き出した答えは
(―――そうか。圧倒的な力があればいいんだ。誰も寄り付かないほどの圧倒的力が)
そう覚悟を決めた。そして、今から反射膜に触れた銃弾全てを殺す目的で向き変換しようと思ったその時。白夜の目の前で爆発が起きた。顔の目の前で。
反射的に顔を覆いにいく白夜だったがふと疑問に思う。誰もグレネードなど撃っていなかったというのに。なぜ爆発が起きた?
慌てて周りを見渡すと、その姿を発見した。少年の体に不釣り合いな黒いコート。そしてその両手に握られた装飾銃。ツンツン頭に金色の瞳。自分の友達上条当麻がそこにいた。
「な・・・んで・・・」
銃弾の雨の中を彼は歩いて白夜に近づいてくる。今の自分はもう化け物だ。人もすでに何人か殺しているだろう。そんな自分にもう上条に関わる資格などない。そう思った白夜は飛んできた銃弾の雨のほとんどを上条の方へ向き変換する。ほとんど殺す気で。
「?!」
だが上条は違った。右手に持った装飾銃で全て防がれる。
(ありえねェ! あの銃弾の壁を!? いや、アイツ・・・自分に当たる弾だけを弾きやがった!!)
「よォ・・・
「来るな・・・・・・。俺はこんな事に巻き込まれる化け物だ・・・。関わるな・・・」
「俺に“友人”を見捨てろだとォ? いきがるのもいい加減にしろよ。たとえ世界中がお前に恐怖し見捨てたとしてもなァ・・・。俺は絶対見捨てねェ!」
上条がそう言った途端。銃撃が止まる。そして、全ての電子機器から総じて少女の声が響く。
《もっしもーし。聞こえてますか?》
「な!? 何だコレ!」
「ハッキングか?」
「まさか! 学園都市最新鋭だぞ!?」
《あはっ! 聞こえてるみたいですねぇ。だったら、さっさと諦めろやコラァ!》
甲高い金切り音。
耳を引き裂くようなその音に、警備員はもちろん全ての電子機器が悲鳴を上げショートする。
「?! な、なんだ?」
「派手にやってるねぇ貴音」
「貴音・・・? アイツが?」
「あ! ガキが増えてます!」
「何としても止めろとの命令だ。子ども一人増えた所で止められるか!」
再度銃が撃たれる。コンピューターが壊れてしまったので自らの手で標準を合わせなければならないが、それでも上手かった。
「・・・白夜。反射はしとけ」
「・・・・・・は!? でもお前・・・」
初弾が着弾する瞬間。上条の体が縦に回転する。まるで銃弾の軌跡が見えているように神技なウルトラCを繰り出す。
「!」
再度地面着いたはずの足は、地面を蹴り上条の体を横へ回転させていた。
そして、今一度地面に足が着きかけたその時、高い金属音が連続で響き始める。
(・・・・・・銃弾を・・・銃身で弾いてやがるのか・・・?)
「・・・・・・遅ェな。全然足りてねェ。お前らに・・・俺の中に溜まりに溜まった悪運を・・・不吉をプレゼントしてやるよ・・・!」
左手で構えられたリボルバーから撃ちだされた一発の銃弾。それが全てを左右した。たった一発の銃弾がすでに撃ちだされた銃弾に当たり、ピンボールのような弾き合いを引き起こす。全ての銃を破壊し、全員の手首に重傷を与える事になった。
「あいにく
(・・・スゲェ。やっぱ上条はスゲェ・・・俺もこんな風になってみてェ・・・)
―――病院。
「うん。今回も異常なしだね? しかし何だってあの事件の中で無傷なんだい?」
「人とは鍛え方が違うから、としか言いようがないな。しかし、毎度毎度怪我もしてないのに事件に首を突っ込むたびに、ここに来なくちゃいけないんだ?」
「仕方ないね? 心配症のキミの伯父さんからお金をすでに受け取っているんだから。例え無傷でも内出血や目に見えない怪我を探しておかないとだめらしいからね?」
「にゃろォ・・・。どうしてくれようか・・・」
上条が診察を受けている間。病院の外のベンチに腰掛けている白夜と、立っている貴音。
「・・・なァ」
「なに? 言っとくけど、何者だ? なんて質問には答えないからね」
「・・・違ェよ。上条は・・・アイツは何をしてるんだ・・・?」
「人助け」
「・・・!?」
まるで信じられないものでも見るように白夜は貴音の目を見る。
「アイツがやってるのは傲慢なわがままの押しつけよ。こうなってほしくないから、とか困ってる人は見過ごせない、とか理由なんてどうでもいいの。当麻は目の前で自分以外の人が不幸になるのが許せないだけ。だからアイツは、自分が避雷針になるつもり。事件の騒動なんかに自分から首を突っ込むのはそのせいよ。自分だけが不幸になれば良いって」
「アイツは馬鹿なのか?」
自分の友人の性格に、少しばかり頭を抱える白夜だった。
「よォ。お前ら。待たせたな!」
「遅かったわね」
「看護婦さんたちにオモチャにされたからな。ん? どうした白夜。幽霊でも見たような顔して」
「・・・なァ。お前はどうしてこンなことしてるんだ?」
「そうだな・・・・・・。伯父のため、かな」過保護な
「おじ?」
「ああ。何かを守りたいって思ったときに人は強くなるからな」
「・・・だから。人助けなのよね?」
「おう」
「俺にもそんな相手ができるのか?」
「俺たちじゃ不満か?」
「背中を追いかけて、いつか隣に並んでみなさいよ」
「・・・・・・あァ」
▽
「―――懐かしいな・・・あの時からか、俺が上条の真似して背中を追いかけ始めたのは」
街中で一人、白夜は歩いていた。これからも上条当麻のようになるために。
貴音はどこか別の場所でパソコンのキーボードを叩いていました。まだ、電脳少女になれないので。使おうとするとただ気絶するだけ。